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郷実×材前

695の続きです。場所お借りします。
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「めずらしいね」
佳子は材前の隣に腰を降ろすとグラスに酒を注いだ。
「めずらしい?」
材前が聞き返すと、困ったように笑った。
「なんか伍郎ちゃん疲れてるみたい。へんに色っぽくて」
「最近オペがたて続いてるんだ」
材前は早口で答えると煙草をを取り出した。
ライターで火を点けながら「お店にくるのも久しぶりじゃない」
耳もとに口を寄せながら
「他にいいひとが出来たのかと思ってたわ」と囁いた。
「まさか」
材前は言うと佳子の肩を抱き寄せた。

疲れているのは本当だった。
あの研究室の一件以来、材前と郷実はほぼ毎日といっていい程、体を重ねていた。
互いの欠落を埋めるかのような交わり。
なんの生産性もない、意味もない愚かな行為。
指定のホテルに現われると二人は言葉をかわすこともなく求めあった。
30分足らずの短い味気ないセックス。

自分の上で郷実の顔が快感に歪む。
いつも涼しいその目もとが欲望に染まり鈍い光を反射する。
この男のこんな顔を見れるのは自分だけだと思うと
材前は体が震えるような興奮を覚えるのだった。
その一瞬だけ何かに、それは郷実自身なのか?、に近付けたような
気がして。そんなはずはないのに。
意味を考えだしたら底なしの穴に落ちてしまう。

ここのところ材前は痩せたように思う。
無理をさせているのは他でもない自分だった。
郷実は溜息をつくと口を手で拭い、机につっぷした。
モーター音が響く。医局のものは皆出ていて自分1人だった。

当たり前じゃないか。
元来、男の体というのは男を迎え入れるために
できているわけじゃない。あんなに回数を重ねれば
疲弊していくのは当然の結果だ。
それでも郷実は材前を抱き続けた。
歯止めがきかなかった。欲しくてたまらない。
こんなに執着をする人間だとは思わなかった、自分が。

材前は酷く感じやすい体だと、気付いた。
ちょっと刺激を与えただけで息も絶え絶えになり、
目もとがおかしくなり、途端に潤む。
肌は吸い付くように柔らかく滑らかで甘かった。
感度が良いというのは諸刃の剣だった。
何かに追い立てられるように郷実は材前をひどく
責めてしまうことがあった。
これ以上いっては危険だと頭でサイレンがなっているのに、止められない。
一度ならず、二度も気を失わせてしまった。
全身が痙攣を起こし、真っ青になって、意識をとばした。
瞬間、デジャヴのような喪失感に襲われ、夢中で材前の頬を叩き、呼び戻す。
薄く材前が目をあける。
背中を冷たい汗がつたう。

こんなことを続けていたら、駄目になる。
俺も、この男も。

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終わりです。ありがとうございました。

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