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514の続き

「じゃあ、次は君だ」
そういって材前は目を閉じた。
本人に言ったら殴られるだろうが、年令よりも幼くみえるいつもの顔が
目を閉じると少し大人しく見えた。
唇の割れ目から赤い舌が覗く。

こんな日がくるなんて。

郷実は混乱する頭で材前の肩をひきよせた。

*************** Edit

ことの発端は材前からの「ひさしぶりに飲まないか」の誘いだった。
最近の郷実の挙動不振が気になってもいたし、軽い気持ちで誘ったのだろう。
二人きりというのも気まずいので医局の楊原も連れてくるようだ。
アラジンだったら落ち着かないので嫌だというと
材前の家からほど近くのごく普通の飲み屋に連れていかれた。
突然誘った武内も「いい店っすねぇ~~」と楽しそうにしている。
まぁこいつはいつでも調子のいいヤツなんだけれど。

「なんでも好きなもの頼んでくれ。ここはどれもいける味だ」
材前はそう言うと聞かずに生中を4つ注文した。
とりあえず乾杯し、料理をつつきつつ、武内と楊原の漫才のような会話に相づちをうっていた。
時折、材前が郷実に伺うような視線をよこしたが、郷実は俯くばかりだ。
心配させてしまっている。
その事実が、余計に郷実の気持ちを重くさせていた。

酒が進むにつけ話題はだんだん下のほうになっていた。
主に先導したのは若い武内だったが。
「おい、それくらいにしておけよ」
苦笑いをしつつ、楊原が諌めたが、いい感じに酔っぱらった武内は聞こうともしない。
「唇だけでどこまでイかせることができるかの競争をしたんですよ」
武内がいうと、「競争?」と材前が乗ってみせた。
競争という言葉に目がないらしい。小さく郷実はため息をつく。
「女性にか?」楊原が当たり前のことを聞くと、
「それじゃあ、面白くないだろうがよー!」
野郎同士だから面白いんじゃないかと武内は笑った。
「悪趣味な」郷実が上ずった声で非難したが、残り3人は大笑いだ。
「若いなーお前達」材前は困ったように笑った。

案の定、材前は正体不明につぶれてしまった。
「大丈夫スか?材前先生…」武内が聞くと、
「ああ、俺が送ってくからお前達は帰ってくれ」
郷実はやれやれといった顔でいうと二人を送りだした。
楊原が心配そうに何度もこちらを振り返りつつ、歩いていった。
「さて」
呟くと郷実は材前の体をひょいとおぶった。
相変わらず軽いな。

家の電気はどこもついていなかった。
奥方は留守らしい。
「鍵をだせるか?」背中に聞くと
材前も少し気分がもどってきたらしく
「すまんな」といいつつ鍵を差し出した。

シンと静まり返ったリビングのソファに材前を下ろす。
なんとなく家庭のにおいがしない冷たい家という印象をもつ。
職場での材前のイメージそのままの家だ。
冷たい横顔。
でも郷実は知っている。こいつは本当に笑う時、
本当にあったかい笑顔をみせるのだ。

「水飲むか?」聞くとソファーからああとか、ううとかいった
返事が返ってくる。
ミネラルウォーターをグラスに注ぎ渡してやった。
ありがとうと材前はいうと一気に飲み干した。
形のいい喉が波打つ。
「奥さんは旅行かなんかか?」
「そうなんだろうな。居ないってことは」
材前は起き上がりソファに腰掛け、髪を暑そうに掻きむしった。
前髪が降りて幼い表情になる。

郷実はなんとなく落ち着かなくなり「そろそろ俺は…」
ときりだした。
「どうせもう終電ないだろう。もう少しゆっくりしていけよ」
材前は言ったが、「いや、帰るよ」
つまんないやつだなぁ、と材前は呟くと急に立ち上がり
ぱっと郷実のカバンを奪うとニヤリと笑った。
こいつ相当まだ酔ってるな。
郷実は嘆息しつつ「何の真似だ」と咎めた。
「僕に勝ったら返してやろう」
「何いってる」
「さっきの競争さ」

一瞬目の前が白くなった。
材前は面白いことを思い付いたといった感じで意地悪く笑っている。
「嫌だ」
郷実がカバンを取りかえそうとすると
「負けるのが怖いのか?」
材前は嬉しそうだ。郷実の困った顔をみるのがこの男は大好きなのだ。
競争ですまなくなりそうだから嫌なんじゃないか。
郷実は何も気付いて無い残酷な男を睨んだ。

チャンスじゃないか?
心の中でもうひとりの声がする。
またあの甘い耳たぶを思う存分味わうことができるのだ。
しかもゲームの名を借りて。

郷実が混乱していると、
ちゅ、と唇が頬に押し付けられた。
驚いて頬を押さえつつ材前をみると
酔っぱらった瞳をトロンとさせて材前はいたずらっぽく笑っていた。

「じゃあ次は君だ」

ええい、ままよ。
郷実は結論のでないまま、材前の肩をひきよせた。
唇を頬に押し付ける。
「おいおい、子供のおままごとじゃないんだぜ」
材前は笑うと郷実の首筋に噛み付いた。
電気が走ったかのような快感がかけぬける。

「お返しだ」
郷実は材前の耳の縁を嘗めあげた。
俺も相当酔っているな。
耳たぶを甘噛みし、しゃぶり、舌を耳の奥までこすりつけた。
「んっ」
材前から甘い声がもれる。馬鹿野郎、可愛い声だしやがって。
「降参か?」
「まだまだ」呟くと材前は郷実の上唇にかみついた。
甘い痛みに目眩しつつ材前の舌を受け入れる。
材前の舌は熱く滑らかで、生き物のように
郷実の口腔を彷徨った。
自然と郷実の腕は材前の腰を引き寄せている。
湿った音をさせて郷実の口から離れると
紅潮した顔で材前は「そっちこそ降参じゃないのか?」
強がってみせる。
「君こそ、腰が震えている」
郷実も負けじと材前を責め立てる。
材前の舌を根元から喰らうように吸い上げ、
唾液を送り込む。
飲み込めきれない口の端から糸をひいて
淫らな顔になる。
「こんな風に普段からしてるのか」
材前は途切れ途切れの息で尋ねてきた。
「まさか」
そろそろ材前のほうが降参の兆しだった。
股間の辺りが熱く脈打っているのが伝わってくる。
男によって射精を促されるのは屈辱なのだろうか。
郷実はどうしたらいいか分からなくなり動きを止めた。
これ以上いくとゲームではなくなってしまう。

「ふ…」材前は苦しそうに身を折り曲げた。
「俺の負けだな…」
「辛いか」郷実が問いかけると
「男ならわかるだろ」
そっぽを向いてしまった。
背中が小さく震えている。
郷実が我慢できす、背後から抱き締めた。
無言で材前のベルトをはずすと下着の中に
指を潜り込ませた。
「なにする…っ」
材前は抵抗し暴れたが、指の動きが激しくなるにつれ
無言になり快感を受ける度に魚のように跳ねた。
「う……」
材前は静かに果てた。
郷実の手に暖かい残骸が吐き出される。

洗面所から戻るとリビングのまん中にポツンとカバンが置かれていた。
材前は後悔している。
だから言ったんだ。

「君の勝ちだったな」
背中を向けて放心状態のまま、材前は呟く。
それきり動こうとしない。
この男の真意もまた、計りかねた。

ここで俺は何を言えばいいのだろう。
何を言えばいいのかなんて…。
郷実はいつまでも立ち尽くしていた。

*********** Edit

以上終わりです。連続投稿スマソ。武内が変態キャラになってスマソ。

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