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R.S.3_LxM 23

好きなように呼ぶが良い、と言えば彼女はこのまま侯爵サマとでも呼びそうであった。
それは、困る。
「そうか、侯爵サマがこんなところをブラブラしているのはおかしいんだよね。」
どうやら察したようだ。
「何て呼んだらいい?」
少し考えて、ミカエルは答えた。
「ボロが出るくらいならアンタと呼んで構わない。」
外で侯爵と呼ばれるくらいなら、その方が幾分かマシであろう。
「わかった。そうするよ。」

ロアーヌへ戻るときにはノーラに金を渡し、宿に泊める。
ミュルスのパブで半ば強引に付いてきた詩人も一緒だ。
ロアーヌ領内で、彼らには自由に過ごしてもらう。
その間に、ミカエルは仕事をこなす。
施政者は忙しい。
彼らを数日宿に留めたまま、戦場へ赴いたこともあるほどだ。
しかし、いつしか城を空けて外にいる日のほうが長くなっていた。
「世の流れが、良くない方向に向かっている。」
ピドナの宿屋で、ミカエルが瓦版を広げながら呟いた。
増える魔物、それはアビスからの侵略者。
「死食からもう十数年。運命の子がそろそろ動き出すはずですからね。」
事も無げに詩人が言う。
「魔王も、聖王も、そうでしたから。」
ミカエルが鋭い視線を送る。
「たとえ本人が動かずとも、周りが動き出すのだ。
 魔王、聖王。次に現れるのは神王だという宗教まである。」
トルネード、いやハリードの祖国は神王教団との戦いで滅ぼされている。
まだロアーヌは、教団と直接の戦争をしていない。
しかし近い将来、戦うことになるだろう。教団とも、そして、アビスの魔物達とも。

宿屋の窓からは、禍々しい魔王殿が見えていた。

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