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R.S.3_LxM 20

蝙蝠が、ミカエルの戦果を伝えた。
満足気に頷きながら、客人を呼ぶ。
ロアーヌ奪還の知らせを伝えると、モニカ姫は安堵の息を漏らした。
「さあ、ロアーヌへお帰り下さい。ミカエル侯がお待ちかねですよ。」

また、城が静かになった。
しかしその夜、一羽の蝙蝠が情報だけでなく“声”を運んできた。
珍しいこともあるものだと思いつつ、掌に載せる。
“声”は、侯爵のものであった。
妹を保護してくれたことに心より感謝する、といった言葉。
飾り気の無い、ただそれだけの。
しかし城を出たときよりも成長した声を耳にして、嬉しくもある。
掌に載せて蝙蝠に語りかける彼の姿を想像すると、可笑しくもある。
「気づいていたのか・・・。」
蝙蝠が、彼の周りを飛んでいることに。
モニカ姫が訪れてから、侯爵の周囲には絶えず蝙蝠を張らせていた。

久しぶりに心動かされ、古い葡萄酒を呷る。
「美味、だ。」
目は窓を通り越して外を見る。

同じ頃、窓の外を眺めながらミカエルもグラスを傾けていた。
扉の外には兵士がいるが、部屋の侍女には下がらせる。
こういう夜は、一人でいるのが良いものだ。
「思い出すな。」
月を見ながら、二人で飲んだあの頃を。
窓の外には一羽の蝙蝠が舞っていた。昨日掌に載せた蝙蝠とは別の個体だろう。
「伯爵・・・。」
椅子にもたれ、吐息を漏らす。

上弦の月が、穏やかに輝いていた。

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