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R.S.3_LxM 10

荒れた生活が一週間ほど続いただろうか。
その日は部屋に誰も呼ばないまま、過ぎていこうとする。
誰にも会いたくない。
話したくない。
ただ、一人でいたい。
だから今日は食事も取らずにいる。
空腹すら感じない。
様々な感覚が鈍っている気がした。
感想も持たぬまま、一冊を読み終える。

本を閉じ、軽く溜息をつく。
何を思うわけでもない。
疲れていた。
精神的にも、肉体的にも。
閉じた本を掴み、元の部屋に戻そうと立ち上がる。
せめて今日、それだけは済ませてしまおうと。
読み終わった本を自室へ置いたままにはしたくなかった。
書物の間で読まないのならば、せめてそれくらいはしなくては。
読みきれぬほどの書物のある城。
一冊を繰り返し読む気にはならないのだから。

本を持ったその腕が、鉛のように感じられる。
立ち上がったからには早く済ませたい。
扉の向こうのすぐ近くに、目的の部屋はある。
近い部屋の書物で良かった、などと己を奮い立たせる。

重い扉を開いたその時、景色が歪んだ。
本の落ちる音が、する。

見えたのは宙を舞う、一羽の蝙蝠。

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