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R.S.3_LxM 5

「ところで。」
ここは晩餐の間。
食後の茶を給仕されながら、レオニードが話題を変えた。
「貴方は側室を持つ気が無いのですか?」
ロアーヌにいる時から言われ続けてきた言葉。
性に対する自覚はあるものの、女性の相手をしたことはない。
理由は自分の出自にあった。
「ありませんね。」
権力闘争。
側室の子である自分が、いかに命を狙われてきたか。
同腹の妹モニカとは離れて暮らしてはいるものの、彼女もまた狙われることが多い。
父フランツが“鎮星”の持ち主である自分を後継者に選ぶのはわかっていた。
彼は“太白”の持ち主であったため、王者の星に対する憧れを持っていたのである。
しかし、それを周囲が認めるまでに時間がかかったのは言うまでも無い。
後継者候補にはフランツの弟達や、異母兄弟、異母姉妹の配偶者がいる。
ミカエルが唯一の息子であるとはいえ、側室の子は後押しが弱かったのだ。
だから彼は、誰もが認める正室を迎え、その正室としか子を成さないつもりでいる。
後継者の立場を巡って内部で争うことは、馬鹿げていると思うからだ。
レオニードが意味ありげに笑みを浮かべた。
「後で、玉座の間に来てはいかがです?」

深夜、町から一人の娘が連れてこられた。
季節に一度だけ行われる、この城独自の儀式である。
従者に紛れ、ミカエルは玉座の間の出来事を見る。
そこで行われるのは、吸血の儀式であった。

願い叶って城へ迎えられた女性ではあるが、緊張のためかやや青ざめていた。
永遠の若さを手に入れる代わりに、今までの生活を失う女性。
美しい娘の足元が、微かに震えているのがわかる。
一歩一歩、ゆっくりと玉座に近づきながらも。

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