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海猿の別書×長縞

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                    |   シ毎モ袁の別書×長縞です。
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|   前スレ656-660さまはネ申・・・触発されました
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別書さんが「な/が/れ」を降りて半月が過ぎた。
あの人が「な/が/れ」を降りてから、なんとなく休日も船内でゴロゴロしている日が多くなった。
あれから、俺に新しいバ/ディはまだ居ない。
胸の真ん中に大きく空いた空洞の訳も分からずにただ仕事をこなしている。

「俺、マジで尊敬しているんですよ!?
 別書さんが大好きなんだよ・・・っ!
 辞めないでくれよ!別書さんっ・・・・!」
あの時、別書さんが収容された病室でなりふり構わず思わず口を突いて出た言葉。
一瞬、何とも言えない表情になり何か言いかけて、すぐに逸らされたあの人の肩が震えていて
俺と同じように泣いてくれていることが嬉しくて、そして悲しかった。
どんなに失いたくないと願っても、それはお前のためだなんて言われたら
その我侭を通せる反論なんてどこにあったというんだ。

仕事している時はいい。何もかも忘れて目の前の事にただ打ち込めるから。
だけど・・・狭いベッドで一人になり過ごしているときなどぐるぐると考えてしまう。
携帯に電話しようかとも何度も思ったけど、何を話していいのか分からずに
ディスプレイに何度もあの人の名前を表示させて、そして切る、そんなことばかり繰り返している。

「あーーーー!もう!」
思わず独り言が口を突いて出た。
通りかかったヤツがビクリと驚いた顔を俺に向ける。
「長縞?」
「あ~・・ごめん、何でもない。俺、ちょっと出掛ける。」

ロッカー室で手早く身なりを整えると扉を閉めた。
ふ、と隣のロッカーに目が留まる。
今はもう、主の居ないそこはついこの間まで別書さんのロッカーだった場所だ。
上から消すように白いシールが貼ってあるその部分にうっすらと別書、の文字を見付けて思わず手を触れる。
ああ、そういえばあの人、ぞんざいな所があって、普通、シールに書いて貼るのにロッカーに名前を直書きしちゃってたな。
上から貼られたシールのふちをそろり、と指でなぞる。
こうやって、一つ一つ・・・あの人の影は薄れていくのかと思うとたまらなくなって目の奥がじんとしてきた。
バカみたいによく泣いてしまう俺の頭を、何も言わずに撫でてくれたあの温かくて大きな手はもう無い。
「・・・俺のためって何だよ・・・っ・・!」
バン、と軽くそのロッカーを蹴飛ばして俺は「な/が/れ」を後にした。

いつもの溜まり場のオー/シャン/ズに行く気は流石に起こらなくて
海沿いに少し歩いてみる。
海は何も変らないけど俺の隣には別書さんが居ない。

・・・居ないんだ。

あの日、病室で枯れるくらいに泣いたと思ってたけどまだ泣き足りない自分を自覚して
歩いていた堤防の上にしゃがみ込んだ。
平日の海には人気も少なく、遠くテトラポットの上に何人か釣りをしている人影が見えるだけ。
「・・・別・・・書さ・・・」
後から後から流れてくる涙をもう堪え切れなくなって
俺はただただ繰り返しあの人の名前を呼んで泣いて、泣いて、泣いた。

ひとしきり泣いて、泣き疲れて、はあ、と溜め息を付いた。
鼻水と涙でグシャグシャになった顔を拭おうとポケットを探る。
・・・あれ・・?ハンカチどこに入れたっけ・・・?
す、といきなり隣から目の前にハンカチが差し出されて思わずどうも、と受け取・・・?
「・・・気が済んだか?」
聞き慣れた、声。
「!!!!!べ!!!!!!!!!」
「べ、ってなんだよべ、って。」
ほんの半月、離れていただけなのに、怒濤のような懐かしさと胸の痛みを伴って
別書さんの苦笑交じりの声が俺の耳朶を打つ。
「うわああああああああんんん!!!!!!」
せっかく止まった涙も鼻水も、まだ残りがあったらしく
再び溢れ出したそれらを拭う事も忘れて隣にしゃがむ別書さんの服を掴んでその胸に抱き付いた。
「おわっ・・・お前!顔を俺のシャツで拭くんじゃねえ!汚ねえなもう!」
「・・うっ・・ひくっ・・すっ・・すいませ・・っでも、俺、別書さ・・ん・・なんで・・」
まるで子供にするように、手からハンカチを取り上げて俺の涙と鼻水を拭うと
あの懐かしい温かくて大きな手のひらが昔みたいに頭をあやすように撫でる。
「お前はホント、泣き虫だよなア・・・」
「だ・・誰のせいだと・・っ・・思って、んですかっ・・・」
「さっきさ~・・ちょっとコンビニでも、とか思って歩いてたら
 お前見かけてさ、声掛けようとしたらいきなり号泣だもんな。」
「だって・・っ急、俺、ビック・・リ・・てっ・・」
「あ~分かった分かった、取り合えず泣き止めっつの・・・。」

しばらく、しゃくりあげたような呼吸が止まらなくて
俺が落ち着くまで別書さんは隣で黙って待っててくれた。

「・・・元気、か?」
やっと俺の顔中の水が止まって、呼吸も整った頃に、ぼそ、と小さく別書さんが聞いた。
「え?あ、皆・・元気でやってますよ。」
「ああ・・・そうじゃなくて。」
「?」
どういう意味か分かりかねて海に遠い目を向けた別書さんの横顔を見上げた。
いつもこうやって、見上げてたな、なんて思いながら。
「お前が、元気だったか?って聞いてんの。」
「えっ・・あ、はい。元気ですよ!あ、新しいバ/ディとも仲良くやってます。」
心配かけたくなくて、思わずウソが口を突いて出ていた。
「・・・そっか。」
海に向けられていた別書さんの顔が急にこちらに向いたので慌てて今度は自分が海の方に目をやった。
いつの間にか辺りは暮れ始めていて、夕暮れの中いつしか人影は見当たらなくなっている。
「・・・寂しがって、泣いて、落ち込んで、使い物にならなくなってるかと思ってたのにな。」
半分、冗談めかした声音にムッとして再び別書さんに向き直る。
「俺だって・・・」
いっぱしの海/上/保/安/官なんですよ、そう言葉を続けようとして、続けようとしたのに。
目の前の別書さんの顔があんまりにも優しい目で俺を見るから
咽まで出かかっていた言葉は脆く溶け去ってしまった。

あ、また・・・鼻の奥がツンと痛くなる。泣きそう。
「・・・お前なァ・・・」
我慢しているつもりが目一杯に涙目になっている俺に別書さんは苦笑する。
「その、泣き虫なとこ、いい加減直せよ。」
「泣いてませんよ!」
思わず反論した拍子にポロリと滴が落ちる。
泣いてない。泣いてない。泣いてるけど、泣いてない。
「・・・俺にとってはさ、お前がそんなふうに泣いたり怒ったり、笑ったり
 出来なくなる事が1番怖かったんだ・・。」
「・・・そんなの・・」
俺のためだって、分かってる。
けど、そう思ってくれることが嬉しいのと同じくらいに
バ/ディとして共に全てを分かち合って一緒に過ごす時間が俺にとって
とてもかけがえのない大切な宝物だったのに。
「・・・遠い外国に行ったわけじゃ無ぇんだし、こうやっていつもで会えっだろ?」
「そりゃそうですけど・・・」
同じ海の底から、同じ気持ちで、一緒にあの海面の光を見上げる事はもう、無いから。
その事が、ただただ悲しかった。

分かってくれよ、そう言い掛けた時。

目の前の別書さんの顔がピント合わせ出来ないくらいに近付いて、そして。
思わず目を閉じた俺の唇に少しの熱を残してそれは離れた。
「・・・・・。」
キスされたことに唖然としてさらに嫌じゃなかった自分に呆然として別書さんを見上げていると
今度はいきなり顔面にアイアンクローをされる。
「・・・っあだっ!・・・!あだだだだだだだ!!!!何すんですか別書さん!いだだだ!!!」
「新しいバ/ディな、俺よりもイイ男か?」
「はあ?何ですかそれいでっいででで!!!」
アイアンクローから次にヘッドロックを決められて今度は痛さで涙が出てきた。
「俺はな、長縞!」
「・・っ、はい?で、いででっ・・・」
「妬いてんの!」
ヘッドロックの腕はいつしか俺を後ろから抱き締めるような形に変っていた。

「・・え?」
「お前のため、だとか言ってもう海/保辞めた俺が何言ってんだって感じだけどな!
 俺にとっての最高のバ/ディはお前だけで、お前にとっての最高のバ/ディは・・・」
「後にも先にも、別書さんだけですよ!」
背後から身体に響く声を聞き終る前に勝手に口がそう言っていた。
「・・・・長縞・・ありがとな・・・これで俺、ホントに海/保に思い残すこと無ぇや・・・」
「なんですかそれ!まるでこの後死ぬみたいな言い方止めて下さいよ!」
胸に回された別書さんの腕をぎゅっと掴む。
「・・・お前がさ、今日みたいに泣いてたら、俺飛んできてやるから。
 凹んだ時とか、やり切れ無え時とか、いつでも電話してこい。話聞いてやるから。」
まるで子供扱いな別書さんの言葉に思わず切り返す。
「・・・そんなこと言って、ホントは別書さんが俺に会いたいんでしょ?」
緩くなっていた腕の力が、俺を掻き抱くように強くなる。
「・・・・ああ!そうだよ!悪ぃかよ!」
照れ隠しのように不貞腐れた声にやっと、あの時の自分の言葉は告白だったのだと今更ながら思い知る。
「・・・電話、しますよ。泣いてなくても。だって、俺、別書さんのこと大好きだもん。」
返事の代わりとばかりに、さらに力の強まった腕にまた鼻の奥が痛くなる。

悲しい涙じゃないから、泣いてもいいよね?

バカみたいな野郎二人の青春シーンをからかうかのように
夕陽が沈んでいく水平線にカモメが1羽、滑るように飛んでいった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 長縞はなんであんなに可愛いんだ‥
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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