新撰組! 可能くん×居等先生
更新日: 2011-05-01 (日) 19:26:04
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| 昨年の対画だよ
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| __________ |  ̄ ̄ ̄V ̄ ̄| 可能くん×居等先生のお話
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| | |> PLAY. | |  ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| | | | ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ マタ,マイナーナ…
| | | | ピッ (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
| | | | ◇⊂ )( ) | ヽノ___
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__|| |
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現在スレは嵐により機能せず避難所もお引越し。
引越し時に居なかったので未だに辿りつけず当時避難所の棚に置いた物も行方知れず…アアン
たまたま残ってたこれは一番気に入ってた物なのでこちらに再投下させていただきます。
酷く寒寒しい夜である。
戻り橋――旧くは陰陽師が式神を住まわせていたという界隈にある石橋。
死して鬼となった者がこの橋を越えて戻ると云う。
己は一人、そこの袂に阿呆のように座り込み鬼が戻るのを待っている。
美しく白い顔をした愛しい鬼を。
初めにこの場所を知ったのは京に上ったばかりの頃である。
今ここで待っている者、伊等こそがその由来を教えてくれた。
「知っているか、叶くん。この橋の向こうから戻って来る者の事を。」
そう言われても見える向こうはやはり同じような町景色で首を傾げるばかりだった。
「地獄から鬼が戻って来るのだよ。だから盆の時分なんかは誰も近づかないそうだ。」
風情や幽玄を解しない無粋な己はへえとかはあとか呟くばかりである。
「先生、人のままでは戻れないのですか。」
そう尋ねた己の言葉に伊等は子供のように笑った。
「叶君は面白い事を考える。そうだな。戻るのは鬼だけ、考えてみればおかしな気もする。」
きっとあれやこれやと想像をめぐらせているのだろうか、伊等の足が止まってしまった。
二人で歩く道が終わらなければいいと思うのは常の事だから黙ってそれに従う。
「もしかするとこの世で人の侭で居るのは難しいのかもしれない。」
はあ、とまた気の利かない返事しかできずにそっと横顔を盗み見る。
いつの間にか笑いは形を顰めてただただ美しい横顔で佇んでいた。
「人を欺き、人を斬り、人を食う。鬼ばかりだよ。」
「……先生は。」
零れるように出てしまった言葉の先を慌てて飲み込んだ。
(先生は、違います)
それはこの時代に鬼にならんと激動の京に飛び込んだ彼に向けて良い言葉には思えなかった。
形の良い眉を上げて首を傾げる伊等を見るだけで大きく胸が鳴る。
「先生は、何だい?」
先を促されても本当の事など言えるはずも無い。口を結んでしまう事にした
「叶君は急に無口な性質になる。」
楽しそうな声を聞きながら見た並んだ影はまだ胸に焼き付いている。
だから、あの夜ここに辿り着いたのも偶然では無かったのかも知れない。
刀を捨て碁盤のような辻を抜け彷徨った挙句だ。
不思議な事にそこへ来た途端まわりが静まったようだ。
あれほど聞えていた追っ手の怒声も気配も消え去っていた。
本当に一人きりになってしまったのか。皆はどうしただろうか。
見渡せば一人美しい人が袂に立っていた。
―――先生。
声に出たのかどうか定かでは無い。
それでも彼の人はゆっくりと美しい面をこちらへと向けた。
「先生、先生!」
驚くと少し御顔が幼くなるのも思わず抱き締めた身体も確かだった。
(ああ、良かった。やはり先生はまだ生きていらした。)
けれどそれはまるで心を読んだかのように首を横に振る伊等の仕草に打ち砕かれた。
かっと身体の中の血が燃えるのを感じると汚れた掌を着物の袷へと入れる。
「いけない、叶くん。君はまだ……」
「何がいけないのです。」
恐らく彼はもう此の世の者では無いだろう。
どんなに探っても熱が欠片も見つからないこの身体こそ、それを雄弁に裏付けていた。
(だが、それが何だというのだ。)
伊等が居ない処に未練など無い。それが例え此の世であっても、だ。
「……御供させていただきます。」
もう一度強く抱きなおして橋を越えてしまおうとするのに伊等の身体は全てを拒むかのように堅い。
「君を連れては行けない。」
「東堂ですか?東堂なら連れて行くのですか?!」
思わず怒鳴ると腕の中の身体が強張った。
「平介は来ない。」
来るはずが無い。もう一度そう繰り返して項垂れる彼の首筋には薄らと骨が浮いていた。
いつの間にこんなに痩せてしまわれていたのか。
「……近堂先生の処に帰っている。」
答になっていない。ぶつけたやろうと思っていた苛立ちの言葉は出なかった。
「そんな事は、ありませんよ。」
結局のところ己は彼が厭うことなどできはしないのだ。
「先生、どうか泣かないで下さい。」
「泣いてなどいない……」
子をあやすかのように柔らかい言葉ばかり捜し何度も繰り返した。
「先生!」
背の側から若いその声が響いたのは幾程の時が経ってからだったか。
先の己と同じように一人きりで東堂が立っていた。
あっと思う間もなく押されて身体が離れた。
恐らく己を疎んでのことではないのだろう。ただこの若者の前で見せる、いつもの虚勢だ。
その証拠に小走りに駆け寄る東堂から反らす顔は僅かに赤い。
「いいのか、近堂先生の方に行かなくて。」
酷く小さな声で呟いた問いに東堂はきょとんとした風情で首を傾げる。
「近堂先生や史衛館の皆にはきちんと挨拶をして参りました。
私が帰る処は伊等先生のお傍でしょう。」
伊等に媚びるのでもなければ喜ばせようとしているわけでも無い。
これがこの男の本心からの言葉なのだ。根本的に思いの性質が違う。
情の強さや量で劣っているとは思わない。
けれど、伊等が一番に求めていたのはこれなのだ。退くよりも他にないではないか。
「先生。ほら、言った通りだったでしょう。」
いろいろな物が綯い交ぜになってそれをごまかすかのように笑った。
笑いながら涙が零れているようで酷く滑稽だろう。
それなのに笑っているのは己だけだった。
相変わらず不思議そうな顔をしている東堂に向ってまだ俯いている伊等の背を押してやる。
「さようなら先生。」
踏ん切りを付けるようにそう言ってから一歩だけ下がる。
伊等を受け止めた東堂は少し躊躇った後に手を握り何かを誓うように頷いて見せた。
「叶くんも、元気で。」
手を振り払わないまま橋へと踏み出しそう言った伊等は笑っていた。
それは幸せそうで己の一番好きな笑い方だったので尚更辛く、逃げるように走り出していた。
後の事はよく覚えていない。
また聞え始めた追っ手の声や足音に怯え出鱈目に走り回り、着いたのは薩/摩屋敷の前だった。
(生かされたのか、俺は。)
先に逃げ込んだ仲間と抱き合いながらそんな事をぼんやりと思った。
あれは限界にまで緊張していた心が見た幻であったかのかもしれない。
そうやって現と折り合いをつけるように無理に辻褄付けても無駄だった。
闇に紛れ、人に紛れ、組の目を掻い潜ってあの橋へと通った。
危ないからと咎められても死んだ者は戻らないのだと説かれても足は向う。
(戻らないなんてこと、知っている)
あの優しい人は結局本物の鬼になる事は出来なかった。
だから鬼が戻るというこの橋には現れるはずは無い。だが、もし、万が一。
……結局、理屈では無いのだ。ほんの僅かな幻に縋るほど未だに彼に囚われている。
「本当に目の前で、東堂と行ってしまったんだ。」
何度目の夜だったか、ここまで着いて来た市野原にそう言ったら哀れむような目で見られた。
「叶、それは悪い夢だ。早く忘れた方がいい。」
「……忘れられるわけがないだろう。」
悪い夢でも幻でも、路傍で彼を一人死なせてしまった現よりはずっとずっとマシなのだ。
それは己だけの想いではなく市野原も、恐らく生き残った者は皆同じだから黙り込む事しかできなかった。
―――伊等さァの仇を討ちたいと思わんか。
先日持ち掛けられた話がまた耳の奥で蘇った。そんな事を恐らく伊等は望んでなど居ないだろう。
だが、遠からず我らはその申し出を受ける事になるだろうとどこかで確信していた。
残された者共怒りの遣りどころがなくもう限界に近い。
己も例外ではなくいつ狂気に食い破られるかわからない綱渡りの状態だ。
失ってしまったものはそれほどに大きく、それを静めるのは同じ命だけだ。
自らの心の為に伊等の名を掲げて近堂を討つのだ。
待ち惚ける己の上であの晩よりもずっと痩せてしまった月がそれでも煌々と光を降らせる。
(結局、先生の事だけを考えていたのは東堂の他には居なかったな。)
彼ならばこうやって悲しみを他の何かの為に使うことなどはしなかっただろう。
だがそれが正しい事なのか、それとも狂うほどに伊等を想う己らが正しいのか。
それは未だ以って判らぬままである。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ オワリ!
| | | | ピッ (・∀・ )
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分割失敗スイマセン
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