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ワダ→コトー

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                    |  某孤/島診療所ドラマ 
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  ワダ×テンテー 
 | |                | |            \
 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ むしろワダ→テンテー
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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ワダは診療所からの帰り、半分程まで来てコトーにせっかく借りた本を忘れたことに気付き、
再び診療所に向かって大急ぎで逆戻りした。
この島の診療所では他にする者がいない所為もあって、
ワダは医療の助手さえしなければならない。
とは言え、ワダは事務が本業の全くのド素人である。
コトーがこの島に来てコトーを手伝うようになってから、
一つ一つコトーやナースのアヤカに習いながら仕事をしている。日々勉強の毎日だ。
今日借りた本も、そんなワダにコトーが参考になればと貸してくれた物である。
そんな大事な本をうっかり忘れてしまったのだ。

ワダが診療所に戻ると中はまだ灯りがついていた。
「あれ? 先生?」
診療所のスリッパに履き替えながらワダは中に声をかけた。
「まだいらしたんですか」
診察室に入るとコトーが器具類のチェックをしながら振り返った。

「あれぇ? ワダさぁん、どうしたんですかぁ?」
コトーは不思議そうにワダを見た。
柔らかな物腰と、丁寧なしゃべり。患者に対しても、大人でも子供でも基本的に変わらない。
パッと見ただけでは頼りなさげな印象だが、
この人の笑顔には不安になっている患者を安心させる不思議な力がある。
「あ、あの。忘れ物をしまして」
素早く部屋を見回してその本を見つけると、
ワダは誤魔化すように笑いながら本をサッと後ろに隠した。
せっかく貸してもらったのにその日の内に忘れて帰るとは。
これではコトーをないがしろにしているようではないか。
「別に明日でも良かったのに」
本を忘れたことはコトーには既にお見通しだ。
ワダは悪戯の見つかった子供のような顔を逸らした。
「え、えーと。す、すいません」

「ああ、降って来ちゃいましたねー」
コトーはワダの葛藤など知らん顔でカーテンを閉めようと握りしめたまま外を眺めている。
アヤカが帰る頃には今にも泣き出しそうな空模様だった。
「私がここに来るちょっと前にもうポツポツ当たってきてましたよ」
「そうなんですか。ワダさんもそのまま帰っていれば雨に降られなかったのに」
「いえ、そうはいきません」
「雨が降る前に帰りたかったんですけど。こうなっちゃったらいつ帰っても同じですね。
お茶でも飲んで帰りますか。ワダさん、待ってる人とか、大丈夫ですか?」
コトーにそう聞かれてワダは少し傷ついた様な顔をした。
「そんな人いるわけないじゃないですかっ」
「そうなんですかぁ」
相変わらず、解っているのかいないのか……。
ワダはため息を吐く。

「コーヒーでいいですか? 患者さんにもらったお菓子が確か……」
「あ、わ、わ、私が……っ」
ワダは給湯室でごそごそしているコトーを慌てて押しのけてソファーのある部屋に追いやった。
「先生は座ってて下さい」
ワダはやかんに湯を沸かしながらカップを出し、今日あった出来事などを話し始める。
「……それでですね、漁労長がマリコさんに水をぶっかけられましてですね……」
「シゲさんも相変わらずですねー」
他愛のない島のうわさ話をするワダにコトーは相づちを打ったり、
時折声を立てて笑ったりしていたが不意にコトーの声が途絶えた。
「先生……?」
コーヒーを入れて部屋に入っていくと、ソファーに腰掛けたままコトーは安らかな寝息を立てて眠っている。
「先生」
ワダはコーヒーの乗った盆をテーブルに置くとコトーの肩を軽く揺さぶった。
「こんな所で寝たら風邪ひきますよ」
「う……ん」
寝ぼけているのかコトーはワダの腕を掴むとそのままその腕を辿るようにして首に腕を回してきた。
「せ、先生」
意外なコトーの行動にワダは驚き狼狽えて、一瞬思わず体を引いてしまった。
そしてすぐに思い直してしっかりとコトーを支える。
コトーは少々揺さぶられても目を覚まさない。
仕方ない、このまま布団へ連れて行こう。
ほんの少し『役得』だなどと思いつつワダはコトーを抱き上げようとした。
首筋にちょうどコトーの寝息がかかり、さらさらとした柔らかな髪がワダの耳をくすぐる。
一気に心臓の鼓動数が跳ね上がったワダは
目の前の本棚にある医学書を睨みつけてどうにか理性を取り戻そうとする。
「ん……ん、ハラさん……?」
微かに聞こえたコトーの寝言にワダは愕然として固まってしまった。

「え? わ、わわっ!」
そのショックでバランスを崩し、ワダはその場に尻餅をついた。
咄嗟にコトーを守ろうとした所為でしたたかに腰を打ち付けてしまった。
「いっ……!」
痛みに思わず声を上げそうになりワダは息を殺した。
(先生を起こしてしまう)
腕の中のコトーを見ると、ワダが下敷きになったおかげでコトーは辛うじて無事だった。
目を覚ます気配もない。
ワダはホッと息を吐いた。
コトーは何か夢でも見ているのか、ワダにしがみついたままくすくすと笑っている。
その笑顔はまるで無邪気な子供のようだ。
コトーは無邪気だが、ワダの方はわき上がる邪な感情を押さえるのに必死だ。
「えーっと」
ワダは困ってしまった。
「どうしたらいいんだ? どうしたらいいんだ」
下敷きの状態からはいくらなんでも立ち上がりコトーを抱き上げることは不可能だ。
だがコトーを抱いたまま床に座り込んでいるわけにもいかない。
ワダはとりあえずソファーに這い上がることにした。
悪戦苦闘の結果、コトーをどうにかソファーに引き上げ、膝枕状態にする事に成功した。
コトーは結局目を覚まさなかった。
「よっぽどお疲れだったんですね」
自分の膝で寝こけるコトーを見おろしながらワダは声をかける。
今日は難しいオペを二つもこなし、ろくに休む暇もなかった。
たった一人で島の医療を引き受けるコトー。
いかに優秀な外科医とは言え、その重圧は並たいていではない。
アヤカや自分が手伝ってるとは言ってもそれには限界があり、
結局責任はコトー一人の肩にかかっていくのだ。
正式なナースのアヤカはともかく自分は……。
「役に立っているんですかねえ」
ワダはため息を吐く。

役立たずどころか、足手まといではないのか。
そもそも素人の自分が天才外科医と言われるコトーの役に立てることなどあるのか疑問だ。
オペ中のコトーは別人だ。
コトーがここに来た当初、ワダは彼の外科医としての技術の優秀さも驚いたが、
それよりもその集中力とタフさに舌を巻いたものだ。
華奢で小柄な身体のどこにそんな体力が眠っているのだろうかと不思議に思ったものだった。
逆にオペでその体力と集中力のほとんどを使い果たしているのだろう彼は、
白衣を脱ぐと普通の人よりも、いや、もしかすると子供よりも頼りない。
そのギャップが彼の魅力なのだろう。
今ワダの膝で安らかな寝息を立てるコトーは普段以上に無防備だ。
サラサラと音を立てそうな柔らかな髪が頬にかかり、時折鼻腔がぴくっと動く。
随分失礼な言いぐさかもしれないが可愛いとさえ思える程だ。
(触れたい…)
ワダは不意にわき起こった衝動を抑えきれずにそっとコトーの唇に手を伸ばしてみた。
震えているのが自分でもわかる。
柔らかそうな唇は思った通り柔らかで、何か神聖な物に触れてしまった気がして慌てて手を引っ込めた。
心臓の鼓動が早くなり、触れた感触の残る指先はいつまでも熱かった。
外は雨が本格的に降りだした。
南の島とは言え夏に至っていない今の季節、
夜でその上雨が降っているとあってはそれなりに冷える。
コトーが身じろぎ、少し寒そうに身体を竦めた。
何か上に掛けるものを探すが、手の届くところにはない。
ワダは自分の着ていた薄手のジャケットを脱いでコトーに掛けた。
気休め程度にしかならないが、少しは違うかも知れない。

ワダはソファーに身を預けて目を閉じ、一日を振り返る。
それにしても今日は普段にもまして忙しかった。
オペの助手と、細々した雑務と。
そう言えば昨夜も遅かった。
少しここで休もう。
少し休んだら、先生を向こうに運んで。
眠ったらダメなんだけど……。
…………。
……。

「……ダさん」
(誰だ? 眠いんだよ)
「ワダさん! 起きてください、ワダさん!」
乱暴に揺すられて薄目をあける。
「う…ん……、あ、アヤカさん……?」
「何でこんなトコで寝てるんですか」
アヤカが怒った顔で覗き込んでいる。
「ったく、昨日雨だからって、ここに泊まったんですね。風邪引いても知りませんよ」
ソファに横になり、仮眠用に置いてあった毛布が掛けられていた。
「あれ…? 今何時…あ、もう朝?」
窓から朝の光が射し込んでいる。

「せ、先生。先生は?」
ガバッと身を起こし、辺りを見回す。
「はぁ? 先生はまだいらしてませんよ」
アヤカの素っ気ない一言。
ジャケットはしわにならないようにきちんとハンガーに掛かっていた。
多分コトーがしてくれたのだろう。
あのまま無様にも眠りこけてしまったワダに毛布を掛けてくれたのも恐らくはコトーだろう。
何という事だ。
ワダは激しく落ち込んだ。
いや、それとも昨夜のことは夢だったのか。コトーが自分の膝枕で眠っていたなどあまりにも現実感に欠ける。
しかし指に残る感触はリアルだ。
では、やはり……。
いや、しかし。
「いつまでも寝ぼけてないでさっさと顔洗ってきてくださいっ! 今日も忙しいんですから」
アヤカに怒鳴られてワダは乱れた心のまますごすごと洗面所に向かった。

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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;) そこに萌えはあるのか? オチは?
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