Top/8-139

広川×三木

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                    |  某有名漫画「寄/生/獣」より「広/川」×「三/木」
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 | __________  |    ̄ ̄ ̄V ̄ ̄|  久しぶりに読み返して突発的に思いついた
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 | | |> PLAY.       | |              ̄ ̄V ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ マイナーデスマソ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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△あらすじ△※!ネタバレ注意!※
ある日突然、地球上に人間の頭部分に寄生し他の人間を食料とする「寄/生/獣」なるものが現れる。
「広/川」は人間だが、彼らを保護しようと市長に着任し、彼らがより安全に「食事」ができるよう
地区内に数箇所の「食堂」を配置し密かに彼らの手助けをしている。
「三/木」はその「寄/生/獣」の中の一匹で、自分を含む総勢5匹の「寄/生/獣」でひとりの人間の体を共有している。
普段は5匹のうち最も強い「後/藤」が頭に寄生し「三/木」は右手に寄生しているが(他の3匹はそれぞれ左手、両足に寄生している)
時々お互いのポジションを交代したりする。

週に一度の"会合"を終え、集まった地区の代表者はそれぞれ帰途に着いた。

"会合"と称してこうして定期的に集まってはいるが、話し合う内容については大抵いつも同じような事だ。
設置した『食堂』の数や場所はこれで適切か、取り決めたルールを破るような仲間はいないか、
自分達に『害』を及ぼすような『敵』はいないか。
最近ではもっぱら『田邑さん』がやけにご執心の『和泉』という少年についての話題が多いが、
そうそう毎回重要な情報が得られるわけではない。
現に、今日お互いに話し合った事といえば、『食堂』の数はこれ以上増やすべきか否か、
増やすとしたら、また減らすとしたらどの場所にすべきかを議論しただけだ。
結局は現状維持という事で話は落ち着いた。
有益な話し合いがもたれたとは考えにくいが、やはり定期的な情報交換や議論の場は必要不可欠だ。
特に最近はくだんの『和泉』という少年の事もあるし、それ以上に、
……人間ども、どうやら多少なりとも異変に気付き始めたらしい。
世間では見知らぬ人の髪を引き抜いたり、突然顔に触れたりする妙な事態がはやっていると聞く。
思慮に欠ける仲間に注意喚起するためにも、やはり話し合いの場は必要なのだ。

絨毯のしかれた立派な廊下を渡りながら、広河は延々そのような事を思案した。

心中でどんなにあれこれと考えをめぐらせていようと、広河の表情は作り物のように無感情だった。
その表情からは、いかなる人間的な俗っぽい感情も読み取れない。

金属的な冷たい表情、というわけではない。
何も考えていない時に表情が抜け落ちる際の間の抜けた無表情でもない。
ただ、能面のように形の整った目鼻立ちが首の上に載っているだけだ。
表情を浮かべるための筋肉、あるいは神経がそっくり欠如してしまっているような、
そんな表現の似合う不気味な無表情だった。

けれど、一室から聞き慣れないピアノの音色を耳にした瞬間、
広河のその頑なな無表情がわずかに揺らいだ。
――――――とはいえ、その変化は傍目にはわからないようなごく微妙な変化だったが。
広河はマイペースに歩を進めていた革靴の足音をその一室のドアの前で止め、
二度ノックしてからドアを開けた。
がらんとした広い部屋の真ん中にぽつんと据え置かれたピアノの前に座り、
「幹」が実に満足げな表情を浮かべながらでたらめな音色を奏でていた。
乱暴に鍵盤を叩くだけの、幼稚園児の弾く「チ/ュ/ー/リ/ッ/プ」にも劣るひどい音色に臆する事なく
広河は無言のままドアを閉め、「幹」の晴れ姿を見守るべく腕を組んで壁にもたれかかった。

もはや何を弾いているのかわからないが、「幹」はでたらめな旋律を乱暴に弾き終え、
(そもそもこれと決めて既存の曲を弾いているわけではないのかもしれない)
最後に大きな両の手のひらで二度鍵盤を叩き、不快な演奏を(騒音というべきか)締めくくった。

満足げな「幹」に広河が気のない拍手を送ると、「幹」はそのとき初めて
広河の存在に気付いたかのように両目をくるりと回して驚いてみせた。

「あらーっ、広河さんじゃないですか。いつからそこに?」
「『五藤さん』の真似かい?『幹さん』」
大仰な仕草で手を振る「幹」の質問には答えず、広河がその表情に見合う無感情な声音で尋ねた。
「幹」はピアノの上に置いていたタオルで顔に浮かんだ汗を乱暴にぬぐい、そのタオルを足元に放り投げた。
「あー、はい、そうです。俺も少しは特訓しなくちゃな、と思って。
ホラ俺、『五藤さん』と違って鈍いでしょ?アハハハハ」
光の加減で少し茶色く見える柔らかそうな黒髪を両手でかき上げ、
「幹」は形の整った眉を八の字にして間の抜けた笑い声を上げた。
「相変わらずだな。少しわざとらしいくらいだ」
壁に何脚か立て掛けてあったパイプ椅子を広げながら広河がそう言うと、
「幹」は芝居がかった仕草で口元を片手で覆い、秘密の悪事をばらすかのようにしたり顔でにやついた。
「表情豊かな方がね、『エサ』が釣りやすいんですよ。体が鈍い分、他でカバーしなくちゃ」
言うなり「ナッハッハッ」と大きな口で豪快に笑い始めた「幹」を無表情で見返し、広河は脚を組んだ。
「表情の豊かさではきみの方が優れているかもしれないが、ピアノの腕前は『五藤さん』にはかなわんね」
「いやーっはっは、そりゃあね、身体の統率に関しちゃ『五藤さん』にはかないませんよ。
俺にはこれが」
再びその両手が乱暴に鍵盤を叩き始め、広河の両目がかすかにすがめられた。
数秒ほどの間ひどい騒音を撒き散らしたのち、「幹」は首をすくめてみせた。
「―――――精一杯ですから。指先の細かい作業ってのが苦手でね。スピード勝負も苦手だな」

再び眉を八の字にして苦笑いの表情を浮かべた「幹」に、広河はくすりと忍び笑いらしき物音を立てた。
もっとも、目立った表情の変化といえば唇の端がかすかにピクリと動いた程度だったが。
「で、広河さん、今日はいったい何の用で?それとも俺にじゃなく、『五藤さん』に何か用が?」
「いや、特にこれといった用はない。下手くそなピアノが耳についてね」
「幹」は椅子の上で尻を滑らせくるりと広河のいる方向へ向き直った。
「下手くそとはひどいなぁ。これでも一生懸命練習してるんですよ、ほらほら」
片手で二度三度と鍵盤を叩き、得意げに唇を突き出す。
「どーです、広河さんに弾けますか。広河さんよかは俺のが上手いと思いますけどぉ」
「幹」は指先を使って鍵盤を押す、という事に考えが及ばないらしい。
大きな手のひらでただただ乱雑に鍵盤を叩くのみだから、
同時に叩かれたいくつもの鍵盤が不快な不協和音を作り出す。
見かねた広河はおもむろにパイプ椅子から立ち上がると、ゆっくりと「幹」のそばまで近づいた。
「幹」は広河が「幹」のすぐそばで腰をかがめ、ピアノの鍵盤の上に指を置くのをじっと見守った。
「何かリクエストは」
相変わらずの無表情のまま尋ねた広河の顔を覗き込み、「幹」はへらへらと間の抜けた笑みを浮かべた。
「ナハハ、やだなぁ広河さんたら。俺がピアノ曲を知ってるわけないでしょ」
「では、何か適当に弾いてみせよう。……私も『五藤さん』の腕前にはかなわないが……」
なるほど、その腕前は決して見事とは言えない代物だったが、それでも指先を使いこなせるぶん
「幹」と比べると随分すばらしい音色に聴こえた。

しばらくは大人しく広河の指先を見つめていた「幹」だったが、やがて飽きてしまったのか
自らも広河の演奏に参加しようと鍵盤を叩き始めた。「指先を使う」という技は習得できなかったらしい。
広河はもはや「幹」の演奏を正そうとはせず、気の赴くまま鍵盤を指先で叩いた。
広河の繰り出した音色は残念ながら「幹」の繰り出す騒音に掻き消されてしまったが、
そんな事は広河も「幹」も気にしなかった。
広河は「幹」に構わず演奏していたし、「幹」はこれで立派なハーモニーが
奏でられていると信じていたからだ。
やがて指先の疲れた広河は弾くのを止めたが、「幹」は再びピアノ演奏に
夢中になり力いっぱい両手で鍵盤を殴りつけるように叩き続けていた。
柔らかそうな髪が鍵盤を叩くのに合わせて激しく揺れるのを眺め、
広河は己の顎に触れながら「ふむ」と低く唸った。

この「寄生動物」はみな概して容姿が整っている。
それはもちろん、容姿が美しければ美しいほど苦労せず餌を手に入れやすいからに他ならないが、
この「幹」もご多分に漏れず端正な目鼻立ちの顔を擁していた。
とはいえ、この「種」に限って言えば容姿というのはそれほど重要なものではない。
なにしろ彼らの意思で好きなように顔かたちを変えられるのだから。
せいぜい顔が良ければ比較的餌に苦労しないだろうという程度のもので、
面倒くさがりの者は寄生した人間の顔そのままで二度と顔を変えなかったし、またその逆で用心深い者は
「食事」のたびにコロコロと顔立ちを変えていた。

その点、この「幹」に関して言えば彼の容姿は一貫している。
彼の一部である「五藤」は何度か容姿を変えているのを見かけたが、
その一方で「幹」は出会った頃からこの姿のままだ。
広河には、「幹」のこの容姿がもともと寄生前の人間の顔立ちだったのか、それともあとから「幹」が
つくり出した顔立ちなのか、判断がつかなかった。
仮にこの容姿があとから「幹」がつくり上げた容姿だとして、確実にそれの元となるモデルがいるはずだ。
俳優か、タレントか……いずれにせよ、「幹」が選択したこの容姿はなかなかのものだった。
ハンサムだが、一般人が戸惑うほどの近寄りがたさはなく、むしろ親しみやすい雰囲気がある。
それに加え「幹」のこのあっけらかんとした性格だ。
身体能力でいえば確実に「五藤」の方が優れているが、むしろ「食事」に関して言えば
初対面で好印象を抱かせやすい「幹」が5匹のうちの「食事当番」といえた。

広河は目の前で一心不乱にピアノを叩く「幹」の姿を一歩後ろからじっと眺め、
騒音に合わせて揺れる髪、日に焼けたうなじ、服の下からでもはっきりと
見取れるバランスの取れた筋肉を観察した。

「『幹さん』」
ふと肩に乗せられた手に気付き、「幹」はピアノを叩く手を止め大仰な動作で体ごと振り返った。
「はぁい、なーに?」
「幹」は愛想のいい笑顔を浮かべて汗に濡れた髪を両手でかき上げ、
足元に落ちていたタオルを拾い上げて額に浮かんだ汗をぬぐった。

「あー、疲れた。ホラ、俺ってば持久力もないでしょ。もうクタクタ」
「ひとつ聞きたいことがあるんだが」
目の前に立つ広河を一度見上げ、「幹」は凝った肩をほぐすために首を回した。
「そろそろ『五藤さん』と交代しようかな。一度食事を済ませてから」
汗を拭きながら苦笑いした「幹」の肩に広河は再び触れ、その一瞬、広河の唇に笑みらしき表情が仄見えて消えた。
「きみたちには多少なりとも"痛覚"があるはずだね」
「そりゃね。人間の神経や体中の重要器官と繋がってますから」
言うと、「幹」は嫌そうに眉間にしわを寄せ、ぶるりと全身を震わせた。
「大抵の『仲間』は"痛み"を怖がりませんが――――ああ、生命に関わる場合は別ですけど――――
俺は嫌っすね。痛いのは。そうそう、味覚もあるんですよ。
ただ味なんてどれも同じだから、どうでもいいんだけどね」
「そう」
広河の手が肩や腕を撫でさするのをじっと眺めていた「幹」は、はっと目を剥いて
広河の手を振り払った。
「何か痛い事するつもりですか?あー、そうか、実験だな。おたくらお得意の。
せっかくだけど俺たちの身体に何かしたら、たぶん俺より『五藤さん』が黙ってないと思いますよ。
いくら広河さんでも細切れにされると思いますけど。俺の力ではまだ『五藤さん』を抑えきれないんでね」
「そんな事しないさ。私としても、死ぬ前にもう少しやっておくべき事がある。
今はまだ死ねん」
そう言って、広河の手が再び「幹」の肩に置かれ、そっと撫でさすり始めた。

広河の行動の真意が読めない「幹」はいささかわざとらしいくらいに眉根を寄せ、
不思議そうな表情を浮かべてみせた。
広河の手が肩から「幹」のうなじに移り、指先が襟足をくすぐるようにうごめいた。
「人間の、あるいは同種の『仲間』のメスと性行為をした事は?」
「幹」は一瞬きょとんとした表情を浮かべたあと豪快に笑い出し、ひざを叩いた。
「何のためにです?子孫を残せるわけでもないのに。そんな事をするのは『田邑さん』くらいのもんですよ」
「子孫を残すためだけの行為ではないよ。快楽を得る事ができる」
襟足の辺りをいたずらにくすぐっていた広河の指先が「幹」の後頭部を抱え、
もう片方の手が「幹」の顔を固定するようにそっと頬に添えられた。
「"痛覚"があるって事は、すなわち"快楽"を感じる事ができるって事だ」
急速に接近してきた広河を警戒し、終始へらへらとした笑顔を浮かべていた「幹」の顔から表情が抜けた。
こうして真面目な顔をしている「幹」は笑っている時より随分とハンサムに見える。
「そういった性的な"快楽"を体感した事はある?
実験的にマスターベーションのような行為を試してみたことは?」
「俺たちにそういった欲望はないですよ。あるのは生存本能、"食欲"だけです」
「興味があるんだ」
「幹」の頬に添えられていた手がゆっくりと下におろされ、「幹」の下腹部にあるモノをそっと包み込んだ。

「おーっと、広河さん、注意っ。俺たちの身体は慎重に扱ってもらわないと。
むやみに触ると輪切りにしちゃいますよ」
「何か感じないか?妙な……今までに感じた事のない感覚を」
言いながら巧みに手に包んだモノを撫でたりそっと揉んだりしてみせる広河を疑り深い顔で見やり、
「幹」はうーん、と唸りながら首をかしげた。
やはり大柄な体躯に見合う、立派な性器の持ち主だ。
むろんこの身体はかつて存在していた人間のものだが、「幹」のこの顔立ちとこの大きな身体は
よくバランスが取れていてしっくりと合っていた。
「服を脱いでもらってもいいかい。いささか邪魔でね」
「何でです?まあ構いませんが……俺たちの身体に何をしようとしてるのか
詳しく教えてくれないと協力できませんね」
鼻にしわを寄せて唇をタコのように突き出してみせた「幹」の表情を見て、広河は
その表情はこの状況下では不自然だ、と教えてやった。
それでは、と「幹」は大げさな怒りの表情を浮かべ、怒れる貴婦人よろしく
腰に手を当て、人差し指を激しく振りたてた。
広河は腕を組み、「きみの性器を射精させてみたい」と言った。
「きみもこの地球上で生まれて長いんだ、人間の身体上の構造はわかるだろう」
「幹」は人差し指を振り立てるのをやめ、うーん、と唸りながら首をかしげて顎を掻いた。
「そりゃわかりますけど、自分で射精させてみたことはありませんね。
放っておくと大抵はいつの間にか射精してますから。ホラ、朝とか。あるでしょ?
夢精って言うんでしたか?」
広河は再び唇に笑みのようなものを一瞬浮かべ、組んでいた腕をほどいて「幹」の方へ伸ばした。

「何も害のあることじゃない。心配しなくても、この私がきみに害を与えるようなへまはしないよ。
まだ今は、みすみす殺されるような事をする気はないからね」
言いながら「幹」のズボンのベルトに意味ありげに触れてみせた広河を見つめ、「幹」は鼻にしわを寄せた。
「わかりましたよ。やれやれ、人間ってのはどうしてそう好奇心旺盛なのやら」
ズボンのベルトを手早く引き抜き、下着ごとズボンをずり下ろして「幹」は仁王立ちになった。
「早く終わらせてくださいよ。もうクタクタなんで、早く『食事』をして『五藤さん』と交代したいのよ」
「わかってるさ」
広河はそっと「幹」の剥き出しになった立派な性器を握ると、柔らかなタッチで
するするとこすり始めた。
先端の露出した部分を親指で撫でながら、「何か感じたらどんな感じか伝えてくれ」とお願いした。
はじめは面倒くさそうに仁王立ちになって広河の愛撫めいたものを受けていた「幹」も、
性器が勃起するに従って不思議そうに首をかしげ、うーん、と低い声で唸り始めた。
「どんな感じだい?簡単にでいいから言ってみてくれ」
「幹」は再び考え込むようにうーんと唸り、首をかしげて鼻にしわを寄せた。
「弱ーい電気が流されてるような……妙な感じ。あー、ちょっと痛いかも。
あんま好きな感覚じゃないなぁ」
「慣れてないからさ。よし、少し趣向を変えてみよう」
言うなり、広河は「幹」の勃起した性器を口に含み、しゃぶり始めた。
突然の事に驚いた「幹」はへらへらした笑みを表情から消し、無表情でわずかに腰を引いた。

「何をしてる。噛み付くつもりか?危害を加えるつもりなら」
「そんな事はしないと何度も言っている。何のメリットもないのに私がきみに危害を加えるはずないだろう」
反論を終えると、広河は再び大きな一物を口いっぱいに頬張り、唇や歯で硬く勃起したそれを刺激した。
あれほどうるさいくらいに喋り続けていた「幹」がようやくその口を閉ざし、
広河が「幹」のものを舐めるピチャピチャという物音以外はしばしの沈黙が
室内を包み込んだ。
「幹」は奇妙な生暖かい感触と共にその音を聞き、自分たちが『食事』をする時の
血をすする音によく似ていると思った。
ひとしきり舐めると、広河は一息ついて「幹」を見上げた。
「どうかね、『幹さん』。私がもう少し巧ければよかったが……こういう行為には不慣れでね」
突然感想を求められた「幹」は少し驚いたような表情を浮かべ、器用にも片眉だけを上げてみせた。
「うん、悪くない。感触としては何というか……
さっきの"電流が流れる"感じがもっと和らいで、局部的な強い感覚が腰全体に広がった感じ?
うまく言えないのが残念」
「いや、じゅうぶんだ。なるほど。興味深い」
広河は舌で先端を一舐めし、唇で挟んで刺激した。
「……はぁ、うんっ……いいね、嫌いじゃない感覚だ。……好きかもしんない」
広河は、ここで始めて「幹」の息が乱れた事に耳ざとくも感づいて、ここが攻め時とばかり
大口を開けて目の前のものを一気にくわえ込んだ。

「うっ、ん……っい、息が詰まる……苦痛じゃないけど苦しい。
人間の身体って痛覚まで妙だ。生存には必要ない感覚ばっか発達してんのね」
「それだけ人間が暇な生き物なのさ」
広河は巧みに舌で先端を刺激しながら、根元を握って固定し、くわえ込んだものを唇でピストンした。
「わかるか、『幹さん』」
「なにがっすか?」
広河は口の中のものをそっと甘噛みし、そっと口付けてから、
その時初めてはっきりとした笑みらしきものを唇に浮かべた。
「これが"快楽"だ」
言うなり、広河は渾身の力を込めて口に含んだものを吸い上げた。
「幹」はびっくりして腰を震わせ、間の抜けた「あれっ」という声を最後に射精した。

口の中に出されたものを飲み下した広河の唇からわずかに零れた精液を見て、「幹」はあからさまに顔を歪めた。
「飲むもんじゃないでしょーに、広河さん。飲んだって子供はできませんよ。オスに」
「わかってるよ。ただ単に気分の問題だ。ある種のパフォーマンスさ」
広河の言葉の意味がわからなかった「幹」はただ首をかしげ、下半身を剥き出しにしたまま
目の前でひざまずいている広河の前に胡坐をかいて座った。
「で、どうだった、『幹さん』。初めての"性的快楽"は」
口元の精液を指先でぬぐいながら、広河は例の無表情のまま「幹」にそう尋ねた。

「幹」は思案するように眉間にしわを寄せ、額に人差し指を当てて考え込むようなそぶりをした。
「悪くはなかった。うん、そーだな、気に入ったよ。ただ、今は運動した後みたいに疲れてるなあ」
言ったあとでアハハハハハ!と大声で笑い始めた「幹」だったが、笑うタイミングを
間違えた事に瞬時に気付き、すぐに笑うのをやめて困ったような表情で苦笑した。
「また、してみたいと思うかい」
おもむろに「幹」の太ももを撫でながら尋ねた広河に構わず「幹」は立ち上がり、
全身をほぐすかのように背伸びをして背骨や腰の骨を鳴らした。
「すまないが、もうクタクタだよ。ちょっと『食事』しに行ってくる。
そのあとは『五藤さん』と交代してもらうから、あとの話はまた今度頼むよ。
とにかく疲れた。ほら俺、スタミナないじゃない?ちょっと続けて運動するとすぐ疲れちゃうんだよねえ」
のんきに首の骨などを鳴らしながら肩を回す「幹」を見上げ、広河は立ち上がった。
しわになったひざ裏部分のスーツの生地をのばし、広げたままにしてあったパイプ椅子を片付けた。
『食事』に出かけるべく手早く下着とズボンを身に着け、部屋から出て行こうとするその後姿へ、
広河はひとつ忠告した。
「『餌』以外の人間に目撃される事のないよう、くれぐれも気をつけてくれ。
万が一何者かに目撃された場合は」
「そいつも食う」
でしょ、とにっこり笑ってみせた「幹」の人のいい笑顔にそうだと頷き、広河は腕を組んだ。

「じゃー、行くよ。どーもお世話さま」
おどけた様子で外出していった「幹」の後姿を見届け、広河は開けっ放しだった
ピアノの蓋を閉めて部屋を出た。
赤い絨毯の敷かれた長い廊下を歩きながら、広河は口内にじっとりと居座る
「幹」の残り香に唇をゆがめ、仕事をする前に一度口をゆすぐ事に決めた。

どんなに若く美しい人間のメスと性行為をしてもまったく欲情しなかった自分が、まさか
異種の人食いの化物に欲情するとは。
己でじゅうぶんに自覚しているつもりだったが、改めて自分は変人、いや、
婉曲に表現するのはよそう。
人間の中でも特に気の違った狂人なのだと、広河は改めて自覚した。

それでも一向に構わない。
彼らがこの地球上に現れてからというもの、すべてが灰色の霧のようだった世界が
どれほど色鮮やかに生き生きとよみがえった事か。

私は彼らを愛しているのだ。
狂おしいほどの恋心に胸を焦がす小娘のように。

無機質な革靴の足音を長い廊下に響かせながら、広河は黙々と絨毯の上を歩いていった。

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 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ ;) 色々とスマソ でも満足
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
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