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年賀状

短いですが、オリジナル「年賀状」

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

郵便受けを開けると、ひらりと赤いハガキが落ちた。
「あいつ…もう五日だぞ…」
俺宛ての年賀状。差出人は、幼馴染のあいつだった。
ご近所さんで生まれた時から一緒だったあいつ。正月も、毎年元日から一緒だったから、年賀状なんて出したことなかった。
大学進学のため、あいつが遠くに行ってから初めての新年。付き合い十九年にして、初めてあいつから年賀状をもらった。

電波に乗せて軽く挨拶をするだけで、人と年賀状のやり取りなんて年々少なくなっていっているのに、あいつらしい。
実際すでに元日にあいつには挨拶済みだ。
まあ今日届くってことは、二~三日ほど前に出したってことだろう。それはそれであいつらしい。
「俺も出してやればよかったかな…」
ハガキのくじ番号を何となく確認し、あいつの文字を目でなぞる。
あいつん家…あいつの実家の住所は、俺の家と番地違い。この住所を書くのに、なんとなく変な心持ちがしたんじゃないだろうか。
ふと、字が思ったより上手い気がして違和感を覚える。あいつの字を見るのも思えば久しぶりだ。
こんな字だったか?
上手くなったのか?俺の知らないところで。
それとも…忘れつつあるのか、あいつを?
チクリとした寂しさを感じて、しかし反射的にそんな思いを振り払いたくて、気持ちを吹き飛ばすようにハガキを裏返す。

“謹賀新年
あけましておめでとう!”

ペンじゃなく、筆?いや、これは筆ペンだろうか。手書きの毛筆で堂々と筆記してある。
小さい頃、一緒に年賀状を書いていたあいつが無理して謹賀新年と難しい漢字を使い、見事に間違えていたのが脳裏に蘇る。
何とかごまかしていたが、あれはごまかせていなかっただろう。
祖父母へ宛てたものだったから、かわいい孫の書いた年賀状なら誤字も笑ってくれたに違いない。そう思いたい。
昔の思い出に少し笑いながら目線を落としたら、その下に書かれていた字に息を飲んだ。

“彼女できちゃった!”

ヒュッと音がした。と思う。その時の耳は、現実の音を捉えていなかった。
体の内側がドクドク言っている。わけがわからない。
なんで心臓がこんなにうるさい?なんで息が上手くできない?
こんな短い文章を見て、なんで俺はこんなにどうしたらいいかわからなくなっているんだ?
「こんなこと年賀状に書くか普通…」
無意識にこぼれ出ていた言葉。
つぶやいたことさえ自覚がなかった言葉は、なぜこぼれ出たのかわからないほど内心を反映しておらず、ただ人ごとのよう。

“おめでとう!”

何がめでたいもんか。ちっともめでたくなんかない。
この衝撃が意味することは。
この、感情は。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

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