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平行世界のステイルメイト

生 鯨人 蟻霧で解散ネタ  蟻→霧で健全な話
HDDからの発掘物ですが、書いたはずの続きは捜索中です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

その日、僕たちの世界は終わった。
久しぶりに顔を合わせた伊静くんは、ずっと昔からこの幕切れを予測していたようで、
驚くほどあっさりと「解散」の2文字を告げてきた。
ああ、彼らしいなと思うと同時に、胸のあたりに空いた穴は一体、なんという感情を持つのだろう。

僕らの再会にはいつも、偶然という名前がつく。
冬の街角。雑踏にまぎれて姿を見せたのは、たしかに数か月前までの相方だった。
僕は走り出す。人の波をかき分けて、一瞬だけ網膜に焼きついた、
ダッフルコートの灰色を探した。伊静くん、と呼びかけた声は、想像以上に響く。
通行人が振り返るのと、元相方が僕の手を握って路地裏へ引っぱりこむのは同時だった。

「何大声出してんだよ!」
「君こそ」
そう返してやると、彼はため息をついた。昔なら「伊志井さんの方が声デカかった!」と
ムキになって言い返してきたと思う。こんなに近いのに、鏡を隔てたような僕ら。
「で、なんか用?」
「いや、その……用ってほどの事は……ただ、君を見かけたから」
らしくない、動揺。口ごもる僕に、ため息が降ってくる。
「君が元気そうでよかった。家は?ここから近いのか」
「まあ、ね」
あいまいな返事の後、彼は「じゃあ」と踵を返す。
再び雑踏にまぎれた彼を、僕はただぼんやりと見送った。

竹を割ったよう、と平凡に喩えてみる。
『じゃない方』というレッテルを貼る人は、彼がまるで僕に服従しているように思ってたようだが。
伊静くんは決断力があり、潔い性格だった。なんでも難しく考えて、引きずってしまう僕とは正反対の。

僕が悩む時。
ドラマのオファーを受けるべきか。独り身に戻って辛い。コンビをどうするか。
そんな時、すっぱりと答えを出してくれるのはいつも伊静くんだった。
何年も会わなくても。言葉を交わす事すらなくても。
彼はただそこにあって、僕の心を明るくしてくれる。
僕はまだ伊静くんを相方のように思って、もやもやとした
名前のない感情を引きずっていたけど、伊静くんの胸に、穴はなかった。

次に伊静くんを見たのは、喫茶店の窓から。
やっぱり近くに住んでるじゃないかと後をつけてみた所、それらしきマンションに入って行った。

「危ないねぇ、伊志井くんは」
久しぶりに会った作間さんは「さすが猟奇趣味」と笑う。僕は苦笑するしかない。
「で、君の事だからまた会ったんじゃないのか?」
「ええ。三回目はやっぱり街中で。人混みの中ですれ違ったんですよ、
 すごい確率じゃないですか?」
「解散してからエンカウント率上がってるんだ。
 ……そうだ、こんな言葉を知ってるかい」
作間さんはテーブルに肘をつく。
「三回逢って、四回目の逢瀬は恋になるんだそうだ」
「……恋」
「ハッハッハ!冗談だよ、とある映画の台詞さ!
 じゃ、四回目の再会については今度聞かせてよ」
僕は喫茶店のドアベルが鳴るのをぼんやり聞きながら、思い出していた。

僕は見たんだ。あの日すれ違った伊静くんの、コートの合わせから見えた胸に、
剥き出しの心臓が脈打っていたのを!

この穴は、伝えられることのない感情の侵食だったんだ。
僕よりずっと昔から、君は胸に大きな穴を空けて、少しずつ蝕んでいたのか。
侵食された心に、どんな感情を隠していたというんだ。
……聞かなければならない。手遅れになる前に。

四回目の再会は、長い時間がかかった。
季節が一巡りした、冬。雑踏の中で歩く彼を見つけて、追いかける。
肋骨のすき間から見える赤黒い器官が、
伊静くんが僕を視界に入れた瞬間にどくん、と大きく脈打つ。
彼は僕がついてきているのに気づいたのか、足を速めて雑踏にまぎれた。
僕は息を切らせながら走る。大通りから角を曲がって路地裏を抜け、地下通路へ入る。
その間、伊静くんは一度も振り返らない。

薄暗い地下通路。緑色の蛍光灯がちかちかと点滅している。
逃げる伊静くんと、追う僕の足音が反響して、心臓が早鐘を打つ。
「なんっ、で、ついてくんだよ!」
「君が逃げるからだろ!」
伊静くんは階段を駆け上がって、踊り場にある非常用扉に手をかける。

「待ってくれ!!」
僕は一足飛びに階段を上がる。伊静くんは扉を開け、滑り込むように外へ出る。
追いかけて、肩に手をかけて――

「……え?」

一瞬で、視界が変わった。
手の下にあったはずの肩は消えて、空中に伸ばされた指先。
「おい」
そして、不機嫌な声。
背中を向けていたはずの伊静くんが、しかめっ面で仁王立ちしている。
「え……伊静くん、え?」
頭がついていかない。だって、さっきまで地下通路にいたはずなのに。
ここはどう考えても……
「いきなり楽屋飛び出してったと思ったら……お前、何勝手にメイク落としてんだよ」
低い声。これは本気で怒ってる声だ。
「しかもなんだよそのカッコ、ふざけてんのか!?今から収録だってのに!」
「しゅう……ろく?」
「……あーっ、もういい!ちょっと来いよ!」
ぐいっと引っぱられて、歩く間、あたりを見回す。
そこでやっと、周りの騒音が耳に届いてきた。大きなスタジオだ。
大きなカメラがゆっくりと回っている――「音声のチェックOKだ!」ディレクターらしき男の声。
ひな壇では877マンの二人が、胸のマイクを調節している。
その向こうで、洒落た衣装の出演者らしき芸人達が台本を片手に喋っていた。
「おい、あれ見ろよ」
僕たちを見た下等が、横の火村さんを小突く。
「堀プロ一の仲良しコンビが喧嘩してる」
「うっわ、超レアじゃん!」
僕の手を引く伊静くんは、それを聞くと恥ずかしそうに顔を下に向けた。
なにからなにまで、おかしい。この世界はいったい……

「なん、なんだ……」

僕の呟きは、スタジオの喧騒にかき消された。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ゲ仁ソスレの同志には感謝。なんか今読み返すと何も始まってませんね。
続きが見つかったらどうしよう…

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