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お付き合い

生 将棋 青いの×軍曹
ふんわりした感じで読んでいただければ……

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「長瀬のことが好き。将棋だけじゃなくて全部好き。だから付き合ってほしい」
香車みたいだ。一直線にビュンッって飛んでくる感じ。勇樹らしい。
「うん」
うん。逃げる気はなかった。でもとりあえず合駒をした。玉の頭に、歩。
「付き合ったら何か変わる?」
「……将棋のことなら変わらないよ。今まで通り。VSとかもするし」
少し攻めをゆるめて合わせの歩を打って来たと思った。が、
「……でも、キスとか、したい」
ちがった。香車の重ね打ちだ。ロケットだ。
端から逃げる気はなかったので投了した。逃げる気がなかったというのは、俺も勇樹のことが好きだったから。

最初の言葉通り、将棋は何も変わらなかった。VSもごく普通に行う。悪手を厳しく咎める(盤上でも口頭でも)のも、意見が折り合わずちょっとした喧嘩のようになるのも、感想戦が脱線に脱線して長引くのもいつものことだ。
ただ一つ。VS終わりにキスするようになった。

勇樹は最初のうちは毎回「キスしていい?」と聞いて、俺が「うん」と頷いたら唇を触れ合わせた。しかし何度かするうちに言葉はなくなって、ただ、目が合って、「あ、キスだ」と分かるようになった。
そういう空気を感じたら目を閉じた。すると勇樹の唇が一瞬自分の唇に触れる。
ただそれだけ。
それが今日はちがった。
いつもと同じそういう空気。目を閉じて、唇が触れる。そこまでは同じ。でもそれで終わらなかった。
後頭部に手をあてて頭を引き寄せられる。舌が口内に入ってくる。油断して簡単に侵入を許してしまった。
「ん、ぅ」
舌を絡められると甘い快楽が広がった。無意識に声が鼻から抜ける。
逃げられない。

「な、に……」
散々口内を荒らされた後、呼吸が乱れたまま声を出した。
「……ごめん。我慢できなかった」
勇樹はばつが悪そうに目線を落とす。伏せたまつ毛が長いなとぼんやり思った。
「俺、長瀬のこと好きだし、もっといろんなことしたい。……今日はホントごめん。これからは少しずつで……でももっと長瀬と進みたい」
いろんなことってなんだろう。進むってどこまでだろう。先のビジョンを少しも思い描いていなかった。今のままで充分だった。
「いろんなことして、進んで、それで、俺たちは変わるの」
男同士だとか別に気にしてなかった。道徳も世間体も考えなかった。ただ、自分にとって、勇樹にとって、良くない方に行ってしまうのではないかと、それは、こわかった。
勇樹は静かに一度だけ首を振った。
「変わらない。一番大事な将棋は何も変わらないよ」
不安を取り払うように勇樹は力強く言葉を紡ぐ。
「長瀬の将棋の時間を奪うつもりはないから。……奪おうと思ったって奪えないと思うし」
長瀬ほど将棋が好きな人いないから。そう言って勇樹は少し笑った。
「でも長瀬がいつも通り棋譜ならべたり詰将棋解いたりネット対局したり……いろいろ将棋の研究して、疲れて、ちょっと休憩するときに、俺の顔が浮かぶようになるかもしれない。俺は、それくらいがいいな」
ああ、そうだな。それはいいかもしれない。少しはにかんだ勇樹の表情を見て、今までで一番、一人の人として、勇樹のことが好きだと思った。

別れるときに、初めて自分からキスをした。勇樹は目を丸くした後、「今日はすっげーいい夢見れそう」なんて言って笑うから、つられて笑ってしまった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • とても素敵でほっこりいたしました……ありがとうございます…… -- 2017-08-24 (木) 23:00:05

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