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指定席

オリジナルぷろやきうもの
何か色々おかしいですが仕様です
監督←四番打者的な感じで
モチーフはあるけど実際のぷろやきうとは関係無いです

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

チームは連敗続き、ムードメーカーでも二軍から上げてこい。
こんなもんだろう。自分で言うのも情けないけど、他に俺の一軍昇格の理由が思いつかない。
ベンチの中を見渡すと、奥の方にいた超ベテラン強面外野手と目があった。強面で頑固一徹のその人が、
じっと俺をにらみ、そして顎で指し示す。あ、あの。隣に座れということですか? しかも、そこは監督の隣でもあるんですけど。
恰幅の良い監督は基本的には人が良いって言われているけどさすがに連敗中ともあって、
いつもよりずいぶんと厳しい顔をして考え込んでいる。俺のような若手がそこへ座っていいものだろうか。
戸惑っていると、座れ、とその強面殿の瞳が凄んでいる。助けを求めるようにぐるりと周りを見回すと、
皆そろって、監督の横へと視線を向けて、やっぱり俺にそこへ座れと促す。
一体これはどう言ったパワハラなんだろう。
俺は恐る恐る監督の隣に腰を下ろしたが、どうにも落ち着かない。
すると、俺の視界にのっそりと入ってきたのは我がチームの四番打者様。
若くしてタイトルを次々と取った、我がチームの顔どころか球界を代表する大打者だ。そのお方がじっと俺を見ている。
俺は思い出す。そうテレビでベンチ内が映し出されるとき、この人はいつも監督の隣に座っていたのだ

やばい、さっさと席を譲らなきゃ。
俺は慌てて腰を上げようとしたが、四番打者様の視線の威圧感に腰を抜かしてしまったようだ。
視線の圧力がますます高まっていくのを俺は感じていた。現在、このお方は不調のまっただ中、
チームの連敗の原因もまさにこのお方の不調によるものと言っても過言ではない。
そんな重要人物の気分を損ねるようなことをしたら、俺は、チームはどうなってしまうんだ。
すると、今まで腕を組んで考え込んでいた監督がふっと顔を上げて、
「なんだ、お前。座る場所無いのか」
と四番打者様に対して、屈託の無い笑顔を向ける。四番打者様は無表情のまま、こくんと頷く。
俺は四番打者様の視線の呪縛がふっと解けたことに気がついた。
どうやらただ今、四番打者様の目には監督しか映っていないようなのだ。
「しっかたねえなあ」
監督は苦笑しながら、俺の方を見て、なにもかも分かっているからと言いたげに小さく頷くと、
直立不動の四番打者様を見上げ、ぽんと自分の膝を叩いた。
「ほら、ここに座るか?」
ええっ、何おっしゃっているのですか、監督。俺は我が耳を疑った。そのふくよかな体型は
確かに座り心地はよろしいかもしれませんが、ってそんな問題ではない。
しかし、それが幻聴では無かった証拠に、四番打者様は相変わらず表情を崩さず、
「それでは失礼しますね」
と遠慮なく深々とその太股の上に腰を下ろしたのだ。

この俺の失態をかばうために、監督は冗談を言ったのだろうか。そして、その冗談にわざわざ四番打者様は乗ったのだろうか。いや、普通は冗談でも実行に移されたら監督は怒るだろう。
だけれども、この二人はと言うと、
「重たいなあ、お前」
「しっかりと鍛えていますからね。食べて飲んで寝てばかりの監督とは違います」
と、この状態がごく当然のものであるかのように会話をしている。
なんだか、体中がムズムズして居たたまれない気持ちで体をもそもそと揺すっていると、
「腰に何か当たってる気がするんですけど、監督」
と、四番打者様が言い出す。未だ独身なのが不思議な端正な顔立ちのこの方が、こんなことをさらりと言うなんて、なんか、なんだか、腑に落ちるような、しかしそういう解釈でいいのか、本当に落ち着かなくて困る。
するとすかさず、
「悪かったな、そりゃ俺の腹の肉だよ」
わざとらしく不機嫌を装った監督の怒鳴り声。
俺と四番打者様以外のみんなが一斉に笑って、一気にベンチのムードが
明るくなった気がする。けど、これでいいのか? 俺は隣をチラチラ横目で様子を
うかがってしまう。
監督の腕は軽く四番打者様の腹に回っている。
四番打者様はすました顔でグラウンドを見つめている。
今日の試合はビジターで、一回の表がこちらの攻撃だ。
「ところで俺は大切なことを今気づいたんだがな」
一番打者が打席に向かうところで、監督が口を開いた。
「これじゃ試合見れないじゃないか」
「大丈夫です、俺が見てますから」
四番打者様はまっすぐ前を見たまま答えた。さすがの監督も渋い顔をする。

「お前が見ても仕方ないだろ。これじゃサインが出せないじゃないか」
「問題ないです。まったくないです。監督の野球はみんな知っています」
口調も顔色もまったく変わらることなく、四番打者様は何と言われようとも
監督の膝の上から移動する気はまったくないようだ。
監督が、本当にこの頑固者めと呟いたのが俺の耳に届いた。もちろん四番打者様の耳にも届いたはずで、
まったくの無反応と思いきや、ぽん、と監督の手の甲を軽く叩いていた。
わっと歓声が上がる。一番打者が四球を選んで出塁、続いて二番が手堅くバントでランナーを二塁に進めた。
先制のチャンスだ。
「おいおい、なんだかいい感じみたいじゃないか」
試合を見たい監督が必死で首を伸ばしていると、四番打者様は無言で立ち上がった。
ネクストバッターズサークルへと向かっていくその歩調はゆっくりとして、背中が大きく見えた。
最近10試合で打率1割を切る打者とは思えない風格だ。
俺をここに座らせた強面殿が、ニヤニヤした笑みを浮かべて俺の肩を叩いた。
「よくやった」
「え?」
何のことか分からず間抜けにもぽかんと口を開けると、
「まあ、見れば分かる」
と強面殿はうんうんと頷いた。
監督はと言うと、うんと立ち上がって伸びをしていた。
やはり立派な成人男性を膝の上に座らせ続けるのは相当な負担のようだ。
そんなこんなで俺はベンチの中のことに気を取られていて、三番はいつの間にか
凡退してしまっていた。
ツーアウトランナー二塁。そして打者はただいま絶賛不調中の四番打者様。
ようやく自分の仕事だとばかりに張り切って監督がサインを出している。

先制のチャンスだ。ここ最近の四番打者様だと、変化球をひっかけて内野ゴロばかりなのだけれども、でも、ベンチではみんな期待を越えた確信を持って四番打者様を見守っていた。
狙い球を絞っているのか、四番打者様は追い込まれるまでまったく微動だにしない。そして、対戦投手の決め球である外スラが来た。
一閃。
カーンという気持ちの良い打球音が響いた。
「おおっ」
みんな同じ方向を向いて打球を追う。その行き先はまっすぐスタンド中段へ。
見事な先制ツーランホームランだ。久々のヒットがホームラン。
「おい、お前。よくやった。今日のお立ち台もんだ」
ガッツポーズも何もなく淡々とベースを回る四番打者様に見とれていると、
ドンと背中を強く叩かれた。強面殿がニコニコと笑顔の花を咲かせている。
「ま、実際にお立ち台には上がれないけどな」
そして、ベンチの最前列に座っていた守備固めさんが
「ほら、こっち来い、こっちに座れ」
とこれまたケタケタ笑いながら手招きしてくれていた。
俺はこれ幸いとばかりに強面殿に一礼して、ダッシュで席移動した。
「いやあ、あいつの居場所を無くしたら奮起するかと思ったんだけど、
まさか監督があそこまで大サービスしてくれるとは思わなかったよ」
強面殿の言葉にみんなうなずき、一方で監督は眉をしかめながら
「まったくお前ら、大切な若手に嫌な役を押しつけるんじゃない。
俺だってなあ、あいつが機嫌悪くなっていたからどうしようかと思って仕方なく
やったことなんだからな」
と叱りつけたけど、口元はにやけていて四番打者様の復活を喜んでいることが伝わってきた。

ずっと監督は四番打者様が四番打者として帰ってくるのを待っていたのだ。
「ナイスバッティング!」
ホームベースを踏んでベンチに戻ってきた四番打者様をみなが拍手で迎え、次々とハイタッチする。
四番打者様は俺に一瞥をくれた。その視線の鋭さに、俺の股間が縮み上がって
祝福するどころではなくなってしまう。
ありがとう。そう聞こえたような気がした。
自分の指定席を空けてくれてありがとうという意味だろう。そういうことにしておこう。
のっそりと監督も立ち上がって、四番打者様を出迎え、こつんと拳で頭を軽く小突いた。
「もう特等席は準備してやらないからな。サイン一つもろくに出せずにこのまま監督不要
ってことになるかと思ったぞ」
「それはないですよ。このチームには監督が必要なんです」
四番打者様はぶっきらぼうに言い放つ。
「だから、監督が首にならないように優勝を目指すのが俺たちの仕事です」
「なんだか目的と手段が逆になってる気がするぞ、おい。まあ、優勝は目指すけどな!」
そして監督は四番打者様にぎゅっと抱きついて、腕に背中を回してばんばんと手荒に復活を喜ぶ。
それに応えるように、四番打者様はその分厚い胸板に顔を埋めて抱き返していた。
なんとなく泣いているような気がしたけれど、抱擁を解いた後はポーカーフェイスで、
何事もなかったかのようにしっかり監督の隣にどっかと座り込んだ。
その後、四番打者様はこの試合でさらにホームランもう一本に、二塁打一本、
犠牲フライと大暴れをし、見事にチームの連敗はストップした。

もちろんヒロインのお立ち台はこのお方で、
「定位置は渡せないという強い気持ちで打席に立ちました」
と言った。
きっと、チームメイト以外の人たちは定位置というのは四番という
打順だと思っただろうけど、そして、それも多分真実なんだろうけど、
本当の本当に実際の真実は、定位置というのは自分のベンチのお気に入りの席を
指しているに違いない。
もっとも、あの特等席も満更じゃなかったからこそ、物静かに闘志を燃やすことが
出来たのだろうけども。
「癖になると行けないからな。お前等もう二度とあんな悪戯するんじゃないぞ」
監督のお小言に、強面殿が混ぜっ返す。この人、冗談が通じないタイプに見えて、
意外にノリがいい。
「癖になるのは、あいつですか、監督ですか?」
絶句して、真っ赤に染まった監督の顔。ようやく絞り出した答えは
「どっちもだよ! これで納得しておけ」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

改行失敗が結構あって大変申し訳ないです。

  • 萌えました。若手君も行きすぎた信頼関係になれる -- 2015-06-18 (木) 08:16:14
  • お相手が見つかるといいなあ。チームスポーツは現実にこういう事が無きにしもあらずなところが萌えますね。乙でした。(改行失敗して送信してしまいました…申し訳ない) -- 2015-06-18 (木) 08:19:16

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