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伝えない思い

報道を見て、妄想でもしなきゃやってられない!と思った結果がこれです
生 棒球 G24とG2(とD2) 
CPってほどCPじゃないけどほんのりG24×G2とD2×G2です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「俺、吉信が引退するときは一緒に引退する」
井畑は重くも軽くもない、至って普通のトーンでそう口にした。
高端はそれが冗談や思いつきではないことに気が付きながら、あえて井畑に問うた。
「本気?」
「うん」
井畑は微かに頷きながら肯定した。
十数年、続けて来たこの職業を自分と同時にやめると言う。高端はなんとも言えぬ感情が胸の中に生まれた。
その十数年のうちのほとんどが敵同士だった。昔から交流はあったが深い信頼関係が生まれたのは同じチームになったここ1、2年のことだ。
……深い信頼関係といえば。
「井畑さ、新木と一緒にやめるって言ってなかった?」
井畑が十数年一緒にいた相手、自分よりも深い信頼関係があるであろう新木のことが頭に浮かぶのと同時に、井畑の移籍が決まって少ししてから見た新聞の記事を思い出した。
「……言ったな」
「それ、守らなくていいの?」
井畑は一瞬眉をひそめ、口を固く結ぶ。そして脱力するように、ふぅと息を吐いた。
「あんなの、ただのリップサービス。あいつと一緒にやめる気なんてはじめからないし」
唇に僅かな笑みを浮かべながら、井畑はそう言った。
「リップサービス、ね。新木はそう思ってないんじゃない?」
「あいつだって分かってるだろ。ありえねえことだし」
井畑は目を伏せもう一度、ありえねえよ、と小声で言う。高端は含みを感じ、それが何か、つまり井畑が新木のことをどう思っているのか、を知りたくなった。
しかし井畑は大切な思いであればあるほど、胸の内深くに仕舞い込んで話そうとしないことを知っていた。
きっと正攻法で言っても話してくれないだろう。高端はそう思い、少しまわりくどく誘導することにした。
「俺となら、ありえる?」
「うん。俺はそのつもり」
「へえ。井畑は、新木より俺をとってくれるんだ」
新木に悪いな。長年コンビを組んできてずっと慕ってた井畑が自分じゃなくて、後から来た俺の方ををとるなんてな。
そう言って高端は目を細め、口元に弧を描く。井畑は何か言いたげな表情をして、それでも唇を結んだ。

高端はさらに追い打ちをかけるように言葉を続ける。
「新木は井畑と信頼関係が築けてたって思ってるよ、きっと。裏切られたって思うかもな。まあそれなら井畑が移籍したときにも思ったか」
「それならそれでいい」
井畑はきっぱりと言った。
「新木に裏切られたって思われたならそれで。その方がいいくらいだし」
高端はこれは井畑の本音で、胸の内深くに仕舞い込んだ思いの一部だと確信した。それをさらに引きずり出すために言葉を紡ぐ。
「へえ。裏切られたって思われたいんだ?」
「……近すぎたから。いろいろと」
「関係性とか?」
「うん。だからリセットした方がいい」
井畑は笑みを作った。
「……あいつは俺のことを忘れた方がきっといいプレーができる」
多くの感情を乗せて、井畑はそう口にした。高端は笑みを浮かべそう口にする井畑のことを寂しく思い、顔をしかめた。
「井畑はそれでいいんだ?」
「いいよ。いつか、離れてやんなきゃって思ってたし」
「そっか」
離れてやんなきゃ、か。
「そういや、新木って井畑と何歳差だっけ?」
「ん?2歳差」
「その差も関係ある?」
「この歳になっての2歳差は大きいだろ。衰え方が違う」
そうか。高端は胸にすとんと落ちる感覚がした。つまり井畑は。
「井畑は、新木を切り捨てるんじゃなくて解放するつもりなんだな」
胸の内深くに仕舞い込んだ思い。これが井畑の新木への思い。先輩として。相棒として。
自分と離れた方が新木は活躍できる。2歳下の新木はまだ衰えもさほど来ていない。
だから、井畑は新木と一緒に引退しない。リップサービスということにしてあのときの約束を反故にする。自分が裏切り者になってでも。
高端は井畑という男を改めて好ましく思った。
「別に、そんなんじゃねえし……」
井畑は口を尖らせそっぽを向いた。それが否定ではなく肯定であることを高端は分かっていた。

「他言無用な」
さっきの話、と井畑はわざとだろう、少し怒ったような顔をして言う。高端笑って「了解」と答えた。
「こんなの話したのはじめてだわ。相手が吉信だから話せたのかな」
先程の表情とは一転して井畑はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

15年10月。自分を取り巻く環境が目まぐるしく変わっていく中で、高端は大きな決断をした。
監督就任、そして現役引退。
それを追うように井畑も現役引退を発表した。高端の右腕としてコーチ専任を選んだのだ。

「本当に、やめたな」
「吉信がやめたらやめるって前から言ってたじゃん」
「そうか。そうだよな」
高端は、「ごめん」も「ありがとう」も今この場で井畑へ伝える言葉としてそぐわないと思った。なので別の言葉を紡ぐ。
「じゃあ改めて、これからもよろしくな」
「おう」
二人は少し照れながらも笑みを浮かべ握手を交わした。

井畑の現役引退会見が終わった次の日、元チームメイトで、元コンビ、元相棒だった新木の元へも報道陣は押し寄せた。
井畑は新聞を開き、新木が自分の引退について語った言葉を目で追う。そして最初の一文を指でなぞった。
"井畑さんは相手にしていないかもしれないけど、ここまで追いつけ追い越せでやってきた。"
「相手にしてないなんて、そんなことあるわけないだろ。自分に自信持てっつの」
変わらないな、と少し笑って、その後、でもそう言わせたのは俺か、と苦笑いした。
次に新木に会うのはいつになるだろうか。電話の一本でもかかってくるだろうか。何を話そうか。
思いを全部話すのは難しいし気恥ずかしい。短く、ごく簡単に、今までの礼とエールを送ろう。
そんなことを考えていたら、部屋の隅で充電していた携帯から着信メロディが高らかに響いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

伝えることはなくてもこんな感じに思ってくれてたらいいなぁ・・・。いつかどこかでまたD2とG2が揃ってくれたらいいなぁ・・・
お粗末様でした

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