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堕落論

藻図 双子

偽造も甚だしい設定な上完全にふんいき話です。
とにもかくにも萌えまくってしまったのでこの場をお借りしますm(__)m

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

百舌は凶鳥だ。夜鳴きをすると死人が出る。

古い言い伝えだが、こいつは真実だと一彦は思う。
彼の百舌が獲物を狩る前夜も、決まって夜鳴きが長かった。

「兄ちゃん、明日の夕飯はハンバーグにしよう」
さも、いい事を思いついたかのような言いぐさで、宏見は口を開いた。
いつの間にか、膝の上に乗りあがっている弟の脚は、スカートをたくしあげた中から白く生えていて、一層と危うさを漂わせている。
石鹸の残り香がふんわりと鼻をかすめているのが、冷えきった皮膚に反して、やけに生々しかった。
降りろ、とも、痛い、とも、重い、とも言い出せずに、一彦は機を窺う猫のようにして注意深く宏見を見つめた。
ぼんやりとした宏見の瞳は、昼間禁断症状を起こしていた時の苛烈な形相からは一変して、ひどく穏やかだった。むしろ上機嫌のたぐいだろう。
擦り寄ってくる四肢は柔軟で、加減なく獲物を殴り飛ばすのと同じ手で、しなだれかかるように首元に絡みついてくる。
昂揚しているのは、頬にかかる息の温かさで、嫌でも分かった。
一彦は、ため息をついた。今更悔やむこともない、もう慣れたことだ。
慣れの力は凄い。すべてが塗りかえられて、始めからそうだったことになる。
こうして異質なものは忘れられ、いつか世界に溶けていけるのだ。

「兄ちゃん、大丈夫?疲れた?眠い?」
もつれた舌を、重たげに動かしている宏見の声に、一彦は肩をすくめて微笑み返した。
「お前の方が、眠そうだろ」
「平気だよ」
「嘘つけ、ほら、目が半分閉じてる」
一彦が額にかかった髪を退けてやると、宏見はふっと脱力したように、瞼の力を抜いた。ついで四肢の力も抜けたのか、こちらに預けきった体を、一彦は背がしなるほどにきつく抱き寄せた。
とろんと溶けた瞳の中に、自分の顔が映っている。焦点は合わなくても、それだけで、一彦にはもう十分だった。
恐ろしい目だ。
実の弟に引き寄せられる兄も、実の兄を引き寄せようとする弟も、
互いのそら恐ろしさに目を瞑ろうとする、その卑怯さも。
無気力にひらかれた唇を、ごく丁寧に塞いで、奥底の深淵までを蹂躙する。
角度を変えてやるたびに、宏見が僅かな隙間から息を吸い込む音がして、そんな事で火がつく情欲のくだらなさに、一彦は心底呆れ果てた。
禁忌の快楽に沈み込んで、また一つ、何か取り返しのつかない蟻地獄へ足を突っ込んでいる。
そして、今度もまた先に落ちていたのは、弟のほうなのだ。囚われやすい弱き者。
宏見が捨てたのなら、俺も捨てるしかない。モラルも、現実も、世界も。
それが、百舌を飼いならす運命にうまれた俺の役目だ。

「兄ちゃん……」
吐息まじりの呼び声は、どんな睦言よりも甘ったるく、蜜をつめこんだような宏見の唇から漏れるため息は、毒より速く一彦を痺れさせる。
だらしなく零れ落ちた唾液を拭ってやって、一彦はぴったりと額に己の額をくっつけた。宥めるように、囁く。
「おやすみ、宏見」
うん、と頷いて瞑目した睫毛に、唇を触れさせる。
頭の芯まで痺れるような情欲が、冷えきった体に熱い火を灯す。得も言われぬ快感を自覚する。
やがて耳に噛み付いてくる、熱っぽい息と哀願。ずっと、聞いていたいと思わせる、愛らしい響き。
外道と罵られても構わない。同じ血肉で出来た、片割れの奥深くまでを咀嚼する。
血がにじむ。甘い。錯覚だ。だが確かに甘かった。
ごくりと喉を伝いおちていく唾液の音さえ、陶酔感を煽った。
弟の泣き声を聞いて、死ぬほど欲情している。何もかもが歪んでる。
他人の生き血を啜って餌にするのと、血肉を分けた片割れの精を啜って餌にするのは、どちらが狂っているだろう。

一彦は、抱き上げた宏見の体を、真っ暗闇に沈み込んだ部屋に運んだ。
敷きっぱなしにしていた布団の上に、そっと下ろす。
異様に燃えて苛烈な色を見せたり、時に心底寒々しい深淵を見せる宏見の瞳は、今はしずかに閉じられていた。
物足りなくて、一彦はほんの少し屈むと、のぞいている細い首筋のうすい皮膚を、かるく吸い上げた。
びくりと宏見の体が一瞬揺れて、いくらかその表情が歪んだ。
そういう苦悶の顔を見るたびに、強烈な背徳感と激烈な欲望に溺れる。
次はその首に手をかけてしまいそうな気さえした。

何もかもが終着へと落ちている気分だった。もう終わりはそこまで来ている。
黎明の空がしらじらと染まっていくのを余所に、一彦は目を閉じて、宏見の横に身を横たえた。
幼いころの習い性というべきか、宏見の体はすぐさま片割れの体温を感じ取って、一彦の胸元へ潜り込んでくる。
共鳴する鼓動だけが、うつろな部屋の中を支配していた。

そうして、二人だけの朝は、暗闇の底に沈んでいった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

弟<<<<<兄も捨てがたい。


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