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ある食事風景

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
妖/神/グ/ル/メ クトゥ×内原

薄暗く淀んだ水底。
吐き気を催すほどおぞましい、だが抗いがたい奇妙な魅力を伴った香りが、そこには充満していた。
ここはルルイエの心臓部にある調理場。
イカモノ料理人、内原富手夫の居城である。

「腐りかけのムネエソに黴の生えたダイオウグソクムシ……お、今日はリュウグウノツカイまでいるのか」
歪な石の台に並べられたグロテスクな海の幸を目の前にして、富手夫は鼻歌を漏らした。
鍋では既にダゴンの生き血をたっぷり吸ったヤツメウナギが煮えている。
例の臭気の出所はここであったらしい。
煮汁はどす黒く酸化した血のような――事実それは血であるのかもしれない――色を呈しており、
普通であれば決して食欲を煽るようなものではなかったが、しかしその香りには嗅ぐ者すべてを虜にする
ような妖しさがあった。
富手夫は先ほどの「食材」の中でめぼしいものをいくつか取り上げると、流れる――というよりも、
疾走するような手さばきで切り分けていく。
奇怪な装飾の施された包丁が皮を剥ぎ肉を削ぐ音は耳を塞ぎたくなるほど不快であるのに、
妙に心臓を揺さぶった。
それはまるで、忌むべき異教徒の唄のようであった。

「……ふぅ」
食材の下拵えをあらかた済ませると、富手夫は額の汗を拭った。
休憩か、と思いきや、そうではないらしい。何かを待つように視線を巡らせている。
やがて、「それ」は姿を現した。
それは一見、蛸の肢のようだった。
しかしそれが蛸などではないことは、その巨大さと禍々しさ――そして何もない空間から伸びている
という異常さから明白である。
あれは――クトゥルーの触腕だ。
「遅いぞ、クトゥルー」
愛しげに触腕のひとつを撫でる。まるで恋人の髪を梳くような優しさだ。
富手夫が撫でているのが触腕などでなければ、宗教画とすら思えるような情景であった。
「今日はこれでいいんだな」
その穏やかさは、長くは続かなかった。
一瞬にして瞳に好戦的な色を宿らせると、富手夫は抱いた触腕に包丁を突き立てたのだ。
ずぶり、という音と共に青みがかった透明の液体が迸る。
クトゥルーの体液を頭から被り、狂気じみた富手夫の表情はますますその艶を増した。
「ふふふふふ……自らの肉が一番旨いとは、僕には理解しがたいよ。でも」
突き立てた包丁を90度回転させ、別の角度へと切り込む。
触腕を切り取るだけにしては、要らぬ動きであるように見えた。

「そんなに旨いものなら、やっぱり一番旨い状態で口にしたいだろう。
 ストレスをかけると味が良くなるのは万物に共通だ。痛いか?」
咆哮が辺りに響き渡る。
それは痛みからくる叫びだったのであろうが、そこには歓喜の声も少なからず混じっているようだった。
「痛そうだな。それはいい。これでどんな食材も及ばない最高の味が完成する。
 嬉しいだろう、クトゥルー」
捕われていない触腕が何本か、悶えるように富手夫の身体に巻きついた。
縊り殺すつもりはないのか、ゆるゆると富手夫の体表を撫でている。
くすぐったそうにそこから逃れると、富手夫はついに触腕をクトゥルーの身体から切り離した。
引き千切るように切られた断面からは、とめどなく体液が流れ出ている。
「ああ、勿体ない」
本体から切り離されてもなおびくびくと脈打つ触腕に怯える素振りも見せず、富手夫は唇を寄せて
その体液を啜った。稀代の美酒でも飲むように恍惚とした表情だ。
数瞬の後、生きた触腕が再び巻きつき、富手夫に抗議するように締め付けを強めた。
「うぐっ……わかってるよ、これはお前のものだ」
触腕がするすると富手夫の身体から離れる。
富手夫は濡れた口元を拭うと、切った触腕をまな板に載せ、ひとつ息を吐いた。
「さあて、メインディッシュに取り掛かるか」

自らの肉が捌かれ、焼かれ、味付けをされている間も、クトゥルーの触腕たちはそこにいた。
自分の一部の最期を見届けたいというより、完成したらすぐにでも口に運びたいというのが本音だろう。
恐らくは本体もこちらに来たいのであろうが、この狭いキッチン――決して狭くはないのだが、
旧支配者にとっては猫の額以下であろう――に全身を転移させることは不可能なのだ。
「よし、完成だ。……っと、うおっ!?」
その言葉を聞いた途端、待ちきれなくなったように触腕たちが皿に群がった。
「ちょっと待て、ここで食うな!」
最も、本体がここにない今、この場で食事ができるわけではない。
触腕たちは皿と富手夫の身体を抱きかかえると、一瞬にして調理場から姿を消した。

「……乱暴な真似するなよな……」
次の瞬間、富手夫がいたのは玉座の間だった。ルルイエの神殿の最奥だ。
そこには、名状しがたい巨大な存在が横たわっていた。
クトゥルー。無数の触腕を揺らめかせ、食事が始まるのを今か今かと待っている。
富手夫の身体を抱く触腕が、急かすように背を叩いた。
「ああ、いいよ。召し上がれ」
その言葉を言い終わるか言い終わらないかのうちに、触腕たちが皿に群がった。
ヤツメウナギのスープ、ダイオウグソクムシのフライ、リュウグウノツカイの姿煮、そして
クトゥルーの触腕のステーキといった忌むべき料理群が、次々とクトゥルーの口に飲み込まれていく。

歓喜――否、狂喜の声が辺りに木霊し、ルルイエを包んだ。
「旨いか、そりゃよかった」
自身も人並みの量を平らげながら、富手夫はクトゥルーの巨体を見上げた。
満足げに身体を震わせる様は、感謝の意を示しているようにも見える。
「ふう、ごちそうさまっと」
触腕が退いたあとには、食べかすも残り汁も残っていない。
クトゥルーが全て平らげたことを当然だとでも言うように頷いて立ち上がると、富手夫は空の皿を
片づけ始めた。
クトゥルーは円らなふたつの眼球でしばらくそれをぼんやりと眺めていたが、やがて食後らしい
緩慢な動きでひとつの触腕を富手夫に伸ばした。
しゅる、とその瞬間だけ俊敏に富手夫の腰に絡みつく。

「わっ!」
先ほどまでのような、ただ纏わりつくだけの動きではない。
今度は確固たる意志を持って富手夫の身体に巻きつき、地上から引き上げたのだ。
その様は、些か人間が人形遊びをするのに似ていた。
「何だ、どうした?」
クトゥルーの顔――眼球がついているところを顔とするなら、そうだ――の正面に連れてこられ、
富手夫は所在無げに視線を彷徨わせた。
料理をしているとき以外は驚くほど能天気になる彼は、この状況にあってもそう慌てた様子はない。

瞬きしない両の眼がじっと富手夫を見つめる。
さすがに居心地が悪くなったのか、富手夫が身じろいだとき、クトゥルーに動きがあった。
もうひとつ、触腕を伸ばしたのだ。
そしてその触腕は、するすると奇妙なほど器用に富手夫の服の中に侵入してきた。
そこでようやく、富手夫はクトゥルーの意図を理解した。
「ちょっと待て、まだキッチン片づけてな……ッ」
触腕が脇腹を這い、富手夫は身体を震わせた。こうなったらもう、止めようがないのだ。
観念したように肩を落とすと、富手夫はエプロンを落としシャツのボタンを外した。
幾度となく衣服を引き千切られてきた経験から、腹を決めたら自分で脱ぐ習慣ができているのだ。
スラックスのベルトも寛げると、先ほどまでとは打って変わった妖艶さでクトゥルーを見上げた。

「はい、どうぞ。食後のデザートだよ」
茫洋としたクトゥルーの眼球に、一瞬違う色が混ざった。人で言えば、情欲のような。
大いなる存在の昂ぶりがそこだけに留まるはずもなく、ルルイエ中がそれに呼応するように揺れた。
ダゴン、ハイドラたちの狂乱する声が、彼方より聞こえる。
「……やっぱりヤツメウナギのせいかな。精力つくって言うし……」
少しズレた感想を呟く富手夫をよそに、クトゥルーの触腕が二本、その痩躯を這い回る。
触腕が胸の尖りを引っ掻くように撫でるたび、富手夫はびくりと背を撓らせた。
「ッは、……」

この奇妙な交わりは、初めてではない。最初こそ富手夫も驚き抗ったものだったが、その回数が
両手の指の本数を超えた辺りから諦めの境地に近くなっていた。
人間がいくら智恵をつけても、人智を超えた存在には敵わないのだ。
無数の触腕が首筋や脇腹、耳元など、富手夫の弱いところを集中的に――かつ同時に――責める。
富手夫はあくまで毅然としたポーズを貫くつもりのようだが、それも時間の問題かもしれない。
時折漏れる鼻にかかるような声が、それを物語っていた。
「ん……ぁ、んッ、ふ……ッ」
蠢く無数の触腕の中から、目立って細い数本が富手夫に向かって伸ばされた。
直径1センチメートル程度であろうか。
蛸の肢に似た触腕と違い、どちらかと言えばイソギンチャクの触手に近い。

まるで糸のようにも見えるそれらは、富手夫の腰元まで這うと心得たようにスラックスに滑り込んだ。
それと連動するように、触腕がスラックスごと下着を引き下ろす。
仰向けのまま足を開くような体勢を取らされ、富手夫は浅黒い肌を朱に染めて抗議した。
「おい、クトゥルー。いくらお前がやりやすいからって、こんな格好させるなんて、な、ぎッ」
富手夫の言葉が途切れたのも当然だろう。
突然、細い触手が数本、束になって富手夫の後孔に突き入れられたのだから。
「ぅぐ、……いきなり、そんな、に……ッ」
ぎちぎちと肉を割り開きながら、触手が奥へと捻じ込まれていく。
抵抗しようにも、数本の触腕が身体を押さえつけているからどうにもならない。

触手は何かを探すように腸壁を這いずっていたが、やがてある一点で動きを止めた。
検分するように撫でると、富手夫の表情が見る見るうちに強張っていく。
それで確信を得たのか、束になった触手が刺すような鋭さでその場所を抉った。
「ひぎイィッ! あ、ひ、」
なるほど、それは富手夫の一等悦いところであるらしい。
彼の人が瞳に涙すら浮かべて髪を振り乱し喘ぐ様は、いっそ筆舌に尽くし難いほど退廃的で美しかった。
「んッ、あァッ! や、やめッ、ぼく、もう……ッ」
一点を責めながらも、細い触手たちは狭い穴を拡げることを忘れない。
同時に何点も責められ、富手夫は声にならない悲鳴を上げた。
そこに、一本の触腕が伸びてきた――否、それは触腕ではなかった。
触腕に似ているが、触腕に比べ全体的に細身で、先端の部分が少し膨れて太くなっているそれは――

交接器だ。
交接相手を求め脈打つそれは、太さで言うと人間の男性の腕程度のものだろうか。
触腕よりも細いとはいえ、あれが体内に侵入するなど想像するだに怖ろしい。
富手夫の表情も、血が通っていないのではないかと思うほど青ざめていた。
「なに、きょう、それ……挿れん、の?」
クトゥルーはそれに答える様子もなく、触手が拡げた後孔に交接器を宛がった。
具合を確かめるようにゆるゆると表面の襞を撫でられ、富手夫は拘束から抜け出そうと身を捩る。
当然、離してくれるわけもなく、交接器の先端が少しずつ後孔に割り入ってきた。

「だ、だめ、そんなもん挿れられたら、ぼく、しんじゃ……」
弱々しい抵抗の声を聞き入れることなく、交接器が一気に捻じ込まれる。
「ひぅぎイィッ!」
交接器は性急な動きでピストン運動を繰り返し、そのたび富手夫は小さな絶頂を何度も迎えることになった。
触腕たちも富手夫を悦ばそうと、勝手知ったるその身体を隅々まで蹂躙していく。
「あ、あ、あッ……もう、いッ……」
富手夫に一等大きな快楽の波が押し寄せたとき、クトゥルーもその中に己が体液を注ぎ込んだのだった。

「……僕が怒ってるの、わかるよな? クトゥルー」
柔らかい藻のベッドに身を預けながら、富手夫が凍りつくような眼差しでクトゥルーを見遣った。
「僕は今までに二度、お前に犯り殺されてる。
 事故ってことにしてやってるけどな、生き返らせりゃいいってもんじゃないんだ。
 死ぬってのはあんまり気分のいいことじゃないんだからな」
クトゥルーは頭を垂れながら、数本の触腕で床に「の」の字を書いている。
反省はしているようだが、これが一度二度のことであれば富手夫もそう怒るまい。
「お前が同じことを繰り返すつもりなら、僕はもう我慢できない。出て行く」
富手夫はそう言うと、ふらふらとベッドから立ち上がった。
覚束ない足取りで歩きだそうとしたのを、クトゥルーが慌てた様子で触腕を伸ばして制止する。

ただ触れていいのか判断がつかないのか、触腕は富手夫の周囲30センチメートルくらいのところを
所在無げにうねうねと彷徨っていた。
まるでいたずらした子犬のようだ。見かけは、かなり違っているものの。
そんな旧支配者の情けない姿を見て、いくらか溜飲が下がったようだ。
富手夫はわざとらしく溜息をひとつ吐くと、鋭い眼光でクトゥルーを睨みつけた。
「……アオミノウミウシ獲ってきたら、赦してやらないこともない」
ほとんど赦しに近い言葉を得て、クトゥルーはその円らな瞳を富手夫に向ける。
富手夫が少しだけ表情を和らげたのを認めると、触腕を富手夫に巻きつけ、大事そうに抱きかかえた。
そしてその身を抱いたまま玉座に横たわり、愛しげに眼を細めたのだった。

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