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知られざる能力。

・シヨウギ生もの
・リユウオウ×オウシヨウ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「うわあああああぁぁぁっ!!」
千駄ヶ谷の街中に響く、時ならぬ絶叫。
それが、あの砂糖安満の口から発せられたのだから、驚いてしまうというものだ。
(……ああ、やってしまった……最悪だ……あんなに気を付けていたのに)
後悔先に立たず、とはよく言ったものだ。
自分の右手をまじまじと見つめながら、砂糖はたった今やらかしてしまった最悪手を振り返っていた。

午後からの予定までにはちょっと空き時間があるから、と向かったシヨウギ会館で、
事務方への業務連絡と世間話をした後に、砂糖はちらりと対局室へ顔を出した。
行われていたのは、各級のジュン位戦。
外の寒気とはまた違った、ぴんと張りつめた空気を感じる。
その対局の中で、自分が今『指してみたい』と考えていた戦法を展開している騎士を目にし、
砂糖はそのまま大長考に陥ってしまった。
自分の保持しているキ戦の最中ということもあり、つい読み筋を広げていってしまい、
砂糖が現実に立ち返ったのは、結構移動時間が厳しくなってきた頃だった。
(あー…不味いですかね、これは)
慌ただしく会館を出て駐車場へ向かった砂糖は、いつも通りに愛車のドアに手を伸ばした。
(あ、やばい……っ!)
いつも通り、と思っていたのは自分だけだった。
やばい、右手にカギとキーホルダーを持ってない、ポケットの中だ、と思うのと、指先から静電気が走ったのは同時だった。

そして冒頭の絶叫。
頭の中は真っ白で、静電気で弾かれた指は痛むし、何より『静電気は身体に悪い』と思っている人間が
不注意から『放電出来るキーホルダーによる放電』を忘れてしまっていた。
精神的にも大ダメージだった。
寒いから、と着込んできたダウンジャケットも、身体に帯電させてしまう不味さに拍車を掛けていたかもしれない。
「ああああ、何やってるんだか……」
心底落ち込んでいた砂糖の後ろで、けらけらと笑い声が起こる。
涙目で振り返った佐藤に、面白そうに手を振ってきたのは綿鍋アキラだった。
「なーにやってんすかー、砂糖さん?」
膝までのコートにマフラーにブーツに手袋、と、寒さ対策万全の綿鍋は、
にこにこ顔で砂糖の傍らに駆け寄ってきた。
「マイカーっすか、いいっすねー、かっこいいなー。ウチはチャリンコしかないから羨ましいなー」
とても羨ましそうな顔で車の方へと手を伸ばす綿鍋に、砂糖は思わず『危ない!』とその肘を掴んでいた。
「え?……え、さ、砂糖さん、どうしたんすか」
目を丸くして自分を見詰めてくる綿鍋。
間に合ったのか運が良かったのか、綿鍋が静電気に襲われてはいないのを確認すると、
砂糖はその場でへなへなと脱力してしまっていた。
「はー、良かったー……」
「ちょwwwwww一体何なんすかwwww説明して下さいよ」
「…うん、実はね、今……」
溜め息交じりに事の顛末を話す砂糖に、再び綿鍋の口からは快活な笑い声が漏れた。
「はははっ、やだなーもー砂糖さんはー、良い人過ぎますよー、僕の心配なんかしなくていいのにー」
「い、いや…綿鍋君に何かあったら大変だから……」
さっきと今の一件で、既に心に深手を受けていた砂糖は、
青ざめた顔に浮かんでいる汗を無意識に手で拭っていた。
自分は痛い目に合ってしまったけれど、綿鍋に何もなくて良かった。
本当に良かった。
心から、そう思っていた。

ふう、と息を吐いた砂糖を見て、一瞬の後に真顔になった綿鍋は無言で頭を下げた。
「……?」
眉を上げて自分を見遣る砂糖の表情に、綿鍋は内心苦笑をせざるを得なかった。
(全くこの人は……今のやりとりでぴんときてねーの?
 砂糖さんて、対局中もそうだけど、相手の心理を読むよりも自分の感覚を優先させちゃうんだよなー。
 今の俺の頭ん中も、全然読もうとしてないし。
 すごく気は遣えるけど感情に鈍感って、どんな人間だよ。あり得ねーよ)
顔には出さないつもりがついにやけてしまいそうになり、照れ隠しに咳払いをしながら
綿鍋は砂糖の耳元に口を寄せた。
「……砂糖さんの弱点は『でんげき』なんですね。覚えときますよ」
そして、疑問符を頭の周りに沢山飛び回らせている砂糖を置き去りにして行ってしまった。

(え?で、電撃?一体何のこと……あ、もしかして歩毛門…?)
今度は慎重に放電してから車内に乗り込んだ砂糖が綿鍋の発言の意味をおぼろげに理解したのは、
午後から参加する予定になっていたイベントの会場に時間ぎりぎりにたどり着いた頃だった。
イベントで使われるゆるキャラの被り物に出迎えられた砂糖は、
綿鍋が投げてきたボールから飛び出たぴか注が自分に向かって電撃を放ってくる様を想像し、
その場で卒倒しそうになるのを必死に堪えていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

例によって、細かい設定の間違いなどはご容赦下さい…。


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