Top/69-169

若気の筋違い。

・シヨウギナマモノ注意
・現メイジン×オウショウ
・ちょっと若いころの設定で

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「今夜は僕が奢らせていただきます」
きっぱりと言い放つ砂糖に、盛内はいやいや、と首を振った。
「いや、だって、この店は僕の」
「今日は僕が君を誘ったんだから。僕が払うのが筋でしょう」
そう言うと、盛内の返事も待たずに、砂糖はレジに向かってすたすたと歩きだした。
確かにそうだけど、と盛内は思う。
食事でもどうかと誘ってきたのは確かに砂糖の方だが、自分の通い付けのこの店のことを教え、
お品書きから値段設定までを詳細にレクチャーし、電話して席を抑えてここまで砂糖を連れてきたのは盛内の方だ。
当然店代は自分が持つ、と思っていたのに強硬に押し切られてしまった。
(相変わらずやっちゃんは強引だよなぁ)
自分が後輩の騎士からは強面で恐れられていることを忘れ、盛内はくすりと笑った。

「……ここに来るのも久しぶりだなぁ」
「そうか、最近対局が続いてたもんな」
「そうだね……」
食後の腹ごなしに、と結構な距離を歩いてきた後、
砂糖の住む安アパートの畳の上で、二人は胡坐をかいてちゃぶ台に肘をついていた。
いつもなら、どちらからともなく駒台を持ち出し、過去の棋譜を並べたり終盤の研究をしたりしている所だろうが。
何故か今夜は、そんな気になれなかった。
「今頃……」
斜め上方を見上げながら盛内がぼそりと呟くと、砂糖は唇を噛んで少しうつむいた。
そして長い沈黙。

しばらく微動だにしなかった二人が、盛内はゆっくりと視線を下ろし、砂糖はきっと眦を上げ、
お互いが目を合わせるとすぐにその思考を読み合っていた。
「やっちゃん、やっぱり…気になってる?…haveくんのこと?」
盛内の一言に、再び目を伏せてしまう砂糖。
「………」
答えを聞かずとも、砂糖の悔しげな表情が全てを物語っていた。
二人の思考の先にいるのは……日本中の全騎士の嫉妬・羨望の的。
今のショウギ界を、いや日本中を騒がせている男、have。
ひょろりとした長い手足を持つ、吹けば飛ぶような青年が、次から次へとキ界のタイトルを奪取し続けている。
ショウギのことなど知りもしない人間までがhaveの言動に注目し、新聞の一面には連日その記事が踊っている。
この二人がそれを意識していないはずはない。
haveと同年代のライバル…特に盛内は、小学生の頃からhaveとは盤面を挟んで対峙していたのだ。
関西所属だった砂糖は、後に関東のショウレイ会に入ってからのライバル関係となるが、
この狭い世界では、同年代の者同士は嫌でも比較して見られてしまう。
寧ろ周りなどには関係なく、砂糖は自分から強烈にhaveのことを意識していた。
昇級、昇段、プロ入り、タイトル挑戦権の獲得、そして……。
彼は常に自分の目標だった、はずだ。
なのに、いつも追いつけなかった。気が付くと、haveはもう自分の二歩先、三歩先へと進んでいて、
あっという間に手の届かない場所へと飛び去ってしまっていた。
それが、なまじ自分の目の前で繰り広げられていたものだから、『悔しい』などという言葉を通り越して
砂糖は自らの血脈を煮え滾らせんばかりに激昂していた。
今夜も彼は大きなタイトル戦で対局している。もう結果が出る頃であろうか。
なのに、それなのに、何故自分はここにいる。何故自分の部屋で止め処もなく愚痴り続けているのだ。
どうしたら。何故。どうすれば。何故に。どうやれば、何故、自分は………。
「やっちゃん。もう泣くなよ」
え。
今なんて言った。どういうことだ。

盛内が自分に向かって押し当ててくる真っ白なハンカチを見て砂糖は慌てたが、
その一部が濡れているらしいことに気付くと、更に耳まで赤くして喚いた。
「えっ、ちょっと、ぼ、僕は……っ!」
「本当に変わらないなぁ、君は。すぐ泣くし、話の途中で考え込んで黙っちゃうし、それに…やっぱり負けず嫌いで」
負けず嫌いの権化のような君には言われたくない、と砂糖は思っていたが、
それよりも、赤く熱を帯びてきた目元を見られたくなくて、盛内のハンカチを奪い取ると目を覆った。
「な、何でもないよっ!それより…もっと別の話をしよう」
「……そうだね、せっかく二人きりなんだから」
砂糖より一回り体格の大きい盛内が、意外なほど素早い身のこなしで砂糖の隣に回りその肩を抱いた。
抱かれた砂糖がハンカチの陰から見上げると、盛内は鬼のような形相で歯を喰いしばっていた。
そののんびりとした口調からは感じ取れなかった盛内の変貌ぶりに、砂糖は衝撃を受けざるを得なかった。
そうだ。悔しくない訳がないのだ。泣きたくならないはずがないのだ。
騎士の中で誰よりも、盛内にはhaveに嫉妬する権利がある。
何しろ子供の頃からその隣にいて、その背中を追わされてきたのだ。
自分などがこのように喚き散らすなど論外のことかもし知れぬ。
「………ごめん」
「何?」
「ごめん、もりちゃん、ごめん」
詫びの言葉が堰を切ったように口から流れ出て、砂糖は今、自分が泣いている、と自覚していた。
その震える肩を今一度抱き締め、盛内は歯の間から絞り出すように囁いた。
「…本当に君は、変わらないなぁ」と。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
間違っている設定が多々あると思います、ご容赦ください…。

  • 最近この二人に萌え始めた自分には最高最高&最高でした! -- 2017-08-22 (火) 02:15:36
  • ども、作者です。お読み下さってありがとうございます。気づくのが遅くてすみませんでした。 -- 2017-10-26 (木) 23:59:54

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP