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ひねくれもの

          ○―-、
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            (二二二)
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
旧局朝仁R 田和場×登坂

夕飯を買いたいという田和場さんとスーパーに寄った。夕方五時を過ぎると、少し惣菜が安くなっている。
独り暮らしだといろいろ気にしなければならないんだな、等と考えながらアジフライやほうれんそうの胡麻和えなどを籠に入れる彼を見ていた。
しかし、どうにも御しがたいカートを押して、最後に籠に入ったのがワンホールのケーキだったのを見たときはさすがに驚いた。
「ケーキ食べるんですか?」
「クリスマスも近いしな」
アジフライの上で斜めになっているケーキのパッケージには、確かに「Merry Christmas」と書いてある。私は中指を立てた。
「不許可です!クリスマスにクリスマスを祝ってどうするんですか」
「どこまでひねくれてるんだお前は」
田和場さんは呆れた様な口ぶりで言うと構わずレジに進み、煙草と一緒に会計を済ませた。ケーキ以外の買い物は私が持たされた。
「ケーキ持たせたらお前、絶対振り回すだろ」
どうやらこの先輩に私の考えは見透かされているらしい。私はおとなしくアジフライとほうれんそうの胡麻和えを振り回して歩いた。
夜の空気はすっかり冷たく、外に出れば頬は一瞬で冷え切ってしまう。

火の気のない家の中も、外と寒さとしては大差ない。
強いて言えば風が吹いていないくらいだが、この部屋は常にどこからか隙間風が入ってくるので、本当に外との差がほぼない状態だ。
「とりあえずメシだメシ」
震えながら買ってきたものをちゃぶ台の上に並べると、アジフライとほうれんそうと共に白く可愛らしいケーキが鎮座ましましていて、酷く不格好で思わず笑ってしまう。
しかし、これはこれで上出来だ。当たり前に当たり前のことをするなんてがまんがならない。
もし、アジフライでなくローストチキンだったら、白いご飯ではなくピラフとか何かだったりしたら、私は即効この家を出ていたかもしれない。
田和場さんは酒屋でもらったメーカーの不揃いのコップ二つと、飲みかけの日本酒の入った一升瓶を持ってきた。いよいよもって上出来である。
「いやあ、むさくるしいの極みですな」
「悪かったな」
「いい意味でですよ、いい意味で」

振り回したせいでアジフライの形が崩れていたが、あまり気にはならなかった。
それよりも、ケーキと日本酒という取り合わせの方が田和場さんは気にかかるようだった。
「いやいけますよこれ」
箸でケーキをつまみつつ、後輩として毒見をしたが田和場さんはまだ半信半疑だ。
なんでも、私の舌とRのカメラは甲賀部二大「信用できないもの」らしい。
それでも食べない訳にもいかないという事で、田和場さんも箸でケーキをつまむ。
「…まぁ、全く合わない訳ではない」
「でしょう」
少しは私を信頼したらどうです、と威張ってみせると調子に乗るなと殴られた。
やりましたね、とはたき返すとそこからはもう食事どころではない、取っ組み合いのじゃれ合いだった。
お互い酒が入っているせいか、ゲラゲラ笑いながら足を引っ張ってみたり、頬を思い切りつねられたりしたものの、痛みはあまりなく動きもいつもより鈍かった。
しかし、仰向けに寝転がった私の髪を田和場さんが禿げるんじゃないかと思うほどの力で引っ張っている時、ふと空気が変った。
暴れすぎて疲れたのかもしれないが、明らかにそれだけではない。髪を引っ張っていた手の力は抜けている。
ああ、そういうことをするんだな、と思った時眼鏡が外されていた。

ストーブのせいで部屋は大分暖かいが、裸でいるにはまだまだ寒いな、などとどうでもいいことをぼんやり考える。
顔を思い切り埋めた枕からは煙草と田和場さんの髪の脂の臭いがする。
「痛くないか?」
「だーいじょうぶ」
本当は少し痛かったが、中指をたてて強がった。なるべく弱いところは見せたくない。
それでも突かれる度に何処からか声が出そうになるので、枕を噛んで極力声を抑える。
それに気づいたのか、田和場さんは少し笑った。
「声出したっていいんだぞ」
「…却下です」
断言して、再び枕を噛む。田和場さんも何も気にしない様子だった。
なんだか今日はいつもより優しい気がするななどと考え、腰を掴む手の温度に安心しながら、私はただ体を任せ続けていた。

事が済んだのち、ケーキの続きを食べた。
「生クリームが少し乾いてておいしいですよ」
「お前の舌はやっぱりおかしい」
文句を言いながらも田和場さんは私と同じくらいの量を食べていた。
アジのしっぽと飲みかけの酒とケーキの食べかすが乗っかったテーブルは、やはりどこかシュールである。
「よーし、うんうん、よーし」
まっとうなクリスマスなんかにならなくて本当によかった、なんでこの人とまともなクリスマスをすごさねばならない。
私が全くまともでないこの夜に満足してうなづくと、田和場さんは変な顔をしてこちらを見ていた。
「やっぱりお前は大馬鹿だ」
「何がです?」
「いや、まぁいいや」
田和場さんは何か納得したような様子で頭を掻いていた。

家に帰り、カバンを開けると中に見覚えのないビニル袋が入っていた。
不思議に思い、中を確かめるとそれは買った記憶のないF3の換えレンズだった。
状況的に、田和場さんがくれたとしか考えられないが、しかしなぜ?クリスマスプレゼントなんてあの人らしくもない。
頭をひねって考えた時、私はやっと気がついた。
あの日は私の誕生日だったのだ。
人に言われるまで誕生日の事なぞつい忘れてしまうので、あの日は全く思い至らなかったが、
よくよく考えればあの日私は年を一つとっていたのである。
だからケーキだったのか、だからいつもよりも優しかったのか、と一つ一つの謎が解けていった。
あのちぐはぐな食卓は私の誕生パーティーだったらしい。
それにしても、あくまでクリスマスと言う体で、おめでとうの一つも言わず、プレゼントも全くラッピングせず
――そもそもプレゼントを渡したことすら教えないとは。
私は真新しいレンズをとりだし、上から下から覗きこみながらつぶやく。
「あの人もひねくれてんなぁ」

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            (二二二)
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • 萌えすぎてお米が足りない! -- 2013-02-03 (日) 23:30:45
  • ありがとう新境地! -- 2013-08-19 (月) 10:13:05

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