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癒しの御手

オリジナル触手もの
無駄に長いので2回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ウィリウスは霞のかかった頭をめぐらし、必死で考えをまとめようとしていた。
教団の司教を名乗る男が彼の前に跪いている。ウィルは両脇を信徒に抱えられ
半ば強制的にその場に立たされている。ひどく疲れているせいだろうか、体に力が入らない。
そんなウィルに向って、司教は唐突に話しをきり出した。
「我らが『神』の贄となり、お力をお貸し願いたい」
まるで状況が飲み込めない。問い返そうとするが、言葉が思うようにうかばない。何かがおかしい。
「お体を損なわれる事はございません、本当はこのような無礼を働くべきではなかったのですが…。
急がなければ。お前達、ウィリウス殿を『神』の御元にお運びしろ」
司教の口調が厳しくなる。立ち上がり、振り返りもせずに暗い廊下へと歩みだす。
命令に応じて信徒達がウィルを運び出す。包帯を巻かれたばかりのわき腹の傷が痛んだ。
それはこの教団で施された手当てであった。

『神の御前にあって全てのものは等しく同じ、癒されるべき人に分け隔てがなされることはございません』
敗残兵として流れ込んできたウィルを、教団は優しく迎え入れた。傷を手当てし、食事を振る舞い、宿の提供まで
申し出てくれたのである。それをありがたく受けたのは、ほんの数時間前の事であった。
そして今、ウィルは引きずられながら長い回廊を歩かされている。先を行く司教は前を見つめたまま
ウィルに事の次第を話し始めた。

「我々はこの地に古くから御座す『神』にお仕えする集団。神のご意思を尊び
そのお心のままに人々を助け、傷ついた者を癒すことを旨としてまいりました」
「人の手で癒せる傷であれば、我らが手当てを行う。そして手におえぬ者たちは
…神の御手に委ねられる。ウィリウス殿は幸い、軽傷であられた」
一瞬振り返り、ちらりとウィルを見る。ウィルは多少のきまりの悪さを感じた。
それが顔に表れたのだろうか、司教はわずかに微笑むと言葉を続けた。
「我々にとっても幸いなことにございます。神は今、お疲れになられている。
手助けを必要とされている。…本来ならば、近隣の村から壮健な者を募るのが
慣わしでございます。しかし戦が長引き、神の求める健やかなる若者は軒並み
徴兵されてしまっている」
その部分だけは理解できた。ウィルもまた徴兵を受け、遠く故郷を離れての進軍を
余儀なくされた者の一人であったのだ。
一向は大聖堂に入り、その最奥にある小さな扉へとたどり着いた。
ウィルは一旦、床へと下ろされた。周りをよく見ようとするのだが
なかなか体の自由がきかない。少しずつ司教の言葉が頭の中でつながり
意味を成してきた。
(にえ。神の手助け。まさか生贄になれということなんだろうか?
…しかも、私が軽傷で幸いだと。壮健な者が必要だと…)

扉が開かれた。そこは3メートル四方程度だろうか、何もないがらんとした部屋になっている。
照明はない。しかし部屋の中にはほのかに光りが射し、奥に行くほど明るさを増して石作りの壁に陰影を映し出している。
部屋の奥、一人寝のベッドの幅ほどの部分が奈落になっていた。その下から光が射している。
その手前に、ウィルは丁重に横たえられた。薄い夜着を通して冷たい床の感触が伝わってくる。
「それでは、ウィリウス殿。よくよく神をお慰めし…」
「ちょっとまって!」
やっとの思いでウィルは言葉をしぼり出した。今では恐ろしい疑問が心に渦巻いていた。
ウィルは一人で小部屋に寝かされている。信徒達は外に出て、扉を閉めようとしている。
その前に、どうしても聞いておきたい事があった。
(「私は…捕まったのですか?最初からそのつもりで、助ける振りをして…」
「恐れながら。お食事に薬を混ぜさせていただきました。我々にはどうしても、ウィリウス殿の
ような方が必要だったのです。健康で、体力もある健やかな若者が」
「…私は殺されるのですか?それとも一生、閉じ込められて…」
「そのようなことは決してございません。ただ、時間をかけて説明いたす暇のない以上
これより他に方法がございませんでした。ウィリウス殿。何卒神のため、神の御力を必要とする
全ての者たちのために、御身をもって神をお慰め申し上げいただきたい」
司教は再び跪き、恭しく頭を下げた。その姿を隠すように小部屋の扉が閉じられる。
ウィルは想像のつかない恐怖と共に、一人小部屋に取り残された。
やがて、彼らの『神』と呼ぶものが、奈落から姿を現した。

その姿を見て、ウィルは顔色を失った。
二本の長い縄のようなものが奈落から這い上がってきたのだ。
乳白色に輝くそれらは優に一握りはあるだろうか。伸縮を繰り返しながらずるり、ずるりと
ウィルに向ってにじり寄って来る。這いずった後にはそれの持つ粘液なのか、ぬらぬらとした
跡が残っている。
「なに…いやだ…」
ウィルは逃げようともがいた。だか、司教の言った薬のせいなのか、深い眠りから無理に
叩き起こされたような体はいうことをきかず爪先だけが力なく床を引っかく。
それはゆっくりと体に巻きついた。生暖かい粘液が肌に絡みつく。伸びきった表面は滑らかで
柔らかい。しかし恐ろしいほどに力強く、ウィルの体を難なく絡め取ると奈落の底へと運び入れる。
そこには神の本体とも言えるものが鎮座していた。
『神は』異様な姿をしていた。地下に開いた巨大な花のように、四方八方に乳白色の腕を伸ばし
ざわざわと蠢き燐光を放っている。顔や胴といった、いわゆる生き物らしい部分は見当たらない。
(…これが神?触手の化け物じゃないか)
恐怖に嫌悪の気持ちが入り混じる。なすすべもなく吊り上げられ、ウィルは本体に向って
運ばれてゆく。他の触手たちがウィルに気付いたように一斉に、その体を目指して伸び上がってくる。

「やめ…ろ、放せ!」
所詮は無駄な抵抗だった。言葉が届くはずもない。触手は無遠慮にウィルの体に巻きついた。
夜着の袖を払い、両腕を這い回り、指先まで絡みつき一まとめに縛める。前腕に負った傷に粘液が
塗りつけられ、ちりちりと痛んだ。
さらにもう一本。足元から縋り、巻きつきながら夜着の裾を割って進んでくる。しなやかに伸び
縮むと瘤が連なるように表面が波打ち、そこから一層身を伸ばしウィルの鼠径部に巻きつこうとする。
触手の動きに合わせ、重く湿った粘液の音がべしゃり、と響く。
限界だった。激しい嫌悪にまかせウィルは力の限り暴れた。かろうじて動く片足を振り回し
脚に絡む触手を蹴りつけようとする。つま先が触手に触れた。その表面に親指の爪を立て
力を込め引っ掻きおろす。
触手の動きが急変した。それまでの緩慢な収縮をやめ、一気にウィルの体を締め上げる。
脚に巻きついた触手はするりとウィルの男根に巻きつき、根元を締め付けるととたんに強張り
滑りもせずに力任せにねじ上げた。
「ひっ…ぎゃあああぁぁぁーーーっ」
ウィルは仰け反って絶叫した。敏感な部分を強く捻られ、痛みのあまり目の前が真っ白になる。
体の力が抜ける、しかし触手は蹂躙を止めようとはしない。両腕は頭の後ろに縛り上げられ
脚は新たな触手に押し広げられウィルの股間を無防備にさらけ出す。苦痛なほどに広げられた脚から
さらに腰へ、胸へと触手が這い進んでゆく。もう一度、男根を締める触手が大きくうねった。
「ぐあぁ…ああぁー…」
炸裂する痛みに気が遠くなる。もはや抵抗する気力もなかった。痛みに目を見開き、
大きく口を開けて浅い息を繰り返す。目の前の景色が揺らぎ、一瞬、意識が暗闇に落ちかける。

やがて、触手の動きが収まった。
ウィルは動こうともしない。涙が流れているのがわかった。暴れたためか包帯が解け
傷の上にも直接触手が取り巻いている。男根の触手は力を弱め、それをやわやわと撫でている。
しかし、痛みも快感もウィルには感じられなかった。ただ、激痛の余韻に身を震わせているだけであった。
涙を追うように、一本の触手が顔に張り付いてきた。先端を器用に窄ませながら目の周りを舐める。
薄く開いた唇をこじ開け、別の触手が侵入してくる。にじむ冷や汗が粘液と絡みあう
どこか淫靡な音が地下室に鳴り響いた。
胴を巻く一本の触手が離れ、腰骨を一撫でしてその奥へ、尻肉の間へと滑り降りる。
しばし先端で吸い付き、つつき廻したあと、探り当てた後孔をゆっくりと捏ねるように動く。
『御身をもって神をお慰め申し上げいただきたい』
司教の言葉をぼんやりと思い出す。たしかにこれでは、言葉通りの慰み者だ―
最後に一つ、陰部をぬるりと撫で、触手は硬く閉じた孔をこじ開け始める。
「んん…」
背筋に走る悪寒と新たな痛みに、ウィルはあっさりと意識を手放した。

「…気付かれましたか」
うっすらと目を開けたウィルの頭上に、穏やかな声が注がれた。
左手首に暖かなものが巻きついている。その瞬間、生暖かな触手の感触を思い出し
ウィルは飛び起きた。
緊張に身を固めながら回りを見回す。しかしそこは薄暗い地下室ではなかった。司教ほか
数人の信徒が彼を見つめている。左脇には、傷を手当てしてくれた教団付きの医者が座っている。
さっきのぬくもりは、脈を取る手だったのだろうか。
ウィルは清潔なベッドの上に寝かされていた。夜着は新しいものに着替えさせられ、触手との
接触などなかったかのように彼はこざっぱりとした姿に整えられていた。
「呼吸、脈拍、お顔の色も問題なし。少し休まれればすぐにお気力も回復されるでしょう」
医師はウィルの驚きなど意に介する様子もなく司教に見立てを述べている。
司教は一つ頷くと、ウィルの前に進み出た。
「ウィリウス殿。まずはお礼を申し上げねばなりません。昨夜の事、神はことのほか
お喜びのご様子であられました。」
深く頭を下げる。あっけに取られているウィルに対し、さらに司教は言葉を続ける。
「ごゆっくり、お休みくださいませ。しかる後に故郷に戻れますよう、手はずを整えましょう。
あるいはもし、幸いにも続けてお力添えを願えますのでしたら…」
「待ってくれ!」
叫び声は悲鳴に近かった。言いたいことは山ほどある、しかしありすぎて逆に言葉を選べない。
ウィルは必死で呼吸をととのえた。司教の目をまっすぐに見返しながら、なんとか探り当てた言葉を放つ。

「あれが『神』なのか?」
誰も答えない。
「あんなものが神なのか、あんな触手の塊が人を癒す!?じゃあ、私は…昨日のあれは…一体…」
それ以上は言えなかった。地下室での出来事がまざまざと思い出される。生暖かい触手の
滴る粘液の響き、肌を這う感触…
壁に背を押し付け、身をかがめてウィルは黙り込んだ。その肩がかすかに震えている。
直接は答えず、司教は震えるウィルの肩に手を乗せると、そっとわき腹を指差した。
「ウィリウス殿。ご自身の目でお確かめください」
そう言われ、ウィルはおずおずと夜着を捲り傷を探す。
傷は治っていた。昨日は確かに血が滲んでいた所が、今は古傷のようにうっすらと白く浮かんで
いるだけである。慌てて袖をまくってみると、前腕の小さな傷は跡形もなく消え去っている。
呆然とした顔で司教と傷跡を交互に見つめるウィルに向って、司教はゆっくりと言葉をかけた。
「これが神の御業なのです」

数日後。ウィルはまだ教団を離れられずにいた。
医師の見立ては間違ってはいなかった。一日もすると体の疲れも取れ、自由に動き回れる様にまで
彼は回復していた。信徒達が留めだてしたわけでもなかった。彼らは常に一人以上ウィルの側にいたが
行動を制限するようなことはなく、専ら身の回りの世話に専念していた。ウィルが頼めば
すぐに水や書物を用意してくれる。頼めば、教団内外の事情について丁寧に教えてくれる。
おそらくウィルが頼めば、帰郷の用意もしてもらえただろう。だがそれを教団側から提案されることはないと
彼にはわかっていた。
教団はウィルを、必要ならば再び神への捧げ物にしようと考えている。それはあの日、呆然と傷跡を見るウィルを見つめる、司教の眼差しが雄弁に語っていた。
ここに留まる以上、ウィルはそれに従うということになる。
彼の触手への嫌悪感は、決して消えてはいなかった。
それでいて彼は、ここを離れる決意が出来ずにいる。
ウィルの気持ちを迷わせているものは、一つはわき腹の傷跡だった。一見古傷のような白い傷跡が
動かしようのない事実として体と記憶に刻み付けられている。
そして、もう一つ。ウィル自身があまり認めたくない後ろめたさ。
思いは複雑に絡み合い、ウィルの足をこの場所に押し留めていた。

さらに十日も過ぎた頃だろうか。昼過ぎから振り出した雨は夕刻には嵐になり、雨粒が激しく
窓を叩いている。ウィルはその音を一人で聞いていた。常に側に控えていた信徒の姿もない。
夜更け頃から教団の動きが慌しくなっていた。聞けば、近くで戦いが行われたらしい。
負傷したものが次々と運び込まれてくる。医師が忙しく走り回り、矢継ぎ早に出される指示に
信徒達が機敏に対応する。手伝いを申し出たウィルだったが、司教がそれを断った。
「この様子では今一度、ウィリウス殿のお力をお借りすることになりましょう。
それまでどうか、お体を休めください」
その言葉の意味するところを、ウィルは正確に理解していた。
(考えよう…)
他には誰一人いない。雨音が心の雑念を追い払ってくれる。ウィルの気持ちはいつしか
かつての戦場へと引き戻されていた。

同じ部隊にいたのは、彼と同じような身の上の者ばかりであった。
名はなんといっただろう。漁師がいた。小間物屋のせがれだという者もいた。
ウィルより歳の若い者も、妻の髪を一房、懐に入れている者もいた。いずれも
本来の兵士ではない、徴兵されてきた者ばかりだった。
今、運び込まれている兵士達もまた、同じような身の上なのだろうか。慣れない戦いの場に
放り込まれ、嵐に紛れた奇襲に追い詰められ傷を負い、倒れ運び込まれているのか…
雨は止まないまま、外は朝を迎えていた。ウィルはそれにも気付かず、答えの見えない考えを
めぐらし続けていた。

戸の外から声をかけられたのはその日の夜深く、じきに空も白みかけようかという頃であった。
いつの間にか雨は止んでいた。
「ウィリウス殿。お休みのところを失礼いたします。」
返事を待たずに戸が開けられる。姿を現したのは司教ただ一人。あの日と同じように恭しく膝を付く。
「我らが『神』の贄となり、お力をお貸し願いたい」
深く下げられた額に向かい、ウィルが答える。
「わかりました。…ただ、お話したいことがあるのですが」
「道々でよろしければ。ご同行いただけますか?」
「はい」
あの日とは違い、ウィルはしっかりと自分の足で部屋を出て廊下を歩き始めた。

もう一つ、あの日と違うことがあった。前回は返事も返せないウィルに対し、一方的に司教が
語りかけていた。今回は逆である。ウィルは、前を行く司教に向かい訥々と自分の心境を打ち明けていた。
「…私は、戦場から逃げ出してきました」
出来る限り率直に、胸のうちを伝える。言葉を飾る必要は感じなかった。
「怖かったのです。戦うことが…目の前で、人が死ぬことに耐えられなかった」
「無理からぬことにございます」
顔を向けることもなく司教が答える。
「お見受けしたところ、ウィリウス殿は本来の兵士ではないご様子」
「はい。粉引き屋の三男坊でした。ただ体力があるからという理由だけで徴兵さて
前線に放り込まれました」

暗い廊下に二人の足音が響く。
「本当に嫌でした。誰の為かもわからないまま戦って死ぬなんて。いつか逃げ出してやろう
それだけを考えていた…本当に、自分が助かることだけを考えていました」
廊下は外廊下となり、大聖堂へと続く。二人はその中へ入っていった。

大聖堂の中は人で埋め尽くされていた。誰もが大きな傷を負っているように見える、だが苦しそうな
表情は見受けられない。ただ深く、規則正しい呼吸を繰り返している。
見知ったものはいないか―それと気付かないまま、ウィルは足を止めていた。気配に気付いた司教が戻ってきて、ウィルに声をかける。
「眠っているのですよ、皆。神はご自身のお姿を人に見られることを嫌っておられます。
だから地下にお住まいになられたと言い伝えられている。そのため、神の癒しを受けるものは皆
薬を飲んで眠ってから御元に向うのです。あの時のあなたと同じように」
ウィルは息を飲んだ。爪が掌に食い込むほど強く手を握り締めている。
「…私は眠ってなかった。なのに何故、傷を治されたのでしょうか。大体、なんで私なんかが
気に入られたのですか?私は…ただ逃げ出しただけの臆病者です」
司教は何も答えない。
大聖堂の最奥、小さな扉へと辿り着いた。信徒達は皆、怪我人の手当てに走り回っている。
二人で小さな扉を開き、ウィルが中へと足を踏み入れる。

「私は逃げるとき、誰かを助けようなんて考えられなかった。今はその気持ちを埋め合わせる為だけに
人助けをしているつもりになっているだけなのかもしれません。…そんな気持ちで、神の元に行っても良いのでしょうか?」
「ウィリウス殿」
二人は扉を挟み、向かい合って立っている。司教が表情を和らげた。初めて見せる、慈愛のこもった瞳で
ウィルを見つめる。
「神の御前にあって全てのものは等しく同じ。癒されるべき『傷』に分け隔てがなされることは
ございません。恐れ多き事ながら、それこそが神の真意かと」
ウィルはゆっくりと夜着を脱ぐ。放り投げようとしたそれを司教が受け取った。
そのまま背を向けて、奈落の淵に立つ。司教が跪いたのか、背後で衣擦れの音が聞こえた。
扉が閉じられる。ウィルは一人、神が現れるのを待った。

しかし神の様子は前回とは明らかに違っていた。伸びてきた二本の触手に力はなく、ウィルを
支えようとして落としてしまう。ウィルは二本の触手でできたスロープを転がり落ちるように
滑り、したたかに床に背中をぶつけた。呻きながら身を起こし、辺りの様子を確認する。
伸びた二本の触手はそのまま床の上に横たわっていた。わずかに脈打つだけで、自力で戻って
こようとはしない。そして本体とも呼ぶべき部分は明らかに一周り以上、小さくなっていた。
動きも弱く、燐光は消えかかり地下はほぼ暗闇で覆われている。
ウィルはそっと、本体に向って歩き始めた。
弱弱しい触手が、その足に絡まろうとする。試しに足を引いてみると、触手は簡単に離れて
床の上に落ちる。

少しためらった後、ウィルは触手をかき分け、押しつぶさないように注意を払いながら
床の上に座り込んだ。
その大腿に触手が這い登ってくる。懸命に収縮を繰り返し、少しずつ上へと進む。やがて
その一部がウィルの中心にたどり着き、羽のような愛撫を始めた。陰部を撫上げる触手がある。
尾てい骨から男根の根元まで、窄めた先端で吸い付きながら何度も往復し、滴る粘液を擦り付ける。
ぺちゃり、ぺちゃりという音が響くたび、ウィルの下半身に甘い疼きが広がってゆく。
いつの間にか手を後ろに付き、膝を開いて自ら腰を突き出すような姿勢に変わっていた。
その腰から鼠径部へと触手が伸びる。その動きの弱さに焦らされ、思わず声が漏れる。
「…は…ぁ…」
あれだけ恐れていたはずなのに。猛々しさを失った触手に対して、ウィルは嫌悪感を忘れ始めていた。
ようやく一本の触手が男根へと絡みついた。くるりとそれに巻きつくとゆっくりと上下に動き始める。
先端が解け、鈴口から裏筋を繰り返し撫でつけ、再び亀頭部に絡みつき、尿道口を巻き込み
ずるりと収縮する。
「んあぁ…はぁ…」
(なんだか自慰をしているみたいだ)

当たっているかもしれない、その考えは。苦笑いをかみ殺しながら、ウィルは横たわる触手のうち
一本を手繰り寄せる。前回はどうしたんだろう。考えて、それに軽く唇を触れ…思い切って先端を
口に含んでみる。奇妙な感触だった。触手は器用に動き回り、舌を絡め先端まで吸い上げる。
歯列をなぞり、口内に吸い付きながら粘膜をこすりつける。粘液と唾液の絡まる音がくちゅくちゅと
直接、頭に響く。飲みきれない唾液が一筋、こぼれて顎まで伝った。
口を触手に犯されるままに任せると、もう一本を手繰り寄せ、両手で優しく撫で始めた。
その弾力と暖かさを確かめるようにしっかりと指を絡ませ、揉みしだき、粘液のぬめりを借りて
手を上下に大きく移動させる。
ウィルの下半身はいっそうの熱を帯びてきた。男根は半ば立ち上がり、透明な先走りの体液が
滲み出している。それを受け止めるように、触手はさらに力を増し鈴口を数回擦る。男の本能に
忠実な快楽に、背を反らせて耐える。後孔を嬲る触手も徐々に力を取り戻してきていた。
ただ漫然と撫でていただけの触手が意思を得たように後孔を責めたてる。閉じられた孔の
皺の一本づつを舐めるように這い回る。先端をわずかにめり込ませ、ウィルの体が強張ったとたんに離れ
硬く張った会陰に場所を移し縮んで瘤のできた表面を擦り付ける。
咥えた触手に声を封じられたまま、ウィルはゆっくりと、確実に絶頂に向って追い上げられている。
手に抱いた触手を胸に押し付け、彼自身のもののように握り締めながら後孔への刺激に
慣れようと息を整える。

口の触手がぬるりと這い出した。涎を伝い、先端で首筋に吸い付きながら身をくねらせて胸に張り付く。
つんと硬くなった乳首に身を摺り寄せ、収縮して強く揉み、転がすようにくねりながら下へと移動する。
ウィルに密着したまま大きく波打ち、下腹部へ、鼠径部へと這い降り、先端は吸い付いたまま乳首へと
移り軽く捏ね、強く吸い上げる。くすぐったさの中に、体の芯に響く疼きが混ざっていた。
「んぁっ!…あぁ…はぁ…あ……あっ」
ウィルは触手の感触に身を委ね、知らず知らずのうちに腰を動かしていた。男根の触手は
敏感な先端の括れを優しく揉みこんでくる。そのまま果てそうになるのを抑えながら、触手が
次の行動に出るのを待つ。
胸の触手がするりと滑り落ちる。そのまま内股まで降り、腿に巻きつきながら先端を双丘の間に
滑り込ませる。少しでも楽な姿勢で受け入れようと、ウィルは膝に重心を移して腰を上げた。
少し考え、手の触手を離して両手を床につく。大きく息を吐き、体の力を抜く。
唾液と混ざり合った粘膜が孔に押し当てられる。一瞬、肩に力が入った。手から離した触手が
肩をつたい口元に現れる。ウィルはためらいもせずそれを口に含む。そちらに意識を集中させ
後孔の違和感を忘れようとする。

ゆっくりと、孔が開かれた。
「ふぅ…ん…んぅ…っ」
入ってくる。普段、意識することもない内側の粘膜を押し開きながら、触手がゆっくりと伸縮を
繰り返し入ってくる。慣らされていたせいか、痛みはなかった。ただ経験したことのない異物感に
体が震え、膝が崩れそうになる。その腰を他の触手が支える。そのうちの一本がわき腹の傷跡に伸びた。
確認するように一撫でし、背中を這い耳元へ進む。耳朶を愛撫し、吸い上げるぴちゃぴちゃという音が
大きく聞こえる。音に犯される感触にウィルの心は強張りを解いてゆく。
「うぅん…ふぅ…んっ!むうぅぅっ…ふっぁ」
孔の触手が一旦下がり、再度奥へと進む。それが繰り返され、次第に動きが早くなる。
搾り出された粘液がウィルの内股をつたう。浅い息を繰り返し、腕を震わせながらウィルは全身に
触手の暖かな愛撫を感じていた。違和感は次第に消えてゆき、擦りあわされる粘膜が熱をおびて
違う感覚へと変わり始める。それに応じるかのように男根が激しく擦りあげられる。
喘ぎに細く、声高い嬌声が混ざる。
じりじりと焦らされた末に、ウィルは鼓膜がしびれるほどの勢いで白濁した精を発した。

ポタポタと床に落ちる精を、触手たちが掬い取る。うつろな瞳でそれを見つめながら
ウィルはゆっくりと崩れ落ちる。その体を触手が抱き上げ、その中に沈めるように覆いこみ
全身をなぞる。姿勢を変えられる瞬間、孔の触手がよじれ、粘膜に新しい刺激が走った
鈍痛にも似た快感が再び体の中心へと集まりだす。
暖かい触手の海に抱かれながら、ウィルは涙を流していた。痛みでもない。後悔でもない。
ただ訳もなく涙が流れ出す。
(これも神の癒しなんだろうか…)
漠然と考えるウィルの涙をおって、一本の触手が這い上がってきた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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