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仰げば尊し

半生注意でお願いします。
「李総の息/子」先輩ズで、3256。付き合ってない。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「聞いたか謙語」

リングの中へドリンクを投げて寄越して悟朗が楽しそうに尋ねる。
軽く受け取って、口に含みながら視線だけで先を促した。

「面接だ面接。友達面接。あいつら泣いてたぜぇ、不合格食らって須々木と遊べねえんだと」

クククと笑ってリングに背中を預ける悟朗を、少し呆れたように眺めて謙語もロープに凭れる。

「相変わらずぶっ飛んだお袋さんだよなあ」
「それだけ須々木を愛してるんだ。良い母親だろ」
「出たぜ熟女好きがよ」
「だから違うってんだろうが」
「ま、環境は人を変えるっつーのは否定はしないさ」

人気のない部室でふたりの会話だけがぽつぽつと落ちる。
穏やかな時間だった。
窓から差し込む夕陽が眩しい。

「もうすぐ卒業だなあ」
「突然どうした」
「お前の戦う姿を間近で見られるのも、残りわずかってことだ」

もう残っている生徒は少ないのだろう。
部室どころか校庭からも廊下からも、日中の喧騒がない。
放課後の空気だけが校舎を包んで、伸びた日をやけに実感させたのだ。
春が近い。
冬が終わる。

「最近考えるとな。柄でもねえが、ちょっと寂しくなっちまってよ」
「悟朗」

後ろからぐいと顎を掴まれ、強制的に上向きにされる。
予想よりも至近距離で覗きこまれ、悟朗は僅かに驚いて固まる。
僅かだ。
すぐに笑みを浮かべた。

「情熱的だな謙語」
「茶化すんじゃねえよ悟朗。……お前何が言いたい」

だが悟朗に答える気はない様で、ちゅ、とリップ音をさせてふざけて見せる。
謙語があからさまに眉間にしわを寄せた。
いつもクールぶっている謙語の珍しい反応に、悟朗は顎を固定されたままで気持ち首を傾げた。
勿論固定されているので実際には謙語の右手にその感触が伝わっただけだ。

「謙語ぉ、アゴ外れんだけど」
「入れてやるから安心して外せよ」
「……なんつーか、おっかねえからいいよ」

そろそろ本当に関節が危うい。
ぐぎぐぎと軋むような気がする。
は、と小さくため息をついて、悟朗は少し真面目な眼をして続ける。

「だから、……環境だろ」
「環境だ?」
「不良高校で熱血教師に指導され、母親を探すために五輪を目指す。まあここまでなら美談さ」

相変わらず掴まれたままの顎が草臥れたけれど、話しきるまで放す気はないらしい。

「だが不良仲間といつまでもつるんでいたところで、何も得はないだろう。
 それどころか、あることないこと好き勝手言われて足を引っ張っちまうかもしれねえ」

俺はお前の邪魔になるなんざまっぴらごめんなんだよ。
知らず言い含めるような口調になるが、悟朗自身に自覚はない。

「……つまり?」
「つまり、俺も不合格ってことさ」

話は終わりとばかりに、己の顎を押さえつけている謙語の右手をぽんぽんと叩く。
弛められるはずのそれは、けれどそのまま悟朗の顎を固定する。
いい加減に放せと言いかけたその唇を、声を封じる様に塞がれた。

左手で。

「……ふぁんのふもりふぁけんふぉ(何のつもりだ謙語)」
「お前、友達不合格って覚悟あんの」
「ふぁ?(あ?)」

怪訝そうに眉を寄せた、悟朗の唇を覆ったままの自身の左手に口づける。
やはり「ちゅ」と音を立てて。

「友達じゃなくなっちまったら、次はこれなしってことだぜ」

まん丸く見開いた目の前で、「これ」とひらひらと左手を振ってやる。
そのまま顎も解放して、固まる悟朗の横をさっさとリングから降りてしまう。
顎を定位置に戻す動きはぎこちなく不自然ではあったが、外れはしなかったらしい。

シャワー室へ消える謙語の背中はあまりにも普段通りだ。
冗談だったのかと悟朗が強張った肩の力をふうと抜いたところで駄目押しの声が飛ぶ。

「卒業式が楽しみだな、悟朗」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ノヅマさんの蓮っ葉な口調が難しすぎてちょっとおかしくなってる。
それ以前に着地点を見失っているけれど、もうすぐ最終回の悲しみの勢いで。
先輩ズ可愛いよ先輩ズ!


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