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外は春の雨

ナマ注意です。
元青心・高低、現原人バンド唄×六弦です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

彼はダラダラしていた僕からテレビを強奪して捨ててしまったけれど、
しかし、僕以上に物ぐさなんじゃないだろうか。

「ほら、おまえはやれば出来る子なんだよ。凄いじゃん」
曲を作って、唄って、皆で練習して。
好きな事や何気ない話をしている時だって、彼は何か彼の心の琴線に
触れる事があった時にはいつだって躊躇なく僕を褒めてくれる。
逆に、何かイライラしているなという時もとても分かりやすい人なので
そんな時はそっとしておくのが良いのかな、と最近思ってきていた。
僕がご機嫌を取りに行くと逆効果・・・というか、彼自身でしか解決出
来ないみたいだし、いつも時間が経つとケロッとしている人なんだよな。

でも、ねえ。
僕は彼の部屋のドアの前でしばらく立ち竦んでいた。
彼の姿は三日前のミーティングの時以来見ていない。確かに部屋には居る
のだけれど。
「マー××。入るよ」
僕がドアを開けると、まず煙草の煙が迎えてくれた。
「あ、ヒ××」
顔を上げた彼はやっぱりケロッとして煙草を咥えながらギターを弄っていた。
どしたの、とご機嫌な様子で万年床に座り込んでいる彼の手の届く範囲には、
吸い殻の盛り上がった灰皿、無造作に積み上げられた本、ノートに鉛筆が
転がって。

いや、逆効果でもあんまりそっとしておいちゃ駄目だな、と反省する僕を
後目に、彼はボサボサ頭を頼りなく揺らしながら唄を口ずさんでいる。
僕だって人の事言えたものじゃないけどさ、
「マー××、曲作る以外に何かしとるん?」
彼は咥えていた煙草を摘みあげ、大きな目を僕に向ける。
こけた頬をして、さも意外そうに口を開く。
「曲作る以外に何があるんだよ?・・・それに、してんじゃん。洗濯とか、
買い物とか、メシ、くったりとか・・・」
ちょっとずつ、声が自信なさげになっていく。
僕は可笑しくなって、笑いながら首をかしげてしまう。
彼も照れ臭そうになって、俯きながら甘えるように言った。
「そういえばヒ××、はらへった」
「はいよ」
この声、好きだなあ。あんまりこんな状態で言って欲しくないけど。
多分三日ぶりだよなあ、きっと何も食べてないと思う、この人。
不器用だよなあ、繊細で生きるのが下手だよなあ、でも最低限生きる為の
事をしないとさ、心配でたまんないよ。
「買うてきちゃるわ。餅入りうどんにする?」
「うん。あ、あと悪いけどペプツとセヴンスターも買ってきてくんない?」
「ええよー」

彼の声を背中で聞きながら、僕はいそいそと部屋を出る。
やっぱり、ご飯を食べる時はいつも彼と一緒に食べてあげようそうしよう、と
思いながら。

ちょうど別の部屋から出てきた仲間と、連れ立って外に出た。
「僕より年上やのに、ほんと放っとけないヤツなんよなあ」
自分の事を棚に上げて、そんな愚痴を言いながら。

部屋から彼がギターを爪弾く音が聴こえる。
それに合わせて、僕は心の中でうたう。
――愛じゃなくても、恋じゃなくても、君を・・・

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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