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急加速

ナマ注意です。
元青心・高低、現原人バンド唄×六弦です。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

重低音の何かが、いつも腹の底で鳴り続けている。
空腹に似ている気がしないでもない。安っぽい感情とかいうものでもない。
ただ、それは確実に俺を動かしているものであったので、俺は何とかそれと
折り合いを付けながら生きていくしかなかった。

他のものはそれこそいくらでもあるのだ。
コロコロ変わる俺が見たいなら見せてやる。
必要なら何にでもなってやろうか、今すぐにでも。
なんて傲慢で、馬鹿なヤロウだと自嘲する。

キチガイになれるものならなりたかった。
他人からはキチガイだの最低だの死んじまえだのと罵られても、俺は多分
すんでの所で結局凡庸であった。
ふざけんな。黙っててくれ。俺の邪魔をするなよ。

君。
おまえ。
「――ヒ××」

俺はおまえの名を呼ぶ。
深い意味は無いんだ。ただその単語が、俺にとってとても大きいだけなんだ。
おまえの唄声を聴いたあの日、世界中に色がついた。
それは、その日分かったんじゃない。
思い出したんだ。

ひとつ、ごめんなさい。僕は重低音の鳴るままに君を引き摺り回しました。
先の事など何も分からない無責任さで。
けれども君は、引き摺り回している張本人が思わず忘れてしまう程、それ以上
に跳んでくれました。

おまえは俺の追憶の彼方の憧憬。
おまえは俺の果ての忘れもの。
おまえは俺のたからもの。

おまえを悲しませたくない。おまえの笑顔を見ていたい。おまえの唄声を聴かせてくれ。

なんてエゴだ。その言葉どもの上に“俺の為に”って付けてみろよ。
まるでオナニーじゃないか。
熱っぽいものが浮かぶと、すぐに冷めたものがそれを嘲笑う。いつだって俺の中で。

「――ヒ××、」
もう一度、おまえの名を呼ぶ。
おまえはどこかそわそわしながら、俺の顔色を窺っている。
言葉は情けなく喉の奥で詰まる。おまえの目の中で、俺の唇が震えている。
耐えられなくて、俺は目を閉じた。
けれどもすぐ次の瞬間、おまえの両の指先がさらりと頬を滑り、あたたかい意志を
持つ大きな手のひらがじんわりと俺の顔を包み込んだ。

「ねえ、マー××。目を開けてよ」
「ねえ、どんなになっても、君は君なんだから」

とてつもなく無垢な声。誤解されがちなおまえの、賢くてそれでいて無垢な姿に。

ああ、もうエゴだろうが何だろうがどうだって良いのだ。
腹の底から、俺はもうおまえに全てを差し出してしまうのだ。
俺にしか分からない、俺にも分からないものまで、全部。
けれどそうしてしまえば、きっとそれは重低音どころじゃなくなるだろう。
次から次へと溢れ出で、地響きにさえなるだろう。おまえになら全部差し出せる。

いっそ俺ごと食っちまってくれ。おまえの中に取り込まれたいとさえ思う。
「もう俺は全部出す。おまえは、唄うか ―――」

―――――

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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