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たにずきんちゃん2

昨年末特番の大仙石鍋テレビ/ウツケBarノブ特別編
元後輩→元先輩+ウツケ3人衆
半生およびお可まちゃん注意です

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「そろそろ店、閉めちゃおうかなあ」
寂れたバーの片隅で、谷愚痴はため息を付いて時計を見上げた。一人ぼっちの新年を迎えて1時間が経とうとしている。
「俺も行きたかったなあ、ハワイ」
盾ママはともかく、恋人の小重郎子にまで大晦日に置いてけぼりを食らうとは。
こうなったらお一人様の女性客と思いっきり羽目を外してやろうと目論んだが、
置手紙一つ(と紋付袴の衣装)で任されたこの場末のバーにやって来たのは、一癖も二癖もある客ばかりだった。
ホステス同伴の戦国武将だの、一つのパフェをつつきあうヤンキーだの、首にビラビラが付いた4人組アイドルだの。
手伝いにと呼びつけた元後輩のケンタは、時代遅れの衣装を纏ったアイドルになっていた。
年越しライブがあるからとケンタが0時前に店を飛び出してから客足は途絶えたままだ。
「あー今頃あの二人パイナップルとか食べてんのかなあ」
「ちょりーっす」
チャラい挨拶に驚いて入り口を見ると、ドアの隙間からにやけた顔が覗いていた。
「ケンタ?!お前、カウントダウンライブは?」
「終わったんで、急いで戻ってきちゃいましたー」
ギラギラしたピンクの衣装のまま満面の笑みでピストルの形状にした両手を谷愚痴に突き出した。
「ライブ短くない?って言うか打ち上げとかないわけ?」
「たにっち先輩に届けてもらった槍持って、ちゃんと歌って踊ってきましたよー、ってことでアケオメコトヨロー」
「こ、ことよろー」
手を掲げてくるケンタと、仕方なくカウンター越しにハイタッチする。
残念ながら女性客ではなかったが、一人じゃないのはちょっと、いやかなり嬉しい。

「酒飲む?」
「え、いいんすか」
「新年だしさ、特別に1杯だけな」
「マジっすか、じゃドンペリで」
「…お前な」
「うそっす、なんでもいいです」
片付けてしまった氷を取りに奥のキッチンへ向かう。
「もうウサギの被り物脱いじゃったんすね…可愛かったのに」
「え?被り物がなんて?」
戻った谷愚痴がグラスにウイスキーを注ぎ終わるのを待ってケンタが口を開いた。
「カバみたいだったのに」
「なんでカバだよ!耳長かっただろ!どうみてもウサギだったし!」
カウンターに置いた水割りを引っ込めようとしたが、タッチの差でケンタがグラスを掠め取った。
「冗談っすよ、いただきまーす」
美味そうにグラスを傾けるケンタをなんとも言えない気持ちで眺める。
今は行方知れずとなったノブママに、このバーでこの後輩をどうしたらいいか相談したのはいつだったか。
ぐだぐだだったあのケンタが真剣に自らの信念を語る日が来るなんて。
「なんかさー、俺感動しちゃったよ、4人組に言ったあの”一度男が自分の夢掴むって決めたんなら”ってくだり」
「4人組?あー天然健康商戦なんとかさん」
谷愚痴は思わずドアを見たが、キラキラした4人組が再び自己紹介のために現れる気配はなかった。
「あいつらもう戻ってこないっすよ、きっと」
「だな」
カウンターから出てケンタの隣へ座る。
「そういえばたにっち先輩、随分ご乱心でしたけど落ち着いたんですか」
「何が?」

「そこのマネキンに濃厚なキッスかましてたじゃないっすか」
ケンタがカウンターの中に仁王立つ盾ママの着物を着たマネキンを指差す。
「何時間前の話だよ…それもう忘れてくんない?」
「忘れられるわけないっすよ、あんなキモチワルーイ放送事故レベルの画」
「またそうやって傷つくことを・・・」
「マネキンとするキスより俺との方がいいと思いますよ」
「そりゃあまあそう…って、え?」
いきなり腕を引かれ、椅子から落ちかけてケンタの胸に倒れこんでしまった。
衣装の胸に付いた紅白の羽に顔を押し付けられて身動きできなくなる。
「ぶふっ、羽が口に入るっ、スパンコールがちくちくする!」
「俺、メンバーに馴染めなくて、ちょっと壊れかけたこともあったんです」
「うん、わかったから。ちょっと…」
「けど、こんなちんちくりんなたにっち先輩だって元男な彼女との人生を選んで頑張ってるんだから、俺も頑張らなくちゃって」
「ちんちくりんってなんだよ!」
両肩を掴まれて体を起こされ眼鏡を外された。視界が滲んでぼやけてしまった。
「今夜はどうしてもたにっち先輩に会いたくて、打ち上げ断って戻ってきたんです」
ケンタがどんな顔をしているのかよく見えない。
「俺、たにっち先輩のこと」
顔に掛かるのはケンタの息なのか?
「ちょっ、何す」

ばーん!と背後でドアが開いた。

「たにやーん!あけおめー!」
「寂しかったでしょー!って、てめえ人の店で何やってんだこのメガネっ!」
盾ママのドスの利いた怒声に谷愚痴は竦みあがった。

慌ててケンタから取り戻した眼鏡を掛け直すと、首からレイを下げた小重郎子が肩を震わせていた。
「ひどい…たにやん…。盾ママっ、あたしの刀どこ?ホトトギスちょんぎってやる!」
「ちがっ、誤解だって!」
「一人じゃたにやんがかわいそうって小重郎子ちゃんが駄々こねるから仕方なく戻ってきたのに、はい刀っ」
「たにやんの浮気者~!!」
「わあああっ」
「ちょっと、あんたたち落ち着きなさいよみっともない」
ケンタを押し退けトイレに逃げ込もうとしていた谷愚痴は、聞き覚えのある声にはっとして振り返った。
「ケンタくんよね?」
気だるく柔らかな懐かしい声の主はにっこりと微笑んだ。
潔く刈り上げたボブスタイルに特徴のあるヒゲ。トレードマークの赤いマント。
「ええーっ!!のぶ、のぶっ」
「ノブママおひさしぶりっす、ケンタっす」
「ノブママ、このダサい人知ってるの?」
盾ママが驚いてノブママを見る。
「前に会ったことあるのよ。たにやんの後輩のケンタ君」
「後輩?」
「元後輩っす、いまは新しい業界でがんばってます」
「そう、よかったわ。とうとう自分の道を見つけたのね」
「うっす。…つーか、たにっち先輩、この小重郎子さん?元って言うか今も完全に男じゃないですか」
よりによって旅行帰りの小重郎子はジーパンにアロハシャツにヒゲ面だった。
谷愚痴だって立派なホトトギスが付いたままだったのには驚いた。
「えーっと、そのー、いつもはエビちゃんみたいな格好なんだよ、ヒゲはあるんだけどさ」
「俺ならヒゲないっすよ」
「え?そういう問題?」
「きーっ!ちょっとあんた!」

「小重郎子ちゃん落ち着いて」
「冗談っす、じゃまた来まーす」
今度は忘れずに槍を持ち、ドアの所で谷愚痴に向き直った。
「あ、たにっち先輩、うまいものご馳走してくれる話、俺待ってますから」
「お、おう」
「それと、もう後輩でもなんでもない俺に、わ・ざ・わ・ざ電話くれて嬉しかったっす!」
「お前…!話がややこしくなることを」
「ちょりーっす!」
くしゃくしゃの笑顔でケンタが出て行った。
「もーっ、たにやんのばかばかばかっ」
「ぐえっ」
泣きだした小重郎子に抱きすくめられ、肋骨がぎしぎしと音を立てる。
「し、死んじゃう…じゃ、じゃあもう置いてかないって約束してよ」
苦し紛れに発した言葉が小重郎子の腕を緩めた。目を見開いて谷愚痴を見つめている。
「今度置いてったらどうなるか知らないぜ?」
小重郎子が再び抱きついてきた。
「二度と離れないんだからねっ」
「あはは、たにやんの癖に生意気言うわね」
盾ママが笑う。ノブママが頷いて目を細めた。
「驚いたわ、しばらく会わないうちにたにやんも大人になったわねえ」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

祝・特番決定!MTの未公開映像にwktk!
年末が待ちどおしいです。


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