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村人×部無

半生ご注意ください。
溶解人間部無1話の回想シーンから村人の前で溶解になってしまう部無ネタです。
部無スレ299さんのネタに滾ってやってしまいました。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

流れ流れて、いくつかの風景。
すでにどれほどの土地を転々としたか数えていない。
手帳に記した地名と斜線だけがその数を知っている。
戦後10年足らずの日本はまだ貧しく混乱が続き、近代化の波も届かぬ農村には、
古い迷信も因習も当たり前のように残っていた。
異質なものは容赦なく排除される、そんな時代。
人目を避けて荒れ寺に身を潜めていた三人だったが、
相変わらず状況を理解しようとしない部露が近所の子供たちと親しくなったがために、
その存在が村人達の知るところとなってしまった。
寂れた農村に、彼ら三人の出立ちは異様だった。
だが異国風の彼らが物珍しかったのか、逆に興味を持たれ村人達ににこやかに受け入れられた。
古い空き家を提供され食料も分けてもらえた。
なによりも村人達の笑顔がうれしかった。温かく受け入れられたことが嬉しかった。

ある青年が村を歩く部無の姿に目を留めた。
彼らに野菜を持っていった時、まじまじとその顔を見た。
男にしては白すぎる肌、陽に透ける銀髪、淡い色の唇、目深に被った帽子からちらりと覗いた目は切れ長で、ぞくりとくるような美しさだった。
村の女達でさえここまで美しい者はいないだろう。
もう一人の女も妖しげな美しさがあったが、あの目に睨みつけられると身が縮むようで、どうも苦手だ。
それよりはこっちの男…。
やけに気になるのは、端正な佇まいが妙に儚げだからだろうか。
彼はその日以来、意識するともなく部無の姿を目で追うようになっていた。
農作業の手を止めて男は部無に駆け寄っていった。
村人が話しかけると伏し目がちに表情を隠してしまう。
もっとよく顔を見たくて男は帽子の下を覗き込んだ。
警戒心を浮かべた瞳が男を捉えた。

一見冷たそうに感じた切れ長の目に、かすかな怯えがチラついているのが見てとれ、
男は自分が優位に立ったような気になった。
「もうあの家にも慣れたかい? なにか不自由してないか?」
「いえ…、大丈夫です」
「そんな細っこいと、ちゃんと食ってねえんじゃないかと心配でさ」
目を合わせようとすると、遠慮がちにふいと逸らされる。
顔を見ると目線を外す。まるで感情を見られまいとしているようだった。
なんでもいいから反応を引き出したくて、男はひたすら話しかけた。
「こないだの野菜食べたか?」
「はい…、ごちそうさまでした」
「俺んちの野菜うまいだろ?」
「…美味しかったです」
ようやく淡い色の唇にかすかな笑みがのぼった。
「またうちの野菜持ってってやるよ」
気分が良くなってさらに畳みかけると、怜悧な切れ長の、だが儚げな瞳が不思議そうに男を見た。
「なぜそんなに、親切にしてくださるんですか…?」
ふたつの綺麗な瞳に見つめられて男はどぎまぎと舞い上がった。
「この村に住むなら同じ仲間じゃないか、当たり前だろ!」
大げさに反らせた胸を叩いて見せる。
ふと気付くと男を見つめる白い顔が、嬉しそうに、穏やかに微笑んでいた。
「ありがとうございます……」
喜びすら隠すようにうつむいてしまう。急に男は恥ずかしくなって頭を掻いた。
「あ、ああ、今夜よかったら俺んちに飲みに来ないか?」
「飲み…に?」
「いや、俺一人だから気兼ねなく」
部無が迷うように目を彷徨わせていると、男はばつが悪くなって唐突に誘ったことを恥じていた。
「俺んちそこの林の奥だから、気が向いたら…」
「………」
部無が返事を躊躇する様に耐えられず男は畑に戻っていった。
振り返ると部無が軽く会釈をして去って行った。

「で? その飲むとやらに行くのかい?」
村人との件を話した部無に、部羅は詰め寄っていた。
日が落ちて明るい炎の色の囲炉裏端。パチパチと炭のはぜる音。
「せっかく誘ってもらったんだ。断るのも悪いだろう。それに初めて俺達を受け入れてくれた村だ…。
これからはこの村に溶け込んでいかねば」
「あんたねぇ、受け入れられたって正体が知れたら終わりなんだよ?
だいいちあたし達、酒なんか飲んだらどうなるか…」
「わかってる部羅。アルコールで感情が高ぶりやすくなってしまうのはわかってる」
「せっかくまともに住む家があっても、こうして気を揉まなきゃいけないんだねえ…あたし達」
やるせないため息で頬杖をつく部羅。
「部羅…」
「いいよ、行ってきなよ。部露は寝てるしあたしは留守番してるよ」
「ありがとう部羅」

夕食後しばらくして訪れた部無に男は心底驚いていた。
まさか本当に来るとは思っていなかったのだ。
土間から男を見上げる部無の瞳に、昼間のような怯えは浮かんでいなかった。
男は居間に部無を通しちゃぶ台を挟んで向かい合った。
真正面に向かい合うと男の方が照れ、目線を反らしてしまっていた。
家に上げたはいいが話題がないのだ。
「ああそうだ、飲むんだったな」
酒を口実に誘ったことを思いだし、台所から一升瓶と猪口をふたつ持ってくる。
しかし部無に猪口を差し出すと、彼はきっぱりと断ってきた。
「酒は飲めないので…」
男は落胆する。飲めないくせになぜここに来たのかと。
「なんだよ、飲めないのかよ」
「すみません…」
一人で酒をあおる様に部無の表情が曇った。
せっかく誘われ、この村の住人になるべくこうして来たというのに、
彼の酒を断ることに胸が痛んだ。
落胆がなぜだか軽い怒りに変わって、男は手酌で自分の酒を注いだ。

「あの、いただきます…少しだけなら」
一度は断った猪口を男に向けてそっと差し出し、彼の顔を見る。
「そうか、じゃあ…」
彼の機嫌が直った様子に部無はホッとする。
男は酒を注いでやると、部無がゆっくりと口をつける様をじっと眺めた。
飲み付けないのか、そろりそろりと猪口を口元に運んでいく。
淡い色の唇がかすかに開いて、隙間から白い歯がのぞいた。
猪口に唇が触れた時、柔らかそうだと男は思った。
本当に、舐めるように少しだけ口をつけて、離してしまった。
アルコールの作用で、感情のコントロールが利かなくなることが恐かったのだ。
「飲めないんなら無理しなくていいよ」
「いえ、もう少しだけ」
男を落胆させまいとまた口をつける。今度はもう少し多く口に含んだ。
酒の熱さが口腔から喉を焼いて、体を熱くさせていく。
これ以上飲むのは危険だった。
飲み付けないアルコールで、体の熱がたちまち広がっていくのがわかる。
ふわふわと沸き立ちそうな感覚を押さえることに部無は必死で、男に気を配る余裕も無くしていた。
目を閉じ、深く吐息をつく。
たった二口でもう酔ったのか、吐息が妙に艶めかしい。
そんな部無の様を肴に、男は手酌でひとり飲み続けた。
男の誘いに素直にやってきたのは、意外だったが感心する。
だが、打ちとけているようで、まったく心を開いていない。
わざわざ来ておきながら、飲んでも楽しそうな顔一つ見せない部無に、男は次第に苛立っていた。
「あんたのカミサン、すげぇ美人だな」
「………」
顔を上げて男を見る瞳が、酒のせいなのかうっすらと潤んでいた。
「だけどあんたの子供、あんたにもカミサンにも似てないな」
「……………」

押し黙って俯くしかない部無。
聞かれても答えることは出来ない。
「あんたんとこは、こんな田舎の村にはちっともあってねえな」
「え……」
「こんな田舎にあんたらみたいな生っちろい奴は一人もいねえよ。
畑仕事で泥だらけだしみんな日に焼けて真っ黒だ」
男はふと、猪口を持つ部無の指に目を留めた。
白く長い細い指。畑仕事とは無縁そうな繊細な指先だった。酔いが回ってきた勢いで、男はその手を掴んだ。
日焼けして節ばった男の手が部無の手を掴み引き寄せる。
咄嗟のことに部無は反応できず、されるがままになってしまった。
「見ろよこの手…俺の手と全然違うじゃねえか」
白い部無の手を握る男の指、その爪の中には泥が詰っていた。長年の畑仕事でもう洗っても落とすことは適わない。
なんと対照的な指なのだろうか。
同じ男でありながら、すらりとした繊細さに眩暈がするようだった。
先ほどからの噛みあわなさと相俟って、この端正な青年とは決定的に相いれない異質なものを感じ取る。
それは男の内の中で、仄暗い怒りのようなものへと変化していった。
男の手に次第に力が込められてきて、部無は手を引こうとしたが引き戻されてしまった。
部無を舐め付ける男の目線が異様なものにかわっていた。
「なにを…」
「お高くとまってるよな…特にあんた」
「………!」
人はきっかけがあれば、大した理由もなく狂ってしまうのか。
何度も何度も部羅が言い含めていたことだ。部無自身でも骨身に染みてわかっていたはずだった。卓袱台をなぎ払い、男は部無を押し倒した。
畳に両肩を押さえつけられる。
腕は自由だったが帽子を押さえるだけで精いっぱいだった。
「やめてください!」
「あんた、きれいだよな、俺のものになっちまえよ」

男の手が首筋をまさぐってきて、部無はようやくそこで男の目的を知った。
「どうして…っ」
上から部無の肩を押さえつけて男はニヤリと笑った。
信じられない面持ちでその脂下がった笑いを見た。
野菜をわけてくれて、同じ村の住人だからと親切にしてくれた。
それがなぜ………。
男は呆然とする部無に構わず、服の裾から素肌へと手を忍ばせていた。
熱い手が肌を這い、慣れない感触に部無は怖気上がった。
性行為など経験したことはない。ましてや触れられたことなどあるはずもなかった。
「やめろ…」
アルコールで火照っていた体がさらに熱くなる。
激しくなる血脈が全身を駆け巡る。
普段は封じ込めている緑色の血液が体の中で沸騰する。
男の手が服をたくしあげ、白い肌を露出させた。
これ以上触れられたら、二の腕から肩にかけての鱗のような皮膚を知られてしまう。
なによりも高ぶる感情の為に制御が効かなくなりかけていた。
角化皮膚が全身に広がりかけている。
「やめ…ろ…」
男が首筋に顔をうずめてきた。
ぞわりと肌が粟立つ。
体の中で骨が軋む音が聞こえた。
「や…めろ…」
両手で頬を挟まれ、唇をふさがれそうになる。
「やめろ…!!!」
聞いたこともない咆哮と共に、男の体は吹き飛ばされていた。
壁に全身を打ち付けられ、力なく床に崩れ落ちる。
何が起こったのかわからない男は、うずくまる部無のただならぬ気配に目を見張った。
「なんだ…、おまえ…?」
震えながらこちらを向いたその姿は、あの端正な青年のものではなかった。
手の甲を不気味な鱗が覆い尽くし、黒くぬらぬらとした瞳、
獣のような歯を剥き出しに唸りをあげて男を見ていた。
「ひっ、ヒィィ!!」
歪む視界の中で、男の顔が引きつった。
もはや溶解への変化を止められず、部無は雨戸を突き破って庭に転がりでた。
いつのまにか雨が降っていた。
家からの灯に、雨に濡れた異形の姿が浮かぶ。
この世のものとは思えぬ咆哮があたりに響き渡った。

部無に叩きつけられ怪我を負った男は這いながら、庭先で咆哮する生き物の姿を見た。
それはつい先刻まで男と向かい合っていた、この田舎には不釣り合いな綺麗な青年だったはずだ。
綺麗だと触れた手は、鉛色に変色しゴツゴツと節くれ尖った爪が生えた異様なものに変化していた。
ふいに男は、なぜ彼に心惑わされたのか、異形の姿を知って腑に堕ちたのである。
すべては人ならざる者の仕業なのだと。
化け物は庭を駆け抜け林の中へと消えた。
その方向は彼らに分け与えた空き家の方角だった。

貨物列車の空き車両に身を潜め、彼らは別の地へと移動していた。
あの後のことを思い出すのは、苦しいという言葉だけではカタがつけられなかった。
変化した部無を見た男は村中に触れ回り、その夜のうちに村人達は彼らに与えた家を取り囲んだ。
異物と知れば人間は徹底して排除にかかる。
殺せ、殺せと、ただ姿形が違うだけで殺意と憎悪を向けられる。
慣れていたはずだった。
だが一度受け入れられてからの迫害は、感じた以上に彼らの心の傷となり、
降り続けた雨よりも冷たく胸に突き刺さった。
あの日村人の家を訪れていたはずの部無は、変化した体で戻ってきて、
人間の姿に戻ってもまだ震えて慟哭していた。
何があったのか部羅は聞かない。部露も何も聞かずただ側に寄り添った。
「次はもう少し都会に行かないかい? もう田舎はこりごりだよ。なぁんにもないしね」
車両のドアの隙間から流れる景色を眺めて部羅が言った。
「オイラ、ビルとか大きな建物みてみたい!おもちゃもいっぱい欲しい!」
部露はぴょこんっと跳ねて、部無の膝元にまとわりつく。
「ねえ部無、いいでしょ?」
いつかどこかに自分たちの居場所があるかもしれない。
ただ普通の人間として暮らせる場所が。
誰にも脅かされない。
誰のことも脅かさない。
そして誰をも惑わさない────
「ね?部無、そうしよ?」
顔を覗き込み、部露が無邪気に笑った。
「ああ…。大きな街へ行こう」
部無は静かに微笑み返した。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
あの回想はいつ頃の時代なのか不明でしたが、
なんとなく終戦10年後くらいかなと予想。
おそまつさまでございます。長すぎたので支援助かりました!

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