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川のほとりで

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ビーエス時代劇束原僕電の主人公主従。
主従カワイイヨの萌え一念で書いたので幼名とか関係図・年表知識がかなり付け刃なのはご容赦を。
とにかく主従カワイイヨ。

「若が束原家のご養子に?!」
「声が大きい。」
剣の稽古の帰り道、静かに流れる川のほとりでそう告げられて、思わず佐門が声を上げると、若こと占部吉川朝高は
注意をするようにその口元に人差し指を当てた。
「まだ父上と師匠の間で繋ぎをつけている最中だそうだ。だが先方としても悪い話では無いらしいからほどなく決まるだろうなぁ。」
「束原家と言えば国主様の御一族、鹿嶋の御分家ではございませぬか。」
「うん。だからこちらとしても悪い話であるはずが無い。」
決まるだろうなぁ、ともう一度繰り返して朝高は歩き出す。
ふわふわ飄々とした足取り。
まだ幼いと言っていい年でありながら、剣の腕では周囲から抜きん出だした少年の歩みは、しかしいざ剣から離れれば
年相応の覚束なさを見せる。
だからつい世話焼き気質が頭をもたげる。
「しかしっ、そうなると若は占部吉川家をお出になる訳で?」
「そりゃそうだろう。どのみちしがない次男坊だ。いずれ養子に出されるのは覚悟していたがな。」
「しっ、しかし若のような剣以外ではどこか抜けているお方がそのような御家にご養子などと。」
「悪かったなぁ、抜けてて。」
主家の若君と家臣の息子。本来なら厳然たる身分差があるものだが、いかんせん幼い頃から幼馴染同然に育ってきたせいもあり
時折口が滑って本音が出る。
だからそれに申し訳ありませんと佐門が謝意を口にすると、朝高はまぁ当たってるけどな、とこれまた主筋の者とは思えない
安穏とした声を返してきた。
他家では考えられない緩慢な空気。
けれどそれがけして嫌いではないと思えば、養子に出てしまわれればもはやこのような事も無くなるのかと一抹の寂しさも内心で覚える。
そしてその想いにしばし口を閉じていると、先を歩いていた朝高がおもむろにこちらを振り返った。
「佐門。」
「……は、」
「寂しいのか?」
「…はぁ?」
いきなりの事に思わず調子の外れた声を上げれば、それに朝高は笑うと細くなる目をさらに見えなくなるまでの線にして笑ってきた。
「顔に書いてある。佐門は本当に何を考えているか顔を見ればすぐにわかる。」
「そっ、それは!若が逆にわからなすぎるのでございます!」
楽しい時も嬉しい時も怒っている時も悲しい時も、そのほにゃんとした顔でいつもへらへらへらへらと。
図星を指されて思わず、そして相変わらず余所の家なら速攻一喝されそうな不敬な事をぶつぶつ呟いていると、
それに朝高はまたしても「悪かったな」と笑いながら答えてきた。そして、
「稽古に来れば、また会える。」
すっと告げられた、その言葉に佐門は我に返った。
自分より年下で、いつもヘラヘラしていて、掴みどころが無くて、それでもこの若は時折突然大人になったかのような
まっすぐに澄んだ声を発する。
その成長の変化をずっと傍で見ていたい気持ちはあったのだけれど。
「そうですな。」
それでもこれはけして永久の別れでも何でもない。
言い聞かせる自分に朝高はこの時クルリと身をひるがえすと、また前に進み出しながら話しかけてきた。
「しかし佐門が寂しいなら一月に一度くらいは吉川の家に顔を出してやっても良いぞ。」
「そのような事を今から考えず、しっかりご養子先での勤めを果たされませ。」
「んー、なら七日に一度。」
「何故いきなり半分以上に短くなるのですか。」
「だったら二日に一度!」
「若、本当は養子に行きたくないだけでしょう…」
何とは無いやり取りを繰り返す稽古の帰り道。
こんな穏やかな日はこの先もう幾日も無いのだと思えば、歩く一歩一歩が大切に思える佐門だった。

のに、
「佐門、おかえりー。」
家の使いで外に出ていた自分が戻ってくると、縁側で団子の包みを開いて兄君、妹君とのんびり戯れていたのは
数年前他家に養子に出された朝高、今は名を改め新ェ門その人だった。
そのくつろいだ様子にたまらず声が出る。
「また来られたのですか?!」
「だって仕方なかろう。師匠が我が家に寄って行こうと言うのだから。」
師匠こと松元備全守は新ェ門の父とは古くからの友人であった。
養子先で剣の腕の更なる上達を求められた新ェ門はこの師匠の指導を仰ぐ機会が更に多くなり、その行く先にも
同行する事が増えた為……必然的にこの家にもよく来訪する事となった。
「松元様は昔から父上の事が大好きですものね。」
と、言うのは妹の真広殿。
「幼い頃からよく団子を手土産にこの家に来られておった。」
続けるは兄君常高殿。そして、
「出稽古に出ても帰りに必ずこの家に立ち寄ろうと言われる。おかげで私はこうして羽を伸ばせてよいが。」
のほほんと団子を頬張るのは、言うまでも無く名は変わっても中味はどうにも変わってい無さそうな新ェ門。
唖然とする佐門をよそに兄弟妹の話が弾んでいく。
「そう言えば、母上から聞きましたが、父上と母上の祝言の宴の席で、松元様は一人男泣きをなされていたとか。」
「それはまた何故に?」
「仲の良い友が先に嫁を取る淋しさと幸せを願う嬉し泣きではないか?」
「後者ならば良いですが、前者だと当時よくあらぬ噂が立ちませんでしたなぁ。」
「確かに、一人身ではそのような噂が立つ余地もあったか。」
「まぁ、父上や松元様や母上に失礼ですよ、兄上。」
この兄弟……
けらけらと笑い合う、話の種以外はもの凄く仲睦まじい光景を佐門が呆然と見遣っていると、それに気付いた新ェ門が
声をかけてきた。
「どうした?佐門も食うか?」
グイッと団子を差し出され、はぁと近づけば、それを手渡される時こうも言われた。
「佐門も、早く嫁をもらわないと人生何が起こるかわからんぞ。」
不吉な、無邪気な笑顔と邪気だらけな予言。

この後、そんな新ェ門の剣術修行のお供として嫁取り前の佐門が借り出される事となるのは、もう少し先の話である。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
代行ありがとうございました。
そして父上と師匠、ごめんなさい。

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