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インディーレスラー

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

アイダブリュジーピージュニア後の話です。ナマモノ注意。どインディーレスラー。

「イブシのこと……傷つけたくないから」
金色に輝く巻き毛を軽く揺らし、俯きながらケニーは言った。
即座に自分のとった行動は、はははは、と笑いながらケニさんは優しいね、と顔をニヤつかせたことだった。
「ケニさん、優しい…僕は優しくない…イブシのこと、傷つけたい…」

俺らは一人の天才のことについて語っているのだ。。
すらりと長い手足に鍛え抜かれた筋肉、それも無駄にマッチョなのではなく、しなやかで彫りの深い…
例えるなら彫刻のような肢体。
そして生まれついての身体能力の高さ、瞬発能力、動きの鋭さ。
攻撃だけではなく、プロレスならではの受け身もしっかりとれるし、その魅せ方も心得ている。
顔だって、まあ悪くはない。
だがあいつの頭の中に詰まっているのは筋肉だけだ。
まるでアホ。字も読めない、計算も出来ない、ちょっとでも込み入った仕事などもっての外。
流石にそれ位の能力差をつけないと、人としてのバランスが取れないと神様も思ったのだろう。
あいつは、普通の人以下の頭脳能力と集中力しか持ち合わせていなかった。
日がな一日ゲームをしまくって、友達とじゃれあい、たまに素人レスラーの作ったリングに出て体を動かす。
それだけで、レスラーなら誰もが羨むような華麗な技を次々に繰り出し、終には至高のベルトを二つも手にしてしまった。
こんなことが、許されていいのか。
時期が合わないというだけのことで、挑戦することさえも出来なかったレスラーが多々存在するベルトを
あっさりと手にし、無邪気な顔で笑うあいつ。
嫉妬するしかない、実際にそんなやつを目にしてしまったら。
つーか、嫉妬しないやつは屑だ。レスラーとして、屑だ。

普段はいいやつだけど…ただのガキでバカなんだけど…
この俺が、不器用で面倒くさくて、殴り殴られることだけが生きがいのこの俺が、
そんな格闘技界のエリートの姿を見せられてしまったら…嫉妬しなければ生きていられないじゃないか!
それなのにあいつは、そんな俺の思いさえも簡単に踏みにじる。
ベルトを獲得したまま試合で左肩を脱臼、休養欠場によりベルト返上となってしまったのだ。
俺たちレスラーの目標たるベルトを掻っ攫っておいてそのまま消えてしまうなんて。
この、宙ぶらりんな気持ちを一体どうしてくれるんだ。

そして、この男だ。ケニー。
イブシの試合をようつべで見て、わざわざカナダからイブシを名指しして対戦を申し込んできた男。
「北米の路上王が日本の路上王を倒す」などと言ってたのに、
「戦っているうちに愛が芽生えた」などと公言して憚らなくなり、挙句の果てに二人でコンビを結成してしまった。
本末転倒ではないか。
私生活でもベタベタしやがって。何がゴールデンラヴァーズだ。何が愛してるだ。
そんな…男前な顔を曇らせて「イブシのこと心配、僕はイブシと試合したくない」とか言うな。
遣り切れない。こいつらが、本気でお互いを思い合ってるのが伝わってくるだけに遣り切れない。
そんな悲しそうな顔をしないでくれ。俺にはあんたを慰めることは出来ないんだ。
俺の戦いに荒んだ心では、あんたらみたいに無邪気にじゃれあうなんてことは出来ないんだ。
一瞬の躊躇いもなく、互いの心を信じて危険な技を繰り出しあうなんてことは出来ないんだ。
怪我を治してリングに戻ってくるのを、疑いもせずに待ち続けるなんてことは出来ないんだ。
羨ましくはない、俺がリングに求めているのはそんなものではないから。
ただ、切なく思うだけだ。

そんな純粋な思いは、いつかは裏切られる。思いもしない事態にぶちのめされてしまうだろう。
それにあんたらは耐えられるのか?
……そうだな、そんなことを俺が心配してもしゃあない。
散々に潰され裏切られてきた俺が、まだこうして生きて、戦い続けてるんだからな。
一瞬、不貞たように笑ってしまった俺を、不思議そうにケニーが見詰めてくる。
「ダイジョブですか?サトさん?…お疲れチンコ!」
…くくっ、そうなんだよな。リングに集まってくるやつは例外なくバカで、下品で、いつかはぱっと散ってしまうような儚さがある。
それがいいんだ。それだから、いいんだよ。
次の試合が決まったらまた殴りあおうぜ、ケニー。そしてイブシよ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!間ガアイテゴメンナサイ…

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