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兎→虎4

アニメ虎&兎の兎→虎です
前スレより続いております
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

トレーニングルームに隣接したロッカールームに入る。
おじさんを降ろすと、ものすごい盛大にため息をつかれた。
随分ですね。ファンの方からの手紙には僕にお姫様だっこされたいとよく書いてあるのに。
手紙と言えば…だっこしている間ずっとおじさんが抱きしめていたその封筒。
「…それ、セキュリティシステムには通されていないんですか?」
大事に持つ価値もない卑猥なファンレター。
通常、送られてきた全ての物はセキュリティシステムに通されている。
危険な物や精神的にダメージのある内容の物は全て弾かれるはずだ。
「セキュリティシステムってのは、キーワードを拾って弾いてるだけだ。それさえ載って無かったら通過するようにできてる。
 ひっかかりそうなもんはぜーんぶ隠してるみたいでな。あったまいいよな~…これだって、手で隠れてたりしてたんだろ。」
さっき見たあの卑猥な画像が頭に浮かぶ。
「ああ、確かに…。」
「う…記憶してんなよバニー。早く忘れてくれ」
「この人からの物は受け取らないように言っておけばいいのでは?」
「……んん、でもな、ファンだから俺の。」
「あなたを快く思っていない人物の嫌がらせの可能性もありますが。」
「えぇっそうなの??!!…いやでもぉ!好きですって書いてあるし」
「書くでしょうそのくらい」
呆れた。
この人はこんな所でもこうなのか。
…ん?
「ちょっと待って下さい」
「あっちょ、おま」
なんだこれは
おじさんが開けたロッカーの一角に同じような茶封筒が数十通見えた。
ゴチャゴチャに物が入っているのにそこだけ妙に奇麗に整列している。今日届いた封筒もそこに重ねるつもりだ。

「なんで捨ててないんですか!」
「こんなもんそのへんに捨てて誰かに見られたらどうすんだ!…かといって家に持って帰るのも…それに…本当のファンかもしんねぇし」
立ちくらみがする。
「あなたが捨てられないなら僕が捨てます」
「だから、誰かに見られたら…」
「僕の家にはシュレッダーがあります。あなた、会社でシュレッダーにかけている時に見られるのを心配しているんでしょう?」
「バニーが見るのも嫌なんだよ!」
「見ませんよ」
「絶対?絶対に絶対?」
「しつこいですよおじさん。だいたい、僕はあなたの卑猥な画像に興味ありませんから。」
おじさんが変な顔で考えている。
無理矢理奪った方が良さそうだ。
手を伸ばすと、おじさんが封筒をギュッと抱きしめて僕に背を向けた。
「駄目だ!やっぱり捨てない!俺のファンだこいつは!」
…なんでそうなるんですか。
「嫌いな奴のために時間かけてこんなモン作らねーよ。うん。」
そう言って大事そうにしまった。
なんだろう。まただ。またイライラする。
博愛主義だろうか。
ルナティックは気に入らないがあいつの言う事には一理あると思っている。
僕だって両親を殺した犯人が目の前に現れたら、殺す事しか考えていなかった。
捕まえるだけだなんて。
殺さないという選択肢なんておじさんと逢う前までは考えた事も無かった。
僕に自分の価値観を押し付けるのはやめてほしい。
だけど…。
考え事をしている僕をよそに、封筒をしまって一息ついたおじさんが着替えをはじめた。
ネクタイに手をかける。グイ、と引かれたネクタイは形を崩し、やがて一本の棒になる。
きっちり止まっていたシャツのボタンを少し骨ばった指が外していく。
「…おいバニー、いくら俺でもな、そう見られてたら着替えにくいんだよ。」
「何がです?男同士ですよ。」
「そうだけど…なんつーか…」

そう言いながらも行為は続けられる。
シャツが肌蹴られ、上半身が露出する。
トレーニングしているところなんか見た事無いのに、随分引き締まった腹筋をしているな。
僕より少し薄い胸板だけどしっかり筋肉が乗って盛り上がっている。
「おじさんの割にはいい身体ですね。」
「おっそうだろそうだろ?おじさんの割にってのは余計だけどな。」
おじさんが嬉しそうに力こぶを作る。
「僕よりは劣りますけど、まぁ、充分いい身体と言えると思いますよ。」
「うるせぇ」
そういえば、肩の傷は治ったんだろうか。
見てみようと近付くとふわっと甘い香りがした。
おじさんから香っているのだろうか。
首筋に鼻を近づけようとしたら、おじさんが後ろに引いた。
「ちょっと、避けないでください。」
ロッカーの前に追い詰め、顔の横に手をつき逃げ場を無くした。
おじさんの眉毛がハの字になる。何が嫌なんです。
もう一度近付いて息を吸い込む。
やっぱりおじさんからだ。香水をつけているのか。
そういえば、身に着けている物も洋服も、なかなか気を遣っている気がする。
がさつなだけかと思っていたのに、意外と繊細な部分もあるんだな。
…右肩にはっきり残るまるで斬撃のような火傷の跡。痛々しい…
「痛みは…まだあるんですか?」
「え?何が?」
「…ここですよ」
傷をそっとなぞるとおじさんがビクッと震えた。
「やはり痛みが…」
「もう痛くもかゆくもねぇよ」
どけとでも言うように胸を押される。あれ、なんかイライラする。
もう少しおじさんに近づきたいのに。

「おいバニー、もういいだろ。そんな心配すんな」
もういい?ちっともよくない。
「だって、僕を助けたせいで…この傷、残ってしまうんでしょうか…」
もう一度肩に触れると、やはりおじさんがビクリと動いた。
…変な反応だ。こうしたらどうなる?
右肩から首筋にかけて撫で上げると、おじさんはくすぐったいのか肩をすくめた。
「バニー!」
「なんですか?」
「早く着替えて行こうぜ。トレーニングの時間終わっちまうぞ。」
「話を逸らさないでください。」
「もういいだろう」
「よくありません。おじさん、いつもそうやってはぐらかしていませんか?」
あんな手紙を送った人間の事でさえ信じたのに。
いつもいつも、どこかで僕に立ち入らせない何かがある気がする。
「おはよう!!そしておはよう!!…あれ?君たち一体何をやってるんだい?」
「!おぉ、お疲れさーん」
隙を突かれた。強めに押し返されおじさんが僕から離れる。
やっぱり、か。
気のせいじゃなかったんだ。
僕の心に土足でずかずか入り込んでおいて、僕には入らせないですって?
そんなのは許せません。
正直、未だに僕はよくわからないんです。
あなたを信じていいのか。
こんな事は初めてだから…自信なんかあるわけがない。
人を信じるという事は僕にとって恐怖ですらあるんです。
あなたが僕を信じてくれないのなら、僕もあなたを拒絶します。
だけどもし、僕の中であなたの存在が拒絶できないほど大きくなっているとしたら…
どうしたらいいんだろう…

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
読んで頂いてありがとうございました。

  • 萌えました? -- むくゆ? 2011-07-27 (水) 13:28:29
  • 野暮天スカイハイが絶妙すぐるw -- bou? 2011-12-05 (月) 04:12:20

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