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ル/ナ/ド/ン/第三 冒険者×弱気吸血鬼7

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )色々とありがとうございます!!

そう思ってはみたが、確かにヴァンパイアである。
ちょいちょい、と頬をなでるが、特に起き上がる気配もなく、夢の中に入ってしまっていた。
バルドは酒場での友人たちとの会話を思い出した。
『なあ、気の弱いヴァンパイアがいたらどうする?』
日本酒を流し込みながら、バルドは友人数人と会話した。
突然の質問内容に、皆は驚いたが、すぐに笑い出した。
『何を言う、そんな吸血鬼などどこにおるというのだ、奴らは気位がやたら高い、人間を馬鹿にしていると相場は決まっておる』
日倭戦士の友人は、軽く笑ってその言葉を流した。
もちろん彼も随分とやり手の冒険者。ほかの友人も同様で、世界を回っては様々な敵と戦い、宝を手に入れたりしている。
『気の弱いって、考えたこともなかった。新手のジョークかい?バルド?』
マニカパの僧侶の友人まで笑い出した。
『だよな、大体ヴァンパイアって言ったら、性格悪いよな。絶対人間になつかねーって、そう思うよな。寂しがり屋のヴァンパイアとかどうだよ、いたら面白いとおもわね?』
バルドは夜桜のことを思い浮かべた。
人間と話したい、旅をしたい、添い寝されたかった、そして添い寝してやれば、腕の中で安心して眠ってしまう。
何かあればすぐに謝るし、常に困った顔でおろおろしている様は、バルドにとっては新鮮だった。
『面白い、けど』
『そんな吸血鬼は存在せん、断言しよう』
友人たちは揃って口にした。
そこまで思いだした。
(存在するってーの。しかも、名前がないから決めてほしい、とか、寂しくて話をしてくれとせがむとか、本当にいるんだっつーの)
でもなぜこの部屋で寝ているのか。それに、とても安らかな寝顔。
ヴァンパイアは人間より嗅覚が優れているらしい。
(俺の匂いで安心して寝ちまった?)
そんなまさか、と自分の考えを笑って打ち消した。
「夜桜、起きねーとまたキスしちまうぞ」
夜桜の頬をぺちぺち叩くと、その刺激に反応して、小さく声を漏らした。
「ん、んん…」
口が少し動いた。
声には出ていないが、その唇は間違いなく『バルド』と、動いた。
「こら、起きろ。土産もあるぞ」

「…、あっ、しまった、寝てしまった!お帰り、バルド。すまない、起きているつもりだったのだが!!」
明らかにぎくしゃくしているのは、昼に口づけされてのことを意識してだろう。
その様子を軽く笑いながら、荷物の中に入っている包みを開けた。
何かの葉で巻かれた甘味である。
「?」
ガルズヘイムにしか知識がなかった夜桜は、全くそれが分からず、興味を持ってみたが、やはり判らない様子だった。
「食えよ、人間の食い物も美味いんだ。柏餅ってやつでなあ、ここ日倭ではよく食われている奴なんだ。せっかくこの俺が買ってきたんだぞ、ほら、無理してでも食え」
さすがは自分勝手なバルド、勝手に買ってきたものを押しつける。
 夜桜はそれを受け取ると、白いその柏餅に口をつけた。
しばらくもぐもぐと食べていたが、あんこの味が口に広がると、驚いた顔をしたが、吐き出すということはしなかった。むしろ、嬉しそうな顔をしていた。
「!!ほいひい」
「バーカ、なんて言ってんのかわかんねーよ、全部食べてから言え。茶も持ってくるけど、抹茶と普通の茶どっちがいい、甘いやつには抹茶がいいぞ」
ハムハムと一気に柏餅をたいらげた。
初めて食べた人間の食べ物、柏餅は夜桜にとって忘れられないほど美味しかった。
ガルズヘイムでは絶対食べられない菓子なだけに、希少だろう。
「抹茶か」
出された抹茶はとても少なく、濃い緑で泡立っていた。
口の中が甘いので、その抹茶を一気に飲んで、むせた。
物凄く苦い。
「な、なんだこれは…」
「甘い和菓子には抹茶って相場は決まってるんだよ。口の中甘ったるいときにそれ飲むとすっきりするだろ。日倭の酒場行くと大抵これと和菓子もおいてあるぜ。酒場というのもちょっとおかしいが、飲み屋に近いかな」
ごほごほとむせて、苦みが舌に強烈に残る。
出した当の本人は、もう一つ抹茶を作ると、丁寧に作法の通りにして、ゆっくりと飲んだ。
ことんと、丁寧に器を置いた。
よく見れば、その器も高そうなものだが、アイテムの価値までは夜桜にはわからない。
「俺日倭の血が入ってるから結構こういうの平気」
「口直しに何か食べたい…」
「んじゃ俺の血吸えよ」
と、ハイネックを少し下ろして首筋を見せる。

どくどくと脈打つ血管にかぶりつきたくなるが、吸いすぎたら、と、夜桜は身を引いて小さく手を振った。
「いっ、いい、殺してしまったら大変だ」
「ちょっとだけ飲めばいーじゃん」
「うう…いただきます」
首筋に軽くかみつくと、すぐに血の味が口の中に広がった。先ほどの和菓子より、数段甘く、まるでチョコレート。日倭にはそんなものないだろうが、ガルズヘイムでは菓子として売られている。
「よし、いい子だ」
かみつかれながら、バルドは余裕を持って夜桜の髪をなでた。

「バルド、話をしてほしい」
やはり夜も時間を過ぎると、バルドが布団の中で本を読んでいるのを、夜桜が邪魔をした。
読んでいる本はガルズヘイム製のもので、内容は夜桜にも分かった。
「おおー、いいぞ。その前にお前、読書は好きー?」
「好きだ」
頷くと同時に、本を押しつけられた。
人間の、この世界での出来事をまとめた本だった。それはバルドが今読んでいる本と全く同じで、夜桜用にと二冊買ってきたという。
(バルドは意外に優しいんだ)
「世界史だ、何年にどの国王が変わったとか書いてあるし、ほかの街や国についても詳しく載ってるぜ。俺がいねー時にでも読んどけよ、いつか連れてってやっからよ」
随分高そうに分厚い本。
それを二冊、そういえば茶菓子もくれた。
夜桜は座ったまま深々とお礼した。
 本当に興味すらなければこんなに世話まで焼いてくれないだろう。
「ありがとう、バルド」
「なんだよー、このバルド様がこれくらい買うのは普通普通!バルド様は金持ちで有名だからな!」
おちゃらけて笑うが、その言い方に悪気はなく、むしろ夜桜を安心させた。
「そうだ、バルドの話がまた聞きたい。特に、その、バルドがどんなふうに恋愛してきたか」
そうだ、こいつはモテる。
その割に結婚しないというのはどういう意味なのかが分からなかった。
「ん?いいぜいいぜ、よし、もっとこっち来い」
そこまではいつくばっていくと、夜桜は遠慮がちにバルドに抱きついた。
昨日のように腕の中に入れてほしいことを訴えているのだ。
バルドはそれに気づいて、腕を広げて抱きよせる。
(バルドの匂い…)

「俺がなー、冒険に出たのは十六歳、成人してからだ。親父の後をついて回ってよ、まあその親父も俺が二十歳になると死んじまって、
祖父母もいないし、母親はすでにいなかったから、事実上一人になっちまったな。まあ、酒場にいたところにあの二人と出会ってリーダーに
なってから、七年間ずっと一緒。でも不思議と仲間と恋愛に発展することはなかったな」
バルドの匂いに安心しながら、夜桜は聞き続けた。
くん、とかぐたびに、優しいにおいがする。それがバルドの匂い、ほかの誰も持っていない。
「シルフが暴れてるってんで、ためしに挑んだらあっさり倒れて。それからよく人が勝手に宿訪ねてくるようになったな」
「人間は単純だな」
「そうなんだ。愛とか関係なしに、『あの有名人だから』って来るんだ。ちょっと複雑だけど、据え膳食わねばなんとやら。結構食ってきたなー」
(私が、抱けと言ったら、抱くのだろうか)
自分が変なことを考えているのに気づいて、夜桜は軽く首を振る。
 あくまで考えていることは、賭けに負けてしまうということだ。
「だから何度も言うけど、そういう無防備なところ見せてると俺食っちゃうよ?」
「鈍器で殴られたいようだな」
「ふっ、その割に目がとろんとしてるし。可愛い可愛い」
ぐりぐりと夜桜の頭をなでた。
それを片目をつむって、おとなしく受ける。
脅し文句ですら迫力のない声で、今にも眠ってしまいそうな弱い声だった。
「でも、バルドといれば寂しくないのは事実だ」
「お、デレた」
「何語だそれは。事実を言ってはいけないのか」
少しすねて膨れて、服をきつく握る夜桜を見て、バルドがまた笑い飛ばす。
「はは、そういうところも他のと違うよな。ま、それで今に至るんだが、最近は女遊びしてないな。周りは結婚してるんだが」
そこでバルドの顔を見上げた。
目つきは悪いほうだが、にこにこ笑っていて、怖くもない。
大体ヴァンパイアというものを見る人間の目つきは殺気があふれていて、問答無用で戦闘になる。
それどころか、彼は夜桜を連れて帰った。
 気まぐれにしてもおかしな男。そう思って、言葉を紡いだ。
「なぜバルドは結婚しない?二十七といえば人間は大抵結婚しているし、子供がいるのが多い」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )後数回で終わります

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