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僕の相方

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
地知ん風井風井 側田アナと九っ寸

見上げた空はどこまでも落ちていけそうな位に澄んでいた。大阪で見ていたのとは全然違っていて、広くて、高くて、
深い深い海の底を眺めている気持ちになる。
首が痛くなるまで見上げても尚、届かないと知りつつ左手を伸ばす。手首にはめているパワーストーンの数珠の水晶が
きらりと光を弾いた。
抜ける様な青空は、このお守りをくれた、1コーナー限定の相方である彼を思い出させる透明さだ。きれいな水を
ふんだんに注がれて育った植物みたいな彼にこの空を見せたら、一体どんな間抜けな言葉で感動を表してくれるんだろう。
本業はDJな筈やのに大丈夫なんかなぁ、あの日本語の間違いっぷり。でもあの天然さが憎めない。
九っ寸、元気にしてるかなぁ。
里心がつきそうになって、慌てて首を振った。
旅はまだ半分も過ぎていない。局から言い渡された企画は60日間でほぼ世界を一周するものなのだから。
あぁ、でも、九っ寸、今頃何してるんかなぁ。仁志さんとロケで歩いてるかな。それとも他の仕事かな。いやいや
ほんまはお休みで、大好きな自転車で走ったりしてるんやろうか。中継の後で聞いてみたら良かったかな。
どっちにしろ、元気にやってるんやろうけど。って、時差あるやん。今頃日本は何時なんやろ。
「あー…………会いたい、なぁ」
心の奥底から浮かび上がってきた言葉が、無意識に声になってぽとりと空に落ちる。
旅立つ僕を見送ってくれた時のあのくしゃくしゃの泣き顔や、ロケの時の苦しそうな泣き出す寸前の顔が頭を過ぎった。
どうせなら笑ってる顔がいいんやけど。
笑顔、笑顔。頭の中のデータベースから、束になって仕舞われているそれを引っ張り出す。彼独特の、目が糸みたいに
細くなる、顔の全部で笑うあの笑顔。
離れて想う九っ寸は、普段のイライラさせる言動や気弱な表情がない分、すごく良い部分だけが強調される。近くにいれば
ヘタレな男は離れていれば天使みたいやった。
「……阿呆やな、俺」
いい歳をした男相手に天使って、何?

旅の疲れが脳に回ってるんとちゃうん。ないわ。めっちゃないわ。
あぁ、でもなぁ、大変やねんって、海外って! 日本でもそうやけど、いい人ばっかりちゃうねんもん。
カッチーンてくる事も多いし、正直めげたくなる時もある。よぉ二志さんは達成しはったよな。その仁志さんは
僕は前向きやし、何処に行っても大丈夫って太鼓判押してくれた。アナウンサーとしても尊敬する先輩な仁志さんの
言葉やし嬉しいけど、僕はそんな頑張れる子とちゃいますよーって弱音を吐きたくなる瞬間もある。でもそんな時、
いつも九っ寸のくれた手作りの数珠が助けてくれる。
手首の上で存在感を示すこれが目に入ると「がんばろう」って自然に思えた。この10ヶ月、新大阪から仙台まで届く
距離の間、僕はずっと九っ寸の前を歩いてきた。すごい雪の冬も、暑い夏の日も、大雨に降られた夜も、ぽかぽかした
春の日差しと桜の花の下でも。
負けへんよ、大丈夫。僕が負けたら九っ寸はまた泣くやろうから。……達成して凱旋帰国しても泣くやろうけど。
号泣やろうな、絶対に。
傍にいても、離れていても、九っ寸のくれた想いは一緒に居てくれる。世界の何処にいたって僕は一人やない。
なぁ九っ寸。九っ寸が言うてたみたいに、一回り成長して帰るから。その間、代打の二志さんと一緒に頑張ってて。
二志さんは40過ぎて独身やけど面倒見の良いいい人やから、きっと九っ寸を助けてくれはるよ。……でも九っ寸が
僕と歩くより二志さんとの方がいいわーって思ったら嫌やけど。九っ寸の相方は僕でありたいねん。ウクレレみたいに
二志さんにあげてしまう訳にはいかない。
僕は頑張って約束した通り無事に帰るから、忘れんと『側田さん、おかえりなさい!』ってふにゃふにゃの笑顔で
迎えて欲しい。百万円賭けてもいいくらいに号泣するやろうけど、最後には笑って欲しい。
疲れてきたから腕を下ろす。小さな音を立てた数珠。身につけてると万事上手くいくし、いざって時にはぷつんと切れて
ばらばらになって、僕の身代わりになってくれるらしい。おなか痛くなった時とか。そう思うとなんか笑えてきた。
笑えてる間は大丈夫や。

明日にはまた違う国に移動するから、この広い空も見納めかも知れへんな。この空の下に九っ寸もいてる。二志さんも
隅さんも、みんながいてる日本と繋がってる。今日もきっと、あの番組を楽しいものにする為にみんな頑張ってるやろう。
せやから僕も頑張ろう。
ほないっちょ、やりますか。
心の中だけで呟いて立ち上がる。
会いたいけれど、今はお預け。遠い遠い日本にいる彼をもう一度思い返して。そっと数珠に指先で触れた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
なんだかんだといいコンビな二人がいとしいです。
投下代行ありがとうございました。

  • この二人が見れるなんて…!ありがとうございました! -- 2011-08-18 (木) 22:18:58

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