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グリーン・ホーネット ブリットとカトー 「俺達に明日はある・前編」

緑蜂 社長×助手

1乙です。
半生注意。映画「緑蜂」より、社長と助手。やっぱり恋人未満。
二回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

退社後の自宅で、深夜のパトロールの前に腹ごしらえをしようと相棒に持ち掛けると、今夜は約束があると断られた。
「約束ってなんだ。俺は聞いてないぞ」
「ブリシト、一昨日会社で言った筈だぞ。水曜の夜は予定があるから、パトロールは無しにしようって」
「そうだったっけか?覚えてないな」
「真面目に聞いてなかったんだろ。君はあの時、レ/アのお尻に気を取られていたからな。とにかく今夜はダメだ」
秘書の名を口にした相棒に、俺は疑惑を抱いた。以前にも友達に会うとか言って一人で出かけたが、この野郎実は俺の美人秘書と、こっそりデートを楽しんでいたんだ。
「力ト-、誰と会うんだ。またトニーって奴か?」
「……いや、トニーじゃないよ。昔の仕事仲間」
「仕事って、ああ、車の」
「そう、修理工場の。久しぶりに一緒に飯を食おうって誘われてね」
秘書とのデートの時に使った架空の友達の名前を出すと、相棒はほんのちょっと動揺したようだった。表情は変わらないが、長時間一緒にいるせいか何となくわかる。
仕事仲間と会うという言葉には嘘はなさそうだが、それでもやっぱり疑ってしまう。
「とか言って女に会うんじゃないのか、力ト-」
「いや、男ばっかり。四人で来るって言ってた」
「……お前、けっこう友達いるんだな」
そりゃいるよ、と相棒は呆れたように言ったが、こいつが友達といるとこなんて見たことがなかったから、俺には意外だった。
公私問わず俺とくっついて行動してるんだから、まあ当然と言えば当然なんだが。
「ふうん。そいつらとどこで飯を食うんだ?」
「言ってもきっとわからないよ、君が行くような店じゃないから」
決めつけられたのがおもしろくなく、なおも問い質すと相棒は店の名前を口にしたが、確かに聞いたことのない店だった。
「な、わからないだろ。もう行くよ、時間に遅れそうだ。じゃあな、また明日」
「ああ、また明日」
ヘルメットを被った相棒は愛車に跨がり、エンジン音を唸らせて颯爽と屋敷を後にした。

取り残された俺は、自分の部屋に入った。食事の支度が出来てるとメイドが知らせに来たが、何故か食欲が湧かず、後で食べると断った。
暇を持て余し、書斎に移動してパソコンを開いてみたが、ホーネシトメールは届いていなかった。
何となく相棒が向かった店の名前を思い出し、綴りを打ち込んで検索してみると簡単にヒットした。ここからはわりと離れた下町にある、ダイナーの名前だった。
その店の写真画像を眺めていると、急にあることが気になった。
あいつ、本当にここに向かったのか?また上手く俺を出し抜いて、別の場所で秘書と落ち合ってるんじゃないのか?
異様にむしゃくしゃした気分になり、俺はパソコンを乱暴に閉じて椅子から立ち上がった。

数分後、俺は街に出て車を走らせていた。自分で運転するなんて、いつ以来だろう。あまりにも久しぶりで、出発してから何回かエンストを起こした。
うちにあるやつで一番目立たなさそうな車を選んだが、マニュアル車だったのが失敗だった。だが運転しているうちに、なんとかカンは戻った。
ナビを頼りに、俺は目的の店に向かった。もしも相棒がそこにいなければ……明日はまた、喧嘩になるかもしれない。

店近くの路上に駐車し、中の様子を伺った。何組か男ばかりの客はいるが、顔がよく見えない。俺は車を降りた。
なるべく地味にと心がけて、ダサめのトレーナーにジーンズ、これまたダサいパーカーを羽織り、キャップを目深に被って眼鏡まで掛けた。完璧な変装だ。
しかし尾行の緊張感は止まらず、顔が見えないように俯き加減で、恐る恐る店のドアを開いた。
途端にわっというような喧騒と煙草やコーヒーの匂いが、一気に俺に向かって押し寄せて来た。
相棒を見つけた。一番奥のボックス席に、壁を背中にして座っていた。
入り口からすぐの席に腰を落ち着けると、太った中年の女店員がやって来たのでコーヒーを注文した。
こんな店のコーヒーなんてろくでもない味に決まってるが、座った以上何も頼まない訳にはいかなかった。

車から持って来た新聞を読むフリをして顔を隠し、俺は相棒の様子を観察した。
相棒の両隣に二人、テーブルを挟んで向かいにも二人、合計五人の男達が肩を寄せ合って料理を摘みながら談笑していた。
相棒の他にアジア系の男が一人いて、ひょっとしたらあれがストリート時代からの仲間なんだろうかと想像した。
運ばれてきたコーヒーを一応啜ったが、やっぱりとても飲めた物じゃなかった。ソファは固くて、長く座ってたらケツがおかしくなりそうだ。
よく考えたら、ここに相棒がいるのを確かめたんだから、長居する必要なんてない。でも俺は、相棒からしばらく目が離せなかった。

よっぽど気のおけない友人達なのか、相棒は常にない明るい表情をしてよく喋り、よく笑った。遠くから眺める俺は、俺といる時にはあまり見せない、奴の別の顔に驚いていた。
あいつあんな風に声を上げて笑うんだな、俺のジョークには大して反応しない癖に。昔からの仲間とのお喋りはそんなに楽しいかよ、どうせくだらない話で盛り上がってるんだろ。
マズそうなハンバーガーなんか食いやがって、あんなのより俺んちの夕食がよっぽど……

次第にイライラした気分になり、いたたまれなくなった俺は席を立った。
その拍子に手にしていた新聞が引っ掛かり、床に灰皿を落としてしまった。ガラガランと大きな音が響き、客の何人かがこちらに顔を向けた。
相棒も目線を寄越して来たのでひやりとしたが、それは一瞬のことですぐ仲間に向き直ったので、俺はほっとした。
レジにいた女店員に、釣りはいらないと大目に金を渡して店を出た。
大股に歩き車に戻ると、判別がついた相棒を店の外から眺めた。
相変わらず話に花が咲いているようで、まだまだ帰る気配はなかった。それを苦々しく思い顔を逸らすと、ちょっと距離を置いて路上に停めてある相棒の愛車に気付いた。来た時は、他の車の陰になっていて見えなかったんだ。
あいつ無用心だな、大事なバイクをこんなとこに置いといて、盗まれたらどうするんだ。仕方ない、店から出るまで俺が見張っといてやるか。全く世話の焼ける奴だ……

何となく帰る気になれないでいた俺は、居座る正当な理由を見つけたことに満足して、一人頷いた。

店内と路上を交互に見張って一時間ちょっとが過ぎ、彼らはようやく席を立った。
出て来た相棒に見つからないように、運転席にいる俺は頭を低くした。
バイクの側にたむろして、男達はまだ語らっていた。仲間の一人が肩を叩いて後方を親指で指し示すのに、相棒は首を横に振って何か答えた。
どうやらこれから別の店に行くらしいが、奴は断ったらしい。
男達は手を振って歩き去り、相棒はそれを見送ってから、手にしていたヘルメットをおもむろに被った。顎のベルトをかけながらこちらにちょっと目をやったように見えて、俺はますます頭を下げた。
相棒は何も反応を示さず、バイクに跨がるとエンジンをかけた。赤いテールライトは、あっという間に道の向こうに消えてしまった。
俺はキャップと眼鏡を外し、車のドアを開けて外に出た。相棒が走り去った闇の彼方を見つめて、俺は何をやってるんだとため息をついた。
あいつどうして次の店に行かなかったんだ。きっと酒でも飲んで、またバカ話で盛り上がるんだろうに。
バイクがあるからか?いや、明日また仕事だからか。でも俺の経営パートナーって立場だから、例え遅れて出社したって誰も文句は言わない筈だ。
きっと明日も朝から俺の屋敷に来て、車を運転して会社に向かい、定刻に二人で出勤するつもりなんだな。あいつはそういうとこ、きちんとしてて律儀な奴なんだ。
待てよ、ってことは飲みに行けなかったのは、俺のせいになるのか?……
思考がマイナスの方向に行きかけるのを感じて、俺は考えるのをやめた。
「……帰るか」
一人呟いてドアを開けようとしたが、不穏な空気を感じて後ろを振り返った。
いつの間に近付いたのか小汚い身なりをした若い男が三人、俺の車を眺めてニヤニヤと笑っている。
「よう兄さん、なかなかいい車に乗ってんな。服はダッセエけど、その腕時計も高そうだ」
「けっこう金持ってんだろ?俺達に貸してくんねえかな」
案の定タカって来たチンピラ達がウザくて、元々悪かった気分はいっそうひどくなった。
「うるせえ、とっとと失せろ!お前らみたいなゴミ野郎に、貸してやる金なんかない!」
威勢よく叫んでから、しまったと後悔した。今の俺はロスの夜に暗躍する仮面のヒーローじゃない、ただのブリシト・リ-ドだ。ブラシク・ビューティーもガス銃もない、頼れる相棒もここにはいない。

素直に数百ドルも渡してやれば、こいつらは満足して引き下がっただろうに、余計なことを言っちまった。
道路には車が行き交い、往来にも通行人はぽつぽつといたが、こんな状態の俺をわざわざ助けてくれる人間がいる筈はない。ああヤバい、これは多分、かなりヤバい……と焦っていると、チンピラの一人がおもしろそうにぐっと顔を寄せて来た。
「へええ、ずいぶんデカい口叩くじゃねえか。ゴミ野郎で悪かったなあ」
「いや、その……」
「気が変わったぜ。金もだが、その車も貸してくれよ」
「……悪かった!つい口が滑って。ほら、金ならやるから勘弁してくれないか」
財布から何枚か札を掴み差し出すと、チンピラはむしり取るように奪ってなおも笑った。
「遅ぇんだよバーカ。その財布ごと寄越して、さっさと車から離れな」
「こいつ、俺らをなめやがって気にくわねえ。痛め付けてやろうぜ」
「それで金も車もいただくと。なあ、最高に楽しいじゃねえか」
チンピラ達は汚い声でがなり立てて笑った。冷静になれ、と俺は自分に言い聞かせた。だがチンピラの一人が取り出したナイフを見て鼓動はさらに早まり、体中を脂汗がタラタラと流れた。
絶体絶命のピンチだ、どうするブリシト!

「彼から離れろ」
ふいに響いた静かな声の方向に、俺もチンピラ達も目をやった。
ヘルメットを抱え黒い革ジャンを纏った、紛れもない俺の相棒がそこに立っていた。
「なんだよ黄色いの!こいつ、お前の彼氏かよ?」
「引っ込んでな、お嬢ちゃん。俺らこの生意気な野郎に話があるんだ」
相棒のおとなしそうな容貌に油断して、チンピラ達は奴をからかった。気分を害した風でもなく、シニカルに笑った相棒はさらに警告した。
「いいのか?後悔するぞ」
「うるせえぞ、何を後悔するってんだ!」
「目障りだ、こいつからやっちまえ!」
矛先を変えたチンピラ達は、相棒に向かって躍りかかった。

一瞬だった。
ナイフを振りかざした男の横っ面にヘルメットを叩き付け、懐から銃を取り出そうとした男の右手ごとその腹に回し蹴りを喰らわせた。
返す体で最後の一人の鼻柱に強烈な裏拳を見舞うと、そいつが握っていた百ドル札がひらひらと空中に散った。
それがほんの数秒の出来事で、地面に倒れ伏しひざまずいて呻き声を上げる男達を俺はポカンと見つめた。

再びヘルメットを抱えた相棒は、チンピラが取り落とした銃を拾って男達に突き付けた。
「まだやるか?」
「い、いや!もういい、悪かった!」
あたふたと走り去るチンピラ達を見送ると、相棒は近くのゴミ箱の中に銃を放り込んだ。それから腰をかがめ、道に散らばった札を拾い集めてから俺の側に戻った。
「ほら、君の金だろ」
「……あ、ああ、すまん」
手渡された札と、向き直った相棒の顔を交互に見つめていると、奴は小さくため息をついた。

「一体何をやってるんだ、ブリシト」
「何って……」
「君みたいなお坊ちゃんが一人で来るには、この辺りはけして安全とは言えない土地柄だ。なんでわざわざ来た、自分で車を運転してまで」
「そりゃあ……俺だってたまには、ドライブくらいするさ。うっかり遠出し過ぎたが、まさかお前に偶然会うとはな。いやあびっくりだ」
「白々しいぞ、ブリシト。店の中にいただろ」
「……気付いてたのか!」
気付かない訳ないだろ、と鼻で笑われて俺はうろたえた。バツの悪さと恥ずかしさが脳と体を全速力で駆け巡り、言うべき言葉がしばらく見つからなかった。

「君が入って来た時から気付いてたよ。外には見覚えのある車まで停まってるしね」
「……俺がいるのをわかってて、知らないふりをしてたのか」
「だって、声をかけたりしちゃ気まずいだろ?こっちも友達といて、君を紹介したり説明するのが面倒だったし」
面倒、という言葉にカチンと来た俺の口調は、段々荒くなっていった。
「面倒なのに、帰ったと見せかけてわざわざ戻り、俺のピンチを救って下さったのか。お優しいな力ト-」
「そりゃ、何事もなく君が帰れば僕も本当に帰ったけど、変な奴らに絡まれてたから。放っとく訳にいかないじゃないか」
「そうかそうか。俺が一人じゃ何も出来ないアホのボンボンだから、お前はご親切に見守っててくれたんだよな」
「よせよ、そんな言い方」
ムッとした相棒の表情に、これ以上はやめとけと俺の中の天使が囁いたが、動き出した口はもう止まらなかった。

「うるさい!大体あんなクズ共に絡まれたのも、元をたどれば力ト-、お前のせいだ。こんなろくでもない場所に来たのは、お前に前科があるからだぞ」
「……そんなことだろうと思った。僕が嘘をついてレ/アと会ってやしないか、気が気じゃなかったんだろ。おあいにくだったね」
「確かにな。でも店を出てから彼女と会うかもしれないだろ。だから俺は、ずっと見張ってたんだ」
「ブリシト、いい加減にしろよ。疑いや嫉妬が過ぎるとみっともないぞ。今夜は本当に、友達と会ってただけだ」
俺の言い訳を真に受けた相棒は、眉をひそめてたしなめた。俺は奴の嫉妬という言葉がまたカンに障った。
「友達、ね。よかったな、ごたいそうなお友達と、楽しくお食事が出来て。俺との夕食を断って、あんな、サイテーの店で」
「ブリシト……」
「コーヒーは泥水みたいでクソまずいし、お前らもあんなまずそうなもんよく食えたな。どうせならもっと、マシな店に行けよ。お前の友達が選んだのか?まったくいい趣味だよな」
「おい、ブリシト。僕のことはともかく、友達を悪く言うな」
「怒ったか?本当のことじゃないか」
相棒は肩を怒らせて何かを言いかけたが、ふいに目を閉じ深く息をついた。そして開いた目で俺を見据え、感情を抑えた声で呟いた。

「君には最低かもしれないけど、同じ仕事をしていた頃に、僕は彼らとああいう店でよく飯を食ってたんだ。君がごひいきにしてるような店の味とは比べ物にならないだろうが、それでも僕らには慣れ親しんだ、悪くない味だ」
「……」
「自分達なりの楽しみ方をしてる人間に、一方的な価値観を押し付けて罵るなんて……正直、君をちょっと見損なった」
「おい、力ト-……」
「今度こそ僕は帰るから、君もさっさと帰れ。安心しろ、会社にはちゃんと顔を出すから」
無表情でバイクの方へ歩いて行く相棒を眺めながら、俺は猛烈に後悔した。
違うんだ、そんなつもりはなかった。傷付けるつもりじゃ……ただ俺は、不愉快だったんだ。仲間と騒いでるお前の笑顔を見て、なんだかおもしろくなかっただけなんだ。

このまま帰してはいけないと焦った俺は、足早に立ち去ろうとする奴の背中に駆け寄った。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!

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