ケンシロウが虎化する話
更新日: 2011-10-10 (月) 05:00:37
|>PLAY ピッ ◇⊂(*´ω`*)一応長兄×末弟(と三兄×次兄っぽい感じ)
ケンシロウが目を覚ますと、自分が虎になっていることに気がついた。
昨日の夜は飲みだったので、自分の容量も弁えずガンガン飲んでいると、気分が悪くなった。
それで部屋の隅で臥せっていると、アミバがやってきて、
「ふぉ~飲みすぎで気分が悪くなったのか、それはいかんなぁ~。俺の発見したこの新たな秘孔を突けば、お前は忽ち気分が良くなる」と言ってきた。
俺は丁重にお断りしたのだが、強引に突かれてしまった。そして別に気分は良くならなかった。大体そんな秘孔があったらとっくに北斗神拳に備わっているだろう。
その後トキに介抱してもらって、なんとか気分が収まったので家に帰ってきて寝た次第だった。
それで目を覚ますと、何故か体が変なのである。
手も足もなんだか短いし、それに尾があるような気がするのである。
どうにも体がうまく動かせないので、これが二日酔いというやつか、とケンシロウが思ってなんとか体を起こして自分の手を見ると、手ではなくて前足になっていた次第である。
(…いい肉球だ…)
思わずケンシロウは指で触りたくなったが、指が無い(一応あると言えばあるのだが)ので、できないことに気づいて悔しがった。
さて、どうしようかと思った。
今の自分を見て、ケンシロウだと気づかれることはないだろう。下手をするとラオウ辺りに殺されかねない。
しかしお腹は減ったしトイレに行きたい気もする。
兄弟と顔を合わせなければいいのだ、そう思ってまずは寝台から降りようとした。
この体に慣れてないので寝台から転げ落ちる形になった。
以前テレビで見たときには、ネコ科の動物は高い所から落ちてもひらりと身を躱し着地していたのに、何故今の自分はできないのか、理不尽である。それでもなんとか部屋の扉の所まで行って、恐る恐る開けた。
どうやら誰も居ないようだった。それで部屋から出て、扉を閉め、先ずは朝食でも摂ろうかと思った。
「ぬ…?」
廊下の先にラオウが見えた。
俺の人生終わった、とケンシロウは思った。
(いや、いくらラオウでも、家の中に虎が居るからといって直ちに殺そうとしたりしないだろう)
ケンシロウは少し前向きに考えた。
ケンシロウが其の場で立ち止まっていると、
ラオウは歩み寄ってきて、
「ほう…虎か…二日酔いを覚ますのに、丁度よい」と呟いた。
やはり俺の人生は終わった。
とりあえずラオウに対抗するためにオーラを纏ってみた。
「ほう…貴様もオーラを…だがこの拳王の敵ではないわ!」
やはり慣れない虎の身では限界がある。オーラを纏うことはできても、ラオウの剛拳を躱すことができずに、死ぬだろう。
「死ぬがいい!」
「…何やってるんだ、兄さん」
トキだった。
何といい所に現れてくれたのだろう。
「ぬ…トキ…」
「何をしているんだ…」
「うむ、虎が居たのでな」
「そんなホイホイ殺すのは止めてほしい。ひょっとしたら師父が私たちに黙って通販で買ったのかもしれない」
「ぬう…」
通販で虎は買えないだろう、とケンシロウは内心突っ込みつつ、とりあえず助かった、と思った。
「ほら、来なさい、朝御飯あげるから」
ケンシロウはトキについて台所へ行った。
「上手く歩けないようだが…怪我でもしているのか?どれ、少し見てあげよう」
それよりやはく朝食を。
「ふむ…特に異常は無いようだ…さて…」
ようやく朝食か!そういえば一昨日のカレーがまだ残っていたよな…確か…。
昨日は飲みで誰も家で夕食を食べてないわけだし、カレーだ…二晩じっくり寝かせて美味しくなったカレーだ!
「はい、朝御飯」
何故生肉の塊なんだ…トキ…。
確かに虎の食事と言えば生肉が当然なのかもしれない。
しかし自分は虎であって虎でなく、実際にはケンシロウなので、生肉でなくてカレーを所望するのが当然である、というのをトキが分からないのは当然である。しかし…。
「どうした、食べないのか?」
当然これ、味付いてないよな…せめて塩胡椒を…。
ケンシロウはトキに催促しようと思ったが、その時、誰か食堂にやってきた気配がした。
「やあおはよう、ジャギ」
「ああ~…おはよう兄者…ってうおっ!なんで虎が居るんだよ!?」
ジャギは咄嗟に懐からショットガンを取り出してケンシロウに向けた。
「動物に無闇に銃を向けるものではない…」
「いや、動物って、猛獣じゃねえか!暴れたらどうするんだ!」
「その時は私が確実に仕留めるから心配いらない」
それを聞いてジャギは、「いや、あんたは確実に仕留められても、俺にはできねえよ…」と内心思ったが、
そう抗議したところでトキが虎を何処かへやってくれるとも思えなかったので、それ以上文句を言うのは止めた。
「…で、なんで虎が居るんだ」
「多分師父が買ったんじゃないかな。…お前も昔猫を飼いたいと言ってたから、丁度いいだろう」
ジャギが中学生の頃である。
ジャギは川の橋の下に捨てられている子猫を拾い、家に連れて帰った。当然飼いたかったからだ。
師父は特に何も言わなかったが、意外にもトキの反対を食らった。
「なんでダメなんだよ」
「わからないか…最近兄さんは反抗期なのか何なのか、所構わず不意に暴れたりすることがあるだろう。
そういった時に偶々この猫が居合わせてみろ、悲しい思いをするのはお前だ」
「いくらラオウでも、猫が居る時に暴れたりしないだろ」
トキは溜息をついた。
「ジャギ…お前は今までラオウと一緒に暮らしていてそんな事も分からないのか?
この前だってケンシロウを一ヶ月生死の境をさ迷わせたんだぞ、あの人は」
「そんなのいつもの事じゃねえか」
「それがいつもの事になってる事自体おかしい」
結局ジャギは猫を諦めて、友人にあげた。猫はまだ友人宅で健在なので、友人の家に行く度に可愛がっている。
「何年前の話だよ…それに虎と猫じゃ大分違うだろ…」
「いや、虎も猫も親戚みたいなものだろう。同じネコ科だし」
「違ぇよ!」
「じゃあラオウとリンみたいなものだろう」
それはなんとなくわからないでもない。
…しかし、猫は認められなかったのに虎は認められるというのも少し理不尽な気がする。
「…猫はダメなのに、虎はいいのかよ」
「いや、実際さっき兄さんに殺されそうになっていたが…別にお前は虎がラオウに殺されても悲しくないだろう」
虎がラオウに殺されるより、自分が虎に殺されないかの方が心配である。
「…まあ…」
「とにかく、お前も朝御飯だろう。カレーでいいか?」
「いいよ」
ケンシロウにとって、自分がカレーを食べられないのに、ジャギがカレーにありつけるとは理不尽である。
トキの傍へ行って「俺もカレーが食べたい」と催促してみたが、どうにも伝わる筈がない。
「はい」
トキがジャギの前に温めたカレーを置いた。
ケンシロウはもうこうなったら力尽くで奪い取るしかないと思った。
ケンシロウは普段はジャギに兄としての顔を立てているが、
体が普段とは違うので気の持ちようが普段とは違うためなのか、
それともやはり対象がカレーであるせいなのかわからないが、
とりあえず椅子に座っているジャギに飛び掛かってジャギを床に転がせた後、食卓の上に乗った。
そしてカレーを食べようとしたが、カレーが熱いので、今虎になっている自分は大丈夫なのだろうかと一瞬躊躇した。
虎が猫と同じなら猫舌である筈である。
「…ッ…このクソ虎ッ!」
体勢を立て直したジャギがケンシロウに向けてショットガンを撃ったが、
咄嗟にトキがケンシロウを抱えて移動して助けた。
「兄者!なんでそんなやつを庇うんだよ!」
「まあ待て…彼はおそらくカレーが食べたかっただけだ…撃つことは無い…」
そしてトキはケンシロウに向き直って言った。
「お前には冷ましたカレーをやろう」
「…ったく、カレーを食う虎なんて変わっていやがる、なあ兄者?」
「…人に飼われていたのかもしれないな、人に慣れているようだし」
デザートは林檎だったのでそれも食べた。食器を片づけようかと思ったが手ではなくて前足なのでできない。
歯を磨こうと思ったが、それもできないと気付いた。
ケンシロウはそういえばまだトイレに行ってなかったことを思い出し、トイレに行った。
ケンシロウがトイレから出てきたのを見て、ジャギとトキは、益々変わった虎だ、と思った。
それにしても、何故かこの虎はトキに贔屓にされているようで理不尽だとジャギは思った。
そういえば昔から自分は蔑にされている気がする。
あのラオウの馬だって、ラオウとケンシロウに懐き、トキとはまあまあで、ジャギと師父は完全に蔑である。
たまに訪ねてくるケンシロウやラオウの友人の方を優遇するぐらいだ。
「そういやケンシロウはまだ寝てんのか」
「昨日は大分酔ってたからな…今更起きてきてももうカレー無いし、もうすぐお昼だけど」
「ハッ、自分のカレー食われたって知ったら怒るんじゃぁねえか!昼飯があろうとなんだろうとカレーだけは食うからな、あの野郎」
「そうだな…少し様子を見てくるか」
ケンシロウはトキについて部屋から出た。
トキはケンシロウの部屋をノックして呼びかけてみた。しかし返事が無いので、「ケンシロウ?」とこっそり扉を開けた。
ケンシロウは居なかった。
昼食。
「…ケンはどうした」
昼食は在宅中ならば全員揃って摂るのが常であるから、ラオウがこのような疑問を呈したのも当然である。
「いないみたいだ」
「何?」
「いなかった」
「出かけたのか?」
「いや、誰も見ていない…それに」
トキはケンシロウの携帯とiPod(初代)を取り出した。
「枕元に置いたままだったが…携帯とiPodを忘れていくとは考えにくい」
携帯は中学時代から「欲しい欲しい」と言い続けて大学進学祝いに漸く買ってもらったものであるし、
iPodは何度強請っても買ってもらえなかったのを正月の町内会の福引でようやく入手したものである。
勿論できれば最新型がよかったのであるが、贅沢は言えないので仕方がない。
という経緯があるので、ケンシロウはこの二つを常に携帯している筈なのである。
「ほう…家出か?」
「兄さん、心当たりは無いか?」
「何故俺に心当たりがあるのだ」
そりゃラオウが一番ケンシロウに被害を与えているからだ…とトキは思ったが、その事は言わないでおいた。
もしこの先トキやジャギが家出しても、それはラオウのせいだと思うが、
きっとラオウはそれで悩んだりなど絶対しないだろうから、
ラオウに反省してもらいたいと思って家出をしても得策ではないな、と思った。
「それに、何故虎が食卓に座っているのだ」
「座りたそうだったから」
食後ケンシロウは考えた。何か自分がケンシロウだと訴える方法は無いだろうかと。
(家にiPadとかあればあれで文字が書けるかもしれないのに…)
この家にそんなものは無い。どうやってもこの前足で文字を書ける気がしない。
「…」
ケンシロウは器用に食事ができないので、口の周りに料理がついてないか気になって、舌で舐めた。
まだ残っていないか気になって、前足の甲で顔を拭ったが、猫は前足の平で顔を洗っていたような気がしたので、平で顔を拭ってみた。
(気持ちがいい…)
なんと肉球とは滑々して気持ちがいいのだろう。
面白いので暫く顔を撫でてみた。
午後、ケンシロウは馬小屋へ歩いた。
馬小屋は母屋とは大分離れているのでまだ慣れない身では歩くのが大変なのであるが、
やはり動物の事は動物というか、こういう状況になるとペットと話が通じるようになるというのは漫画の定番であるし、
話が通じなくても黒王ならなんとか自分を認識してくれないだろうかとケンシロウは考えたのだ。
やはり自分が自分と認識されないのは辛い。
しかし、何故俺が虎などになっているのだろう。
酔っ払って泥酔することを大虎というが、正にその通りになっているわけだ。
ケンシロウは、高校の国語の授業に出てきた『山月記』を思い出した。
李リョウとかいう奴が「峻険な性が原因で」「虎になる」話だった。しかし自分は別に峻険な性の持ち主ではない。
性格が原因で虎になるならジャギやラオウの方が相応しいだろう、と思った。
そんな事を考えている内に小屋に着いた。
小屋の扉を開けると、黒王と目が合った。
一瞬黒王は不思議そうな目をしたが、すぐに普段ケンシロウを見ているような目つきになった。
どうやらケンシロウをケンシロウと認識したらしかった。
そこでケンシロウは会話を試みてみたが、やはり会話は通じなかった。
やはり漫画のようにはいかないか、と少し落胆したが、認識されたのは嬉しかったので、暫く其処に留まっていた。
夕方頃ラオウがやってきた。
「む…?何故貴様がこんな所にいる」
ラオウのケンシロウへの態度を見て、黒王は訝しげな様子だった。
自分は虎をケンシロウだと認識しているのに、当の主人が認識してないのだからそれは訝しがるだろう。
「…トキがうぬを探しておった。早く帰れ」
確かに帰るべき時かもしれない。自分を認識しないラオウと一緒に居るのは辛い。
自分をケンシロウと認識しないラオウはただの横暴な男にすぎないからだ。
いや、自分をケンシロウと認識してもそれはそれでラオウが横暴な兄であることには違いない。
しかし認識されているのとされていないのとでは大違いだ。
「…」
またあの距離を歩くのか、とケンシロウは思う。慣れない体であの距離をまた歩くのは辛い。
しかし嘆いても仕方が無いので、扉を開けて小屋を出た。すると、
「ぬ…どうした…黒王」
黒王が後からついてきた。
黒王はケンシロウの脇に立つと、踞んだ。乗れ、という事なのだろうか。
普段黒王は人を乗せるために踞むことなどありえない。いつも人が飛び乗る形になる。
それを自分の為と誤解したラオウが黒王に跨ろうとしたのでそれを黒王は蹴り飛ばした。
とりあえずケンシロウは黒王の上に乗った。馬の背中に虎が乗るとは随分変な状態である。そのまま黒王は母屋まで乗せて行ってくれた。
面白くないのはラオウである。自分とケンシロウにしか背を許さない筈の黒王が何故トキの飼い虎なぞを乗せるのか、理不尽である。
一週間が過ぎた。
ケンシロウは未だ虎のままである。
ラオウが部屋でゲームをしていると、誰かが部屋を開ける気配がした。ケンシロウか、と思う。
ジャギはまずラオウの部屋を開けないし、トキは必ずノックをする。ケンシロウも大抵はノックをするのだが、しない事もある。
だからケンシロウかと思った。
虎だった。
「…」
最近ずっとこうである。ケンシロウか、と期待して、虎であったということの繰り返しである。
虎を無視していると、寝台の上に勝手に飛び乗ってきた。
ケンシロウも時々同じような事をしていたが、虎にされると腹立たしい。ゲームを中断して虎に向き合った。
以前虎を殺そうとしたらトキに止められた事があるので、殺す事はしない。
虎が何か物言いたそうではあるが、生憎ラオウには虎の心情などわかりはしない。
「ケンシロウ…」
ラオウはふとケンシロウの事を思い出して少し寂しくなった。ケンシロウの行方は杳として知れない。
ケンシロウの知人が家を訪ねてきたりしたが、誰一人ケンシロウの行方を知る者はいなかった。
とりあえずケンシロウの友人のレイに八つ当たりしてみた。
更にジャギに八つ当たりしてみたが、それで気が晴れる訳でもない。ケンシロウが出てくる訳でもない。ラオウは孤独を感じていた。
勿論ラオウにとって友と呼べるものは黒王とトキだけだが、やはりケンシロウの有無というのはラオウの日常を大きく左右する。
ラオウにとってケンシロウは友ではないが、やはり弟であり、言うなれば天である。
寂しさ故にラオウは虎を思わず抱き締め、「ケン…」と呟き、力を込めた。
虎が暴れだしたので、ラオウは虎を解放した。この程度で不満を訴えるとは、軟弱な虎である。
ケンシロウならもっと強く抱き締めても大丈夫であるのに。
それにしてもこの虎の振る舞いは腹立たしい。ケンシロウの椅子に座って食事をし、ケンシロウの寝床で寝る。
まるで自分がケンシロウそのものであるかのように振る舞う。実に腹立たしい。
ケンシロウはラオウが何度か自分の名を呟く時、自分に気づいてくれたか?と期待するが、その度に失望する。
「蘭姉ちゃんじゃないんだから…早く気付けよ…」と苛立つ。
確かにラオウは人(動物)の心情については鈍感な所もあるし、無理ないか、と半ば諦めもしている。
それにしても、普段自分を抱き締めるのと同じ強さで今の自分を抱き締めるのはそれはちょっと無いのではないか。
今の自分は普段の自分と比べればそれ程丈夫では無い。やはりラオウは配慮が無いな、と思う。
配慮が無いと言えば、昨日ケンシロウが寝床の上で猫のように丸くなっていた時、ラオウが部屋に勝手に入ってきたかと思うと、
机の上の携帯を勝手に取り上げた。ケンシロウは抵抗したが、メールを見られてしまった。あれは酷い。
大体未読メールを勝手に見てしまえば、メールが既読になってしまうので、
誰かが勝手に見た事がばれてしまうではないか。ラオウはそんな事も知らないのか、気にしないのか。
弟の物は自分の物だと思っているのか。ラオウはいつも横暴だ。
ケンシロウは、自分がこうなった事について、心当たりが無い訳ではないが、
「いくらなんでも…無いよな…」とその考えが浮かぶ度に否定した。まさか人間を虎に変える秘孔などある訳がないではないか。
師父から久しぶりに電話があった。ジャギが先ず電話を取った。
「…親父?」
師父は今週の「まどか☆マギカ」を録画し損ねたので、代わりに一日遅れの地域である我が家で録画してほしいという。この親父は久しぶりに電話をしてきたら、それか、とジャギは思った。呆れていたらトキが電話を代わって欲しいと頼んできた。
「あーもしもし、師父?通販で虎とか買いませんでした?…あーそうですか、わかりました、それじゃ」
「…なんだって?」
「買ってないらしい」
「じゃあこの虎は何なんだよ!」
「私に考えがある」
トキは電話を掛けた。
「もしもし…アミバ?」
「お前が俺を家に呼ぶとは珍しいなあ、何の用だ」
「お前、この前ケンシロウに変な秘孔を突いていただろう」
「変な秘孔では無い、悪酔いを覚まし、気分を良くする秘孔だ」
「ならその逆の秘孔も知っているだろう」
「酔いを悪化させる秘孔か?勿論この天才は既に究明している」
「この虎にその秘孔を突いてくれないか」
「ふぉ~う、この虎は酔っているのか?」
「…そういう訳ではないが…突いてくれないか?」
「よかろう。虎と言えど秘孔は人間と同じ…ふんっ!!」
アミバが秘孔を突くと同時に虎はぬた打ち回って苦しみ出した。
「ん~?間違ったかな~?」
「…間違っていたら私がお前に償いをさせてやる」
そんな事を言っている間に虎は見る見る変化して、見慣れた人物になった。
「…懐かしいなあ、ケンシロウ」
ケンシロウは指を鳴らして、秘孔を突いた。
「残悔積歩拳!!」
「うわらば!!」
「…まああの虎がケンシロウではないかとは思っていたのだが」
「…兄さん、いや、トキ、ならどうしてもっと早くアミバを呼んでくれなかったのだ」
「私もまさか人間が虎になるとは思わなかったし…虎がバターになるのは知っていたが」
「それは絵本の話だろ」
「いや、兄さん…ラオウがいつ気付くかなと思っていたが、全く気付く気配が無く…それでな…」トキとケンシロウは傍に居たラオウを見やった。
「…ふん、とうに見抜いておったわ」嘘つけ、と二人は内心同時に思ったが、それを指摘してもラオウは自分の非を認めないと思うので止めておいた。
「それよりケンシロウ、早く服をきたらどうだ」今のケンシロウはメロスよろしく素裸であったからだ。
部屋に戻って服を着たケンシロウは暫くメールのチェックなどして、友人たちにメールの返信などして自由な身分を満喫した。
その後、ジャギの部屋に行って先週と今週のジャンプを読ませてもらった後、馬小屋に行って黒王に挨拶した。黒王は一瞬驚いたような目付きをしたが、またいつもの黒王に戻った。
虎だった間よくしてくれた事の礼に黒王の世話をして家に戻ると、夕食の時間だったので、久しぶりに箸とスプーンで食事をした。感動的だった。その後久々に自由に風呂に入り、寝ようかと思ったが、その前にラオウの部屋に行った。
ノックをした後返事も聞かず部屋に入った。やはりゲームをしていた。
「ラオウ…」
「ふ…見抜いておったわ…」
いやそれはいいから、と思う間もなくいきなり壁に叩きつけられ、痛い、と思う間もなく口づけされた。
「んぐ…」
暫くそうされていた後、解放されて一息つく。
「…部屋ではできん」
「どうでもよかろう」
「よくない」
確かに一週間以上できなかったのだから、ラオウは今すぐにでもしたい心持なのだろうが、ジャギもトキもいるこの母屋ではしたくない。それは譲れない。
「黒王の所で…」
一々情事の度に小屋を出て行かされる黒王は迷惑だろうとは思うが、仕方が無い。
「どうだってよかろう」
「よくはない。…大体、虎になっている間、ラオウより黒王の方が余程俺に優しかったぞ」
「黒王の方がうぬに優しいのはいつもの事ではないか。俺はうぬに優しくする必要性が無い」
「開き直るな」
結局その後は喧嘩になって部屋の壁が崩壊し、隣の部屋に居たジャギに甚大な被害が出た。
□ STOP ピッ ◇⊂(*´ω`*)
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