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グリーン・ホーネット ブリット×カトー 「The reason that you kissed me」

緑蜂 社長×助手

半生注意。映画「緑蜂」より社長×助手。

46の続きでその夜の出来事。エチー未遂、ちょっと汚い描写あり。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

タクシーから降りた俺は、べろべろに酔った相棒に肩を貸して屋敷に入った。
今夜は二人仲良く、高級中華料理店でディナーとしゃれ込んだその帰りだ。

ほんの行き違いから相棒の怒りを買った俺は、ご機嫌を取るために最高の店を予約した。
ごねる相棒を、ほとんど無理やり店に連れ込み丸いテーブルに着かせて、次々に料理を運ばせた。
美味さで頬が緩んだところに極上の老酒を進めつつ、いかに自分が相棒を頼りにして、その才能に敬意を抱いているかを並べ立てた。
俺の口車を聞きながら、相棒はまんざらでもなさそうな様子で料理と酒を口に運んだ。俺はここぞとばかりに誉めておだてては、奴のグラスに強い酒を何度も注いだ。
時が経ち、料理を平らげてそろそろ帰ろうという頃には、相棒はすっかり出来上がっていた。

「力ト-、しっかりしろよ。うちに着いたぞ」
「……已経不行、已経酒不能喝」
「何言ってるかわかんないぞ、力ト-」
「ブリシト……もうダメ、もう飲めないよ」
「言われなくても、もう酒はやらないさ。ったく、こんなに飲ませるんじゃなかったな」
注げば注ぐだけ飲み干すのが楽しくて、ついつい飲ませ過ぎてしまったのを後悔した。俺だって酔っちゃいるが、足腰が立たないこいつほどじゃない。

「力ト-、もう今夜は泊まってけ。ほら、ベッドに着いたぞ」
「うー……是床、發困……」
「だからわかんないって。力ト-、眠いのか?」
自室のベッドの上に降ろすと、相棒はだるそうにゴロリと転がりうつぶせになった。着たままの革ジャンが窮屈そうに見えたので、俺は手を伸ばして脱がせてやった。履いたままの靴も脱がせると、相棒は顔をこっちに向けた。
「……ブリシト、なんで脱がしてるんだ。僕は女の子じゃないぞ」
「バカ、何言ってる。お前が苦しそうだから、上着を取ってやったんじゃないか」
赤い顔をした相棒は、俺をからかってクスクスと笑った。いつもの少し斜に構えたような感じはなく、えらく楽しそうな奴を見て俺は思わず苦笑した。
「ありがとう。ちょっと、楽になった」
相棒は呟くと、仰向けになって手足を伸ばした。

俺は部屋の隅のポールハンガーに、奴の革ジャンと、ついでに自分のジャケットも脱いで掛けた。それからベッドの側に戻り、寝そべる相棒の横に腰を降ろした。
「力ト-、大丈夫か?」
「……うん、大丈夫。でもおかしいな、こんなに酔うなんて滅多にないのに」
「そりゃまあ、あれだけアホみたいに飲めばな」
「ひどいな。飲ませたのは君じゃないか、ブリシト」
「悪い悪い。お前がニコニコ笑ってグイグイ飲むのが、なんだかおもしろくってさ」
「君が上手いこと言って調子に乗せるからだ。全くひどい野郎だな!サイテーだよ、君は」
罵りながらも、相棒の表情は相変わらず陽気だった。こいつは、酒が過ぎるとやたら明るくなるタイプのようだ。まあ暗くなってウダウダ愚痴られたりするよりは、はるかに健全な酔っ払いだ。
「力ト-、もう俺のことを怒ってないんだな」
「怒る……僕が何を、怒ってたって?」
「忘れたのか?口も聞いてくれないくらい、怒ってたくせに」
呆れて頭を軽く小突くと、相棒は首を傾げてちょっと目を閉じた。
「口も?くち……ああそうか、昨日君が僕にキスしたことだ」
「そうあらためて言われるとなんだか照れるが、まあそうだ」
キスしたと言っても頬と額に、あくまで友情のしるしとしてだ。だが相棒はそうとは受け取らず、俺にからかわれたと激怒した。
最高の環境でこいつをなだめて誤解を解くために、俺は今夜のディナーを用意したって訳だ。

「ブリシト、今だから言うけど……僕はあの時、怒ったっていうよりは、びっくりしたんだ」
「そうなのか?まあ俺だって、自分にびっくりしたけど」
「うん……君に悪気がないのはわかってるけど、僕はあんな風に……その、キスされたり、抱きしめられたことが、あんまりなかったから」
「おい、力ト-……お前まさかと思うが、童貞なのか?」
「……違うよ!そうじゃなくって、女の子以外でってこと」
「ああ、なるほどね。でもお前……」
家族とかには、と言いかけて口を閉じた。
こいつは幼い頃に両親を亡くしてるってのに、何を言おうとしたんだ俺は。いくら酔ってるからって、忘れる奴があるか、バカ野郎!

焦る俺の様子なんか気にも留めず、奴は夢見るような口調で言葉を続けた。

「もし本当に兄弟がいたら、あんな感じでキスしたり、抱き合ったりしてたのかなって今は思う。
でも慣れてないからびっくりして、あの時はつい君を殴って、怒鳴ってしまったんだ。そしたらもう、どうにも引っ込みがつかなくって……」
「なんだ、やっぱり照れてたんじゃないか!力ト-」
意地悪く叫んで睨むと、相棒は首をすくめてゴメンと小さく囁き、ますます顔を赤らめた。
いつもは対等の兄弟分で、時には兄貴のように頼もしく振る舞う相棒が、今はまるで弟みたいにやけに愛らしく見えた。
俺は声を上げて笑い、相棒の黒い髪をぐしゃぐしゃと両手で掻き回した。奴も笑って、俺の手を避けようとしながら叫び声を上げた。

「……ブリシト、やめろよ!」
「この野郎、俺を振り回しやがって。もっと素直になれってんだ」
「いつも僕は君に振り回されてるんだ、たまに振り回すくらい、いいだろ!」
「……ああ、構わないさ。それがションディーってもんだ」
俺は手を止めると、左手で相棒の乱れた髪を梳いてやり、ポンポンと頭を優しく叩いた。
相棒は何も言わず、ぼんやりとした目で俺を眩しそうに見つめた。
「ションディーなら、キスなんてますます普通のことさ。たいしたことじゃない、だろ?」
「そうか……そうだね」
そうさ、と返して頭から放した俺の手を、相棒の手が掴んだ。
急に掴まれたことと、その手の熱さに驚いていると、奴はもっと俺を驚かせる行動に出た。
俺の頭の後ろにもう一方の手を回して引き寄せ、 近づいた俺の唇に自分のそれを重ね……つまり俺に、キスをしやがったんだ!
軽く触れた唇をすぐに離すと、相棒は間近にある俺の顔に笑いかけた。
「……本当、たいしたことないね」
楽しそうに笑い声を上げる相棒から、俺は勢いよく体を離した。
なんだ、何をしやがったんだこいつは!あんなにびっくりしたとか、照れてたとか言っといて……口にするか、普通!?
もちろん酔っ払いの悪ふざけに決まってるんだが、大いにうろたえた俺は、自分の頭に血が上っているのを感じた。

「ブリシト、顔赤いぞ。熱いのか?」
「あ、ああ、まあな」
「僕も熱い。実はさっきから、ずっと熱いんだ」
熱い熱いと言いながら、相棒は緩めていたネクタイを首から取り去り、白シャツのボタンに手をやった。だが酔いのせいで、上手く外せないようだった。

「あれえ……指が動かないなあ」
「何やってんだ。脱ぎたいのか?」
「うん……ブリシト、手伝ってくれないかな」
器用な相棒らしくもなくモタつくのを見かねて、俺はボタンに指をかけた。しょうがないなとぼやきながら、俺の胸はなぜかドキドキしていた。
なんでだ、こいつは男だぞこのアホ!と自分にツッコミを入れつつ全部のボタンを外してやった。相棒はシャツの前をはだけて、ほうっと息を吐いた。
「ちょっとはマシになったか?力ト-」
「うん、涼しい。ブリシト、ついでにベルトも緩めて欲しいんだけど」
「……お前スッポンポンになるつもりか?俺は俺のベッドに、裸の男を寝かせる趣味はないぞ」
「違うよ、食べ過ぎたせいで苦しいんだ」
「ああ、そういうことか」

言われるままにベルトを緩めてやる俺の目の前に、相棒の裸の胸があった。
十代の少年のように、相棒の肌は滑らかだと思った。東洋人は男でも肌が綺麗だと聞いていたが、あれは本当なんだなと妙に感心した。
体毛は薄く、しなやかな筋肉を包む肌は象牙色をしていて、柔らかそうに見えた。酒と食い物のせいで、ちょっぴり腹がふくらんでるのがご愛嬌だ。
「趣味じゃないくせに、男の裸なんか眺めてて楽しいのか?ブリシト」
視線に気付いた相棒のからかう声に、俺は自分でも意外な言葉を返していた。
「力ト-、ちょっと触ってもいいか?」
「……いいけど」
普通に考えたら相当気色が悪い筈の俺の申し出を、事もなげに受け入れた。お互い酒のせいで、思考がまともに働かなくなってるみたいだ。
酔っ払いの俺は、超酔っ払いの胸にそっと手を這わせた。くすぐったがって身じろぐのがおもしろくて、俺は相棒の体をむやみに撫でた。

「バカ、やめろよ!くすぐったいだろ」
「お前って、えらくスベスベしてるな。手触りが良くて気持ちいい」
「僕は気持ち良くない!」
「なんだと、俺様のテクを甘く見るなよ!」
相棒は体をよじり、触り続ける俺から逃げようとした。じゃれ合う犬か子供みたいに、俺達はベッドの上でふざけていた。
逃げる体を捕まえようとムキになった俺は、奴の左肩と右手首を掴んで上からのしかかった。
かっちりと目が合った。つぶらな黒い目は少し潤んでいて、まっすぐに俺を見ていた。
半開きの唇はいつもより赤く、さっきこの唇にキスされたんだなとあらためて思った。

吸い寄せられるように俺はキスをした。頬でも額でもない、赤い唇にだ。
相棒は嫌がらず受け入れた。しばらく押し当ててから離すと、今度は相棒の方からキスを仕掛けて来た。気が付くと、互いに口を開いて舌を絡めていた。
両手首を掴んで口内をむさぼると、苦しそうに呻いたので唇を解放した。荒い息の下から奴は、至極もっともな質問をした。
「……なんで、キスした?」
「さっきお前がキスしたからだ、お返しさ」
「僕のは、ションディーのキスだ」
「俺だってそうだ」
「夕べのは、だろ。今のはションディーのキスじゃない」
「じゃあなんのキスだって言うんだ、力ト-」
「ブリシト、僕が君に訊いてるんだよ」
相棒は困ったように笑ったが、構わず俺はまた口づけた。下にした体を掻き抱くと、相棒は自由になった腕を俺の肩に回した。段々とキスは激しさを増し、水音が響くほどになった。
俺は離した唇を首筋に埋め、音を立ててそこにもキスを落とした。両手はつややかな肌の上をするすると這い回り、熱を帯びた相棒の上半身を飽きずになぞった。
呼吸を乱して、相棒は切なそうに俺の名前を小さく呼んだ。俺も荒く息をつき、唇や顔と首のあらゆる箇所に繰り返し口づけた。
俺達はどこへ向かってるんだろうと思ったが、俺のキスに応える相棒がいじらしくかわいくてたまらず、もう勢いは止まらなかった。
震える喉元を噛むようにキスして、鎖骨の真ん中の窪みに唇を滑り落とすと、相棒が悲鳴のような声で俺を呼んだ。
「……ブリシト、ブリシト!待って、待ってくれないか」
「ダメだ力ト-、もう止められない。なんだかわからないが、火が点いちまったんだ」
「ダメ、ダメなんだブリシト、お願いだから」
「力ト-、今さらどうした?俺が嫌なのか」
「い、嫌じゃない……ないんだ、けど」
気付くと、捕らえた相棒の体はブルブルと震えていた。驚いて見直すと赤かった顔はやや青ざめて、何かを耐えるように唇を噛み締め、眉を険しく寄せていた。
「力ト-……やっぱり、嫌なんだな」
「違うよ、そうじゃなくて……ううっ!」
ふいに体を翻して背中を向けると、相棒は拳を握りしめてベッドに顔を伏せた。
「力ト-!?なんだよ、一体どうしたって……」
訳がわからず肩を掴んで軽く揺さぶると、相棒は苦しそうに、心底苦しそうに呟いた。

「……不舒服快要、吐出了……!」
「英語で言えって!」
「……きもち、わるい」
「なんだって?」
次の瞬間相棒はぐうっ、というような声を喉から搾り出し、大きく体を揺らした。俺はようやくヤバい事態だと気付いたが、すでに後の祭りだった。
相棒は盛大に、俺のベッドの上に……をぶちまけやがった。おお、神よ!

第二波をもよおした相棒を我慢しろと励まし、慌てて洗面所まで引きずって行った。一人で大丈夫だからと言い張るので、俺は部屋に戻った。
空気を入れ換えるために窓を開けた後、凄惨な状態になった掛け布団を慎重に丸めて部屋の外に出した。
別の部屋から新しい布団を持ってきて、ベッドの上に広げた。布団以外には被害がなかったのが幸いだ。
後始末をしながら、以前酔いどれた俺が部屋で吐いたブツを、うちのメイドはこんな気持ちで片付けてくれたのかなと考えたりした。そして、もう二度と悪酔いはしないと心に決めた。

だいぶ気分はヘコんだが、粗相をやらかした相棒を責める気にはなれなかった。適量を越えるほど飲ませたのは俺だし、あいつの必死の訴えに早く気付いてやれば、こんなことにはならなかったからだ。
それにおかげで、危うい一線を越えずにすんだ。冷静になってみればあれは、あまりにも勢いに任せ過ぎていた。
酔っ払ってふざけ合った延長で、何となくキスしてサカって……なんて。男と女ならともかく、俺達にそんなことがあったら、後々関係が微妙になっちまう。
「……でもなあ、嫌だったわけじゃないんだよな」
思わず呟いて、自分でびっくりした。
そうなんだ、嫌じゃなかった。むしろ……ああダメだ、思い出しちまった。さっきまでの相棒の顔が頭に浮かんで、一人で赤くなった。俺は窓辺に立ち、火照った顔を夜気に晒して冷やした。
しばらくして窓を閉めると、奴が部屋を出て行ってから、けっこうな時間が経っていることに気付いた。どうしているのか心配になり、様子を見に再び洗面所に向かった。

ドアを開けると、洗面所の片隅でうずくまっている姿があった。タオルを頭にかけうなだれて、膝を抱えて体を小さくしているので表情は見えない。
俺は近づいて側にしゃがみ込み、優しく声をかけてみた。
「力ト-……落ち着いたか?」
「……ブリシト、ゴメンよ、本当にゴメン」

か細い声は、啜り泣くような響きをしていた。もしかしたら、本当に泣いてるのかもしれない。
「いいんだ、元は俺がひどく飲ませたせいだからな。気にするな」
「……僕は最低だ。せっかく君がご馳走してくれたのを台なしにしちゃったし、君のベッドもあんなことに……怒っていいよ、ブリシト」
「怒るもんか。飯はまた食えばいいし、ベッドは布団を取り替えりゃいい。それだけのことさ」
もう取り替えたから安心しろ、と頭を撫でてやると、うつむいていた顔をようやく上げた。
鼻の頭と目を真っ赤にして、相棒はやっぱり泣いていた。流れる涙を被ったタオルの端で拭いてやり、俺は顔を寄せて笑いかけた。
「バカだな、そんな顔すんな」
「ブリシト……僕を嫌いにならない?」
「嫌いになんかなるもんか。俺達ションディーだぞ、忘れたのかよ」
おどけて肩を叩くと、相棒は笑顔を見せた。酔ったこいつは甘え上戸でもあるんだなと俺は悟り、頭からタオルを取ってやった。

「さあションディー、立つんだ。うがいはしたか?……よし、なら部屋に戻ろう。帰ったら水飲むか」
頷く相棒の肩と腰を支えて部屋に戻りベッドに座らせると、冷蔵庫から出したミネラルウォーターのボトルを開けて手渡した。
一気に飲み干した相棒は、眠気に襲われてあくびを連発した。俺は奴のシャツのボタンを何個か留めてやり、腰からぶら下がっていたベルトを引き抜いた。
明かりを弱めてもう寝ろと告げると、素直に従い横たわった。
俺も同じベッドで寝るのだと配慮したらしく、相棒は体を左側に寄せた。
「ブリシト、寝ないのか?」
「ああ、もうちょっと起きてる。お前は寝ろ、具合が悪いんだから」
「うん、今日はありがとう。それから……ゴメン、本当に」
気にするなって言ったろ、と頬を軽く叩くように撫でると、相棒はまた頷いて笑った。
やがて安らかに寝息を立て始めた奴の額に、俺はそっとキスをした。
「……これは、ションディーのキスだ」
涙の跡が残る寝顔を眺めて、俺は独り言を呟いた。

カーテンを閉め忘れた窓から差し込む光の明るさに目が覚めた。
あくびをして体を伸ばそうとすると、肩にぶつかるものに気付いた。横を見やって、相棒が隣に寝ていることを思い出した。
体を横向きに、俺の肩に顔を寄せるようにして、相棒はまだ眠っていた。よく見ると苦しそうな表情でうなされているので、俺は奴の肩に手を置いて囁くように声をかけた。
「力ト-、力ト-どうした?気分悪いのか、起きろ」
「ううん……ああ、ブリシト、よかった」
「よかった?何がだ」
「君さっき、凶暴なパンダに襲われてたろ。助けようと思ったんだけど、足が動かなくって」
「そうか。この通り俺は大丈夫だ、安心しろ力ト-」
夢の中でもこいつは俺を助けてくれるんだな、とちょっと感動した。寝ぼけた相棒はよかった、とまた呟き俺の肩に額を押し付けたが、やや冷静な声になって質問をしてきた。
「ブリシト……なんで隣に君が寝てる?」
「力ト-、そりゃ違うな。お前の隣に俺が寝てるんじゃなく、俺の隣にお前が寝てるんだ。なぜならこれは、俺のベッドだからだ」
「……」
「お前、酔っ払って俺のベッドで吐いたんだぞ。覚えてないのか」
「……覚えてない。けど、悪かった。迷惑をかけたんだね」
「いや、いいけど……本当に覚えてないか?」
「うん……店を出た辺りからの記憶がない」
そうか、と返事をしたが、相棒のその言葉は嘘だと思った。ポーカーフェイスを装っているが、わずかに目が泳いでいたから俺にはわかった。
吐いた記憶を認めれば、俺達が夕べションディー以上のキスをしたことを覚えている、と認めることになる。相棒は気まずさか恥ずかしさから、酔いを理由にしらばっくれやがったんだ。
嘘をつかれてちょっとムカついたが、気持ちは理解出来た。正直に覚えているなんて言われたら、俺もきっと困っただろう。だからここは、おとなしく騙されてやることにした。

「そうか、残念だな。酔っ払ったお前は、えらく素直でかわいらしかったのに」
「何言って……っ!」
相棒は頭だけを起こして急に大声を張り上げたが、それが響いたらしい。低く唸って両手で頭を抱えると、またシーツに沈み込んだ。
「力ト-、二日酔いだ。静かにしてろ」
俺はベッドから抜け出ると、パジャマを脱ぎながら喋り続けた。

「社長命令だ。今日は休んで、ここでゆっくり寝ろ」
「でも、ブリシト……」
「俺なら心配するな、仕事が終わったらまっすぐ帰る。食欲ないかもしれないが、メイドにお前の食事を運ぶよう頼んでおくからな」
「でも、悪いよ。それなら僕はうちに帰って……」
「ダメだ。お前の深酒は俺に責任があるんだから、言う通りにしろ。もし帰ったら絶交するぞ、いいな力ト-」
着替え終わった俺は、ベッドに戻って布団をかけ直しながら、断固とした口調で告げてやった。あくまで譲らない俺に根負けしたらしく、相棒はため息をついて頷いた。
「よし、それでいい。頭が痛むか?薬も持って来させよう」
「それほどじゃないよ。ありがとう、ブリシト」
「どういたしまして。さあ、おとなしく寝てろ力ト-」
笑って額を撫でると、相棒は素直に目を閉じた。手を放した俺は、ふいにその頬に音を立ててキスをした。
「……ブリシト!」
「ほらほら力ト-、大声出すな。覚えてないだろうが、ションディーならキスしてもおかしくないって、お前が言ったんだからな」
「バカ野郎っ!……ううぅ……!」
頭痛に呻いて布団を被った奴の耳が赤くなっていたのを、俺は見逃さなかった。布団の上からポンポンと相棒の体を叩き、俺は自室を後にした。

車の運転席に着くと俺はエンジンをかけ、ポケットから携帯電話を取り出して画面を開いた。
キーを操作して、ある画像を表示させた。
それは、夕べの相棒の寝顔を撮った写真だった。赤らんだ頬に涙の跡を残して、その表情はちょっと笑ってるようにも見えた。
これをネタにして相棒をからかおうとか、脅そうとかいうつもりは全くない。
ただ俺は、初めて知った相棒の顔を残しておきたかったんだ。俺しか知らないかもしれない、あいつの顔を。

携帯電話を閉じてポケットに戻し、俺は車を発進させた。いつもよりだいぶ早い出勤に社員達は目を丸くするだろうが、屋敷に俺がいちゃあいつは落ち着かないだろうからな、しかたない。
土産にテイクアウトの中華でも買って帰ってやるか。食べられるようになってるといいけど。

浮かれているような、でも切ないような不思議な気分で、俺は会社へ向かい車を転がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
助手をちょっと泣かせてみたかった。そしたら社長がわりとしっかり者になってしまいました。

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