ムーヴCM 所長×研究員
更新日: 2011-02-23 (水) 23:45:06
半生 某自動車メーカーのCMより
所長×研究員
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース
「ちょっ…所長!所長!」
大きな声で後ろから呼び止められた。
相変わらず可愛い声だ。
低過ぎず、ゴツ過ぎず、完全に男の声でありながら、どこか甘ったれた柔らかさを持っている。
末っ子の特徴だろうか。
わざわざ振り返らなくても、この声で誰だか分かる。
というより、スマートかつクールな理数系人間のみが巣食うこの最先端の研究所で、こんな風に大声を張り上げ、不恰好にバタバタと走って追い駆けて来る人間は一人しかいない。
まったく私の趣味に合わないドン臭さだ。
だから、今となっては完全に魔が差したとしか思えない。
この私が。
スマートかつクールな研究所所長である、この私が…。
そんな葛藤を胸中に抱えながら、息せき切って私を追い駆けて来たらしい研究員の顔を見たさに足を止め、振り返った。
無駄な物を徹底的に排除し、無機質でありながらも洗練された設計を施された長い通路の真ん中辺り。
白いトンネルのようなこの空間には静かな空気が満ちている。
フットライトの温かい間接照明に照らされた通路は母体の産道にも似て、歩く度に私の心を落ち着かせた。
しかし今は落ち着かない。
いや、分かっている。
分析するに、この目の前の新任の研究員のせいだ。
柔かな明かりの中に佇む、このドン臭くて、センスがなくて、機知も機微も備わっていないこの研究員のせいなのだ。
ユーモアを解さない、洒落た会話の一つも出来ない、田舎者のこの研究員が全ての元凶だ。
この研究員の……この研究員の、男にしては長い睫毛、大きな瞳、形良く引き結ばれた唇、少し茶色がかった髪の毛が、赴任して来た時から私の心を騒がせるのだ。
この私としたことが、まったく魔が差したとしか言い様がないじゃないか。
よりによって、こんな相手に。
そうは思っても、通路の真ん中で間近に向き合ってみると、改めて整った顔立ちに目が惹き付けられる。
…可愛い。仕方ない。自分に嘘は付けない。私は嘘とカエルが一番嫌いなんだ。
「低燃費をT/N/Pって本気ですか」
「私はいつでも本気だよ」
そう答えてやれば、途端に子どもっぽく唇を尖らせて言い返してくる。
大人同士の駆け引きも、建前に忍ばせた本音の応酬も、まるであったもんじゃない率直さだ。
「だって日本語だし短くなってないし」
今までの私なら、ここで相手に愛想を尽かしてお別れの言葉を告げ、早々にお引き取り願うところだ。しかし。
下からこちらを覗きこむように、上目遣いで言い募るその様は。
…可愛い。仕方ない。
「分からないのか?」
この私の気持ちが。クールでI/K/T/Rとしか言い様がないこのセンスが。
「ちょっと格好良いからだよ」
「……えぇ…?」
なんだそのしかめ面は。…可愛いじゃないか、まったく。
いや待て、もしかするとこれはこいつの作戦か?
実は天然を装った高度なトラップを仕掛けられているのか?私はそれにまんまと嵌ってしまっただけなのか?
そんな疑念を振り払うように目の前の研究員をマジマジと見据える。
…可愛い。仕方ない。
まあ良いだろう。まだ来たばかりなんだし、今から色々憶えていけば大丈夫だ。
早く研究所に慣れるよう、私が個人的に指導してやっても良い。
目の前の研究員は何やらしばらく頭を抱えていたが、やがて吹っ切れたように顔を上げた。
そしてまさに、輝くばかりの満面の笑みを浮かべて私を見る。
「僕……上手く言えないスけど、所長、その本気…付いて行きます!」
…マズい、凄く可愛い。
早鐘を打つ己の心臓をハッキリと自覚しながら、私は、これがM/K/5というものなんだろうか、とぼんやり考えていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング失念しました…スミマセンでした
- あのCMにやたら萌えてたので、キュンときました。GJ! -- 2011-02-09 (水) 15:29:44
- 所長が無駄にかっけぇとか思ってたんだが、次は萌えながら見るはめになりそうだ。 まさにGJ。 -- 2011-02-10 (木) 01:13:35
- これはいい。上に同じくGJ。 -- 2011-02-10 (木) 14:17:36
- これはとってもGJ。 -- 2011-02-11 (金) 14:23:18
- 最高だ gj! -- 2011-02-23 (水) 23:45:06
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