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デカワンコ 重村×小松原←柳

日テロドラマ刑事犬です。
シゲコマはセフレですが残念ながらまだ出来上がっておりません。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ソレデハ オオクリシマース!

その夜、大捕り物を終えた警視庁刑事部捜査一課第八凶行犯捜査殺人捜査十三係の面々は傷の手当てを終えると、
ある者は飲みに、ある者は官舎に、ある者は家族の待つ自宅へと各々に消えていった。
それを見送り、デスクに一人残ったヤナギ誠士郎は、はぁっと大きくため息を吐く。
今日は別れた妻が引き取った愛息の誕生日だった。
プレゼントを贈るどころか、会うことすら叶わない。
そんな切なさを噛み締めながら、一人報告書の記入を進めて行く。
キャリアながら面倒な事務作業を若手に押し付けず引き受けるのは、人の温もりのない暗い部屋に帰るのを嫌ったからだ。
さらに言えば、しこたま取られた慰謝料と養育費を稼がなければならないという理由もある。
「はぁぁぁぁ…。」
黙っていると我知らずため息がこぼれる。
胸の奥をキュンと締め付けられながらも、キーボード上の指先を動かせば、見かけによらず優れた事務能力を備えて生まれてしまったせいで報告書の製作はあっという間に終わってしまった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…。」
ヤナギは大きく肩を落とした。
こんな事ならもっとダラダラ作業をすれば良かった。
時計を見ればまだ九時を少し回った所だ。

できることなら家には寝に帰るだけでありたい。
まだまだローンの残る、一人暮らしには大きすぎる2LDKのマンションのあちこちに、一人息子の影を探してしまうから。
こうなったら未解決事件の資料でも読み込んで時間を潰す…もとい、残業代を稼ごうと、ヤナギは席を立った。

資料室は十三係の詰め所の一階上、南の端にある。
デジタル全盛の時代にあって、まだまだ紙媒体での書類が山ほど残るその部屋は、いつでも古いインクと紙の匂いが立ち込めている。
さながら、図書館のような雰囲気があった。
ヤナギはその扉を開けた事を、後にひどく後悔する事になる。
その日、資料室はいつものインクと紙の匂いに混じって、微かに甘い女の香水のような匂いがした。
立ち入った婦警の残り香かなにかだろうと大して気にも留めなかったヤナギは、そのまま扉を閉め資料室の中に足を踏み入れた。
「二〇〇八年、葛西臨海公園殺人事件…葛西臨海公園殺人事件…。」
目当ての事件を小さく呟きながら、キャビネットの間をゆっくり進んで行くと、奥の方で何やら人の気配を感じてヤナギはビクッと身を竦めた。

『…やめっ…バカッ、…ンっ…』
『…うるさい。』
どこかで聞き覚えのある声が、ヤナギの耳に密やかに届く。
「ん?」
ヤナギは眉を潜めた。
大きな身体を小さく屈めて、刑事の身のこなしで対象に静かに迫る。
『無茶ばっかしやがって、お前みたいな捜査の仕方じゃ命がいくつあっても足りない。』
『そんなヘマするか。いいから離せッ!』
大きな影が小さな影を捕らえるように、資料の詰まったキャビネットに押し付けていた。
そこから逃げ出そうと、小さな影が必死に抵抗している。
『こんな傷作ってよくもそんな口が利けるな。』
『ちょっと弾が掠めただけだ。』
ああ、なんだ、いつものケンカか。
それなら巻き込まれないうちにさっさと逃げるべし。
幾多の経験からそう思い、ヤナギが二人の影に背を向けると、妙に淫靡な濡れた音が静寂に包まれた資料室に響き渡る。
『ぅッ、あっ…舐めんな、バカっ!』
聞いたこともない甘い声に、思わず振り返ってしまった。
『俺に断りもなく怪我して来た罰だ。』
『な…んで、いっつも…違う女の匂いさせてるようなお前に…一々断り入れなきゃいけないんだっ…!』

『首も絞められたって?赤黒く残ってるじゃないか、痕…。』
厚く空を覆っていた雲が晴れ、現れた丸い月が、庁舎の外から二人の姿を明るく映し出す。
『許せないな。』
低くそう言ったシゲムラは、コマツバラの白い首筋に口唇を寄せて強く吸い付いた。
『や…めっ…はなせって…ッ』
上着は肩からずり落ち、襟元のボタンはいくつか外され、
ネクタイも緩められている。
引き出されたシャツの裾からは、シゲムラの手が図々しく差し込まれて、弄るように蠢いていた。
『シゲ…ッ、ァッ、』
震える細い指先で必死にシゲムラの身体を押し返そうとしているコマツバラの眼鏡の向こうの目が、薄っすら浮かんだ涙に頼りなく揺れている。
長めの髪は乱れ頬を隠し、薄情そうな赤い口唇は半開きで熱い吐息を零していた。
ヤナギは目の前で繰り広げられる光景に唖然とし、ポカンと口を開けながら、それでもつい見入ってしまった。
止めろと抵抗しながら、シゲムラに身体中を弄られ、キスをされるコマツバラは、反面、ヤナギがこれまで見たことのないイイ顔をしていた。
きれいだと思ったし、なんか可愛いなと思ったし、何より、ああ、きっとこの人は目の前の相手に恋をしている。
そう思った。

独り身になって早半年、そろそろ自分も恋をして構わないだろうか?
いや、むしろしたい。
きっとしよう。
二人の先輩の痴話喧嘩兼情事に妙な希望と決意を胸に抱きつつ、気付かれる前に邪魔者は退散しようと背を向けた時。
「ヤナー。」
背後から低い声で名前を呼ばれた。
ぎょっとして振り返ると、シゲムラがニヤリと笑いながらこちらを見ていた。
「シシシ、シゲさんっ!」
蛇に睨まれた蛙の如く、ヤナギは恐ろしさに身が竦んで動けない。
「あっ!て、て、てめぇヤナ…!いつからそこにっ!」
耳まで赤くしたコマツバラがひどく動揺した様子で、こっちを見ている。
「え~っと…その……しばらく前から…?」
「しばらく前だぁ?」
「ででででも大丈夫です!大丈夫!このことは口が裂けても誰にも言いませんから!ていうか言える訳ないし!」
「いっそお前も共犯になるか?どうだ一緒に。」
必死に両方の手の平を振って、だから許して下さいと懇願するヤナギに、余裕綽綽な笑みを浮かべてそう誘って来るシゲムラの目は全然笑ってない。
それがまた一層恐ろしいのだと、ヤナギはこの時はじめてシゲムラに取り調べられるマル被の気持ちを理解した。

「い…いえ…ご遠慮させてもらおうかなぁ…なんて…。」
「ふざけんな、つうかいい加減放せ!」
シゲムラの腹にドカンと一発蹴りをお見舞いして、その腕の中からなんとか逃げ出すと、コマツバラは乱れた格好のまま、ビシッとヤナギを指差して言った。
「いいかヤナ、お前誰にも言うんじゃねぇぞ!わかったな!?」
「は、はいぃぃぃ。」
その迫力にヤナギは思わず土下座で頭を下げてしまう。
「それからシゲ!お前今度職場でこんなことしやがったらぶっ飛ばすからな!覚えとけ!」
「どうかな…。」
「覚 え と け !!」
怯えるヤナギと、どこ吹く風のシゲムラを残し、コマツバラは細い肩を無理やり怒らせてズカズカと去っていった。

資料室には男二人が取り残された。
「………あのぅ………」
ビクビクしながら見上げれば、シゲムラはコマツバラが去っていった薄暗い通路をじっと見つめている。
小さな背中の面影を追うように、優しく目を細めて。
それもまたヤナギがはじめて見るシゲムラの顔だった。
「可愛いだろ、あいつ。」
「はぁ…。」
「素直じゃないんだ。」
「はぁ…。」
「なんだよ、その気のない返事。」
「はぁ…。」
「まぁいい。ただ、あいつにだけは惚れるなよ。万年気が休まらなくなる。」
後ろ手に手を振りながら、妙な脅し文句を残してシゲムラもまた資料室を出て行く。
今、ヤナギは激しく後悔している。
こんな事なら無理に残業なんてしないでとっとと家に帰るべきだった。
見てはいけないものを見、知ってはいけないことを知ってしまった。
明日からどう二人に接すればいいのか。
というよりむしろ、より一層二人に絡まれることになるであろう日々を思えば、今から気疲れしてしまう。

そしてなにより、忘れられないのは月明かりに照らされたあの白い肌。
残された口付けの痕と、一瞬響いた甘い声、吐息。
涙がちの目でシゲムラを見上げ、誘うように睫毛を伏せたコマツバラの艶めいた顔。
「ヤバイ、どうしよう…。」
ヤナギは頭を抱えてその場にうずくまった。
確かに、恋をしたいと思った。
確かに、恋をしようと思った。
そして多分、恋をした。
その途端に失恋したような気もするが、何よりその相手に驚いてしまう。
「あああぁぁぁぁ…どうしよう…。」
風に乗って流れて来た雲がまた月を隠す。
「どうしようぅぅぅぅぅ~………。」
薄暗くなった資料室で一人悶絶しているうちに、時間は過ぎ、その日ヤナギは終電を乗り過ごした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、オオクリシマシタ!

ヤナはコマさんの幻影を消すべく、
「俺はあのコが好き俺はあのコが好き、てゆうか俺デブ専!」と、
必死に自分に暗示をかけながら交通課婦警さんに恋してるフリだといい…。

  • はじめまして!!シゲコマ最高です!!めちゃめちゃ可愛かったです(*^o^*) -- 蒼氷? 2011-02-14 (月) 03:54:46
  • シゲコマ最高です¦ヤナかわええ -- 2011-03-27 (日) 19:04:28

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