Ruina 廃都の物語 メロダーク→エメク←シーフォン
更新日: 2011-01-22 (土) 23:04:26
避難所で少し前に話題になっていたメロ→エメ←シーです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ひばり亭、ある日の夕刻。
宿から出かけていたものたちがひとり、またひとりと帰ってきて
ホールは徐々に賑わい始めていた。
先日行われた神殿軍の襲撃とそれに伴う戦争のためしばらく遺跡や門が封鎖されていたこともあり、
冒険者や商人たちはその反動でこぞってそれぞれの商売に精を出しているらしい。
ほくほく顔の商人もいれば、泥まみれでうなだれた様子の冒険者もいた。
しかし皆手には一様にエールを持ち今日の慰めや明日への活力をその杯の中に求めている。
そして、ホールの中を所狭しと埋めているテーブルの中には
その杯を持つには若すぎる者が集った卓もあった。
「異常だろ、アレはよ!?
なんであの暗いオッサンがエメクに四六時中張り付いてんだ!?
スパイは止めたんじゃなかったのかよ!!」
「おや、君、いつものスタンスはどうしたのかね。
メロダークくんが誰に張り付こうが君には関係がないのではないかい」
「大有りだ!!」
シーフォンは、だん、と拳でテーブルを叩いた。
その拍子に湯気の上がるミルクコーヒーのカップが揺れる。
かろうじて零れることを免れたそれに、シーフォンは無造作に角砂糖を二つ放り込み
イラついた様子で音を立てながらスプーンでかき回した。
向かいのテレージャもそれを見ながら自分のカップに口をつける。
彼女は年齢的には飲酒を認められているが、(一応)巫女という立場もあり(普段は)酒を口にすることはない。
神殿のスパイだったメロダークがエメクの殺害を試み、失敗したあげく
何がどうなったのかは当事者以外にはさっぱりわからないが、
そのままエメクへ従者のように付き従うようになってしまったのはつい先日のことだった。
パリスやネルがエメクに尋ねても、本人は言いづらそうに口ごもるばかりで
「仲間の一人が実はスパイでそれに殺されかけました」というとんでもない事実以上に
言ってはまずいことでもあるのかと、周囲の疑問は膨らむばかりだった。
実際のところは、言ってはならないことというよりも、
あの体験をどう説明していいのかエメクやメロダークにもわからないのだった。
そのメロダークが梃子でもエメクの傍を離れようとしないため、
探索のメンバー構成はおのずと限られてくる。
最近では、遺跡の知識と盗賊の技術を兼ね備えたシーフォンが残りの一人になることが多くなっていた。
つまりその様子を最も目の当たりにしている。
「ひとっことも喋らずエメクの後ろにへばりついてよ、気色わりいんだよ!
スパイじゃなくてストーカーかっつうの!」
「ほほう」
テレージャは、いつもとさほど変わらない穏やかな笑みを浮かべ、
苦々しげな顔をするシーフォンに視線を向けたまま手だけを忙しく動かしている。
かりかりかり。
彼女愛用の羽ペンが翻り、白い表紙のノートに何かを素早く書き付けた。
「大体なんで妖術師の僕様が神官二人のパーティに付いて行かなくちゃならねーんだ。
テメーが行けよ、お仲間だろ」
「そうしたいのは山々なのだがね。
流石に得意の重なりすぎたパーティが危険だという事は経験の浅い私にも分かる。ああ残念だ」
テレージャは、少し口元を笑みに緩めたまま
声色は本当に悔しそうにため息を一つ吐いて見せた。
「まあまあ、シーフォンさんも落ち着いて。甘いものでもいかがですか?」
突然、お盆にいくつものプリンを乗せたアルソンが
二人の間ににゅっと顔を出した。
「おや、美味しそうだ。頂こう」
「……ふん」
二人は促されるままお盆の上のガラスの器をひとつずつ手に取る。
「あ、おかーさん、私にもプリン~」
「だから僕、まだお母さんって歳じゃありませんってばー」
アルソンはそのまま呼ばれた方へ戻っていってしまった。
どうやら自分が焼いたプリンをひばり亭の中で配り歩いているらしい。
「うむ、頭脳労働の後の甘いものは格別だね」
「…………」
どこで手に入れたのかは分からないが、味の濃い立派な卵を使い、
あえて少し硬めに焼き上げられたカスタードプリン。
軽く焦がしたカラメルも良い風味で、更にその上へたっぷりの生クリームが乗せられている。
そのクリームとカラメルを同時にほおばり、
シーフォンの眉間の皺が少しだけ緩んだ。
「……とにかく。僕はもうあのパーティはイヤだからな。
ひとりで潜ってた方がまだマシだ」
「まあそう言わず。エメク君もせっかく君を誘ってくれてるんだろう。
愚痴くらいならいつでも私が聞いてやるから、行ってきたまえよ」
テレージャは相変わらずニコニコと微笑んで、傍目にも機嫌がよさそうだ。
対照的にシーフォンは、むっすりと膨れたまま無言で口にプリンを運んでいる。
それでも、単なる愚痴や雑談とは言え
あのシーフォンとここまで中身のある会話をするのは、実のところテレージャが最も多かった。
巫女と魔術師、本来ならば敵対しても不思議ではない間柄であるが
彼らは互いに巫女である以前、魔術師である以前にひとりの探究者なのである。
そういう意味では同じ世界に生きるものとして、何か共通の言語のようなものがあるらしい。
ちなみにこれをもっと砕けた言葉にすると「オタク」である。
けして二人ではない彼らは常に同じ世界観を共有している。
「まあな、アイツと行くとイイもんが見つかるのは確かだよ。
術の系統もかぶらねえし」
まだぶつぶつと何か文句を垂れながら、それでも明日も
誘われれば同じパーティで行くのだろうとテレージャは思った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
テレージャさんは白表紙のノートを写本にして売り出すべき
ナンバリングミス失礼しました
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