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スキマスイッチ 「ソフトクリームの午後」

>>49-51の、某生モノネタの二個目。前回レスくれた方ありがとうございます。
元アフロとスターの話。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

この近くに、近所に、ミニストップなんてあったっけか。あんまり土地勘のない俺には分からない。
確かこのライブハウスに来る前に通った道には、セブンイレブンとファミリーマートはあった。うん、あった。
だから別にそこに買い出しに行くくらいは、大した時間じゃない。だけどミニストップときたら、うーん。
もしかしたら見つけるまで結構、かかるんじゃないのかな。
「ミニストップの、クーベルチョコのソフトクリーム」
それ以外は却下。
にっこり笑って、スタッフの兄ちゃんにこいつは言ったんだ。あー、結構怒ってんのかも。
帰りの新幹線の切符の時間、それまでのタクシーの手配、そういうのが全部全部遅い。それは俺も思う。
いらっと来る気持ちはよくわかる。地方イベントも嫌いじゃないけど、こういう時はちょっと疲れが顔に出る。
俺もまた、そこでゴメン、って風に頭だけは下げたけど、だからって別にこいつを責めなかったんだ。
こいつのドSっぷりには、それにも慣れてたし。
だから暇だ。結構時間が出来てしまった。大丈夫かね、夜には東京に帰れるのかな。
イベント自体は直ぐ終わった。数曲演奏して盛り上げて、で、でも帰れない、あー暇だ。
「……シンタ君、それ取ってくんね?」
「あー?タバコ?」
「や、ポッキー」
あ、これね。俺はPSPの傍にあった赤い箱を、ぽいと背後に投げてやった。
ぽすっと楽屋の畳に軽い菓子箱の落ちる音、それからごそごそこいつが動く気配。俺はゲームで、こいつは今週のマガジン。
多分もうちょっとだろう。
スタッフ君が息せききって戻って来るのが先か、新幹線のチケを買い直したマネさんから、電話がかかって来るのが先か。
それまで、暇だ。

別に思い出さなくてもよかったけど、そういえばこんな風に二人だけになるってのも、最近じゃ珍しい。
そんで、ふたりで時間をもてあますなんてのも。この前言われたことを、だから別に思い出さなくてもよかったけど思い出した。
そうだなあ、久しぶりだな、こういうの。デビューする前とか、結構あったような気もするけど。
俺んちでダラダラしたり、歌詞書いたり、CD聞いたり。そん時もお前はやっぱ、甘いものとタバコが欠かせなかった。
「……もうさ、確かに二十年近いな、俺らってさ」
「んー」
「だよな?」
「あ、そうね」
あんまりこっちに集中してない返事が聞こえて、俺は何となくほっとした。
お前には聞こえてなくて良くて、何となく言いたいだけのことだったし。
俺もゲームのカーソルを動かしながら、だらだらっと言う。あんまり俺も集中しないで。
「こーしてると、あんま変わらんよね、結構」
「っは、たっしかに~」
「……だから何つーかさ、俺、ずっとこれでいいやって思うんよね」
最初お前は俺に対して、絶対に好印象抱いてなかった。後で冗談のネタで何度も言われたけど、でもその時はそれにも気づいてなかった。
馬鹿みたいに、いきなり夢中になった。
「お前とやれてて、マジ幸せとか、うん」
十年近く追っかけまわして、まあ本当に。迷惑そうに眉をひそめられるだけならまだしも、年上なのに蹴り飛ばされたりもして。
それでも時折お前から連絡が来ると俺は、何も文句言わずにいそいそと出かけて行ったんだ。今考えるとかっこ悪すぎだ。
現状維持。
だから俺には、しみじみ今が最強だわ、タクヤ。
お互いやりたいことがまた出来て、もしかしたら離れるかもって時期もあって、でもやっぱ同じがいいなとか思えて、うん。
十六年、ってお前は間違えて、多分十七年、って俺は思ってる。
それをあー、字面恥ずかしいけど、幸せって言っちゃおうと、まあそんな風に。あんまり集中しないで、サラッとね。
「お前がどうでもさ、俺は昔っから同じままだから、うん」
「……。」
「……変わらんからね。もうね、この気持ち墓場まで持ってくつもり、地味-に、ずっとね」

お前に執着したり追っかけたり、好きだったりするのはもう俺の一部、っていうかかなりの部分なもんで。
今さらそれをヤメロと言われても困る、難しい方向の部類だ。本気で俺、やめたらどうなるんかな。
「俺、さー」
あ、あ、うあ、ミスった。やっぱ会話とゲームは一緒にやっちゃダメだわ。
「……シンタ君のそういうとこ、あんまり良くない部分だと思ってるんデスよねー」
死んだー!!ゲームオーバー。
「……え?ナニ?」
「自己完結とか、俺置いてきぼり?」
「へ?」
何か、言われてる。ゲームも一区切りついた(負けた)んで思わず後ろを振り向いたら、こいつは背中を向けていた。
ごろっと寝っ転がって、シャツを皺だらけにしてあっち向いて、雑誌のページを繰っている。
俺は素で聞いた。間抜けな声になってたかもしれない。
「そっちはそうだね、って俺も思うけどさ」
「うん?」
「逆に俺、まだそこまで悟りきれてねーので……だって半分くらい?俺が好きになってから」
何だって?
「……幸せ、って別にそれは嫌じゃねいんだ、けどね、でも」
ぱた、雑誌を半分にして顔を覆って、ごろん。こいつは仰向けに、手を頭の下で組んで体を伸ばした。
「もしかしたら俺ばっか、置いてきぼりになっちゃってるんかいな、と」
「……。」
「あ、あんまこっち見んなよ。……今、超なっさけない顔してっから」
見たくても、見えねーよ、それじゃ。
畳の上についた掌が、じわっと汗ばんだのがわかった。体中も。奇妙な感覚、焦りに近い。
暑くも無く、寒くも無い。空調はちゃんとしてる、そうでなくてもそういう季節。
だからソフトクリームがいいなんて、そんなのお前のただのワガママだって、本当に。
どどどと、うるさい。あ、これ俺の心臓か。
そろそろ、手を伸ばす。
手を伸ばしたら、触れてしまう。
おい、ヤメロ。

「……タクヤ」
俺、今まで自分らのPVを見ては、さっすが映像は映像のプロだな、とか思ってたんだ。
だっていつも、こいつがあんまりかっこよく撮れてるもんで。ボーカルは得だとか、そんな軽口も叩いてたし。
それが本気の本当に、こんな風に眼の前にあると、どうしたらいいのよ。
ずらされた雑誌の下から、お前がこっちを見ていた。
あれ、本気で本当にお前なんだって、こんな風にこんななんだって、ああヤバい。どうしたらいいっての。
お前あんまりそういう眼、すんなよ、ってちょっと思ってたのが今、眼の前だ。
「だっ」
って、どうにもならずにどうにもできなかった俺に、突然こいつが飛び付いてきた。
体を跳ねあがらせて、抱きつくよりも体当たり、普通にびっくりしたし挙句に咽た。変な咳が出た。
マガジン、まだ俺は読んでない今週号のそれが、ぼすっと落ちた。目の端に見えた。
「終わって、んだ?」
でも、そんな俺の反応完全無視、して耳元で、こいつは言った。
「終わってん、の?」
「……。」
何がだ。答えはわかってたけど、それに自分で答えたくなくて俺はまだ黙っている。
するとこいつは畳みかけてくる。
ドSだな、やっぱり。ホント容赦ないよな、徹底的に追い詰めて、逃がさないんだよな。
「シンタ君のは、もう終わってんの?」
あ。
「……んじゃ俺、どうしたらいい」
でも、何か。
これ、いつものと違う。
さっきのスタッフに、どうしてもソフトクリームじゃないと嫌だって言ったあれとは何か、違う。
顔は見えない、だって耳元にくしゃくしゃの柔らかい髪が当たる、そういう距離だから。だから声だけ。
その声はでも、無茶苦茶近い。あの声、あの声、あの声だっての。

もしかして傷つけてんのかなって思いと、でも傷ついたらそれを必ず財産にする奴だよな、って思いと、同時にあった。
ちょっと冷めてたかな、俺。そういう意味ではごめん、悪い。
腕で、俺の首と背中を締めてくる。けど怒ってるやり方じゃないな、ふざけてるわけでもないな、こんなの初めてだ。
ほんとに、こんなの初めてだ、色々。
「どーしたらいい」
それは、俺のセリフだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

また時々お邪魔します。

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