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某役者×某製作者 「賢者の贈り物」

生、エロなし、某役者×某製作者
久々の燃料にちょっと滾った結果
役者の口調と関西弁がへろへろなのは勘弁して下さい…
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

旅行。そう、これは旅行だ。
少し前に事務所から話が来たときに、真っ先にそのことで頭がいっぱいになった。
即座に予定も調べずにその話を受けた。予定なんて入っていようと無かろうと構わない、
というよりも入るはずもない身の上だ。リア充は爆発しろ。
その日から荷物をパッキングして空港に向かうまで、頭の片隅に常にそのことが陣取ることになった。
勿論、ラウンジで彼に会ったとたん握手とセクハラ染みたボディタッチをしたのは言うまでもない。

「クリスマスイブにイベントって何だかロマンチックですね」
「きっとキラキラしてると思うの。夜景!100万ドルの夜景!」
いつもと違って眼鏡をした彼女がまるで夢見る乙女のようにはしゃいだ。
「でっかいツリーとかもあるんやろなあ」
その姿を愛おしそうに見つめ、彼は微笑みつつ言う。
いつも3人でほぼ毎週会っているが、彼が彼女に向ける視線はとても温かいもので
羨ましくもあり微笑ましくもある。
片や長年の付き合い、片や長年の尊敬から片想いそして半ば恋人のような感じになった関係。
密度では勝っているという自信があるが、期間では勿論彼女に完敗だ。

そんなことを考えているうちにふと思考を現実に戻すと、すっかり二人は会話に花を開かせていた。
割り込む隙間もない。空気読めない発言とかで引き戻すのも憚られるぐらい。
「やっちまったか…」
そうぼそっと呟くと横に座っていた彼の部下がきょとんとした顔をしてこちらを見てきた。
「忘れ物とかしちゃいました?まだ時間ありますけど」
「いえいえ大丈夫っす。あっそういえばこの間ですね」
こんな面倒な気持ちは会話の流れに乗せて忘れよう。それが一番だ。
どうせ僕らは、もう頻繁に会うことはないのだから。
「あ、グラサンかけてるとこ写真とってええですか?」
そんなこちらにも気付かず笑顔の彼はそう言って携帯電話をこちらに向けた。

日本とは違い暖かい空気。
クリスマスを控えたこの時期に、しかも彼と、海外に来ることができた。
以前みたいに世界中を飛び回り段々と窶れていく姿をただ眺めているだけじゃない、
その姿を目に焼き付けることが出来、何よりセーブさせることができる。
出国前の重ったるい考えは異国情緒溢れる空気に押し流されてしまった。
観光地を巡りショッピングをし美味しものを食べていれば当然忘れるというもの。
だからイベントが終わりフリーになった途端、蘇ってしまった感情に内心慌てふためいた。
どうしよう。この後も一緒に行動する予定だがこのままだとまた嫌な感情に流される。
彼女への嫉妬?いや違う。彼女のことは好きだ。可愛いし頭も切れる。
これはきっと性別が違うことによって現れる優位さに対しての複雑な感情だ。…多分。

「押し倒した癖に小さいことで悩むんですねー」
「だっかっらあれは勢いというかこう昂ぶりをぶつけただけでして」
複雑な感情についてを彼に質問、というか向こうに勘づかれて追求されたことがある。
その時彼は呆れたようにそう言った。
「僕のことを好きだから、公共の場で押し倒すわキスするわ乳首ネタ出したりするんでしょ?」
「ちょ、後半後半!もしかして怒ってますか」
「当たり前や」
「す、すいません」
一々謝らない!と頭をぺしっと叩かれた。
「怒っているのは君の考えについてです」
彼は叩いた部分を摩りながらそのまま胸に頭を押し当ててきた。
「人が人を好きになるのに、良いも悪いもあるか」
まるで全身の熱を吐き出したかのような熱さを持つ言葉が、頭の上をゆっくりと通過した。
諭すように、促すように。

だが、今はだからこそ揺れているのかもしれない。
人と人、それは確かにあの時の不安定さを強固にしてくれた。
あの後今まで唇を軽く合わせるぐらいだったキスに舌を入れるという選択肢が増えた。
抱きしめるだけじゃなくて交わるということも視野に入ったし、実際そうなった。
でもそれは彼女との関係にも当て嵌るわけで。
――女々しすぎる。
こんなことで延々と悩み続ける自分に嫌気がさした。

「……ん!……さん!聞いてますか!」
もう少しで80年代のSF映画のような街並みの中で絶叫しかけそうなタイミングで
彼はこちらの肩を叩いて我に返させてくれた。
「おっ、はい聞いてますん」
「どっちや!」
「ごめんなさい聞いてませんでした」
仕様がないな、と彼は苦笑して頭を撫でてきた。
ふと周りを見る。彼女は少し離れた土産物屋で彼の部下と通訳と一緒に買い物に勤しんでいる。
二人とも交友関係の広さが半端ないからなあと他人ごとのように思った。
「またどーしようもないことで悩んでるんじゃないんですか?」
やっぱりバレている。その通りですと両手を上げて降参ポーズをすると途端に彼はそっぽを向いた。
えっ、何か怒らせるようなことしたっけ!?
慌てて顔を合わせようとするも彼はつんとしてこちらを向かない。
「何でですかぁ…」
我ながら非常に情けない声で追加の降参を宣言すると、彼はそっぽを向いたまま。

「……」
「えっ?」
「その…そのですね」
「はあ」
「来年は毎週…会う必要がなくなるじゃないです、か」
「そうですね。お疲れさまでした」
少しふざけた口調でそう返すと、彼はちらりをこちらを睨んだ。
その顔は少し、赤いように見える。
――これって。

「もしかしてツンデレとか」
ツンデレ、という単語を口にした途端彼はしっかりと体重の乗った右ストレートを腹に繰り出した。
重い。この人ガチムチいや細マッチョにも程がある。
ゲフーとかグハーとかの漫画のような効果音を口から出して落ち着かせ、続きをどうぞと促す。
「孤独を愛する僕としては別に構わなかったんですが、その」
「彼女とはこれからも毎週会うわけで」
「でもそこに君はいなくて」
「僕らはそれなりにそれなりの立場にいて」
「下手に一緒にいられない訳で」
「だからそれに慣れようと」
ぽつぽつと語る彼は、いつもと違ってとても不安そうに見えた。
同時に、二人とも同じようなしょーもないことで悩んでいることにも気付き。

彼の頭を叩くととてもいい音がした。
突然のことに抗議しようとした彼の頭を素早く胸に抱え込む。
じたばたと彼は暴れる。そりゃそうだ、ここは人通りも多ければお互いの顔も知られている可能性もある。
それ以前に同性だ。
でもそんなことは関係ねえ。今やらなきゃ、言わなきゃ駄目だ。

「  」

きっと何だかんだ理由をつけて来年も一緒に居ようとするんだろう。
それでいい。居たいから居る。好きだから居る。
だって、恋は盲目だから。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
最後のラジオはゆっくり聞くよ


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