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十二国記 驍宗×泰麒 「捏造戴国物語3」

驍宗×泰麒、続きです。
注意)微グロ・驍宗様鬼畜注意。捏造次王注意。
……エロが書けない。ガクリ。

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 あさましい夢に囚われていた。
 夢を見ることなどほとんどなかった自分が、その夢を見るようになったのは十年程前からだった。

 いつも夢は、あの大乱の中での麒麟との再会から始まる。 
『……遅くなってしまい、申し訳ありません』
 そう言って目前に叩頭した少年の服は、返り血と少年自身の血で斑に赤黒く染まっていた。
 血と汗に濡れた鋼色の髪に、その少年が己の麒麟だと知る。
『蒿里……』
 万感の思いを込めて己が麒麟に与えた名を呼ぶと、少年は顔を上げる。
 あの再会の日、呼びかけに応じて上げた少年の顔は、白い頬を涙に濡らしてはいたが、
それでも再会の歓喜に笑っていた。
 だが、目の前で顔を上げた少年の顔には、深い悲嘆と絶望が浮かぶばかり。
 何より、白い肌を侵す、青痣のような無数の斑。――失道の病の症状。
(何故だ!何故、蒿里が失道の病にかかる!?)
 言葉もない己を見上げて、少年は喘ぐように言葉を継ぐ。 
『驍宗様、どうかこれ以上はお許しを。戴の民を皆殺しにするおつもりですか?』
 見回せば、阿撰の牢にいたはずの自分は、いつの間にか白圭宮の玉座に座っていた。
 玉座の階下には獣に食い荒らされたような無残な死体がいくつも転がっている。
 見知った官の死体だ。麒麟が浴びた血は、この官達のものだったのだ。
『そのつもりだが』
 冷酷な声が、勝手に喉を突いて出る。自分のものでは無い言葉に、なぜか奇妙な高揚感があった。
『蒿里、お前はどちらに賭ける?お前が死ぬのと、傲濫が民を殺し尽くすのと、どちらが早いか?』
 自分のものとも思えぬ哄笑が、二人きりの正殿に響き渡った。

「……驍宗様、驍宗様!どうなさったのですか!?」
 揺り動かす力に、驍宗ははっと飛び起きた。
 心配そうに見つめる麒麟の顔が目の前にあった。
「……蒿里」
 白い頬に手を伸ばす。その頬にシミ一つないのを確認して、ようやく息を吐く。
 泰麒が気遣わしげに背中を撫でながら言った。
「酷く魘されておいででした。大丈夫ですか?」
「……何、少し夢見が悪かっただけだ」
 言って驍宗は立ち上がる。乱れた衣服を手早く改め、臥室を出ようとする。
「驍宗様?」
 慌てて後に従おうとした麒麟を、驍宗は制す。
「まだ時間がある、お前は寝ていなさい」
 室内はもう暗くはないが、明るさから言って、まだ朝儀の時間までは随分間があった。
 釈然としない表情ながら、大人しく指示に従う麒麟に、驍宗は言った。
「蒿里、私は何か言ったか?」
「いえ、何も……」
 漆黒の瞳を見返したが、心配そうな色を湛えているばかりで、嘘を言っている様子はない。
 そうか、とだけ言って視線をそらし、そのまま驍宗は麒麟の私室を後にした。 

 その日以来、驍宗は時折、似たような悪夢に魘されるようになった。
 魘されて何か口走り、それを泰麒に聞かれるのが恐ろしく、身体を重ねても朝まで
共に過ごすことは絶えた。泰麒は物言いたげな顔をしたが、何も言わなかった。
 主がゆっくり休める方が良いと考えたのかもしれない。
 そうして、その夢は驍宗を人知れず悩ませ続けた。
 内容は都度異なったが、どれも麒麟に恐ろしい命令を下して哂う、病んだ自分の夢。
 それが、何年後、何十年後の自分の姿でないと断言できないことが、驍宗には恐ろしかった。

『驍宗様は、お腹が空いていらっしゃるから』 

 それははるか昔、臥信に「腹を空かせた虎のようだ」と評されたことに由来する蒿里の口癖だった。
 幼い頃には花を、あるいは菓子を手に休息を勧めに来ては、戯れのように口ずさんでいた
その言葉が、性的な匂いを帯びるようになったのはいつからだろう。
 再会から半年後のその夜、蒿里の臥室を訪れたのは、見舞いの為。
 前日まで蒿里は多忙な主に代わり、雁から輸入した麦を各州の義倉に配分する輸送隊の護衛に
飛び回っていたのだが、任が終わって帰ってくるなり、そのまま寝込んでしまった。
 黄医は穢瘁の病だと診断した。
『蒿里、なぜもっと早くに戻って来なかった?』
 臥室の中、身を起した蒿里の枕辺に座って問いかけると、申し訳ありません、と病人は頭を下げる。
 かつてなら、頬を撫でて病を労わったに違いないが、還ってきた麒麟は華奢な美しい少年の姿で
成獣になっていた。どこか影のある色気があって、手を伸ばすことは躊躇われた。 
 それでただ、言葉をかけた。
『無理をして何かあったらどうする。義倉も使令も大事だが、少しは自重せよ』
 今回の任に就くこと麒麟が固執した理由が、未だ出没する妖魔の脅威と、使令の少なさだった。
 当時は氾王に鴻溶鏡を借り、二つに裂いた傲濫の一方を王の、もう一方を麒麟の守護としていた。
 傲濫は裂いても十分に強かったが、数の少なさは補いきれぬ。
 妖魔から輸送隊を護る護衛ができ、使令も確保できる。一石二鳥の任だと熱弁する蒿里に折れて
任せたが、三か月ぶりに見る麒麟の顔はすっかり窶れ果てていて、やはり許可するべきでは
無かったと思わずにはいられなかった。 
 蒿里はもう一度陳謝してから、言葉を継ぐ。
『でも、後悔はしていません。一人の犠牲もなく義倉を満杯にできましたし、
 使令も増やすことができました。これで、傲濫も1つに戻してやれます』
 そう凛として言う麒麟に、頼りない幼子の面影は薄い。
 成長を頼もしく思う一方で、驍宗はもどかしさを感じずにはいられなかった。

『……蒿里。重ねて言うが、無理はするな。お前は私の側にいるだけで、十分役目を
 果たしているのだから。――それとも、そんなに私の側にいるのは嫌か?』
 麒麟は驚いたように主の顔を見上げた。
『嫌だなんて!そんなことありません』
『ではなぜ、こうも宮を空ける?玉座を取り戻すまでについては、私の力が及ばぬばかりに、
 お前には酷い苦労を強いたが、もう宰輔の務めに専念してもよかろう』
 麒麟は俯き、絞り出すような声で言った。
『僕だって、本当は驍宗様のお側にいたいです。この三月、毎日白圭宮に
 帰りたくて帰りたくて仕方ありませんでした。――でも』
 麒麟の言いたいことは分かっているつもりだった。記憶を失っていた長い時間。
 その間の犠牲に麒麟は深い罪悪感を抱いている。
 だから、皆まで言わさず、有無を言わさぬ口調で命じた。 
『であれば、当分宮を、――いや、黄医の許しが出るまでは正寝を出ることも許さぬ。
 私の護衛を除く使令全部も、だ。――よいな』
 臥室の布団を睨んで言うと、諾、と聞きなれぬ声で返答があった。
『驍宗様』
 不満げな声に、低く囁いた。
『お前まで性急になってどうする。時間はある。急くな』
『僕は……』
 言いかけて顔を伏せ、沈黙した麒麟に溜息をつく。逡巡した揚句に言ってみた。
『再会してからもう随分経つのに、お前は一度も虎に餌をくれぬな。昔は食事を一緒にしたい、
 茶を飲もうと良く私の部屋を訪れ誘ってくれたものなのに』
 それは本音だった。王の私室と麒麟の私室はかつてと同じく、共に正寝の中。
 目と鼻の先というのに、麒麟が王の私室を訪問することは絶えていた。
 ――まるで主の気の迷いを見透かしたように。

 愚痴のような主の言葉に、蒿里が顔を上げた。目には涙が浮かんでいた。
『……驍宗様だって、一度も僕に触れては下さらないではありませんか』
 言ってから、恥じ入ったように再び俯く。
 予想外の言葉に絶句した己に対し、麒麟は首を振って独り言のように言葉を継いだ。
『分かってるんです。僕の被害妄想だってことは。僕はもう子供じゃないんだから、
 当たり前なんだってことも。でも、僕には……驍宗様も僕に怒っておられるように思えて。
 七年も無駄にしておいて、今再び驍宗様にお仕えできるのに、これ以上何を求めるのかと。
 だから、そんな自分が嫌で……』
 ――手を伸ばしたら、きっと、そのまま手折ってしまう。
 分かっていたからこそ、今まで手を伸ばすのを躊躇っていたというのに、言葉より先に、
手を伸ばしてしまったのは、結局のところ、単に私がどうしようもなく飢えていたからだ。 
 あの時、蒿里が求めていたのは、肉体関係ではなかった。
 そんなことは分かり切っていたのに、私は気づかぬふりをして、蒿里の身体を求めたのだ。

 あの日以来、蒿里を抱くようになった。
 最初は苦痛の悲鳴を上げていた麒麟も、すぐに快楽を覚え、己が求めるように艶やかに
喘ぐように変わっていった。そうして、いつの日からか、あの言葉と共に、自分から身体を差し出す
ようになった。強張っていた主従の関係も穏やかになっていった。
 だが最近、ふとした瞬間に、別の感情が湧いてくるのだ。
 麒麟の蒿里が、王である自分を愛するのは当然。王が求めれば拒めるはずもない。
 なら、どこまで主に対する愛情を捨てずにいられるか、試してみたいと。
 
 私はとっくに、治世には飽いている。
 飽いた虎は、蒿里にもっと甘美な、恐ろしい餌を望むようになっていた。

(――寒い。)
 吹き込んできた凍てつく冷気に、泰麒は目を覚ます。
 幸せで温かな夢を見た気がするが、内容は思い出せなかった。
(きっと、驍宗様の夢なのに)
 夢の残滓を求めて、傍らの暖かな羽毛に頬を埋め、身体を寄せた――温かい。
 あまりの心地よさに再び眠ってしまい衝動に駆られたが、意を決して身体を起こす。
 巨きな鳥の翼に積もった雪が、顔を出した動きに合わせて、音を立てて落ちた。
 周囲を見渡せば、一面の銀世界が眩しい。
 頭上の野木も雪が深く積もり、まるで白い葉を茂らせたよう。
 ――本格的な冬が来てしまった。
「泰麒、眠れたか?」
 傲濫の声がした。
「うん。おかげですごく温かかった。ありがとう。――さ、行こう」

 冢宰と六官長宛にごく短い手紙を書き残し、宮を飛び出した。
 それ以来、ひとつひとつ里を街を駆け回る日々が続いている。
 麒麟が宿を取ろうものなら大騒ぎになるのは分かり切っていたので、こうやって野木の下で
獣の姿のまま、傲濫に寄り添って夜を過ごす。
 正真正銘の野良麒麟だなと思うと、ちょっと可笑しい。
 瑞州、委州、承州を虱潰しに巡り、文州に入った頃には、国土は白一色。
 二百年程前から文州の特産となった陶磁器を焼く窯の煙を頼りに、街や里を訪ね回って。

 ――そして、とうとう見つけた。
 陶磁器を焼く窯の細い煙を見つけ、なんとなく惹かれて訪れた名も知らぬ里、そこに王はいた。
 せっせと轆轤で器を作る男を上空から遠く見止めた瞬間、分かってしまったのだ。
 この人だ、と。

 厚い褞袍を着、頭と顔に布を巻いているので、顔も年格好も定かでない。
 そのまま男の元に舞い降りようとしたが、ふと我に返り泰麒は踵を返す。
 丸ひと月以上、獣の姿のまま放浪していた。
 おかげで鬣も五色の毛並みもすっかり泥と砂埃に汚れ、元の美しさは見る影もない。
 ――王に迎えに行くのに、さすがにこの汚さは失礼すぎる。
 適当な廃坑で湧水を探して沐浴し、身体を清めてから、汕子に預けていた衣服を纏い、里に向った。

 里に入る前に使令から降り、さくさく雪を踏んでその場所を訪なうと、その者は先刻と変わらず
黙々と轆轤に向っていた。他の者は屋内で作業しているのだろう。周囲にはだれもいない。
 そもそも、この寒さの中、外で作業している方がおかしいのだが、何故かその者の周囲だけ、
春の暖かい空気が漂っているような印象があって、あまり不自然さを感じなかった。
 これが、新しい王の王気なのかと思うと、知らず涙が零れた。
 ――驍宗様とは、全然違う気配。なのに、どうしようもなく慕わしい。
 近づく足音にその者が顔を上げた。
「どなたですか?」 
 30歳になるかならないか。布から覗く髪は灰色と赤茶色が混じる。
 落ち着いた優しい声の男だった。
「お邪魔してすみません。旅の者です。あの、どうしてこんなところで作業されているんです?」
 青年は笑う。
「あっちは大勢が回してるから煩くて。集中できないから」
 傍まで寄ると、青年は訊く。
「こんな時期に旅の方がなんでまた?ここの陶器はそんな有名じゃないのに」
 笑った青年の目が、先刻から一度も開かれていないことに、泰麒はようやく気付いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ナンバリング間違えました。すいません。

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