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鬼切丸 幻雄×少年

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )※ED後、後藤と幻雄と鬼切が組んでます。

「きゃははははは!」
「お前が成人なんて早いんだよ!」
「死んじゃえバーカ!!」
痛いよぉ…痛いよぉ…せっかくお母さんが買ってくれたお着物が汚れちゃう…。
青い着物を着た少女が、髪の毛を掴まれ蹴られている。
何度も何度も、住宅街から少しはなれたこの夜の公園で蹴られて殴られて。
苛めている三人のうち二人は女の子だった。
なきながら殴られ蹴られ、苛められているうち、もう何時間そうしていただろうか。
ついには動かなくなり、ごろんと桜の木下に転がった。
「あ…ちょっとやばいんじゃない?ねえ、萌?茂?」
顔色を悪くさせて今更ながら、その子に触れた。その子は、鼻から血を流して倒れ、そして最後に、彼女の腕を引っ掻いて事切れた。
「やだ、ねえ真紀子、こいつ埋めちゃおう…」
萌と呼ばれる着物姿の女が言った。
ちょうど木に立てかけられてあった、スコップを持って穴を掘って。

許さない許さない許さない
そして何度も繰り返す、成人の儀式。

八年後
その公園には鬼がいるという。
供養されない死体は八年経つと、鬼になるという。
「美咲、早く帰ってきなさいよー!」
「うん、分かってるよ」
美咲は呼ばれた女の子は、明日成人式だった。
公園のベンチに座って、夜空を見上げる。足をぶらぶらと揺らしながら、息を付いた。
「明日で成人式かー…」
明日で成人式なの。
「え?」
誰かが何処からか、自分の言葉をなぞった気がして、美咲は耳をすました。
成人式なんだあ。

それは自分が座っているベンチの背後から聞こえた気がした。
と、凄まじいまでの負のエネルギーを感じて、そろりと後ろを向いた。
そこにいたのは…

泣いている、女物の着物を着た鬼、だった。

「ねえ鬼切丸、幻雄」
後藤が一枚の写真を手に、二人に話しかけた。
鬼切丸は、刀を手に、ソファに座っていた。一匹狼だった鬼切丸も、三人での生活によく慣れてきたものだ。
その横で、幻雄が鬼切丸の髪に口付けしている。嫌なことにこれがいつもの光景なのだから仕方がない。
「こらそこの変態二人」
「?」
「なんだよ、後藤。また鬼がらみか」
鬼の事件を追いすぎるあまり、鬼切丸に刀によって刻印を刻まれた女、後藤。
裏僧伽となってしまった、一体何百年生きているかわからない、鬼を封じたまがだまが食料の幻雄。今は右手がないが、だいぶ左手での調伏になれてきた。
そして、純潔の鬼、鬼切丸の少年。外見は普通の人間と変わらない。
「変態っていわれて反応するのもどうかと思うわよ、あんたたち。そう、A市で鬼がらみと見られる事件。見て、この子の傷跡」
写真には女性の足と見られる部分が写っていた。そこには、二本、深い傷が入っていた。痛々しいまでの傷跡である。
それが、鬼によるものだと、三人は一瞬で判断が付いた。
「A市なんて隣じゃねーか」
ひょいと写真をつまみ上げ、その写真を覗く。少年も、その写真を覗くと、すぐにピンときたようだった。
「鬼による爪あとか…」
少年がつぶやいた。
じっと写真を見つめながら、一方で抱き付かれたり何なり甘やかされたりと、幻雄の好き放題にさせている。
「そうなの。鬼がいた、鬼が出たって泣いていたらしいわ」
「後藤、鬼切。俺は腹が減ってるからこの鬼食ってもいいか?」
「かまやしないわ」
「最近の鬼がらみの事件、てめぇに最後は預けてばかりじゃねぇか」
少年がすねた口調で言う。
どうせ鬼を狩るなら、とどめも刺したい鬼心。

「仕方ないだろ、鬼が最高の飯なんだから」

その一方で、A市。
萌、真紀子、茂の三人は、同窓会に出席していた。
あの公園から少しはなれたところに位置する居酒屋である。
何かも、あの罪の一夜さえ忘れて、楽しそうに喋っていた。
「そういえばさー」
誰かが話を振った。
「ん?」
「あの子、何ていったっけ。ほら、成人式の日にいなくなった子。あの子どうしたんだろうね?」
途端、三人の顔色が変わった。
あの成人式の日、三人で殺して埋めてしまったあの子。名前は…
柚子。
「そうそう、噂といえばさー、あの近くの公園、最近鬼が出るらしいよ」
柚子を殺したあの公園だ!!
ふと、柚子に死に際に引っかかれたところがうずく。
「やめてよ!!気味悪い話!!」
真紀子がヒステリックにわめく。
「そうだよ、こんな所にも来てない人の話やめようよぉ…」
萌もビクビクとした態度になって、その話をそらすように促す。
「それならさ、こんな話は?怖い話には正義のお話ー」
「正義?」
茂がビールを飲み干す。
あの一夜のことを急激に思い出した。そして身震いした。
あの日以外にも、いつも三人は柚子を苛めては楽しんでいた。それも小学校のころから。だから、久しぶりに再会した時の挨拶は、蹴りだった。
柚子は常に三人の視線から逃れるようにしていたが、成人式の日、まさか公園にいた柚子を見つけてこんなことになるとは思ってもいなかった。
だが八年。
八年もあれば、時効だ。それに、死体はまだ見つけられていない。
「そうそう、歯には歯を、鬼には鬼を。鬼を切る鬼がいるんだって。名前は…なんだったかなあ。確か刀の名前なんだよね」

その言葉の直後、ドン!と思いっきり机を叩く音が響き、同時にその振動で、コップや瓶がわずかに鳴く。
その突然の、それも怒りをあらわにした音に、一同は凍りついた。
机を叩いたのは、真紀子だった。
そう、いつも茂とともに率先して柚子を苛めていた。
「やめようっつってんでしょ!!どうせ作り話よ、鬼のことも、刀の話も!!もう、こんな飲み会嫌、萌、帰ろ!!」
「ま、真紀子…待ってよ!」
萌もコートとかばんを慌ててとると、すぐに真紀子の後をついていった。茂は、なんだか嫌な予感がして、こっそりと居酒屋を抜け出す。
確か真紀子と萌の帰り道には必ず、あの公園を通るはず…。

「この公園に鬼が出る?全く、嘘はやめてほしいわ、確かにそんな事件あったけど、変質者を間違えただけでしょ!」
ややアルコールが回っている。
ふらりとしながら、萌が体を支えて、真紀子と萌は公園へ入っていった。
酔い覚ましをしなければ。
柚子を埋めてしまった、その桜の木の前にあるベンチに座る。
なんとなく気持ち悪いが、このベンチに不思議と誘われた。
 冷たい風が心地いい。頭にまで血が上っていたので、酔い覚ましにちょうどいい。上を向いて、ふ、と、目を閉じたときだった。
「ひ…」
萌が、ベンチから離れた。
そしてあとずさって、何か恐ろしいものでも見たかのように…いや、見てしまったのだろう。恐怖の表情をしていた。
「?どうしたの、萌」
ねえ、振袖綺麗?
「!」
私成人してないの、成人式を迎えた日に死んじゃったの。
声を機械で巻いたみたいに、ゆっくりとした声が響いた。
ねぇ、ねぇ、萌ちゃん、真紀子ちゃん…お着物がね、泥で汚されちゃったの…。
「な、何この声…」
「真紀子、後ろ!!」
もえががたがたと震えて座りこんでいる。
そこに、茂が通りかかった。
真紀子の背後には、振袖をきた巨大な影が、二本の角を持った影が、まさに彼女を襲うところだった。
茂が腕を引っ張っていなければ、確実にその首は。
萌と真紀子の腕を引っ張って、茂は公園から離れる。

「何、何、なんなのあれ!?」
「早く、早く逃げようよ!!」
しかし三人が公園から離れると、影はすっと消えた。
そして誰もいなくなった公園を見下ろす影が二つ。公園の隣にある公民館の屋根の上からだった。
「よう、鬼切、見たか、あの三人が狙いのようだな」
「…振袖を着た鬼、か…」
屋根まで届く桜の木の枝をぽきりと折る。
今は全く葉も花も実もないが、そこから聞こえるのは確かに誰かの泣き声だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )毎度お世話になってます!続く。


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