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三匹が斬る! 殿様×千石 「夢路愛し君恋し Part1」

時代劇「参匹がKILL!」より、素浪人の殿様×仙石。
>>84の話のその後です。
前回書けなかった殿仙エロを張り切ったら、内容ほぼエロで、しかもえらい長さになってしまいました。三回に分けて投下します。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

道外れの青々とした竹やぶの中に、その井戸はひっそりとあった。
かたわらに土地神を祀ってあるらしい小さな祠があるのを見つけ、八坂兵四郎は柏手を鳴らした。それから井戸に下ろした桶で水を汲み、渇いた喉を潤した。
「ほう、こりゃあえらく甘露な味わいの水だ。祠まであるし、大切にされている名水なのかもしれんなあ」
ふくよかな甘味に感じ入りひとりごちると、兵四郎は再び道に戻り歩き始めた。

のどかな田園の中を歩いていると、急激に眠気に襲われた。まだ夕刻には時間があり、太陽は柔らかな光を地に注いでいた。
はて昼飯を食い過ぎたかなと兵四郎は不思議に思い、自分の頬をはたいてみたが、瞼は重くなる一方だった。
耐え切れず近くにあった水車小屋に入り込み、腰から刀を取って、腕を枕に寝転がった。

「いかんなあ、疲れてるのかなあ。それにしても、ふわぁ、ああ、眠い……」
むにゃむにゃとあくび混じりに呟くと、誘われるままに目を閉じた。

肩を優しく揺らされて目を開けた。すると寝そべった横に膝をつく、よく知った男の姿があった。
色褪せた黒い着物と袴を身に纏い、伸ばした髪を後ろで高く結い上げた、ぎょろりと光る目が印象的な面長の男。
それは間違いなく旅仲間の浪人、九慈真之介だった。

「仙石、お前か。こんな所で会うとはな」
起き上がり胡座をかいて声をかけると、真之介は何も答えず、ただ兵四郎の顔を見て笑った。それを見返した兵四郎は、ふと違和感を覚えた。
顔と姿形は間違いなく真之介だが、どこか雰囲気が違った。いつものように軽口を叩かず、やけに艶を含んだ眼差しで兵四郎を見つめていた。
目元と唇にはほんのりと朱が指し、そこから色香が漂っているように感じられ、思わず兵四郎はしばし見とれた。
愛刀をかたわらに置いた真之介は見つめる兵四郎ににじり寄り、胸の上に手を添えて微笑んだ。

「仙石?どうした……」
やはり何も言わないので、訝しく思い尋ねる口を、顔を傾けた真之介は自分の唇で塞いだ。
普段の彼からは考えられない行動に兵四郎は仰天したが、ついばむような心地よい口づけを、目を閉じて受け入れた。
唇を舌でくすぐられ口を開くと、すかさず中に滑り込ませてきた。くちゅくちゅと大胆に絡められ、兵四郎はやはり驚きつつも貪る甘い舌に応えた。
真之介は舌なめずりをして離れると、今度は兵四郎の首筋に唇を這わせた。自分が彼に施すような愛撫を逆に与えられて、兵四郎はますます困惑した。
とりあえず話をするために身体を離そうと、真之介の肩に手をかけようとした。しかし、まるで金縛りにかかったかのように手が動かない。
その間に真之介の唇は下に降りていき、袷を開いて兵四郎の胸や腹を優しく吸った。

「おい、おい仙石、ちょっと待て。お前何か、おかしくはないか……こら、待てと言うのに」
これではまるでいつもとあべこべだと、兵四郎は慌てた。しかし口は動いても、いかんせん身体が動かない。含み笑った真之介は悪戯な動きをやめず、更に淫らな行為に及んだ。
着流しの裾を割り下帯を下げられ、自身を取り出し手に握られて、兵四郎はいよいよ焦った。
「せ、仙石……真之介!どうしたんだ。お前がこんなこと、するなんて……っ!」
戸惑う叫びも意に介さず、頭を下げた真之介は手の中の兵四郎を口に含んだ。いよいよおかしい、こんな筈はないと思いながらも、濡れた口内にすっぽりと包まれるたまらぬ快楽に、兵四郎自身はあっという間に勃ち上がった。
真之介は唇と舌と喉を使い、反り返り猛るものを丁寧に舐めてしゃぶり、飲み込まんばかりに深くくわえ込んだ。頬をすぼめ頭を動かして刺激を与えながら、真之介は袴の上から自分自身にも手を伸ばし慰めているようだ。
口で兵四郎に、手で自分に愛撫を丹念に与える真之介を、極上の快感に朦朧となりながら兵四郎は眺めた。

やがて真之介の頭がせわしく動いて追い上げにかかり、兵四郎はまた慌てて咎めた。
「し、真之介っ、待たんか。そんなにしては、出ちまうぞ……おい、しんの、すけ……ん、うぅっ!」
呻くと同時に、兵四郎は真之介の口内で弾けた。

喉奥にたたき付けられた熱いほとばしりを、真之介は音を立てて美味そうに飲み込んだ。
はあはあと息を荒げる兵四郎から身を離して立ち上がると、真之介は着衣を脱ぎ捨てて一糸纏わぬ姿になった。
その褐色のしなやかな肢体はほの赤く染まり、中心は天を仰いでいた。
目を丸くする兵四郎の真正面にまた座り、半開きの唇を吸った。そして萎えたものに再び手を伸ばして扱き上げた。
達したばかりだというのに、みるみるうちにそれは隆々と頭をもたげた。
満足そうに笑う真之介は、兵四郎の上に跨がり膝をつき、熱い高ぶりを自ら秘所にあてがった。

「い、いかん!それは、駄目だろう、真之介!」
ろくに馴らしもしていないのに、怪我をするのではと兵四郎は狼狽した。
しかし後ろの口は驚くほどたやすく杭を飲み込み、ずっぷりと奥深くに収めてしまった。
真之介は絶え入るような高い声を上げ、きゅうきゅうと中のものを締め付けた。
「ああ、し、真之介……すごいぞ、なんて、熱さだ」
たまらず囁くと真之介は妖艶に笑い、腰を上下に動かし始めた。両肩に手を置き熱心に腰を振る真之介を、兵四郎は眩しそうに見つめた。
身体の上で乱れる彼を抱きしめたいと誰にともなく願うと、動かなかった腕がふいに上がった。
これ幸いと、兵四郎は真之介を力強く抱きすくめた。下から腰を打ち付けると火照る身体はびくびくと跳ね、切なく甘いあえぎを零した。
引き合うようにまた唇を重ねたふたりは、呼吸を合わせた動きで強い快楽を貪った。

「真之介、真之介……今日のお前は、大胆すぎる……だが、そんなお前もまた、たまらなくかわいいな」
耳朶をしゃぶりながら囁いてやると、真之介は兵四郎の首に回した腕に力を込めた。
兵四郎も真之介の腰を強く抱き、更に深くその身体を貫き突き上げた。
真之介の鳴き声は止まらず、湿った摩擦音とともにふたりのいる空間を満たした。

「んっ……真之介、真之介……」
「殿様、おい、殿様……」
「なんだ真之介、水臭いぞ。こんな時は、兵四郎と呼んでくれ……」
「こんな時たあ、どんな時だ。おいこら、殿様!」

起きろ!と怒鳴る声と同時に、額に強い衝撃を感じた。驚いて目を開けると眼前に、右手を挙げてしゃがんだ真之介の姿があった。

「し、真之介!?」
「……おい殿様、名前呼ぶの、やめろ」
照れたような怒ったような口調と仏頂面は、まさに見慣れたいつもの真之介だった。
叩かれて痛む額を撫でながら、兵四郎はようやく夢を見ていたのだと気が付いた。
それにしてもなんと淫らな夢だったのかと、内心でいささか恥じ入っていると、真之介がまた口を開いた。
「もうすぐ日が暮れるし、金がねえから飯も宿も諦めてここに落ち着こうと思ったら、早々と殿様が寝てやがるからびっくりしたぞ。ちょっとうなされてたから起こしたんだが、殿様、何の夢見てたんだ」
「いやあ、それがなあ……」
正直に話したら、こいつは間違いなく俺をぶん殴るだろうなあ、などとと思案していると、真之介はふいに顔を赤らめて兵四郎から逸らした。

「殿様……さてはろくでもねえ夢、見てたな」
「ん?なんでわかったんだ、仙石」
「ふん、やっぱりか。なんでって、そこ。自分でも見りゃあわかるさ」
真之介が指差す先を見つめると、着物の下から猛々しく盛り上がった股間が目に入った。
「ああー、なるほどなあ!」
「なるほどなあじゃねえだろ。全く、寝てても助平だな、殿様は」
「助平はひどいな、夢は仕方なかろう。好きで見るわけじゃないんだ。まあ、なかなかいい夢だったがな」
「……おい、話さなくっていいぞ」
「どんな夢かって、お前が訊いてきたんじゃないか、仙石。夢でもさっきと同じように、まずお前が俺を起こしてだなあ……」
「あーっ!うるさい、黙れ!そんな話、俺は聞きたかないっ」
喚いて背中を向けた真之介を、兵四郎は楽しげに見つめた。夢の中の色香溢れる彼もなかなかよかったが、耳まで真っ赤に染めて兵四郎の戯言に怒る現実の真之介は、いつも通りでやはり愛らしかった。

もっとからかってやりたくなり、近寄った兵四郎は慎之介を後ろから抱きしめた。手から刀を奪ってかたわらに置き、右の手首を取って腰に腕をしっかりと回した。
うろたえ振り返ろうとしたうなじに唇を落とすと、真之介はびくんと身体を揺らし動きを止めた。
「と、殿様……何してる!」
「何って、仙石……わからんか?」
うなじをねぶりつつ、兵四郎が腰に押し付けてきたものの固さを感じ、真之介は更に赤くなった。

「ばっ、馬鹿野郎!日も暮れねえうちから、何考えてんだっ」
「夜になればいいのか?仙石」
「……そんなこと、言ってねえ!いいからとにかく、離せ殿様」
「いや、離さん。こうしてお前に触れるのも、久しぶりだからな」
「……!」
きっぱりと言い切り髪に顔を埋めた兵四郎を、真之介は振りほどけないでいた。久しぶりに感じた兵四郎の体温は、身体に染み入るように暖かく、心地がよかった。
兵四郎は左手を手首から離し、抗いを止めた真之介の袷に差し入れた。胸をじかに撫でられ、真之介は少しのけ反った。
乳首を摘んでいじりながら、右手を袴の隙間から突っ込んで前に触れた。

「あ……っ!と、殿様、ま、待てっ」
「すまんな、待てん。あんな夢を見た後に、すぐ側にお前がいて、しかも俺はもう準備万端だ。これで待てという方が、無理だ」
「そ!そんなの、お、俺に関係、ねえだろうがっ」
「いや、ある。他ならぬお前が夢に現れて、俺をこんな風にしたのだからな」
「か、勝手なこと、抜かすな!俺のせいだとでも、言うつもりかっ」
「そうは言わんが……もったいないとは思わんか?」
「思わん!全っ然、思わん!」
「そうか?おかしいなあ。お前のものは、もうこんなに熱くなっているのに」
のらくらと口説きながら、兵四郎は真之介の身体を優しくじっくりと撫で続けた。左手は胸や腹を這い回り、右手は真之介自身を握り込んで擦り上た。下帯を引き下げてじかに触れ、先走りの露も手に取りしつこくこね回した。
真之介の身体は段々と前に傾き、あえかな鳴き声を絶えず漏らした。

「あ……はぁ、との、さまっ……いやだ、いや……あぁっ……」
「ああ、その声だ。恥ずかしそうに感じる声が、まさにお前だ。全く、たまらない……」
「な、何言って、殿様!あ、あっ、うあ、は……んんっ」
「もっと感じて、もっと鳴いてくれ。真之介……」
「う、んあっ……ああっ!だめ、駄目だ、とのさ……はぁっ」
快楽から逃れようと前に進んだ身体を、俯せに倒させてから仰向けに返した。
一旦手を離すと、袴の紐を解き一気に引き下ろした。下肢を晒され慌てる真之介を押さえ、帯を解いて着物の前を全てはだけ、下帯も剥いで取り去った。
「ばっ、馬鹿!風邪ひくだろうがっ」
「大丈夫だ。すぐに、暖かくなるさ」
「ふざけんなっ……ん、ん!ふうっ」

真っ赤になって喚く裸の真之介の両手を掴み、唇を塞いだ。夢で彼にされたように激しく貪ると、眉根を寄せて苦しそうにしながらも、舌を絡めて受け入れた。
混ざった唾液が滴るまで味わってから唇を離し、喉元を甘噛みするように口づけた。
唇でなぞり舌で舐め上げ、徐々に顔を下肢へと下ろした。
中心の繁みからそそり立って、可憐に震えているものにたどり着くと、真之介は全身を波打たせた。
兵四郎はやはり夢と同じように、深く口内にそれを迎え入れた。ねぶりくすぐって軽く歯を立てると、真之介は頭を振って悲鳴を上げた。
「と、とのさ……!あうっ、ひ、やめ……あっ、ふぁっ、あ!」
「いいや、やめない。お前のを飲み干すまで、今日はここを離さん」
「なんっ……!ばか、馬鹿っ、なに、言ってやがる……あぁ!いや、だ、あっ、や、だ、殿様ぁっ……」
両手を掴んだまま、のしかかった身体で脚を押さえ、兵四郎は口淫を施し続けた。涙を浮かべてあえぐ真之介は逃げを打とうとするものの、痺れるような快感に捕われて、身体は容易には動かなかった。

「あ……あっ!駄目だっ、殿様っ……もう、ほんとに、駄目っ……は、離し、ひ、ああっ」
「……真之介、構わんから出せ。出せば、もうしゃぶるのはおしまいにしてやる」
「あ、あっ、馬鹿!ば……かっ……ふぅあっ、あ、あーっ……」
とうとう耐え切れず、腰を浮かせた真之介は、兵四郎の口に愛液を放ち注ぎ込んだ。ごくりと喉を鳴らし、宣言通りに兵四郎は全てを飲み下した。

射精の衝撃と、吐き出したものを飲まれてしまったことへの羞恥にわななく身体を兵四郎は抱き起こし、腕に絡まっていた着物を剥ぎ取った。床に広げると真之介を俯せにし、上体を着物の上に寝かせた。
かたわらに積まれた藁を掴んで腹の下に厚めに敷くと、床に膝を着かせて腰を高く上げさせた。
兵四郎は、眼下に晒された真之介の秘所をまじまじと見つめた。絡み付く視線を感じて、真之介は我に返り非難する声を上げた。
「お、おいっ殿様!どこ見てんだっ、馬鹿!」
「真之介……もうここは、痛みはしないか?」
いたわるような優しい声音に、真之介は罵倒する言葉を飲み込んだ。

二月ほど前、かどわかし騒動に巻き込まれた真之介は、人掠い達に乱暴され犯された。危うく殺されるところを、兵四郎と仲間の鍔黒陣内に救出された。
兵四郎は医者の指示に従って看病し、真之介を完治させた。
その時、下肢も幾分か傷を負った。それをただひとり知る兵四郎は、真之介を欲しながらも容態を気にかけているのだ。

返事をしない真之介に、兵四郎は更に告げた。
「真之介、見られているからって、今更恥ずかしがることはない。お前の身体の隅々まで、俺は面倒を見たんだからな」
「ばっ……!いや、まあ、そりゃあ、あの時のこたあ、ありがたいと思っちゃいるが」
うろたえながらも改めて礼を言ってきた真之介に、兵四郎は笑った。
「いや、恩を着せるつもりはないんだ。また怪我をさせたくはないのでな、大丈夫なのかをちゃんと、確かめたいんだ」

ほとんど強引に身体を開かせておきながら、兵四郎は本気で真之介を心配していた。真之介は呆れて、少し身体から力が抜けた。
全くよくわからん男だ、だがどれもこの男の本心なんだと心中で呟いていると、しつこくまた兵四郎が訊いてきた。
「なあ、どうなんだ、真之介。ちゃんと治ったのか」
「……大丈夫だ。もう、痛みはない」
ため息混じりに返答すると、そうか、と安堵して頷いた。続いて発せられた言葉を聞いて、真之介の頭にまた血が上った。

「じゃあ、入れてみてもいいか?」
「……てめえっ、調子に乗んな!」
「そう怒るなよ。念のために訊いたんじゃないか」
「知らんっ!自分で確かめろ!」
売り言葉に買い言葉で思わず怒鳴ると、兵四郎は神妙な声で返事をしてきた。
「そうだな、わかった。確かめてみよう」
「お、おい、殿様……?あ、あっ!?な、なに……」
ぬるり、と何かが後ろの口を撫でた。指ではない湿った感触は周りをねっとりと這い、襞の一つ一つを丁寧になぞった。
舐められている、と悟った真之介は、あまりの恥ずかしさに、前に這って逃れようともがいた。
「ふあっ、あ、や、やだ……っ!離せ、馬鹿、殿様!そ、そんなとこ、舐め、るな……っ、うんっ」
「真之介……お前が確かめろと言ったんじゃないか。恥ずかしがらなくてもいい。最も、その恥じらって悶える様が、俺をまた熱くさせるのだがな」

「かっ……勝手なことばっか、言いやがってっ!あっ、やだ、いやだったら……あふっ、う、うーっ」
吐息を吹きかけながら欲望を語ると、兵四郎は尖らせた舌先を秘所にねじ込んだ。
勝手な言い草に真之介はまた怒ったが、脚をがっしりと押さえられ、前に回された手で自身もなぶられて、逃げたくても身体に力が入らなかった。

ぴちゃぴちゃと音を立てて、兵四郎はしつこく後ろを舐めては吸った。唾液が溢れ濡れそぼったそこは、更なる刺激を求めてわなないているように見えた。
真之介は甘い鳴き声の合間に、いやだ、やめろと消え入りそうな声で抗いを示した。
だが生き物のようにうごめく舌に秘所を思う様蹂躙されて、いつしか言葉は止まり、どうしても漏れるよがり声を必死で抑えようとしていた。

ふいに、ぐしゅっというような音が聞こえ、舌を離した兵四郎は顔を上げた。裸の背中越しに真之介を見やると、握った両手を横に置き顔を着物に埋め、頭はわずかに上下し揺れていた。
また鼻を啜るような音とかすかな呻きを耳にし、気になった兵四郎は腕を伸ばして、真之介の身体を返し仰向けにさせた。

「し、真之介……どうした。なぜ、泣いてる」
「……う、うるせえ!見んなっ……う、うぐっ」
腕で顔を庇う真之介は、赤い目からぽろぽろと涙を流し、鼻も赤くして泣きじゃくっていた。幾度か情を交わしたが、こんなに派手に泣かれたことはそうなかったので、兵四郎は大いに慌てた。

とりあえず真之介の側に寄って抱き起こし、震える身体を優しく撫でてあやした。
「おおよしよし、泣くな泣くな。一体どうしたんだ、真之介」
「……く、悔しくて、情けねえからだよっ」
「だから、何がだ。何がそんなに悔しくて、情けないんだ」
「てめえに、いいように遊ばれてるからだよ!俺をからかってなぶって、た、楽しんでるだろ、殿様っ」
「な、何を言うんだ。そんなことはない」
「いいや、絶対そうだ!俺が泡食って、女みたいな声出すのを見て、嘲笑ってやがるんだ、そうだろ!」
涙が止まらない真之介は片手で顔を覆い、振り絞るような声で叫んだ。思ってもみないことを決めつけられ、兵四郎は動揺した。これはどうあっても説得せねばなるまいと思い直し、抱えた腕に力を込めて、拗ねる真之介の手を取り顔から外させた。

「いいか、聞け、真之介」
「……やだっ、聞きたくねえ」
ふて腐れた口調に困ったように笑うと、兵四郎は真之介の額に横から口づけた。ぴくりと揺れた身体は、拒みはしなかった。
「聞くんだ。俺は、お前のことを見て嘲笑ったりなぞしてはおらん。そりゃまあ、確かに楽しいとは思ってはいるが、それは」
「ほらっ、やっぱり」
「聞けというのに。それは、お前があまりにもかわいく、色っぽいからだ。俺に触れられて乱れるお前を見て、たまらなくかわいい、愛しいと思いこそすれ、馬鹿にしたり嘲ったりする気持ちなぞ微塵もない。なぜなら、俺はお前を心底欲しいからだ」
腕の中の真之介は憎まれ口をやめ、俯いておとなしく聞いていた。兵四郎は言葉を続けた。

「俺はお前を縛る気持ちはない。お前は、自由にどこまでも駆けていく、若い野性の駿馬のような奴で、縛り付けるなどは到底無理だ。
だが、だからこそ、こんな時は……ふたりでいるこの時だけは、お前を俺のものにしたい。全てを暴いて晒して、惜しみなくかわいがってやりたい。例えそれでお前が泣こうとも、俺はそうしてやりたい」
「……やっぱり、勝手だ」
「そうだ、勝手だ。だが本当だから、仕方がない。お前は俺に、肝心なことを言わせてくれなかったからな。その代わりをと考えれば、俺はこうするより他はない」
夕暮れのほの暗さの中、兵四郎は真之介を見下ろして静かに想いを語り、穏やかに笑った。迷いのない目と口調に真之介は返す言葉が見つからず、眩しい笑顔をしばし見つめた。

あの時、傷を負って床に伏した真之介に、兵四郎は想いを告げようとした。だが真之介はそれを止めた。もうそれを聞かなくても兵四郎の心根はじゅうぶん伝わったし、対する自分の気持ちも正直に打ち明けた。
だから、聞かなくていいと思った。それ以上に、聞くのが怖かった。

兵四郎は優しく、あまねく弱い者を慈しみ手を差し延べる、菩薩のような男だ。半面、弱者を虐げ我欲を貪り悪事を成す者どもには、情け容赦ない閻魔のごとく怒りの鉄槌を下す。

真之介は、兵四郎が女に追っかけられるのは何度か見たことがあるが、彼が本気で誰かに惚れたところは、ついぞ見たことがなかった。
海のように広く深い兵四郎の情愛が、一心に誰かに向けられたならどうなるのか。それが自分に対して向けられたら。
脚を捕られて深海の底深くに引きずられ、沈められて動けなくなるように……兵四郎に溺れて、身動きが取れなくなるのではないか。

真之介は、兵四郎の熱情に飲み込まれるのを恐れた。だから、肝心な言葉を言わせなかった。それで、兵四郎から逃げられたつもりになっていた。

だがこうして熱く強い腕に抱かれると逃げることは叶わず、一心に真之介を求める彼の真摯さに翻弄され、結局は兵四郎に溺れてしまっている。

全ては自分が招いたことなのかと、真之介は長くため息を吐いた。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
気の利いたタイトルがなかなか思い付かず、大御所マソザイコソビのお名前から拝借しますた。
次回に続きます。

  • お -- 意パパか? 2011-10-30 (日) 09:23:15

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