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ジョーカー 許されざる捜査官 来栖×伊達 「~君に笑顔が戻るまで~Part.3」

浄化ー、捏造話、Part.3です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 久流須がトイレに立った時、美弥木が盾の耳元に口を近づけて、そっと囁いた。
「酒飲んで、ぶっ倒れてしまえよ。久流須に介抱させてやる。」
「な、なに言ってるんだ、美弥木・・・。」
盾は青ざめた。
「久流須も、おまえのこと意識してる。」
「ダメだよ。俺、久流須とは出来ない。」
「そんなに好きか?」
「わからないよ。ふたりとも好きだ。ごめん、友達でいればよかったのに、俺・・・。」
「卒業したら、もうこんな機会ないぞ。」
「美弥木・・・。」
盾は、顔をそむけた。かみ締めた唇が赤い。
どうしてだろう、こんなに好きなのにいじめたくなる。
久流須に先んじたと思った。もう盾は俺のものだと。
でも違うんだな。俺の腕の中で久流須の名を呼んだ。
これで終わりにして、友人の関係に戻ればいい・・・。
俺と盾と久流須の三人で、秘密を持って、知らない振りをして。

 あおった水割りの大半は、こぼしてしまった。
酒に弱いといっても、これで気絶するほどではない。
久流須がその気にならなければ、それまでの話だ。
もう眠ってしまえばいい、と思った。
久流須に相手にされない自分を見て、美弥木の憂さも少しは晴れるかもしれない。
それなのに、久流須にそっと触れられた時、喜びが細波のように全身を駆け巡った。
その手に、手を重ねてしまった。

 これは罰なのだ。
美弥木との最中に、久流須の名を呼んだ罪に対する罰・・・。
久流須に抱かれて歓喜に震える自分を、美弥木に見られた。
そして、美弥木に抱かれる自分を、久流須に見られた。
最初で最後。久流須に抱かれることはもうないのだ。
体はよがって泣くのに、心は悲しみの涙を流していた。
翌朝、覚えていないふりをした。
俺はうそつきだ。
久流須はどことなく、ほっとしているように見えた。

 盾が署に戻ると、久流須は出先から直帰になっていたので、顔を合わせることはなかった。
少し寂しいがほっとしたのも事実だった。
その夜は、休業中の見神のバーで、盾・駆動・伊図津の三人で今後の協議を行った。
駆動は、現在の暗ダー具ランド5のメンバーと思しき人物を何人かピックアップしていた。
美弥木のCD-Rは、5年前の情報だ。
情報は新しくなければ意味がない。
それに、“カゲの警察”という噂が本当なら、私セツ刑務所はその一部でしかないのではないか?
盾は自分の懸念を二人に話した。
わからないことが多すぎる。
私セツ刑務所に連れていく手段がない現在は、制裁の対象となった人物を監視しているしかない。
もし尻尾を出せば、今度は法の裁きを受けさせるまで引きずり出せばいい。
盾は、見神からいずれあちらから伊図津に接触してくるだろう、と言われたことを話した。
「いろいろ嗅ぎまわられている気がするよ。」
と、伊図津は笑った。
その時、盾の携帯が鳴った。
久流須からだ。
「はい、盾。」
「今どこだ。」
「あー、家に帰る途中だけど。事件?」
「いや、話があるんだ。これからお前んち行っていいか?近くまで来てる。」
「え?明日じゃダメなの?」
「今日、話したい。」

久流須の強い押しに、盾は承知せざるを得なかった。
盾は一応、班長なのだ。
班員からの相談を受けるのも、仕事のうちだ。
もっとも、盾班では久流須が率先してやってくれていたが。
久流須の話は、“紙隠し”に対する疑念かもしれない。
久流須と完璧に対立することになるのだろうか。
「じゃあ、30分後。家で。」
「わかった。」
 電話を切ると、駆動が口を尖らせて盾に詰め寄った。
「えー、今晩こそ俺、盾さんちに泊めてもらおうと思ってたのに!」
手術後、無理をしたせいで回復が遅れたが、駆動の傷も大分癒えた。
駆動としては、そろそろ盾と、もっと深い関係に入りたいと思っていたのだ。
盾としては、それはまずいと思っているのだが、説得するのは難しそうだった。
年下から甘えられるのは、あまり経験がない。が、悪くはない。
駆動はもう盾の大事な仲間だ。突き放せないし、どうしたものか。
「また今度ね。」
にっこり笑って、盾は駆動と伊図津を送り出した。

 「伊図津さん、あいつになんか言いました?」
伊図津を車で送る途中、駆動は伊図津に尋ねた。
伊図津は先ほどから、なにやら機嫌よさそうだ。
「ん~、あいつって誰かな~?」
「また、とぼけちゃって。久流須さん。」
「あー、久流須ね。なんか、眉間にしわ寄せてたから、
もっと気楽に行けとは言ったがね、それだけ。
あいつ、わかりやすいからねぇ。
かわいいあのコをいじめていいのは俺だけって。うふふ。」
なんか楽しそうだな、このおっさん。
「このタイミングで来るかな、もう。」
と、駆動はぼやいた。

 三年前、盾は、警察を辞めた見神が開いたバーの近くのマンションに引っ越した。
“制裁者”を引き継いだので、見神からいろいろなサポートを受けるために、
近くに住んでいた方がなにかと便利だったのだ。
銃のメンテナンスと保管も、見神がしていた。
万が一にも、現職警察官の自宅から銃が発見されるのはまずいからだ。
(今、銃や見神が調べさせた“紙隠し”の対象者や駆動の身上調査などの資料は、
捜査が入る前に盾が別の場所に移してある。)
医者にかかるほどではないが、何度か怪我をして、見神に手当てしてもらったこともある。
“紙隠し”のことで入院沙汰になったのは、火宇賀・吉済兄弟の時だけだ。

 見神のバーを閉めて家に戻ると、ほぼ約束どおりの時間にチャイムが鳴らされた。
どきんと心拍が跳ね上がる。
「ばかだな、今さら。」
出迎えると、久流須が盾の胸元にビールの入ったコンビニの袋を押し付けて来た。
「みやげ。」
「あ、サンキュー、って、飲むのは久流須でしょ。」
「おまえも少しは飲めよ。」
「そっちはつまみ?」
久流須がもう一つビニール袋を提げているのを見て、盾が手を伸ばすと、
久流須は、「これは違う。」と盾から遠ざけた。
「? ま、あがって。」
「ああ」
何度か、久流須が玄関先まで来たことはあった。
事件発生の知らせを受けて盾を迎えに来てくれたり、上司に酒を強要されてつぶれたのを送ってもらったり。
いつも玄関先止まり。
この家の中に上がるのは、初めてじゃないか?

 簡素な室内だ。
思いがけないところに本が積み上げられているのは、変わらない。
それ以外は片付いている。
今度のうちはソファがある。そこに座るよう、久流須をうながす。
久流須が来る前にソファから降ろしたのか、脇に本の山があった。
盾が上着を預かってくれたので、久流須はネクタイの結び目を少し緩めた。
持ってきたビールのプルトップを引くと一気に飲んだ。
上着を掛けて戻って来た盾が、久流須の隣に座って話を促す。
「で、話ってなに?」
隙を与えるな。一気に攻めてしまえ。こいつはとぼけるのがうまいんだ。
「盾。おまえ、本当は覚えてるよな、俺と美弥木と三人で寝たの。」
「え、それって・・・。」
いきなり直球で来られて、盾は体勢が整えられない。
久流須は何が言いたいんだ?
「俺んちで飲んだときのこと?警察学校卒業する前の?」
と聞いて、様子を伺う。
「そうだ。」
「飲んでつぶれちゃったから、よく覚えてないなぁ・・・。何かあったっけ?」
と、とぼけようとしたが、言ってるそばからうまくいかない気がした。
「じゃあ、こうすれば思い出すか?」
「え」
いきなり、久流須に押し倒された。
懐かしい体の重みに圧倒され、驚いている間に唇を奪われる。
押しのけようとしたが、全然ダメだ。
柔道の特訓を受けた時、寝技に持ち込まれると手も足も出なかったのが、思い出された。
久流須の良いように口内を蹂躙されて息が上がる。
酸素不足と好きな相手にキスされていることで、頭がぽうっとしてくる。
頭の片隅でダメだと声がするのだが、盾も舌を絡めてしまいそうになる。
空白期間を埋めようとするかのような、長いキスだった。
ようやく久流須が唇を離すと、盾は荒い息を付いた。

「どうして・・・?」
「課長が送別会の時、おまえが以前、張り込み中に話した昔話のことを話してくれた。
警察学校が終る頃、自分の部屋で友人たちと飲んでいたら、床に積み上げていた本が
ドミノみたいに次から次に倒れて部屋中に広がったって話。
それって、お前が酒を飲んでつぶれた後の話じゃないか。
終って、俺がふらふらしてぶつかって。
朝には俺と美弥木が積み上げなおしていただろ。
本当は覚えているってわかった。どうして、うそついた。」
課長がまだ係長で、一緒に捜査していた頃、つい話してしまったことが、今頃・・・。
あの時は、我ながらこんなに本があったのかとおかしくて、記憶に残っていたのだ。
いや、本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
つらかったけど一方で幸せだったあの夜の事を、ほんのちょっとだけ。
 盾は久流須の体の下で、身をよじって顔をそむけた。
もう隠せない。
「・・・あれは罰だったんだ・・・。」
「なんだそれ?罰って、なんの?」
「・・・俺、奈津記との最中におまえのこと、呼んだ・・・。」
久流須が息を飲むのがわかった。盾は震えていた。
「二人とも大事な友達なのに、俺・・・。」
「盾、顔みせてくれよ。」
盾はいやいやをして、顔を隠した。
「カズ」久しぶりに聞く久流須の優しい声。
盾のほほを久流須の手のひらが包み込んで、そっと向きを変えさせた。
盾の黒い双眸は、零れ落ちそうな涙で潤んでいる。
胸が熱くて苦しい。
「久流須?」久流須の方が先に涙を流した。
「好きだ。ずっと前から。もう俺から離れるな。」
胸がつぶれそうだ。
返事が出来なかった。
久流須の隣に居られる資格なんかないのに。
盾の涙が流れ落ちた。
久流須の涙が歓喜の涙なら、盾の涙は苦悩の涙だった。

 なに泣いてんだ、俺たち。
二人とも35のヤローだぞ。
傍から見たら、さぞ滑稽だろうな。
盾はまだ泣いていたが、久流須の方は先に進みたくなっていた。
長年好きだった相手と両思いだとわかったうえに、その相手を組み敷いているのだ。
体に反応するなという方が無理だ。

 久流須にどう言えばいいのだろう。
“制裁者”であることは言えない。自分だけの問題じゃない。
伊図津と駆動も巻き込んでいる。
久流須は、美弥木兄妹や佐衛子のように受け入れられない側の人間だろう。
だったら、美弥木や佐衛子のようになってしまわないか?
暗ダー具ランド5の真意はまだ不明なのだ。
見神は自分の独断だと言ったが、本当だろうか?
こうなってもなお、あの人は“紙隠し”を守るためならうそも付くだろう。
それに、伊図津が嗅ぎまわられている気がすると言っていたが、
盾も駆動も暗ダー具ランド5の監視下にあると思っていいだろう。
駆動が退院した後、盾の部屋を調べて盗聴器が仕掛けられていないのは確認した。
チェックの仕方を教えられ、その手順を守って気を付けている。
自分に関わると久流須も危険ではないか?

「カズ、もう泣くな。」
久流須の指が、盾のほほをぬぐう。
「ん。久流須、起きるから離して。」
「ダメだ。」
「え?」
「とりあえず、やることやっちまおう。」
「は?」
「用意して来た。」
と、傍らに放っておいたビニール袋を引き寄せた。
ええ~っ、それって、そういうことだったのか!

抵抗するといっても、久流須にはかなわないし、殴ることも出来ない。久流須なのだ。
簡単に上半身を脱がせられてしまう。
13年ぶりか。
8月に入ってから急に痩せたと思ったが、やはりそうだった。
春先に中年太り~と言ってからかってやった頃とは大違いだ。
そして、久しぶりに見る盾の体には、あちこちに以前にはなかった傷跡があった。
比較的新しいのは、左腕の・・・。

「これ、銃創か?!」
痛々しい傷口がふたつ。射入口と射出口か?
おまけに、射入口らしい方は傷口がふさがらない時に、何かでさらに潰したような・・・。
久流須が驚いている隙に盾は逃れようとしたが、すぐに我に帰った久流須に抱きしめられる。
「久流須、俺は。」
「いい。何も聞かない。」
「久流須?」
「聞いてもおまえ、教えてくれないだろ?
俺は、ずっとおまえを見てきた。
俺にはわからないことだらけだよ、おまえは。
だけど、俺の知っているおまえは、人を殺すような人間じゃない。
それだけは俺でもわかる。
だから、信じる。おまえを信じる。
もう、俺から逃げるな。」
突き放しても突き放しても、久流須は盾のそばを離れない。
もう逃れることが出来なかった。
馬鹿。おまえには離れていて欲しかったのに。
自分に向けられたものでなくても、おまえが笑っていてくれたら、それでよかったのに。

[][] PAUSE ピッ ◇⊂(・∀・;)チョット チュウダーン!
次で終わります。
需要があってよかった・・・。ありがとうございます。

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