そんな気
更新日: 2011-04-24 (日) 09:54:00
無屋主と慨家主
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ソッキョウノジサクジエンガ オオクリシマース!
程よい温度に調整されていたバスから降りると、蒸し暑い外気が瞬時に身体を包む。
だが若干涼しく思えた風に、季節の終わりが近付いていることを感じた。
ホテルに入ると、負けたこともあって、気だるそうな「おつかれさま」がロビーに響く。
それぞれがエレベーターに向かう中、きょろきょろと視線を巡らし、自販機の前で水を買っている
その男を見つけた。歩み寄って「お疲れ」と声をかけると「あ、お疲れ様です」とこちらを見下ろして
返事をするだけで、くるりと背を向けてエレベーターへ向かった。
複数あるエレベーターはすべて上がってしまった後だったので、彼の隣に並んで自分も待つことにした。
いつもなら軽い口調で話しかけてくる彼だが、今日は話しかけない。
理由のひとつは、負けたこと。
でも、もうひとつ理由がある、はず。
それはまるでアクシデントのような一瞬の出来事。
「なあ、アレ何だったんだよ」
隣を見ずに聞いてみる。返事がないのでちらりと横目で窺うが、彼は飄々とした表情のまま。
腹立たしかった。こっちは振り回されるばかりだ。
指で自分の唇を摘んだ。
あまりに衝撃だったのか、感触が生々しく残っている。
終了後、ロッカーで背後から声をかけられ、振り向いた一瞬だった。
「あんな人がいる所で、変な冗談・・・」
「人がおらんかったら冗談になりませんよ。どうせ誰も見てませんて」
開き直ったような答えに、大きくため息をついた。
せっかく今日は久々に当たりが出たのに、何でこんな罰ゲームを受けなきゃならないんだ。
エレベーターがなかなか降りて来ないイライラも相まって無言になると、
彼は「久々に出るから、緊張した」と呟いた。
「お待たせしてすみませんねー」
「ホンマですよ。でも嬉しかった」
話をしているうちに、顔が自然と笑ってしまう。
やっぱり彼のことを憎めない、と気を緩ませた直後だった。
「せやし、そういう気になってしもたんですよ」
目の前の扉が開いた。
一瞬間を置いて「へ?」と彼に顔を向けると、彼は笑いを堪えた表情でエレベーターに乗った。
後に続いて自分も乗り込むと、先ほどの「人がいないと冗談にならない」の言葉が頭をよぎった。
あの時と同じように、肩を掴まれ振り返る。
エレベーターのドアが閉まった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ヒサビサノジサクジエンデシタ!
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