Top/60-12

お前は俺のイライラの元

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  ドラマ 浄化ーの話です。
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  主人公とツンデレ部下。夜の宿泊所です。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ ドキドキ
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
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初投稿なので、いろいろと不備があったらゴメンナサイ。

35歳で警部補ともなれば、同期の奴らに比べて出世競争に一歩
先んじているものだ。
有能をもって鳴る殺人課の降旗さんも、未だ警部補。
同期での集まりでもいささか鼻が高い俺である。

・・・しかし、ここにきて、キャリアでもないのに、とんでもなく
出世している奴がいる。
盾和良、階級は警部。無網の極みのくせに俺の上司。
今、俺の隣でいちごオーレを飲んでいる男である。

「だいたい、何でお前が今日ここで泊まりなんだよ。」
そう、ここは県警内のホール兼宿泊部屋。
本来明日5時から出張の俺一人が広い宿泊部屋を独占できる
予定だった。
だのになぜ、盾がいる。
「俺んちさ、昨日ガス湯沸かし器が故障しちゃってさ、風呂に
入れないんだよ。ホテルに泊まるのお金かかるし、ここならタダだし。
何よりギリギリまで寝てられるし。
あっクル巣がいるなら起こしてもらえるし。」
「県警をホテル代わりに使うなーーっ!俺は目覚まし代わりか!」
いいじゃないそのくらい、と口をとんがらせるぼけ上司。
「だいたいお前、独身だろうが。警部のくせに金ケチるなっ!」
「硬いこと言わないで。そうかー、クル巣も泊まりか。なんだか
修学旅行みたいだな。」
「気色悪いこと言うなっ!」

こっちの気分お構いなしに盾は、Tシャツとジャージに着替えると
枕投げしそうな中学生みたいなわくわくした目で俺を見ている。
いや、ひまわりの種を見つけたハムスターみたいな目だ。
一瞬撫で回したくなったが、ハッとして俺は手を引っ込めた。
あぶねーーーっ!
「クル巣―、守衛さんが来るのは3時だから悪さするならその時間は
避けろよ。」
悪さって何だ、悪さって。
「それから、トイレ行くときの照明は足元のスイッチの方が近いからね。」
うぜっうぜっ
「クル巣、いびきとか歯軋りとかする方?」
「わからん。」
「俺がいびきかいても許せな。」
「うんにゃ、絞める。」イライライライラ
「あっ、クル巣がヤバい寝言言っても俺、バラさないからね。」
「早く寝ろーーーーっ!」キレたのは俺のせいじゃない。
でも、盾はクスクス笑いながらほざきやがった。
「クル巣―よくないよ。いつもイライラしてさ。」
だれがイライラさせてるっちゅーんじゃ。
「ほら、甘いもの取ってさ。」
盾は、いつも持っているデカいエコバックを不器用に漁りながら言った。
「はい、いちごオーレ!」
「お前は小学生かーーっ!」
「ぴぎゃーーーーっ!(じたばた)」
俺は上司の首を思いっきり絞めた。

「だいたいこの前の健康診断、捜査一課でお前だけだ。
40前で、悪玉コレステロール値で引っかかったの!
せめてブラックコーヒーとか茶にだなーーーっ!」
「だって・・・コーヒーとかお茶はおしっこ近くなっちゃうし・・・。」
じじいか、お前は・・・。
「あっ、クル巣、小腹空いてない?俺少し食べ物持ってきたんだけど。」
そういえば少し・・・。まあ、少し食べてやってもいいか。
あいかわらず、ダサいエコバックをまさぐり、盾はなにやら取り出した。
「ほら、チョコレートポッキー。」
脱力・・・。大の男がどうしておやつ持ち歩いてるのか・・・。
「えっ?気に入らない?じゃあいちごみるく?甘納豆?」
味覚がガキなのか、年寄りなのか・・・。
っつーか、そのエコバッグ、そんもん入れてるのか。
「ポッキー・・・。」かろうじて俺はまだ「マシ」なのを選んだ。
「そうだよな。男はやっぱりポッキーだよな。」
わけわからん・・・。
って、おいっそんな変な開け方したらっ!!
案の定、ポッキーは盾周辺一帯に散らばった。
ポカンとして、何が起こったのか理解できない盾。
目が点になったまま動かない。
こいつ・・・どこまでどんくさい・・・。
ポテトチップスの袋でやっちまう奴はたまに見るが、ポッキーの
中袋開けるのに、どうやったらそこまで散乱させられるのか。

もたもたと後始末する盾をひとしきり手伝ったあと、
俺はポッキーを食べる気力は既になく・・・。
ドッと疲れた。

「もう寝る。」無視だ無視。こっちばっかりペースを乱される。
俺は毛布を引っかぶった。
「いいか、俺より3つ以上近い布団で寝たら殺す。イビキかいたら
締める。話しかけたらその場で銃殺。わかったな。」
「乱暴だなー、クル巣くんはー。だから捜査も雑になるんだよ。」
えっ?グサッ
「だいたい怒りっぽくて猪突猛進だから、推理が早すぎるんだよ。
そりゃ勘も当たってるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
常に捜査にはいろいろな可にょうひぇーほ・・・じたばた」
「こーのーくーちーがー言うかーーーっ!!!」俺の両手の人差し指が
盾の口を思いっきり広げる。
「ごみぇんなひゃい、ひょーひににょりしゅぎまひひゃー。」
ひたすら土下座する盾。思いっきり痛いところつきやがって。

「あのさ・・・。クル巣、最近、うっすらと思うんだけど・・」
今度は何だ。
「ひょっとして、クル巣、俺のこと・・・嫌ってる?」
「・・・へ・・・?」
何言ってんだ、この鈍トンカチは・・・。
「うっすら」とじゃなく「思いっきし」嫌いオーラ出してる
だろーか。それを最近まで気づかなかったのかぁ????
「今頃気がつきやがったのか。てめーは。
そうだ、でーーーっキライだ。お前なんかよ。」ざまあ見ろ
「やっぱりそうだったのか・・・」
盾は一瞬小さく頷いたあと
「良かったーーーー。」とそれはそれは満面の笑顔と大きな声で
伸びをした。
え・・・・?ズキッ?<良かった・・?>
今、一瞬俺の心、ハートブレーク???
「うんうん、そうか。スッキリした。さあ、寝よ寝よ。」
相変わらずニコニコして床に入ろうとした盾の毛布を剥ぐ俺。
「ちょーーー待てーーーっ!」
「何だよ~。人がおとなしく寝ようとしたら、勝手だなあ、クル巣は。」
「お前、良かったって何だよ、良かったって。」
「だってー、すっきりするでしょ。」
「スッキリって・・・スッキリって・・・、おまえなー。」

頭の中がクエスチョンマークで支配されている俺に
さわやかに盾が言った。
「いやあ、クル巣が俺のこと嫌ってるとかそうじゃないのか、
どっちなんだって悩むと、こう心がモヤモヤしちゃってさ。
でも、答えはどうでもどっちかはっきりすると、心のつっかえが
無くなるってーかさ。」
「はっきり・・・すっきり・・・??」
そんなもんなのか・・?お前にとって俺って。
「そうそう、告白前より玉砕したほうがスッキリして、一歩が
踏み出せるってーか、よく寝れるってーか。そういう感じ?」
おまえは、ねるとん(←若干思考が古い)やってる高校生か・・・。
「ともあれ、クル巣の気持ち聞けて、心のモヤモヤが解けたっ
てーか。」
「・・・お前なー、人にキライだって言われて傷つかないのかよ。」
俺は、自分のことを棚にあげて問いただす。
えっ?という顔をしたあと、盾は妙に優しい目で俺を見る。
何だろう、一瞬よぎるこの不安・・・。
そしてそのまま視線を暗闇に移す。
いつもの小動物のキョトキョトした視線じゃない。
「俺はいいよ・・・」微笑む。
そして宙に向かってつぶやくように言う。
「だいたい俺、そういうガラじゃないし。
人に好かれたり愛されたりするような価値ないし。」
達観しているような、優しい響きで、同時に氷のようにしんと
冷えた声。

「・・・・・・。」
どこかとてつもない迫力を感じさせる盾のつぶやきに、
つい無言になってしまった俺。
盾はハッとしたような顔をしたあと、我に戻ったのか、また
いつもの小動物の目に戻った。
「でもさ、俺はクル巣のこと結構好きだな。」
今度は半月目の明るい笑顔。
「え・・・・?」一瞬俺はどぎまぎと。
「なんたってクル巣は、俺の停職明けにいちごオーレ
おごってくれたしさー。」
安っっっっ!
「クル巣はさ、見た目は出世欲強そうだし、実際強いし。
でも本質はすごい正義漢なんだよな。」
「おいっ」ほめてんのかケナしてんのか。
「一生懸命生きてる人が、悪い奴に踏み潰されるの
見て見ぬ振りができないというか。案外、面倒見いいし、
だから土屋たちがついてくるってーか。」
「・・・・」なんだか照れる。
「時々査定なんか無視して上に突っかかるし。まあ相手は9割方
俺だけど」
まさか、査定に入れてやがるのか・・・。
「クル巣はまっとうだよな。こんなに長く刑事やってるのに
まっとうで純粋な正義感持ってる・・・。」
俺、一瞬なんだか幸せな気分になってないか?気のせいか。
そんな俺に盾は、とびきりの笑顔で言った。
「やっぱりクル巣は出世できないなぁ・・・」

俺の両コブシは盾のこめかみにぐりぐりめり込んだ。

ひとしきり、俺の制裁を受けた後
「痛っーーー!もう、すぐ拳に訴えるう。」
小動物はまた口とんがらせる。
「まあ、俺に好かれてもクル巣は迷惑だろうけどな。」
盾は笑った。

ホントにこいつは小悪魔だ。
天然の小悪魔。
悪気もなく俺を振り回す。俺はイライラしっぱなしだ。
小動物みたいな目しやがって、小動物みたいな目しやがって
俺がいないと何もできない小動物の・・・。

でも何故だろう。
こいつの瞳、切れ長の目の中の大きな瞳が、ときどき闇より暗い光
を放っているように見えるのは・・・。
闇より深い漆黒の瞳。怖くほど悲しいまなざし。
ほんの一瞬だけ、気のせいかもしれないが。

「迷惑じゃねーよ・・・。」俺はつぶやく。
「うーん・・・え?何?」盾は寝たまま眠そうな目で尋ねる。
不機嫌な顔で俺はもう一度言い放つ。
「迷惑じゃないって言ってんだよっ。お前に好かれても。
だから、自分のこと価値がないなんて言うな。」

盾はクスクスと笑いだした。
「やっぱりクル巣は出世できないなあ。」

そして俺の両こぶしは盾の・・・・・。

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 | | □ STOP.       | |
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