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月→星

ドラマ調停/委員/日/向夢個シリーズの上月→諸☆モナ >Ω
マイナーすぎて誰も知らないな>Ω
諸事情によってAA略式だゴルァ >Ω
ピッ
|>PLAY

「警部っ」
長い廊下から階段を使い、一階へ下りた上月は外へ出ようとしている諸☆へと駆け寄った。
「帰るなら一言いって下さいよぉ」
甘えた声で、大きな犬が擦り寄るように身を寄せて上月は諸☆に言う。
「どうして俺が部下であるお前に帰る旨を伝えなくちゃならないんだ」
立ち止まり不機嫌そうに言うと諸☆は隣に立った男を僅かばかり見あげる。諸☆は上月より頭一つ分小さいのだが彼の背が低いわけではなく上月が――諸☆に言わせると――規格外なだけだ。
「いやそんな報告の義務があるとかじゃないんですが、警部を送り迎えする身ですし時間を把握しておきたいので」
「ちょっと待て。俺は頼んだ覚えはないぞ」
「何をですか」
「送り迎えだ」
「え」
「それに送迎なんて必要を感じない」
「それは……」
沈黙のち――破顔。諸☆は何かを思いついたような上月の笑顔に面食らう。
「警部っ夜道の一人歩きは危険です!」
そう言い放った上月に諸☆はこめかみの辺りがピリピリと痛むのを感じた。

「警部」
「ん?」
結局、上月の運転する車の助手席に身を落ち着けた諸☆は窓の外の流れゆく景色を見ながら彼の声に応えた。
「今日はあそこへ?」
「あそこ?」
「はい。あの……居酒屋です」
あの居酒屋と言われ思いつくのは一カ所、居酒屋『現ちゃん』のことだろう。恩師である夢個が事件に顔を突っ込んだとき必ず寄るといってもいい場だ。
実はこの『現ちゃん』の店主、耶麻元 現助は諸☆の同級生であり、さらに同級生という範囲内にとどまらず深い繋がりがある。この繋がりというのを諸☆はひた隠しているため上月は知らない。
知らないが故に何か思うところがあるのだろう、上月は現助の事を半ば無意識ではあるが敵視している。大切な上司の過去を知る男として貴重な人物ではあるがとりいって聞き出そうとはしない。だいたい上司が隠しているのだ、聞き出すことは出来なかった。
「おまえもくるか?」
窓の外を見たまま諸☆が問うと上月はふたつ返事+首を縦にふることで同行することにした。
せっかくの誘い、断るわけにもいくまい。

居酒屋『現ちゃん』前。
駐車場に止めてきますから先に行っていて下さいと店の前でおろされた諸☆は店の中へと入る。
「あれ」
カウンター席には……
「あら諸☆くん」
恩師、夢個先生。その隣には夢個のパートナー小田鞠までいる。
「なんだか事件が起こりそうなメンバーだな」
冗談めかして言ったのは現助だ。それに相づちをうちながら自然と夢個の横に腰を落ち着ける。
暫くして車を停めてきたのだろう上月が入ってきた。
「警部」
「お、きたか上月。こっちこっち」
手を振り、招き寄せると上月は嬉しそうに近寄ってきたが皆が座っている場所より一歩後方で足を止めた。位置的に夢個と諸☆の間だ。
そこで僅か考える素振りをみせてから諸☆の横に座った。
「なに飲む?」
現助が問うと諸☆が応える。
「こいつ車なんで、酒以外」
「あの警部」
「プライベートだから呼び方に気をつけろ」
「あ、はい。えーと……浩一さん」
「なんでいきなり下の名前」
諸☆からならまだしも現助からもつっこみが入る。
「諸☆くんの部下の子よね?」
柔らかな優しい声が諸☆の隣から聞こえ、上月は背中をしゃんと伸ばした。彼女は上司である諸☆の恩師、失礼があってはいけない。
「はいっ上月輝昭です」

「そう上月くん。諸☆くんをよろしくね」
恩師というよりは保護者と言った口振りで夢個がいうと諸☆が不服そうに上月を一瞥するが口を開くことはなかった。
「ところでよぉ諸☆」
「はいはい、なんですか?」
未だにどことなく逆らえないものがあるのか敬語で諸☆は現助にこたえた。
「あのお前がなぁ……ほんと、ご立派になったもんだ」
「あーちょっとその話は」
ちら、と上月を見て諸☆は現助の口止めを試みるが……無視されてしまう。
上月に聞かれてはマズい過去の話だろう。
「なぁ夢個先生、学生の時のあの諸☆が」
「そうねぇあの諸☆くんが」
おっとりとした口調で夢個が現助と共有する思い出を頭の中に思い描いているのだろう口元が綻ぶ。
「ちょちょ、ちょっと夢個先生も話にのらないで」
「あ~諸☆さんの過去れぇーあらしも知ってますよぉ」
話に加わらなくてもいいはずの小田まで呂律の回らない舌で参戦、諸☆は背筋を冷たい汗が流れ落ちた。
このままではマズい。非常にマズい。
諸☆は話をとめることは無理と判断し上月とともに店を出ようと上月のほうを振り返った、そのとき。
「うわっ」
「帰りましょう警部っ!明日も早いんですからっ」

諸☆は、腕を引かれて強制的に起立させられ、そのまま出口まで引きずられていく。鮮やかなまでの実に見事な人さらいである。
「おいこら警察の人間が無銭飲食か」
現助にごもっともな意見を述べられ諸☆は慌てて上月の手を振り払い、現助のもとまでいき財布に手をのばす。
そこをすかさず上月が後ろからガバッと抱き込んだ。
上月の肩辺りに諸☆の頭。
「警部、やはり小さいですね……」
どことなく感激したような声音で上月はつぶやくと諸☆の腹部前で自分の手をがっちりと組みそのまま引きずっていこうとする。
「こっ上月!? 何してるっ! いやそのまえに支払いっ」
素早く財布から一万円札を抜き、諸☆はカウンターに置こうとしたのだが失敗し、はらりと虚しく地面に着地した。
それを見届けたときには諸☆の体は外へと引きずられていたのだった。
「はい、現ちゃん」
床に舞い落ちた一万円札を拾い上げ夢個は現助に渡す。そのときそっと夢個はいたずらっぽく囁いた。
「もう現ちゃんの庇護下にいた諸☆くんはいないみたいね」
夢個のその言葉が届いたかどうかはわからず、現助はドアを睨むようにして見つめるばかりだった。

「上月いい加減放せ」
店から大分引きずられた場所で諸☆は抵抗するのも諦め、低い声で呟いた。
「すみません警部」
ぱっと手を離し、上月は謝罪した。
「あーぁ、遺体か泥酔者の気分だぞ。靴が削れた」
「すみません……」
ずり下がった眼鏡を指で押し上げながら振り返ると、しょぼん、と頭を垂れて肩まで落としている上月をみた。
上月は完璧な反省モードだ。
「なんであんなことをした」
責めるような言い方ではなく、年の離れた弟か何かを咎めるような物言い。
諸☆は怒りを通り越して呆れてしまったのだろう、そう判断して上月は顔をゆっくりとあげて目を合わせる。
「疎外感が」
「疎外感?」
「自分だけ警部の……その、過去を知らないので」
「……」
「あ、いえ、別に知りたいとかじゃなくてですね、いや知りたいは知りたいんですが、けっ警部が」
「俺が?」
「警部が過去を知られるのが嫌そうなので……」
つまり、あんな拉致まがいな強引な方法ではあるが上月は諸☆を助けたわけである。
「上月」
「自分は警部の嫌がることは……したくないので」
諸☆が言おうとした言葉を遮り、語尾が消え入ってしまうほどの声でそう告げた。
「そうか」
上月の言葉をどのように受け取ったのか微苦笑を浮かべて諸☆はそうこたえた。

「警部」
「ん?」
「明日の朝、迎えにいってもいいですか」
「どんな理由でだ」
「う……」
「夜道じゃないからな、一人で歩いても平気だぞ」
笑みを含んだ声で言われる。
どこか見透かされているけれど、何を知っているのかは教えてくれない。いやもしかしたら鈍い諸☆のことだ、本当に何も知らないのかもしれない。
「どうした上月」
小首を傾げて上目遣いに見られ上月は「あー」とか「えー」と言葉にならぬ声を発する。
うまい理由が見つからず、段々と俯いていく上月を面白そうに見てから諸☆は嘆息した。
諸☆のため息を聞き、上月は顔を上げる。
そのタイミングを見計らったように諸☆は言った。
「まぁ、自分で運転するのも面倒だしな、きてもいいぞ」
「ほっ本当ですか警部!?」
諸☆の肩を掴み目を輝かせる上月に尻尾が生えていたらさぞや面白いだろうな、と思いながら諸☆は肯く。

次の日、同僚や部下のひやかしがあるなどとは思わないで暢気な返事をしてしまったことを諸☆は後悔することになるのだった。

おわり*

ピッ
 □stop
諸☆の過去ってなんだモナ>Ω
現助がリーダーのいわゆる族にいたらしい>Ω
いっつもパシリだったらしいぞゴルァ>Ω


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