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類友

生 北の…くるくると犬。若かりし二人を、突発的に。
くるくる×犬前提のギャグです。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ちょいとあァたに見せたいものがあんの。

尾々泉が生真面目そうな顔を作って、
それっぽく言葉を紡ぐ時、大概ろくなもんじゃない。
頭くるくるのガチャピンが法螺吹き男だということは身に染みてわかってる、
今こいつは絶対ろくでもないことを考えてる。

「だからさ犬ちゃん、今夜はね、俺を泊めてちょうだいね?」
「やだね」
「やめてよ即答ってちょっと。とーめーて!」

こいつがこうやって、人目も憚らずに夜泊めてくれなんて誘いを仕掛けてくるっていうと、もう絶対絶対ろくなことない。
周りが見えてないんだ。
もう駄目だ。こいつ浮ついてんだ。
そんな浮かれた尾々泉の言う見せたいもんなんて、見ないに越したことないに決まってる。

「やだね」

俺はまた即座にそう返して、距離を置こうと音尾の傍まで寄ろうとした。
ここは楽屋だ。
普通にスタッフだ何だと来るときゃくるんだ、浮ついちゃって馬鹿でねえのか。

そんな迂闊に泊めてだの腰に抱きついてくるだの…、…抱きつくのは全員でやってっからいいし、泊まらしてってのもそりゃなくはないけど…、だけどだ、ダブルでやっちゃちょっと怪しいだろ、いくらなんでも。
馬鹿の音尾だってこいつらなんか気持ち悪ぃって思うよ。…思わないか。
確かにそれほど俺たちはよくべたべたしてる、五人でべたってる、けど。

「とーめーてよ犬ちゃ~ん、おーねーがーい~!」

子供の駄々みたいに表面可愛くしてるけど、全然!
怪しいもの。
怪しいもの、目が駄目。
絶対ろくでもない、もういやらしいったらない。
馬鹿の音尾だって気付くよ。
「尾々泉の野郎、今なまらいやらしいこと想像してるに違いねえ」
くらいには。やっぱ気付かないか、馬鹿だもんな。
どうあれそんな奴部屋に招き入れたいわけがない。

「いーやーだ!」
「犬ちゃぁ~~~ん!!」
「うるさいぞお前達ぃーーー!!!」

蛙よろしく飛びついてきた尾々泉の頭を容赦なく叩きながら、
必死で抱きついてこようとするのを引き剥がすのに息を上げる。
さすがに見苦しかったんだろう、藻莉の激昂にその場は無理やり丸め込まれて、
話は決着を見せないまま、番組収録突入と相成ってしまった。

収録終了後、にこにこした尾々泉は、もう絶対俺の傍から離れようとはしなかった。
「生霊か!」市外が突っ込んでも、
「暑苦しいねえ…」御戸尾が苦笑しても、
「犬ちゃん帰ろー!」にこにこの頭がくるくるの馬鹿は決して離れなかった。
こうなると、どうにもならないって、身をもってわかっちゃってる自分が最高に嫌だ。

なんだかんだ俺って奴は可愛いんだ。
酒買って帰ぇるべって言われると少し心が緩んじゃうんだ。
出前取ろうかなんて言われて、あれいやらしいことねえのかって、油断しちゃうんだ。
なんだい二人でまったりしたかったのかい、なんて。

ケチの尾々泉が特上の寿司を出前で取ってくれた。食べてしまった。

特上の中でも涎の滴る大トロや蟹を俺は勧められるまま遠慮なく食ってしまった。

おなかいっぱいで満足で、思考が鈍くなっている。

これはなんかおかしいかもしれないと、視線を転じる。
ミニ卓袱台よりも更にしょぼい折り畳み式の簡易テーブルを
挟んで対面していた尾々泉が、満面の笑みをたたえていた。

ああ…罠かやっぱり、寿司は罠か。

「あのね、今日さ、見てもらいたいってのはね、これなの」
「ああ…」

その手に握られていたのは、可愛らしい色をしたコケシ。
真っ黒い紙袋から取り出された分、女子も大好きですかー、なショッキングピンクが眩しい。
可愛い色で大人気、とかいうんだろどうせ。
そのコケシはどうせ動くんだろ。電池式なんだろ。
うるせえんだよどうせ、どんなに静かなんですよって
謳い文句垂れたってこの手のもんはまあ五月蝿い。
以前に先端がコケシ面って時点で甚だしく萎えるんだよこのくるくる!

けれども悲しいかな、酔いと満腹で舌が回っちゃくれない。

「ああ…」
「これね、これさ、こまいし、可愛らしいでしょ、どうかと思ってこれ、尾々泉さんお勧め」
「馬ッ鹿じゃないの」
「でも犬さん動けないでしょ」
「…」

「ね~、動けないものあなた、ざーんねーん!」

ああ本当に、馬鹿なんだな。
類友ってこれだよな。馬鹿には馬鹿しか寄ってこねえんだよ。

何でコレを好きになんてなっちゃったんだろう。
もう最近ウジムシ!とかゴキブリ!とか心の内で叫ぶんですけど。
それもまあ頻繁に。

「羊ちゃん一ヶ月前から準備してたんだよ」

照れ笑いしながらコケシに乾電池を装備してゆく、くるくる馬鹿。
一ヶ月ってなんだ。
あまりに馬鹿すぎて不覚にも、ちょっともう許せるモードに入ってきてしまって。
俺は今日何度こいつを馬鹿だと心の中で罵ったかしらと考えたら、
今までのこいつの馬鹿エピソードがこうぐんぐんと思い出されて…

やっぱりこりゃ許せんなと怒りを新たにした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

  • 口調がたまりません。脳内再生余裕でした! -- 2010-09-03 (金) 12:39:31
  • 江別室蘭大好物な上に、口調がリアルというかなんというか素敵すぎました。こういう雰囲気のお話大好きです。 -- 2010-11-21 (日) 18:32:35
  • ごちそう様でした本当にありがとうございました -- __? 2014-10-04 (土) 03:25:31

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