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から騒ぎ

ぴク差ー、玩具話3で宇宙船氏×保安官です。3のネタバレを含みます。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「スタッフミーティングだ!集まってくれ!」
陽気な声が部屋の中に響く。可愛らしい子供部屋の持ち主にしては男らしい声に応えて、
ぞろぞろとベッドの脇から、タンスの上から、お菓子の缶の中から、出てくるのはなんと色とりどりのオモチャたちだ。
その中央に立つのは、すらりと手足の長いカウボーイ姿の人形。我らがリーダー、シェリフ・宇ッディ。
簿ニーお気に入りのお人形セット付属のマイクスタンドを手に、宇ッディがぐるりと周りを見回す。
『あーあー、聞こえてるかい、みんな?』
「聞こえてるよ、宇ッディ!」
真っ先に尻尾を振って答えるのは、もちろん素リンキーだ。その横で、愛馬ブルズ亜イがぶるると嬉しそうに鼻を鳴らす。
その柔らかな毛並みに手を乗せたジぇシーは大きな瞳でぱちんとウィンクして「聞こえてる!」の合図だ。
「オーケーオーケー。…チャック流ズ!」
観衆の反応に満足した宇ッディが、ちらりと窓辺を見て声を上げる。呼ばれたピエロ人形は、
もうずいぶん薄くなった眉間の皺を少しだけ寄せながら、「ここでちゃんと聞いているさ、宇ッディ」と不器用な笑顔を作ってみせた。

簿ニーの部屋に宇ッディたちが越してきて、もう数ヶ月になる。
最初こそ宇ッディは「簿ニーの部屋のリーダーはチャック流ズであるべき」だと散々主張していたが、
度ーリーや戸リクシーといった強い女性陣が宇ッディこそリーダーに相応しいと提案したことに加え、
当のチャック流ズがまったくそんな立場に興味がないときっぱり言ったために、宇ッディも渋々といった形で承知した。
しかしいざ就任すればリーダー肌の染み付いた宇ッディのことで、すっかり張り切って今日もミーティングに精を出している。
そんな宇ッディのことをポテトヘッ度やハムがひそかに茶化しているのは、いつもの光景だ。
『それで?みんな集まった?』
別に音が出るわけではないオモチャのマイクをぽんぽんと指で叩きながら、宇ッディが素リンキーに顔を近づける。
素リンキーは保安官の要求を素早く理解して、いつもの人数確認を短い足で指差し始める。
「えーと、ブルズ亜イにジぇシー、戸リクシーとバター可ップ、ミスタープリックルパン津にポテトヘッ度とミセスとハム、
…レック巣!落ち着いて立ってろ、数えづらいぞ!あー、戸トロ、度ーリー…お豆三兄妹は?」
「「「ここだよー!」」」
可愛らしい声が弾けて、リトル具リーンメンの大きな目玉の背後に隠れていた緑豆たちが飛び出してくる。
「ウオオ」とエイリアンたちが声を上げて、その手にひとつずつ豆たちを受け止めてにっこりした。
「そうか、みんな集ってるか……   んん?」
満足げに周囲を見渡していた宇ッディが、眉と首を曲げて腕組みする。
「場ズがいないぞ」
その言葉に、にわかにおもちゃたちがざわざわとしはじめた。
宇ッディの一番の親友であり相棒だ。責任感の人一倍強い彼が、スタッフミーティングに遅刻するなんてことは初めてに近い。
「場ズ、どうしたの?」
小心者のレック巣が、すぐに怯えたように目をきょろきょろとさせる。
そこへポテトヘッ度がにやりと唇を曲げて「きっと本物の宇宙戦士と間違われて宇宙人に連れてかれたのさ」と意地悪な口調で言うものだから、
レック巣はたちまち「キャー!」と悲鳴を上げた。
その震える手には『宇宙人の再来~キャトルシュミレーションの恐怖~』と書かれたホラー本が握られている。
「場ーーーズーーー! ダメだわ、出てこない」
人間に気付かれない程度の声で呼んでいたジぇシーが、心配そうに首を振る。たかが子供部屋一つのサイズだ、そう広い空間でもない。
「俺が探してくる、君たちはしばらくここで歓談していてくれ。きっとバズは、うん、そうだ、トイレにでも行ったのさ!」
カウボーイハットを斜めに被り、宇ッディがいまにも暴走しそうな元案ディ部屋のおもちゃたちに釘を刺してから背中を向けて
ぴょんぴょんと飛んでいく。まずはカラフルな洋服ダンスの端っこに手をかけて、器用に後ろに潜り込んだ。
ミーティングに現れないオモチャは、ベッドの隙間かタンスの後ろに入り込んでしまっていることが多いというのが宇ッディの経験から得た知識だ。
(まさか、外に出てるなんてことなきゃいいけど…)
皆の前では見せない不安顔を浮かべながら、やや埃っぽいタンスの後ろを壁に背をつけるようにして進んでいく。
すると、奥の方にぼんやりと光るものを見つけて宇ッディはほっと息を吐いた。
あの緑色の光は、見慣れた宇宙戦士の蛍光塗料のものに違いない。
ゆっくりと近づいて行くと、タンスの背にもたれかかるようにして倒れている場ズの姿があった。
「おい、場ズ!いくらなんだって、ここを寝床に決めるのは趣味が悪いぜ」
どうやら寝てしまっているらしい相棒に、宇ッディがにやにやしながらうつぶせになっている場ズの背中を叩く。
「確かに簿ニーのベッドシーツは、あぁ、多少可愛らしすぎるところがあるけどさ…」
だが、宇ッディの言葉はそこで止まった。急に、ぐりんっ!!!と場ズの顔が百八十度回転したのだ。
「ひっ!」
悲鳴を上げかけた宇ッディの脳裏に、数ヶ月前の記憶が蘇りかける。こういう事態が、少し前になかったっけ…。
宇ッディの不安は、次の場ズの発した言葉によって見事に的中した。
『Estoy por eso aqui eso cerraria por que hoy』[こんにちは、僕はどうしてこんなところにいるんだろう]
「おい…またか……!?」
流れるような異国の言語に、宇ッディはうんざり顔でハットに手を遣った。
場ズの隠しコマンドである、スペイン語モードはジぇシーによって大分コントロールができるようになったはずだ。
どこかで身体をぶつけたかなにかで、またリセットボタンを押されてしまったのだろうか…。
「あー…場ズ…?」
身体だけでなく、精神までスペインモードになってしまった場ズはかなり厄介だ。とにかく何とか言いくるめて仲間たちの元に連れて
行くしかない…と宇ッディが場ズの肩に手をかけた瞬間、その手が何かに強く引っ張られた。
「へ?」
突然宇ッディの視界が回転して、天井を真正面に見上げる形になる。
そこへ、場ズの真剣すぎる顔が映りこんできて、宇ッディは思わずごくりと唾を飲み込んでしまった。近い。あまりにも近い!
『Hecho a la senor bastante joven, me ayudas?』[美しいお嬢さん、君が僕を助けてくれたの?]
「セニョールゥ!?」
ようやく聞き取れた単語に、宇ッディが目を剥く。と同時に、自分が場ズの腕に抱きこまれていることに気付いた。
そう、まるでお姫様のように…。「待て待て場ズ、俺はセニョールじゃない!カウボーイだ、アミーゴ、アミーゴ!!!」
『amigo?Hice un amigo a una senora joven tan bonita?Entonces viejo era el ser humano que podria hacer paciencia muy』
[友達?僕は君みたいに美しいお嬢さんを友達にしていたのかい?それなら昔の僕はとても我慢のきく人間だったんだろうな]
前回の騒動で覚えた友達を指す言葉を精一杯主張してみるが、スパニッシュ場ズは小首を傾げると、一層うっとりとした目つきで宇ッ
ディの丸い瞳を覗き込んでくる。完全に、恋する熱い男の視線だ。
あまりにも情熱的すぎる瞳に射られて、宇ッディは心臓が早鐘を打つような錯覚に襲われた。
いつもの誠実ではあるが朴念仁な場ズとは正反対だ。
細い腰を支えられている腕は力強く、とても逃げられそうにない。
ただのバグだと分かっているのに、場ズに本当に口説かれているような気すらしてしまう。
「ば…場ズ」
怯えと焦りが混じって掠れ気味になってしまった声は、さらに恋する男を攻撃してしまったらしい。
場ズは感に堪えないといった表情で喉を鳴らすと、空いている方の指で宇ッディのつるつるとした頬を撫で上げた。
『Asi…Me siento bien en absoluto cuando toco a la senorita oven en tal una oscuridad…』
[ああ…こんな暗闇でお嬢さんに触れていると、僕はとてもいけない気分になってくる…]
ただの古ぼけた衣装ダンスの裏も、今の場ズには妖しくゆらめく恋のステージに見えているらしい。
低い声の中にはっきりと情欲のようなものを感じて、宇ッディは今度こそ本気で抵抗を始めた。
「まっ…待てって場ズ!とにかく落ち着け、落ち着くんだ…落ち着けってば!!」
『Moga Moga』[モガモガ]
宇ッディの掌で顔を覆われて、場ズがふんふんと鼻を鳴らす。しかし次の瞬間には宇ッディの身体はくるんと見事なターンを決めさせ
られるとふわりと宙に舞い、また場ズの腕の上へとすっぽり収まった。
『Es una persona terrible.?Te me niegas a?』[酷い人だ。僕を拒絶するの?]
あっという間もなかった。ピンクのハートが浮かぶ瞳が近づいてきたかと思うと、唇は塞がれていた。有無を言わさず舌がなだれ込ん
できて、宇ッディの顔が蒼白になる。なんとか抵抗しようと手を伸ばすが、場ズのプラスチック製の身体はいくら掴んでもつるつると
滑るばかりで、まったく歯が立たない。
「ん……んちゅっ…う、ンン、ば、ず!」
宇ッディより幾分小さめの場ズの舌は器用に動いて、顔を背けようとしても後頭部を押さえつけられてまたいやらしく絡んでくる。
すっかり酸欠気味になった宇ッディが目を白黒させはじめた頃、ようやく唇が離された。
『maravilloso.』[素敵だ]
嬉しそうに、場ズが濡れた宇ッディの唇を指でなぞる。その慣れたような手つきと囁き声に宇ッディの青かった顔はみるみるうちに
赤くなり、勢いに任せて場ズのヘルメットをばちんと叩くとざっと身を離した。
『…senorita?』
「俺は!セニョリータじゃない!」
宇ッディの怒声に重なるように、頭上から賑やかな声が響いてくる。
どうやら、待つのに耐え切れなくなったオモチャたちが様子を見に来たらしい。
「場ズ!!!そこにいるの!?」
「宇ッディ、場ズ、今助けに行くからな!」
ハッと顔を上げた宇ッディが、慌てて上に向かって手をぶるぶると振る。
「お、おいやめろ、素リンキー!ジぇシー!レック巣!そんなに大勢で来たら…」
「「わ、わわわわわっ!!!」」」
宇ッディの制止は既に遅かった。プラスチックがぶつかり合う音が派手に響いて、飛び込んできたオモチャたちと下敷きになった
宇ッディと場ズが山を作る。一足先にずりずりと山の下から這い出してきた場ズは目をぱちくりさせると、
目の前の惨状に首を捻りつつ一言呟いた。
「…宇ッディ、これは大運動会か?」

こうして場ズは無事に救出されたが、なぜかその後のスタッフミーティングはリーダーの不在で中止になった。
更にしばらくの間宇ッディは場ズが話しかけるたびに急いで顔を背けるようになり、すわケンカかと裏ミーティングが開かれる事態にまで発展したが、
場ズにまったく覚えが無いと知ると宇ッディは渋々和解した…ように見えた。

だがお約束的展開として、二週間後。
『Ve de nuevoun senorita de la semilla. No te separo este tiempo』[また会えたねお嬢さん。今度こそ離さないぞ]
「おい、またかよ!!!」
「おい見てみろよみんな、場ズが宇ッディに求婚してるぜ」
「あらカウボーイ、いいじゃない。私の占いにも出てるわ…あなたたち、きっとうまくいく」
「やめてくれ、度ーリー!…助けてくれ、チャック流ズ!」
「あ…あー…俺は、その…ピエロだから」
「おーい、場ズと宇ッディの結婚式だ!派手に飾れい!」
「「ウオオ」」
と、賑やかな簿ニーの部屋ではまたひと悶着起きるのであった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
スペイン語はびっくりするほど適当です。

  • めちゃくちゃ萌えました!素敵です、ありがとうございます!! -- 名無し? 2010-08-26 (木) 00:27:04
  • 全ての頭皮が抜け落ちる程禿げ萌えました!ありがとうございます! -- 2010-08-26 (木) 18:30:37
  • ありがとうございます!!最高です!! -- 2010-08-29 (日) 01:45:19
  • もっと読みたいです!!!!!! -- 2010-11-04 (木) 03:51:39
  • かーーわいいいいーーー!作者さんありがとうございます! -- 2010-11-22 (月) 03:28:03

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