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ヘンリーとうわきもの

きかんしゃ10マス。大型青×大型緑で擬人化梨でエロナッシン。
普通石炭使用時ヘンリーの性能並の脳みそから妄想絞りだしてみました。

少々、場所をお借りしますわ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

フライング・キッパーの日はとにかく早起きで、いつもの仕事より、余計に疲れる。
だから仕事が終えたらすぐ機関庫に飛び込んで休みたいところなんだけど……
今、ぼくは森で『待ちぼうけ』をしている。
「なぁ、ヘンリー。いつまで居る気だい?」
ぼくの機関士が、ぼくのバンパーの上で背伸びをしながら言った。
機関士の隣で寝転ぶ助手はもう夢の中。朝が早かったんだ、無理もない。
「お前が森を好きなことは知っているけど、森林浴にしては長すぎるんじゃないか?」
理由も言わずに長いことここを動かないから、そろそろ痺れを切らしてしまったみたいだ。
「ごめん。もう少しだけ……」
「はぁ。……わかったよ」
機関士は諦めたようにぼくのバンパーの上で横になって目を閉じた。長期戦の構えだ。
この人にはいつも迷惑をかけてばかりいるから、本当に申し訳ないと思っている。とても優しい人だからつい甘えてしまう。
理由を言いたくないわけじゃないけど、なんとなく、言えない。
待ち合わせの相手がゴードンで、愛の告白が目的だなんて、どう説明していいか判らないし。

今日はどうしても、ここでゴードンに会わなくちゃならない。
もうだいぶ前になるけど、ぼくはこの場所で、彼から愛の告白をされた。
突然のことだったから本当にびっくりして、混乱して、泣いてしまったけど、とても嬉しかった。
ぼくがずっとゴードンに憧れていた気持ち、それは恋だったんだろうって事は、あの時に理解できた。
「好き」なのは間違いない、けれど「愛している」と言えるかどうかは、正直まだ判らなかった。
だから、その場でははっきりとした言葉では答えられなかった。そして、その後、しばらく考えた。
ようやく気持ちがまとまったから、呼び出してはみたものの……
「待ち人来たらず……か?」
あれれ、寝たかと思っていたのに。
ソドー島に来た頃からの付き合いだもの、この人には、やっぱり隠せないかな。
「うん、実は……」
言いかけたとき、森の外から汽笛が聞こえた。

エドワードだ。
エドワードが森に来るなんて、珍しい事もあるものだ。彼は息を切らしながら走ってくると、ぼくに声をかけた。
「居た居た! ヘンリー、ゴードンからの伝言だよ!」
「伝言?」
「『すまん、今日は無理だ。』だって。これだけ言えば伝わると言われたけど、わかるかい?」
「う、うん。……わかるよ」
身体の力が一気に抜けていく。ぱんぱんに張り詰めていた気合が、蒸気を全部吐き出したみたいに空っぽになる。
機関士のため息も聞こえる。長々付き合わせてこれだもの。ため息も出るよね……。
「ゴードンに、急な仕事が入ったんだ。トップハム・ハット卿からの特別な仕事だよ」
エドワードが説明してくれる。
「臨時で客車を牽く機関車が一台必要になってね。ぼくがモリーを推薦したんだ。
だけど彼女は一度も客車を牽いたことがなかったから、ゴードンが教えることになったんだよ」
「そう……」
モリーはいつも空の貨車を牽いている黄色いテンダー式の女の子だ。
なるほど彼女なら、気が利くし丁寧な仕事をするし、客車を牽くのには適しているかもね。
観察力の優れた青い機関車は言った。
「待ち合わせしていたんだろう?残念だったね」
「あはは、そうだね……」
一言多いよ。

ぼくはエドワードと一緒に、機関庫に帰ることにした。
というかエドワード、きみが推したならきみが教えればいいのに。
心の声が聞こえました、と言わんばかりのタイミングで、エドワードが言った。
「ゴードンはソドー島一上手に客車を牽ける機関車だから、教えるのもきっと一番上手だよ!」
……確かにね。
「それに、モリーもゴードンのことをとても尊敬しているから、彼女も喜んでいるよ」
その分、ぼくは悲しいんですけど。
モリーがゴードンを?それは初耳。尊敬だよね、尊敬。確認したいけど、確認したら怪しい。
エドワードは観察力が優れているけど、勘違いも多い。ぼくがモリーを気にしているなんて思われでもしたら大変だ。
それにしても、機関庫までの道がとてつもなく長く遠く感じる。
決心がそがれて気が抜けて、車輪が重い。
朝が早くて疲れていたのも思い出して、まぶたも重くなってくる。
途中、トンネルをくぐったら、上の路線をゴードンとモリーが重連で客車を牽きながら通過していった。
重連……『俺の走りを身体で覚えろ!』ってやつ?
指導は順調に行っているんだろうな。二台とも、楽しそうに笑っていたから。
きっと、下の線路に居るぼくには気付いていない。
胸の奥がもやもやしてきた。これがヤキモチってやつかな。
ごめんねモリー、きみは悪くない。それはわかっているんだけど。

とにかく眠くなるのを我慢して、操車場まで帰ってきた。
「疲れているみたいだね。休む前に、身体を磨いてもらうといいよ。油を注したら、車輪もすっきりするよ。」
「そうだね、そうするよ」
「ぼくも手入れしてもらおうかな。こっちだよ」
エドワードはとにかく気を使ってくれる。
道中もぼくが居眠りしないように、ずっと話しかけてくれていた。
彼は何か気付いているかな?なんて、あるわけないか。
もう考えるのはやめよう。また、仕切りなおし……。
ぼくはエドワードに続いて、整備場へ向かった。
整備のための所定の位置に停車して操車場を見渡すと、いつの間に戻ってきていたのか、ゴードンとモリーの姿があった。
整備をしてもらいながら、二台の様子を眺める。
客車を連結しては外して、また連結して、を繰り返している。連結の練習をしているようだ。
あれってコツがいるんだよね。ぼくは苦手だけど……。ゴードンに手取り足取り教えてもらえたら、ぼくも上手くなれるかな?
かすかにだけど、声が届く。
上手いぞ!とか、その調子だ!とか、ゴードンの声は嬉しそう。彼女は飲み込みが早いようだね。
ゴードンが誰かを褒めるなんて、普段はほとんどないのにさ。
ぼくがまだしてもらったことのないことをモリーにしてあげている。
仕事だから、別に、なんともないことだけど。トップハム・ハット卿からの命令らしいし。気にすることはないんだけど。
……楽しそうだなぁ。

ふと足元の線路をよくみれば、ゴードンの元へ続いている。
これをまっすぐに進めば、彼の元へいける?
あそこまで行って、ぼくも参加する?
そんなこと出来るわけない。これ以上見ていたら、いけない。
襲ってくる睡魔と、これは、嫉妬心?
整備してもらってすっきりするどころか、頭がぐつぐつ湧いてくるようだ。
火室が燃えすぎ?お湯が沸きすぎているのかな。
なんだよ、せっかく、今日こそは伝えようと思っていたのに。
ゴードンも、きっと、ぼくの返事を待っていてくれたはず。
すごい決心をしたのに、こんなのでくじかれるのか。
本当なら今頃は気持ちを伝えて、幸せな気持ちで心がぽかぽかしているはずなんだけどな。
ヤキモチで頭がぽかぽかなんて、馬鹿みたいだ。
おもしろくない。
くやしい。
そう思った瞬間、車輪はもう動いていた。
ゴードンまではかなりの距離があったけど、あっという間に近づいた。
機関士も疲れていたんだろう、ブレーキをかけるのが遅かった。
急ブレーキがかかる衝撃と緩衝器が思い切りぶつかる衝撃とが、ほぼ同時にボディに響く。
ぼくは思い切り、ゴードンの後ろに体当たりをした。
「浮気もの……!」
思わず口からこぼれた言葉に、自分自身で驚いた。
嫌な言葉。想いを伝える前から浮気って……。
モリーがびっくりした顔でぼくを見ている。
聞かれちゃったかな。
まぁ、いいや。

目を開けたら、操車場は夜の色。
ぼくは整備場で整備してもらっていて、あたりはまだ明るかった。ハズ。
今居る場所は確かに整備場のようだけど…あれれ?
記憶が飛んでいる気がする。頭が、醒めていない。
「目が覚めたか?」
隣から、渋い声が聞こえる。
「うん。……おはよう? ゴードン」
「まだ、こんばんは、だ」
呆れたような口調。呆れられるようなこと、したかな。
「ごめん、ぼく……何したの?」
表情を変えずに、ゴードンは横目でちらりとぼくを見た。そして言った。
「俺の背中に体当たりした」
「……体当たり?」
段々頭が醒めてきて、色々思い出し始める。
「ごめん! そうだった、ぼくはなんてこと…」
「別にいい。怪我したわけじゃないからな」
呆れたような物言いだけど、怒った感じはしない。
でも、ゴードンの顔を直視することは、とても恥ずかしくて、出来なかった。
少しの沈黙がとても長く感じた。
一秒ごとに、ちらり、ちらり、と罪悪感が雪のように舞い降り積もっていく。
これなら、いっそ怒られたほうがずっとずっと楽かもしれない。
「ひとつだけ言っておく」
「うん」
「俺は浮気なんかしない! お前だけだ」
「……うん」
そうだった。思わず口にした言葉。
しっかり、聞かれていたんだ。
あんなことを言うなんて、ぼくは本当に馬鹿だ。
「ごめんね。ほんとうに、ごめんね」

「もういい。もういいから、そんなに落ち込むな」
声が、優しい。
みんなといる時は威張った感じの話し方をするけど、ぼくと二台きりだと、心のそこから暖かくなるような優しい声になる。
今のゴードンは、ぼくだけのゴードンの声。とても、ほっとする。
目を見て、話さなくちゃ。大切なことを、伝えなくちゃ。
場所は森じゃなくても構わない。ここで、いい。
「……ぼくも、浮気は絶対にしないよ」
「あのな、浮気なんてのは、そもそも」
ぼくはゴードンの言葉をさえぎって、彼の目を見て、言った。
「ゴードン、ぼくは、きみのことが好き。愛しているよ」
彼はとてもまっすぐに、ぼくの目を見てくれている。
「だから、きみを悲しませるようなことはしない。誓うよ」
「ヘンリー……ありがとう」
ゴードンが、とてもやわらかく微笑んだ。
ぼくも、微笑み返した。
やっと言えた。ほっとした。心が暖かくて、ものすごく、幸せ。
「ずっと、言えなくてごめん」
「悩んでいたんだろう? 難しいことだからな」
「少しだけ、ね」
「今日の約束は、このことだったのか?」
「うん。きみが好きだと言ってくれたあの森で、ぼくの気持ちを伝えたかったんだ」
「そうか。すまなかったな」
「仕事だから、仕方がないよ」
「モリーに、謝っておけよ」
「うん。そうする」

「モリーは痴話喧嘩に巻き込まれたってワケか。可哀相になぁ」
ぼくの下から声がする。
「「あ」」
ゴードンとぼくは同時に声を上げて、固まった。
ぼくら以外の存在の確認を、完全に忘れてしまっていた。
「なるほどなるほど。俺の大事な息子を泣かすなよ、ゴードン?」
ぼくの機関士が、ゴードンの緩衝器をぽんぽんと叩きながら言った。
「ははは……泣かすわけがないでしょう、お父様」
ゴードンの顔は引きつっていた。
苦々しくしわだらけの、けれど整ったりりしい顔。
うん、やっぱりゴードンはかっこいい。
「でも、身体を使っての愛情表現は勘弁してくれよな」
ゴードンの機関士が、ぼくの緩衝器をぽんぽんと叩きながら言った。
「あはは……気をつけます」
大丈夫。
そんなことをする必要は、もうない。
ゴードンとぼくの心の連結は、きっとずっと、外れないからね。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

やっぱり文章を書くのって難しいですわ。
書いているときはむっちゃ楽しいっすけど。
黄色い彼女は美人さんですよね。
女性なのがもったいないですわ。

お目汚し失礼いたしました。


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