Top/58-242

ゴードンとねがいのかなうき

需要はなさそうなんですが・・・SS苦手なんですが、書いちゃったから投げていきますわ。

きかんしゃトー枡、大型青×大型緑、エロなし
「ゴードンでよかった」の後、って感じで。

堀川&内海ボイスでの再生をお奨めいたします。

多少、数をお借りいたします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

つい魔がさして。大事な記録のためとはいえ、ヘンリーのための特別な石炭を使ってしまった。
まさか、自分が積んだものが最後だったとは・・・。
いくら言い訳しようとしても、結局記録も成し得なかったのだし、何もかもが台無しだ。
身体に合わない石炭を使わされたヘンリーが受けたダメージは思いの他大きく、謝ったくらいではとても許されない気がした。
炭水車を交換していつもの石炭に入れ替える処置をしたとはいえ、それまで随分長く走りすぎたせいで車軸は傷み、ボイラーは煤だらけだ。
煙突も鼻も煤で詰まり、懸命にくしゃみを我慢する彼は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「ホームでくしゃみをされたら大変だ。ほら、さっさと移動してくれよ。」
駅員にホームから追い出されたゴードンとヘンリーの二台は、待避線に並んだ。
「大掃除しなくちゃな・・・。炭水車を付け替えて、石炭の積み替えも・・・」
ヘンリーの機関士と助手が肩を落とす。目の前に鎮座した大仕事を前に途方にくれている。
「申し訳ないことをした。俺達も手伝うよ。」
ゴードンの機関士と助手が言う。
石炭を積んだのはゴードンだが、石炭の違いは見ればわかる。彼らの責任でもあるのだ。
「そう気を落とさないで。ぼくは大丈夫だから。」
まだ少し青い顔で、ヘンリーが言う。
(そういえばさっきも、こんな顔色で、俺を応援してくれたな。)
炭水車をもう一度入れ替えながら、ゴードンはさっきまでの出来事を思い返した。
青い顔で黒い煙を吐きながら、車輪をがくがく言わせて、それでも懸命に笑顔をつくり声援をくれた友人を、改めて見る。
(随分としおらしくなったもんだ・・・)

近頃のヘンリーは大人しすぎる。ゴードンはそう感じていた。
憎まれ口を叩くこともめっきり少なくなって、彼と最後にした口喧嘩が随分昔の出来事だったように思われる。
エミリーがソドー鉄道に来てからは、『やっかいな三台の大型機関車』の列から、ヘンリーの名が除外されているようなものだった。
客車には見向きもせず、好んで牽くのは貨物ばかり。森での仕事なら自ら飛んで牽きに行く。
急行好きのゴードンはもちろん、客車好きのエミリーやジェームスとやりあうこともほとんどない。
時々来る「特別な仕事」をやりたがる事もあるが、大抵はゴードンかエミリーが指名されることが多く、ヘンリーの出番は少ない。
以前はその決定に鼻息荒く不平を漏らしたりもしたが、最近はただ黙って悲しそうな顔をするだけだ。
そんなヘンリーを見るたびに、ゴードンの胸にはいつも何かが引っかかった。
(この引っかかりは何だ?俺はあいつの何を気にしている?)
悔しく、悲しく、もどかしく、とても耐え難いような、理由のわからない不快な心のもやが、とても気持ち悪かった。
何が原因なのかさっぱり見当もつかない。ずっと解けそうもないと思っていた。
だが意外にも、それは突然、しかもあっさりと解けてしまった。
とっさに取った、自らの行動で。
(なんてこった・・・まさか俺が・・・)
正直、認めたくない内容だったが、それしか思いつかないのだ。

もんもんと考え込むゴードンの隣で、二人の機関士と二人の助手と数人の整備員が、せっせとヘンリーをいつもの姿に戻していく。
ボイラーや煙突の煤を払い出し、火室の灰もきれいさっぱりかき出して、いつもの石炭に入れ替えて火をつける。
車輪や車軸、隅から隅まで油を差し、グリスを塗り、黒煙で汚れたボディをごしごし磨く。
最後の点検をおえた整備主任が作業終了の声をかけると、ヘンリーに笑顔が戻った。
「ひとっ走りして油をなじませれば、いつものようにスムーズに走れるようになるぞ。森にでも、行ってみるかい?」
ヘンリーの機関士が機関室から顔を出して言う。
「うん!」
森と聞いてヘンリーは嬉しそうに頷いたが、助手が火室をいじりながら言った。
「まだ火が弱いから、蒸気がたまるまでしばらく時間がかかるぞ。」
「それじゃぁ、日が暮れてしまう・・・森まで行くのは無理か。」
途端にヘンリーの笑顔が消え、しゅんとなる。
それを見て、ゴードンは思わず言ってしまった。
「俺が、森まで牽いて行こう。」

「頼むぞ、ゴードン。ヘンリーに合わせて、ゆっくり、慎重に走ってくれよ。」
ゴードンの機関士が声をかけた。
「まかせろ。壊れ物の扱いは、慣れっこだ。」
連結が完了すると、ヘンリーは足の力を抜いて身体を楽にして備える。
「いつでもいいよ。」
「よし、行くぞ。」
ヘンリーが苦しい思いをしないように、細心の注意を払いながら牽いて走る。
走りながら、ゴードンは思った。
(もう少し付き合って、確かめよう。・・・・答えあわせだ。)

森に着くと、ヘンリーの案内で彼のお気に入りの場所まで進む。
給水棟と待避線がある、『願いの叶う木』のすぐそばの線路だ。
近くには池があって水場に集まる動物達の姿を見ることが出来るし、向こうの広場から続く道から人間が遊びにくることもある。
昼間は子供達の楽しそうな声が響き、夕方は木に願いを託す恋人達で賑わう。今日は一組、先客がいるようだ。
「ごめんね、ゴードン。こんなことまでさせてしまって、申し訳ないよ。」
待避線に押し込まれながら、ヘンリーが言う。
「気にするな。元はといえば俺が悪いんだ。」
ヘンリーとの連結をはずし、ゴードンは本線に戻る。そして二台は並列で並んだ。
「俺達は、あっちで休んでくるよ。あずまやがあるんだ。」
ヘンリーの機関士が水筒と持ち合わせたお菓子を抱えて降りると、他の三人もそれに続く。
四人の背中を見送りながら、ゴードンとヘンリーはしばらく無言で森の空気を味わった。
今日の作業はもう終わっているから、辺りはとても静かだ。木々のざわめきと小鳥達の声が、時々聞こえてくる。
大きく深呼吸して、ゴードンが口を開く。
「たまには森もいいもんだな。とても、いいにおいがする。」
「木のにおいだよ。とても優しい気持ちになれるんだ。」
「木もだが・・・ここに来て気が付いた。お前からもいい香りがする。」
「石炭のせいかな?きみとは違う石炭を使っているから、そう感じるのかもね。」
「そうかもな。・・・落ち着く香りだ。」
「きみも、さっきまで使っていたくせに。」
「・・・言うなよ。」
二台は顔を見合わせて、ぷっと吹き出して笑う。
夕暮れの風が少し冷たくて、まだ火室の火を弱く抑えているヘンリーには肌寒く感じる。
軽く身震いをすると、ゴードンが心配そうに聞いた。
「まだ具合がよくならないのか?」
「もう平気だよ。火室の火がまだ弱いだけ。」
本当はまだきしむ車軸も痛くないことにして、精一杯元気な笑顔で答えると、ゴードンも安心した顔になった。
「それにしても、ゴードンは本当に上手に走るね。きみに牽かれてみて、客車たちがうらやましくなったよ。」
「何故うらやましいんだ?」
「気持ちよくってね。」
「牽かれるのがか。」
「うん。牽かれて気持ちがいいだなんて、蒸気機関車として情けない事だけどね。」

「情けないなんて・・・」
そんなことはない、とは言い切れず、口をつぐむ。
貨車や客車を牽いて役に立つ。それが機関車の誇りだ。
牽いてもらうのは故障や立ち往生したときくらいで、本来、自力で動けないというのはとても情けない事なのだ。
好意で牽いて来たつもりが逆に傷つけてしまったかもしれない。
後悔の気持ちがゴードンの顔にじわりとにじんでいたが、それに気付かないヘンリーは明るい声で続ける。
「ねぇゴードン、あの木が『願いの叶う木』だよ。ゴードンもお願いしてみたら?次こそは記録達成!ってね。」
まるで家族に恋人を紹介するように、得意げにお気に入りの一本を紹介する。
「ただの木じゃないか。」
「ただの木じゃないよ。この木にお願いをすると、願いが叶うんだよ。」
「叶ったのか?」
「わかんない。」
「・・・おい。」
ゴードンの突っ込みを気にも留めず、ヘンリーは木に向かってお願い事を始める。
「ゴードンの記録が、次こそは無事に達成できますように・・・。」
「木に頼らなくても、次の記録くらいすぐに出せるさ。」
ふん、と鼻を鳴らして意気込んで見せると、急にヘンリーの顔が曇った。
「どうした?」
「今日、本当は、出来ていたんだよね。・・・ぼくが足を引っ張らなければ・・・」
「引っ張られてなんかいないぞ。」
「・・・客車たちが言っていたよ。あの時、きみは駅に着いていたって。なのにきみはぼくのところに戻った。」
「いいや、まだ着いていなかった。」
「あと一度車輪を回せば着くところまで行っていたんだろ。それなのに・・・ぼくなんかに構うから・・・」
「あんな状態のお前を放っておくなんて、俺には出来ないね。」
「そのせいで、ソドー島一の機関車の、きみの記録が台無しになってしまったんだよ?」
ヘンリーの声が荒くなる。
「なんで・・・そう平気にしていられるのさ・・・」
ゴードンは冷静に、淡々と答えた。
「記録なんてどうでもいいからな。」
「・・・きみらしくない。」
「らしくなくないさ。」
「らしくないよ。」

「いいや。非常に俺らしく、大切なことを優先しただけだ。」
「・・・そりゃあ、友達を助けるのは大切なことだけど・・・」
「お前じゃなければ放っておいたさ。」
「ぼくの石炭を使っていたからかい?」
「違う、そうじゃない。」
「だったら、なんで・・・」
「お前のことが好きだからだ。」
「・・・・」
一瞬、空気が固まる。曇りが吹き飛び、驚きから戸惑い、困惑。
短時間で百面相をしたヘンリーは最後にふうっと、深い息と一緒に、次の言葉を吐き出した。
「・・・ありがとう。きみにそう言ってもらえると、すごく、嬉しい。」
「そうか。」
「ぼくは、きみに嫌われていると思ってた。」
「そっ・・・そうなのか?」
「うん・・・たまに、厳しいこと言われたりしたし。」
「・・・悪かった。」
「仕方ないよ。客車も貨車も、きみほど上手には牽けないもの。でも、こんなにポンコツなぼくのことを、仲間として認めてくれていたんだね。」
「・・・・んん?」
ゴードンの目が点になった。
(こいつ、わかっていない?・・・これ以上を言わせるつもりか・・・)
「・・・お前、勘違いしているだろ。」
「勘違い?」
「俺が言っているのは、ああぁいう事だ。」
ゴードンの答え合わせが始まる。
これから先は、きっと、自分に言い聞かせる言葉にもなる。
ゴードンは願いの叶う木の横で肩を寄せ合う恋人達に視線を向けた。
ヘンリーも視線でそれを追う。
「・・・人?」
「俺自身も、さっき気が付いた。・・・俺はお前に恋をしている。」
「・・・ぼくに、恋?」
「俺達は蒸気機関車で、男同士だ。それでも・・・」
「え・・・ちょっ・・・ちょっ・・・」

「お前を、愛しているんだ、ヘンリー。」
「・・・・・・なに・・・言って・・・」
「・・・世界で一番、ヘンリーのことが好きなんだ。」
「・・・・・・」
「お前のことが大切だから戻った。他に理由なんて、ない。」
全く予想もしていなかった言葉に、ヘンリーの頭の中は突然真っ白になる。
胸の奥底から正体のわからない何かがこみ上げてきて、瞳からポロリとそれが零れ落ちた気がした。
動かせなくなった視界の先で寄り添い合う恋人達の姿が、だんだんとぼやけていく。
いつか海に落ちて水に包まれたときのように、周囲の音の全てが遠くなって思うように聞こえない。
(なにを言っているの、ゴードン?)
火室の火はまだ燃え盛るには早すぎるのに、頭の中が熱くて熱くてぐらぐらした。
いつもの石炭に入れ替えたはずなのに、また身体が震えだしてがくがくした。
「・・・・・・っ」
何か言わなくちゃ、そう思っても、うまく言葉がまとまってくれない。
出てくるのは涙ばかりで、タンクの水が空になるんじゃないかとか、どうでもいいことがヘンリーの頭の中をぐるぐる巡る。
「・・・ンリー?おい、ヘンリー?」
(ゴードン・・・ぼくは・・・)
どのくらい長い間、無音と闇の世界に包まれただろうか。
ようやく耳が聞こえ、視界が晴れた頃には、心も妙にすっきりとしていた。
乱れていた呼吸を整えるため、ヘンリーは深い息を吐く。
「落ち着いたか?」
「・・・うん。」
とても穏やかに暖かいまなざしを向けてくれているゴードンを、ヘンリーはしっかりと見つめ返す。
「理解、出来たか?」
「・・・うん。」
「もう泣くなよ。お前の涙は見たくない。笑っていろ。」
「・・・うん。」
ゴードンの言葉が心地よくて、自然と笑顔になる。
「ねぇ、ゴードン。」
「ん?」
「ぼくも、きみと同じことに気が付いたみたいだ。」
「・・・そうか。」

「気付かせてくれてありがとう。」
そう言うと、ヘンリーは目を閉じた。夕暮れの冷たい風が、火照った身体に心地良い。
「きみと同じ蒸気機関車に生まれてこれてよかった。」
「そうだな。・・・だが、蒸気機関車では困ることもある。」
「困ること?」
「俺が人間なら、二本の腕でお前を思い切り抱きしめてやりたいんだが・・・」
それを聞いて、ヘンリーの頬が赤く染まる。
「・・・ぼくが人間なら、きみの胸に思い切り飛び込みたい・・・」
「それができたら、どんなにいいか。・・・だが」
ゴードンが、情けなさそうに蒸気をぽふっと吐く。
「今の俺達がそれをやったら、間違いなく衝突事故だ。」
ヘンリーも、つられて蒸気をぽふっと吐いて、笑う。
「だね。」

離れたところで休憩を取っていた機関士達が、二人のもとに帰って来るのが見えた。
「そろそろ帰らなくちゃ。」
「帰りも牽いていってやるよ。連結するくらいじゃ、抱きしめる代わりにもならないが・・・」
「十分、嬉しいよ。少しでもきみの近くにいられるなら。」
帰りも牽いてかえる旨を機関士たちに伝え、ゴードンがヘンリーの前に付く。
二台の機関車が手と手をぎゅっと握り合うように連結器をつなぐと、助手がねじをきつく締める。
ゆっくりと慎重に走り出しながら、ゴードンはまっすぐに願いの叶う木を見つめて、誰にも聞こえないように小さく小さくつぶやいた。
「・・・もし、本当に願いが叶うのなら・・・夢でいい。一度だけでいい。あいつを、抱きしめさせてくれ。」

翌日、まだ早く暗いテッドマス機関庫の中で、二台の大きな機関車が同時に飛び起きた。
青い機関車ゴードンの両頬は赤く染まり、目は大きく開いている。
ため息をひとつ。そして、興奮気味に、小さくつぶやいた。
「・・・まさか本当に飛び込んでくるとは思わなかった・・・」
「!!」
隣で目覚めた緑の機関車ヘンリーの身体がびくっと固まる。
止まっていた呼吸をなんとか吐いて、吸って、小さくつぶやいた。
「・・・馬鹿力すぎてつぶれちゃうかと思ったよ・・・」
「!!」
「・・・・・」
長い沈黙の後、二台はゆっくりと、確かめ合うように視線を合わせて微笑んだ。
とても満足げで、幸せそうに。

「また、森に行こう。願いの叶う木に、お礼を言いに。」

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

きかんしゃのままが自分的にベストなんですが、たまにはハグハグさせてあげたいんですわ。
お目汚し失礼いたしました~

  • とても最高でした -- ミケル? 2016-03-30 (水) 19:31:52

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP